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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
愛犬とはできるだけ長く一緒にいたいというのは、飼い主共通の願いだと思います。今回取り上げるのは、愛嬌のある顔と小柄な体格が特徴で、根強い人気のあるフレンチ・ブルドッグ(フレブル)。フレンチ・ブルドッグの寿命や長生きさせる秘訣、かかりやすい病気などについて、バーニー動物病院千林分院の分院長、堂山有里先生監修のもと解説していきます。
目次
- フレンチ・ブルドッグの特徴は?
- フレンチ・ブルドッグの平均寿命は何歳?
- フレンチ・ブルドッグの年齢による心と体の変化は?
- フレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気は?
- 特に短頭種気道症候群は命に関わる危険性も!
- フレンチ・ブルドッグを長生きさせる秘訣は?
- フレンチ・ブルドッグの食事に関して気をつけるポイントは?
- フレンチ・ブルドッグの老化のサインは?
- フレンチ・ブルドッグがシニア犬になったときのケアは?
フレンチ・ブルドッグの特徴は?
フレンチ・ブルドッグの体高、体重は、ジャパンケネルクラブの定義では、体高はオス27~35cm、メス24~32cm。上下1cm以内の逸脱は許容されます。体重はオス9~14kg、メス8~13kg。典型的な個体の場合は、500g重くても許容範囲内です。
性格は社交的、活発、遊び好き、明るい、独占欲が強く鋭敏で、あまり吠えない穏やかな子が多いです。ただし、中には闘争傾向の子もいます。フレンチ・ブルドッグはもともと古代ローマの軍用犬であるモロシアンを品種改良した犬種で、全体的に小型。しかし、コンパクトな体格ですが筋肉質でパワフルです。生まれつき尻尾は短く、しし鼻で耳は直立しています。被毛は柔らかですが抜け毛が多いです。また、鼻のシワの間に汚れが溜まりやすいという特徴があります。
フレンチ・ブルドッグの平均寿命は何歳?
フレンチ・ブルドッグの平均寿命は10~13歳と、他の犬に比べて短命の傾向にあります。また、オスとメスで寿命に差はありません。バーニー動物病院千林分院での最長寿は16歳。中にはとても長生きな子もいるようです。
フレンチ・ブルドッグの年齢による心と体の変化は?
では、フレンチ・ブルドッグの心と体の変化を年代別に見ていきましょう。
子犬期(~1歳ごろまで)
生後2~3か月で親元から離れ飼い主のもとにやってきます。生後4か月ごろまでが社会化期といって人間の社会に一番順応しやすい時期。1歳までにほぼ大人の体格になるため、急速に成長する時期でもあります。ですが、この時期はまだ幼弱で病気にもかかりやすいです。
青年期(~6歳ごろまで)
2歳前後で社会的成熟を迎え、心身ともに充実する時期です。健康面でも安定します。そのため、一緒にお出かけしたり家族との充実した時間を過ごしたりすることができるようになるでしょう。
壮年期(~10歳ごろまで)
個体差はありますが、おおよそ7歳からがプレシニア期。活動量が減り、寝ている時間が増えるので太りやすくなります。免疫力が低下して、病気にかかりやすくなってくるのもこの時期からです。
シニア期(11歳ごろ~)
シニア期を迎えると、特に病気ではなくても日常の動作がゆっくりになります。目や耳が聞こえにくくなったりするだけでなく、足腰が弱くなり今まで通りのお散歩ができなくなるのも特徴です。さらに、トイレの失敗が増え、オムツをつける必要が出ることも。高齢になっても匂いを嗅ぎ取る能力は衰えにくのでご飯には匂いで反応してくれます。外部からの刺激が少なくなる分、性格は穏やかになります。
フレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気は?
フレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気をご紹介します。
短頭種気道症候群
フレンチ・ブルドックなどのマズル(口周りから鼻先にかけての部分)が短く、丸い頭、短くて太い首をもつ短頭種に特有の閉塞性気道障害の総称です。これらの犬は、その特有の頭の形により鼻から気管を含む上部気道に鼻腔狭窄や扁桃の腫大、軟口蓋過長、気管低形成など複数の病気を発症しやすい傾向があります。
症状としてはいびき、運動不耐性、呼吸困難、咳・えずき、消化器症状、チアノーゼ、失神・虚脱、体温上昇、肺炎、肺水腫や不整脈などがあります。
水頭症
脳脊髄液が脳室やくも膜下腔に過剰に溜まってしまう状態を指します。水頭症があってもこれといった症状が出ないことも。しかし、水頭症により頭蓋内圧が高くなり、周囲の神経細胞が圧迫されている場合は注意が必要です。この場合、意識の低下、性格や行動の異常、視力の低下などの症状が発生します。命に関わるほどの重度の水頭症は外科手術や内科療法で治療が必要です。
椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間にある椎間板が変性し、脊髄神経を圧迫することで急激な痛みや麻痺が生じる病気です。フレンチ・ブルドッグなど生まれつき軟骨の形成異常をもつ犬種は椎間板ヘルニアを発症しやすいです。肥満や日常の生活様式などにより発症しやすくなることもあります。背中を触ると痛がる、足に力が入らない、抱き上げる際にキャンと鳴くなどの様子が見られたら、椎間板ヘルニアを疑いましょう。
予防としては体重管理や環境整備が大切です。腰を大きくひねるような激しい動きは避け、適度な運動を心がけると良いでしょう。軽度であれば安静にすることで回復しますが、重症度に応じて内科療法や外科手術が必要となります。
皮膚疾患
フレンチ・ブルドッグには皮膚疾患が多く、アレルギーやアトピー、湿疹、皺間皮膚炎、外耳炎など発症しやすい傾向があります。日頃からこまめにシャンプーを行い、皮膚と被毛を清潔に保つことを心がけてください。ちょっとした変化でも動物病院を受診するようにしておくと病気の早期発見につながります。
チェリーアイ
第三眼瞼腺が飛び出してしまう病気です。遺伝により、ほとんどが1歳未満で発症します。目の内側に赤い粘膜が盛り上がって見えるのが特徴的です。症状としては涙が多く出たり目を痛がったりします。基本的には外科手術で治癒できるので安心してください。
眼瞼外反症
瞼が外側にめくれている状態です。先天的なもの、重度の結膜炎や外傷によるものなど原因は様々。多くは下瞼がめくれるため、角膜や結膜が炎症を起こし痛みやかゆみ、目ヤニや涙が生じます。軽度であれば点眼などで改善しますが、重度になると外科手術が必要です。
眼瞼内反症
瞼が内側にめくれている状態のこと。めくれた瞼が刺激となって角膜や結膜に傷をつけ、かゆみや目ヤニの原因となります。こちらも軽度であれば点眼などで改善しますが、重度になると外科手術が必要です。
熱中症
体温調節が苦手なため、体温が高温になりやすいです。外気温がさほど暑くなくても熱中症になることがあるので気をつけてください。犬の息が荒くなったり、舌の色が悪くなっていたら注意しましょう。
これらの病気の他にも、フレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気として、炎症性腸疾患や血小板減少症などの免疫系の疾患も多い傾向にあります。
特に短頭種気道症候群は命に関わる危険性も!
「短頭種気道症候群」は、それ自体が一つの疾患群としての病気です。短頭種気道症候群をそのままにしておくと、さまざまな病気になりやすくなるので、早めにかかりつけの動物病院を受診するようにしてください。
短頭種気道症候群をそのままにしておくと…
【短期的な影響】
気道が狭いため、呼吸をするとゼーゼー、ヒューヒューといった音がする、いびきをかく、などの症状が出やすい。体温が上がりやすく熱中症になりやすい。また、運動をしたがらず少しの興奮で呼吸が苦しくなりやすい。
空気を飲み込みやすいため、えずきや嘔吐、よだれが多くなるなどの消化器症状が出やすい。
【長期的な影響】
呼吸器系への影響・・・咽頭虚脱、気管支虚脱、喉頭嚢外反、気管虚脱などが起こりやすい。
循環器系への影響・・・肺水腫、肺高血圧、洞性不整脈、低酸素状態がひどくなるとぐったりし失神することもある。
消化器系への影響・・・胃炎、逆流性食道炎などが起こりやすくなる。
最終的には呼吸不全に陥り命を落としてしまうこともあります。愛犬の様子に異変が見られたら、すぐにかかりつけの動物病院に相談しましょう。
フレンチ・ブルドッグを長生きさせる秘訣は?
