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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
手軽に作れて栄養も豊富なゆで卵を愛犬に食べさせたいと考えている飼い主は多いかと思います。基本的に、ゆで卵は与える量や調理方法などに注意すれば、犬に問題なく食べさせることができます。今回は、犬にゆで卵を食べさせるメリットや、与える際の注意点などをバーニー動物病院千林分院 分院長の堂山有里先生に解説していただきます。
目次
- 犬にゆで卵を与えても大丈夫!
- 子犬やシニア犬にゆで卵を与えても大丈夫?
- 持病のある犬にゆで卵を与えても大丈夫?
- ゆで卵に含まれている栄養素は?
- 犬にゆで卵を与えるメリットは?
- ゆで卵を食べてアレルギーを起こす犬はいる?
- 犬にゆで卵を与える際の一日あたりの適量は?
- 犬にゆで卵を与える際の注意点は?
- 犬にゆでる以外の調理法で卵を与えてもよい?
犬にゆで卵を与えても大丈夫!
ゆで卵は基本的には犬に食べさせても大丈夫ですが、1点だけ注意点があります。それは、「生卵の白身」についてです。どのようなリスクがあるのか見ていきましょう。
加熱は必須?生卵の白身に注意!
犬に卵を与える際に注意したいのは、生卵の白身を単独で与えてはいけないということです。生卵の白身に含まれるタンパク質「アビジン」には、被毛や皮膚に必要なビタミン「ビオチン」と結合し吸収を阻害する作用があります。白身を少量食べてしまったくらいであれば、症状が出ることはほとんどありませんが、ビオチンが欠乏すると、貧血や湿疹、皮膚炎などが引き起こされる場合があります。ただし、アビジンは加熱をすれば活性が失われます。ゆで卵など加熱された卵であれば、白身を単独で与えても大丈夫です。
また、ビオチンは卵黄に多く含まれているので、生卵の白身でも卵黄と一緒に摂取することでビオチン欠乏を防げます。黄身が半熟でも白身に火がしっかり入っていればアビジンは活性を失うので、ゆで卵は半熟と固ゆで、どちらも犬に食べさせて問題ありません。もし心配なら、必ず黄身と一緒に食べさせるようにするとよいでしょう。
子犬やシニア犬にゆで卵を与えても大丈夫?
子犬やシニア犬でも、ゆで卵を与えることは基本的には問題ありません。ただし、子犬やシニア犬は消化機能が弱いことがあるので、細かく刻んだりすり潰したりして、消化しやすい形で与えようにしましょう。一度にたくさん与えず、まずは少量ずつ様子を見ながら与えるとよいでしょう。
持病のある犬にゆで卵を与えても大丈夫?
犬に持病がある場合は、ゆで卵を食べさせてよいか、事前にかかりつけの獣医師に相談しましょう。病気によっては、食事制限の必要などがあるためです。例えば、腎臓病ならたんぱく質制限が必要になることがあります。肝臓病でも、病気の種類によってはたんぱく質を選んで与えることが求められることも。糖尿病や重度の肥満でダイエット中の犬は、どの程度なら食べてよいかを獣医師と相談してみましょう。
ゆで卵に含まれている栄養素は?
栄養豊富な食べ物というイメージが強いゆで卵ですが、どのような栄養素が含まれているのでしょうか。栄養素の種類と効果について、それぞれ見ていきましょう。
たんぱく質
臓器や筋肉を作り、酵素やホルモン、免疫物質の材料にもなる栄養素。体のさまざまな機能を担います。
脂質
エネルギー源となるほか、細胞膜や神経細胞などを構成するので、健康な体を作る上で欠かせない栄養素です。
ビオチン
水溶性ビタミンの一種でビタミンB群に属します。エネルギーの代謝に関係し、皮膚や粘膜を正常に保つ働きもあります。
セレン
微量ミネラルの一つ。強い抗酸化作用があり、老化や心血管疾患を予防する栄養素です。
鉄
体内では、鉄は約7割が赤血球を作るのに使われ、残りは肝臓などに貯蔵されています。赤血球中の鉄はヘモグロビンの成分となり、酸素を全身に届ける働きを担います。
ビタミンB2・B12
いずれもビタミンB群。B2は主に皮膚や粘膜の健康維持に働き、糖質や脂質、たんぱく質をエネルギーに変える際に重要な働きをします。B12はヘモグロビンの生成を助け、貧血の改善に役立ちます。
犬にゆで卵を与えるメリットは?
ゆで卵は、良質のたんぱく源になります。たんぱく質を豊富に摂取できることで、犬にとっては健康な被毛や皮膚を保つことに役立つメリットがあります。さらに、卵からヒヨコが孵化することからも分かるように、卵は「完全栄養食品」と呼ばれる食材。高栄養価でバランスが良く、ビタミンCと食物繊維を除いたすべての栄養素を含んでいます。少量で栄養をしっかりつけてあげたい時、例えば、シニア犬や病気療養中の犬などの食事としても、ゆで卵は強い味方となってくれるでしょう。
ゆで卵を食べてアレルギーを起こす犬はいる?
