更新 ( 公開)
獣医師でありながら、トリマー、動物看護士、ドッグトレーナーとしての実務経験も持つ。病気の早期発見、未病ケアに努める0.5次医療を提唱し、精力的に活動。
くしゃっとした顔にくりくりした瞳、こうもりのような形の耳(バットイヤー)がチャームポイントのフレンチ・ブルドッグ(フレブル)。人間と一緒に遊ぶのが好きなので、飼い犬として親しまれやすく、古くは英国王エドワード7世など有名人にも愛されたことでも知られています。今回は、ペットスペース&アニマルクリニックまりもの病院長である箱崎加奈子先生に教えていただいた、フレンチ・ブルドッグのルーツや性格、飼う上で注意すべき点などについて解説いきます。
目次
- フレンチ・ブルドッグの歴史やルーツは?
- フレンチ・ブルドッグの体高・体重、平均寿命は?
- フレンチ・ブルドッグの毛色の種類や被毛の特徴は?
- フレンチ・ブルドッグの性格の特徴は?オスとメスで違いはあるの?
- フレンチ・ブルドッグを飼うのに向いている人は?
- フレンチ・ブルドッグの飼い方や生活上で注意すべきことは?
- フレンチ・ブルドッグのしつけの開始時期とおすすめのトレーニングは?
- フレンチ・ブルドッグを散歩させる際に気を付けることは?
- フレンチ・ブルドッグにおすすめの遊びは?
- フレンチ・ブルドッグの食事の注意点は?
- フレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気とその予防法は?
- フレンチ・ブルドッグの日常のお手入れで気を付けることは?
フレンチ・ブルドッグの歴史やルーツは?
フレンチ・ブルドッグのルーツはさまざまな説がありますが、1850年代のイギリスにさかのぼります。そのころ、イギリスの工業地帯で飼育されていたのが、10kg以下の小型のブルドッグ(トイ・ブルドッグ)。産業革命をきっかけに、イギリスからフランスへと渡ったトイ・ブルドッグを改良したのが、フレンチ・ブルドッグと言われています。
1885年には、フランスのケネルクラブに「フレンチ・ブルドッグ」として登録されます。のちに、イギリスに逆輸入され、徐々にイギリス国内でも評価を得るようになりました。フランスではさらに改良が進み、現在に近い姿へとなったフレンチ・ブルドッグは、日本に大正時代に輸入され、その頃から多くのフレンチ・ブルドッグが飼われていたようです。
フレンチ・ブルドッグの体高・体重、平均寿命は?
フレンチ・ブルドッグの体高・体重、平均寿命は以下の通りです。
フレンチ・ブルドッグの体高・体重
体高は、オスが27~35cm、メスは24~32cm。体重はオスが9~14kg、メスは8~13kgが標準的な大きさとされています。全体的にがっちりしていて首から胸にかけては特に太く、引き締まった体格です。尻尾は生まれつきとても短く、尻尾で感情表現を読み取ることが出来ません。
フレンチ・ブルドッグの平均寿命
平均寿命は10〜13歳と言われています。他の犬種と比べ病気にかかりやすいのでしっかりと日常的なケアをすることが重要になります。病気については後述します。
フレンチ・ブルドッグの毛色の種類や被毛の特徴は?
豊富な毛色が魅力的なフレンチ・ブルドッグ。フォーン、プリンドル、パイドが中心的な毛色です。
フォーン
明るい茶色、濃い茶色
プリンドル
黒をベースに、茶色(フォーン)や白が部分的に入っている
パイド
白をベースに、黒が部分的に入っている
クリーム
全身が白に近い薄いカラー
フォーン・アンド・ホワイト
白をベースに、茶色(フォーン)が部分的に入っている
他にも、白をベースに薄茶色のフォーンが入っているハニーパイドというめずらしいタイプのパイドがあります。顔周りが黒い「ブラックマスク」、足先が黒い「ソックス」、胸元に白い差し毛(柄)が入っている「エプロン」など、毛色の種類は豊富で、それがフレンチ・ブルドックの魅力のひとつになっています。
フレンチ・ブルドッグの性格の特徴は?オスとメスで違いはあるの?