フレンチブルドックの寿命を伸ばすには、早い段階での短頭種気道症候群を治療し重症化を防ぐことが重要です。また、興奮すると呼吸状態が悪化するので強いストレスを受けることのないようケアする、太らせすぎない、熱中症に注意することなども心がけてください。では、具体的な長生きの秘訣について見ていきましょう。
子犬の頃から定期的に健康診断を行う
7歳までは年に1回は血液検査や身体検査などの健康診断を受けてください。7歳を過ぎたら血液検査以外にもレントゲンや、超音波検査などの画像検査も含めた健康診断を年に2回は受けましょう。
健康なうちから検診を受けることでかかりつけの動物病院を見つけましょう。その子の健康な状態を知ってもらうと病気のサインを早く発見してもらうことができます。ご家族から見ると元気そうに見えても実は短頭種気道症候群の影響が出ていることもあります。
ストレスケアを行う
ストレスをためさせないよう、適切な温度管理や食事管理、運動をさせることが大切です。
適切な体重管理
フレンチブルドックは元々非常に筋肉質でがっちりした体格をしているので、適正体重が分かりにくいです。まずは、今の愛犬の体格が適正かどうかを獣医師などの専門家に見てもらいましょう。
また、食事に関してもフレンチ・ブルドックは食欲旺盛なため、太らせないよう食事量をきちんと管理することが大切です。動物病院でその子にあった1日の摂取カロリーを教えてもらい食事量を調整します。その後は家でも週に1回は体重を測り体重管理するとよいでしょう。
適切な温度管理
フレンチブルドックは暑さ、寒さに弱いので、室内でも外出時にはエアコンをつけておきましょう。特に夏場の暑さに非常に弱いので人間が快適に感じる温度より涼しくすることを心がけてください。犬が快適な温度に設定すると、大抵人はやや肌寒く感じます。しかし、犬は毛皮を脱げないので代わりに人が一枚多めに羽織るつもりでいるといいでしょう。犬がハアハアと荒い息をしていたら室温や体温が高い可能性があります。また、フレンチ・ブルドッグは冬の寒さにも弱いので外飼いには向きません。
普段からの体のチェック
日頃から愛犬とスキンシップを取り、体の様子をチェックすることで病気やケガなどの異常に早めに気づくことができます。体の各部位ごとのチェックすべきポイントをまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
目…目の輝きに異変はないか、目ヤニが出ていないか、涙が多い/少ないなどの変化がないか。
耳…耳が汚れていないか、匂いがしないか、赤くなっていないか、かゆがったり触るのを嫌がったりする様子はないか。
口…口臭が強くなっていないか、歯石がついていないか、舌の色が紫色や白っぽい色になっていないか、よだれが多く出ていないか。
鼻…鼻が乾燥していないか、鼻水が多くないか、鼻が詰まった音がしないか。
毛…艶が悪くなっていないか、パサパサしていないか、脱毛しているところがないか。
皮膚…肌がカサカサになっていないか、フケが多くないか、かさぶたができていないか、ぶつぶつになっていないか、赤いところやじくじくしているところがないか、出来物ができていないか。
肉球…肉球が乾燥してガサガサになっていないか、湿ってじっとりしていないか、匂いが強くないか、爪が脆くなっていないか、傷ついている部分はないか。
ブラッシング
フレンチ・ブルドッグは、短毛で抜け毛が多いので定期的にブラッシングしましょう。
運動(散歩)を行う
長時間の運動には向いていないため、10〜20分程度の軽い散歩を心がけましょう。暑さに気をつけ、夏場は早朝または日が暮れてからの散歩がおすすめです。
適度な運動は健康のために何歳になっても必要な習慣です。運動を続けることで血行が良くなり筋肉量が保たれます。その時の体の状態に合わせ、もしお散歩に出られなくても家の中で体を使った遊びをしてあげましょう。バランスボールや、嗅覚を使ったノーズワークなどを取り入れるのがおすすめです。ただし、フレンチ・ブルドックは関節や呼吸器系が弱いので運動のさせすぎには注意してください。
便のチェック
便は健康状態をわかりやすく反映するため、必ず毎日状態を確認しましょう。良い便は適度な硬さで艶があり、匂いもさほどきつくありません。1日に2~3回程度の排便回数が正常の範囲内です。
フレンチ・ブルドッグの食事に関して気をつけるポイントは?