フレンチ・ブルドッグの性格をひと言でまとめると、明るく活発。飼い主さんと楽しいことをするのが大好きです。ただし、闘犬系の血が入っており、フランスでは害獣を駆除する役割を担うためにテリアの血が導入されたことから、興奮しやすい一面もあります。基本的には、ほかの犬や人に対して友好的ですが、気が強いフレンチ・ブルドッグもいるので、普段から様子をよく観察し、その性格を知っておくといいでしょう。オス、メスによる性格の違いは特にありません。
フレンチ・ブルドッグを飼うのに向いている人は?
パワフルな犬種なので、アウトドアに遊びに行くような方に向いています。明るく社交的な性格をしているので、仲間と集まって過ごすのを楽しみたいご家族にも合っているかもしれません。フレンチ・ブルドッグの好奇心旺盛な性格と同じく、明るくてオープンな性格の飼い主さんが多く見られるようにも思います。
フレンチ・ブルドッグは初心者向きの犬?
独特なフォルムに一目惚れをして、初めての飼い犬にフレンチ・ブルドッグを選ぶ方は少なくありません。その魅力のとりこになり、多頭飼いしているご家族も多いです。パワフルですが、家族思いのフレンチ・ブルドッグは、飼い主の期待に応えることに喜びを感じる犬です。しっかりと時間をかけて向き合えるのであれば、犬を飼い慣れていない人でも大丈夫でしょう。 フレンチ・ブルドッグに限らず、どの犬種にも言えることですが、人と犬が生活する上でお互いに快適に過ごすためには、しつけやトレーニングが必要です。興奮しやすい性質もありますので、クールダウンを上手にさせてあげましょう。
体調管理はやや難しいと言える犬種です。暑さにとても弱く、少しの室温上昇でも息苦しそうにするかもしれません。なので、室内環境には気を使いましょう。皮膚トラブルも多いので、スキンケアは必須。通院が頻繁になることもあるので、信頼できるかかりつけの病院も見つけてください。
フレンチ・ブルドッグの飼い方や生活上で注意すべきことは?
フレンチ・ブルドッグは暑さや寒さなどに非常に弱い特徴を持っています。なので、夏場の暑い日に遊びすぎたり、エアコンが効きすぎている部屋に長時間過ごさせたりすることは基本的にNGです。また、季節ごとに抜け毛が多いので、こまめに部屋の掃除やブラッシングを行うようにしましょう。また、ブラッシングと合わせて、鼻の周りの部分の皮膚やしわの間に汚れが溜まっていないかは定期的に確認するようにしましょう。
フレンチ・ブルドッグのしつけの開始時期とおすすめのトレーニングは?
吠えることは多くない犬種なので、マンションなどの集合住宅などでも飼いやすく、一緒にお出かけをするにもぴったりです。小型犬ではありますが、筋肉質でパワーがあるのでトレーニングやしつけが必要です。
ほかの犬に突進してケガを負わせることなく、ソフトに遊べるように、子犬期から社会化を意識したトレーニングを行うといいでしょう。成犬になるまでに、興奮のコントロールを目的とした「待て」や「呼び戻し」なども、マスターしておきましょう。攻撃性が出てしまう場合は、早めにトレーナーなどに相談してください。
フレンチ・ブルドッグを散歩させる際に気を付けることは?
パワフルなフレンチ・ブルドッグですが、運動量はほかの小型犬と同じで十分です。飼い主さんは短い時間でも愛犬と向き合って満足させてあげましょう。ただし、短頭種のフレンチ・ブルドッグにとって暑さは大敵なので、夏場の散歩では熱中症に注意したいものです。散歩の際は呼吸器への負担を減らすために、首輪ではなくハーネスを使ってあげるといいでしょう。
フレンチ・ブルドッグにおすすめの遊びは?
暑くない季節であれば、思いっきり外で走らせてあげてください。暑い日や外に出づらい日は、室内遊びをして楽しませてあげましょう。飼い主さんのことが大好きな子が多いので、ボール遊び、ノーズワーク、トリックなどで一緒に遊べると大変喜びます。
フレンチ・ブルドッグの食事の注意点は?
フレンチ・ブルドッグは非常に食欲が旺盛なため、肥満になりやすい傾向にあります。食事管理を怠ってしまうとすぐに太ってしまうため、栄養バランスの取れた食事を適正な量だけ与えましょう。肥満気味であれば、低カロリーのフードや良質なタンパク質を摂取しつつ、適正な運動を取り入れて適正体重を維持するようにしましょう。また、炭水化物の摂りすぎは肥満の原因となるため注意が必要です。
フレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気とその予防法は?
フレンチ・ブルドッグは病気にかかりやすい犬種です。意外にも暑さや寒さが苦手だったり、皮膚が弱かったりと、とても繊細な犬なので、皮膚トラブルや皮膚疾患が起きないような食事を心がけたり、日々の体調チェックをしたりすることは欠かせません。また、たまに頑固な子だと、病気の疑いがあっても獣医に触られるのを拒んで診察させてくれない場合があります。日頃から、スキンシップをはかり、身体に触られることへの抵抗をなくしておくといいでしょう。以下にフレンチ・ブルドッグがかかりやすい病気をまとめましたので参考にしてください。
熱中症
鼻が短く、口呼吸となるため、体温調節をすることが苦手です。そのため、夏場でなくても気温や運動後の体温上昇で熱中症や体調不良になってしまうことがあります。こまめな休憩と水分補給、冷感グッズなどで事前に対策をしましょう。
短頭種気道症候群
短頭種であるフレンチ・ブルドッグは、鼻から気管の入口である喉頭にかけての気道が狭く、鼻腔狭窄症や、喉の奥にある軟口蓋が空気の通り道を塞いでしまう軟口蓋過長症などの呼吸器疾患にかかりやすいと言えます。
子犬期から、いびきをかくことや、口を開けて荒い呼吸をすることが多い場合は、早めに獣医師に相談をするといいでしょう。肥満によって症状はひどくなるので、体重管理をすることが予防になります。また、呼吸器に負担をかけるような過度の運動はさせないようにしましょう。首輪も避けてハーネスなどの胴輪を使ってお散歩をしてあげるのがおすすめです。
アレルギー性皮膚炎
フレンチ・ブルドックは、肌が弱く、アレルギー性皮膚炎や膿皮症になりやすい犬種です。皮膚を清潔に保ってあげることが病気の予防になります。
食物アレルギーや、生活環境のハウスダスト、室内ダニなどが原因で、皮膚炎になるケースがよくあります。皮膚になにか当たって、その刺激から皮膚炎になる場合もあります。獣医師を受診し原因やアレルゲンがはっきりさせて、それを取り除く食事療法や対症療法で治療します。
膿皮症(のうひしょう)
膿皮症とは、ブドウ球菌の細菌感染で起こる皮膚炎です。赤いブツブツとした発疹が出現し、しだいにドーナツ状に拡がり放っておくと膿が出てにおいがするようになります。
抗菌作用のあるシャンプー療法を行いつつ、抗生物質を投与するのが一般的な治療法です。シャンプー後に保湿剤を使うなどして皮膚を保護してあげるといいですね。
椎間板ヘルニア
フレンチ・ブルドッグは、生まれつき軟骨の変形を起こしやすく、椎間板ヘルニアになりやすい犬種です。椎間板が脊髄に向かって飛び出した状態が椎間板ヘルニアですが、脊髄が圧迫されると激しい痛みを伴います。抱き上げると悲鳴を上げたり、運動をしたがらなくなったりします。重症になると、後肢に力が入らずに歩行困難に陥ることもあります。腰に負担をかけるような激しい運動やジャンプは避けて、毎日少しずつ筋肉を鍛えることが予防につながります。ヘルニアの悪化を招く体重増加を避けるためにも、ゆっくりとしたお散歩を行いましょう。
その他
上記の他にも外耳炎や、肥満細胞腫、悪性リンパ腫などのがんを起こしやすい犬種です。悪性腫瘍の早期発見のためにも、定期的に超音波検査を含めた健康診断を受けるようにしましょう。
フレンチ・ブルドッグの日常のお手入れで気を付けることは?
換毛期があり、抜け毛も多い犬種です。一般的には季節の変わり目が換毛期と言われていますが、一概には言えません。なので、毎日のスキンシップや、ボディチェックを兼ねてブラッシングは欠かさず行ってあげてください。また、肌トラブルの多い犬種ですので、スキンケアはしっかり行いましょう。特に顔のしわの部分には汚れが溜まりやすいので、蒸しタオルで拭いて、ケアしてあげましょう。
シャンプーは、10日から2週間に1度を目安に、皮膚のコンディション見ながら行ってください。定期的にサロンでのシャンプーをお願いすると、シャンプーの種類や頻度、スキンケアの方法などについて、アドバイスをもらえるかもしれません。
第2稿:2021年10月20日更新
初稿:2021年2月19日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。