フレンチ・ブルドッグの食事を与える際に気をつけるべきポイントは以下の通りです。
食事で気をつけること
フレンチ・ブルドッグは鼻が低く口を使って食べるのが苦手です。そのため、やや高さのありエサがこぼれにくい形のフードボールを使うと良いでしょう。食事量は欲しがるだけ食べさせるのではなく、年齢や体格に合った適正な量を与えるようにします。適正量がわからない場合やどんな食事を選んだら良いかわからない場合は獣医師に相談しましょう。肥満気味の場合は低カロリーの食事、アレルギーや皮膚疾患がある場合は皮膚疾患用の食事などその子に適した食事をすすめてもらえます。
肥満に注意する
基本的にフレンチ・ブルドックは食欲が旺盛なため太りやすい傾向にあります。まずは、1日にどのくらいなら食べて良いのかを体格から計算し、適正な量の食事を与えるように管理しましょう。
トレーニングやコミュニケーションのために間食を食べる場合は、間食を含めた1日の摂取カロリーから食事量を計算します。早食いを避けるために時間のかかるフードボールに変えたり、知育玩具の中にフードを入れて食べさせたりして少量でも満足できるように工夫すると肥満対策になります。
カサ増しにキャベツや白菜などの野菜を加えて満足感が出やすい様にしても良いでしょう。ただし、尿石症の犬など持病のある犬は、必ず事前にかかりつけ医に相談してから試すようにしてください。
食欲不振になった場合
犬が食べない理由はいくつかあります。まずは、愛犬が食べない理由はどれに当てはまるかを考えましょう。食べてくれないのは食欲がないからとあきらめるのではなく、なぜ食べないのかの原因を考えることが大切です。食事の形態、食べるときの姿勢、今は食べたくないだけ、食べたいものじゃなかった、など病気で食べられない以外にもさまざまな原因が考えられます。
また、病気により食べられなくなっていることもあります。鼻が詰まっていないか、急に目が見えなくなっていないか、お腹を壊していないか、熱や痛いところがないかなどよく観察してください。
シニア犬に関しては、食べないままにしてしまうとあっという間に体力が衰えてしまいます。まずは、食べてくれることが一番大切です。安全で食べやすい、美味しい食事を工夫するようにしましょう。場合によっては、今まで避けてきた肉やクリームなど高カロリーの食材を与えても大丈夫です。少量でも栄養を取ることができるのでシニア犬の生命維持に役立ちます。
シニア犬に関しては食べ過ぎもあまり気にしなくて大丈夫です。食べられる日にはたくさん食べさせ体力を温存させましょう。また、高齢になると水分摂取が苦手になりどうしても脱水傾向になってしまいます。そのため、家族が意識して水分を取らせるようにしてください。
フレンチ・ブルドッグの老化のサインは?
フレンチ・ブルドッグの老化のサインにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
目ヤニが増えた
白内障や緑内障、結膜炎、ドライアイなど目の病気になると目ヤニが増えることがあります。特に黄色や緑色の目ヤニが出る時は細菌感染が起きている可能性が高いです。速やかに動物病院で治療を受けましょう。
口臭がするようになった
高齢になると免疫力の低下や歯石の蓄積から歯周病になることが多いです。歯周病になると独特の口臭がする、よだれが増える、食事を食べにくそうするなどの症状が出ます。
苦しそうに呼吸している
短頭種気道症候群により呼吸困難に陥りやすいので、苦しそうに呼吸している場合は早急に動物病院を受診してください。
階段の上り下りに苦労する
関節疾患や心肺機能の低下により階段を上り降りができなくなります。関節疾患の場合は痛み止めや関節のサプリメントで改善することも。ただし、心肺機能の低下は命に関わるので一度は受診して治療の必要があるか診察を受けてください。
散歩を嫌がる
足腰が弱ってきたり、短頭種気道症候群が進行したりして長い距離を歩くことができなくなることもあります。家の周りだけ散歩させる、カートに乗って公園まで連れて行ってあげる、などその時の状態に合わせて工夫してみましょう。
その他にも、白い毛が増えた、筋力の低下、寝ている時間が長い、今まで好きだった遊びに興味がなくなった、トイレの失敗がある、毛艶が悪くなってきた、食事量が減った、痩せてきた、太ってきたなどさまざまな老化のサインがあります。
フレンチ・ブルドッグがシニア犬になったときのケアは?
日頃から愛犬の様子をよく観察し、細かな変化に気づくことが何よりも大切です。小さな変化のうちに対処し、重症化を防ぐことで健康な状態を長く維持することができます。
そのためには、ブラッシングやマッサージなどのスキンシップで全身の状態を把握し、歯磨きを習慣にして歯周病を予防するようにしましょう。愛犬が好きだったことは高齢になっても続けていき、できる範囲で元気だった頃と同じ生活をするよう心がけてください。あとは、家族の笑顔が何よりのストレスケアになります。