食物アレルギーは食べる回数が多いものに対して起こります。犬の一般的なドックフードには卵は使われていないか、少量含まれる程度。そのため、犬は人間ほど卵アレルギーが一般的ではありません。しかし、以下のような場合には卵アレルギーを発症することがあります。
・子犬の頃から卵を多く摂取している犬
・母犬が妊娠中に卵を多く摂取していた犬
・鶏肉アレルギーなど、他の食品にアレルギー反応がある犬
犬が卵アレルギーを起こした場合の症状
犬の卵アレルギーは食後2〜3日以内に発症することが多いです。その際には以下のような症状が出ます。
嘔吐
食べた直後から半日程度の間に嘔吐が起きるケースがあります。原因となる食べ物を吐き戻してしまえば、その後に体調は回復します。
下痢
当日から2~3日以内に下痢が起きることがあります。通常、原因となる食べ物の摂取をやめると症状は治まり、改善へと向かいます。
かゆみや湿疹
アレルギーを起こした場合、特に目や口周り・耳・背中・お腹などに、かゆみや湿疹などの症状が出やすいです。
犬が卵アレルギーを起こした場合の対処法
犬が卵を食べた後、いつもと違う様子が見られたら、まずは卵を続けて食べさせないようにしましょう。それによって症状がなくなれば、しばらく様子を見ても問題ありません。食べて数時間以内に激しい下痢や嘔吐が見られたり、下痢や嘔吐を数日繰り返したりする場合は、動物病院を受診しましょう。その際、数日以内に食べたものが分かるメモを持参すると診断の役に立ちます。目や口周り、皮膚のかゆみなどが続く場合も卵アレルギーの可能性があるので、その際も動物病院を受診することをおすすめします。食事内容に関して相談にのってもらえるでしょう。
犬にゆで卵を与える際の一日あたりの適量は?
1日あたり、犬に卵をどのくらい与えるべきかについて、明確な基準は存在していません。基本的には、1日に必要なエネルギー量のおおよそ1割であれば問題とはならないと考えられます。例えば、体重5kgの成犬の場合、運動量や年齢によっても異なりますが、1日に必要なエネルギー量は約320kcal。その約1割は32kcalです。
卵1個60gのエネルギー量は85kcalなので、1日に卵の3分の1程度であれば食べさせられます。以下の目安の量を参考にしてみてください。ただし、カロリーオーバーにならないように、卵を食べさせた日は卵のエネルギー量分だけ、与えるドックフードの量を減らすようにしましょう。
【犬が1日に食べてよい卵の量(目安)】
・超小型犬
1/4個以下
・小型犬
1/3個
・中型犬
1/2〜1個
・大型犬
1個
犬にゆで卵を与える際の注意点は?
前述した注意点を含め、犬にゆで卵を与える際に気を付けたいことを改めて見ていきましょう。
高カロリーなので、毎日与えるのは避ける
ゆで卵は栄養価が高い食べものですが、愛犬が欲しがるたびに与えているとカロリーオーバーになってしまいます。あくまで食事のトッピング程度に与えるものと考えましょう。
加熱して与える
生の白身はビタミンを破壊する酵素「アビジン」を含むので、加熱をして与えましょう。ただし、生で与える場合でも、白身と黄身を同時に食べさせるとビタミン欠乏を防げます。
火傷しない程度に冷ましてから与える
ゆでたてのゆで卵は熱いので、火傷しないようしっかり冷ましてから与えましょう。
細かく刻む
犬はすり潰さず丸呑みするため、ゆで卵などは塊で与えると喉に詰まらせる危険も。細かく刻むか、すり潰してから与えるようにしましょう。
トッピングとして与える
栄養価が高いゆで卵ですが、ビタミンCと繊維質が含まれていません。ゆで卵だけを食べていると栄養に偏りが出るので、メインの食事にはせず、トッピング程度にゆで卵を使うようにしましょう。
まずは少量ずつ与える
どんな食べものでも、初めて与える場合はアレルギーや消化不良などを起こすことがないか、少量ずつ与えて様子を見るとよいでしょう。
犬にゆでる以外の調理法で卵を与えてもよい?
卵にはゆで卵以外にも様々な調理法があります。ゆでる以外の調理法をした卵を犬に食べさせて大丈夫なのか、それぞれ見ていきましょう。
卵焼き、スクランブルエッグ、目玉焼き
タマネギ、ネギ類、過剰な調味料など犬にとって有害となる食品を含まなければ与えられます。調理時は砂糖や塩など調味料は加えず、油は控えめに。しっかり冷ましてから、細かく刻んで食べさせましょう。
オムレツ
タマネギやケチャップなど犬にとって有害となる食品を使うので、与えないほうがよいです。
温泉卵
白身に含まれるビタミンを破壊する酵素「アビジン」は、温泉卵を調理する際の加熱では完全に活性を失っていない可能性もあります。念のため、白身と黄身を一緒に与えましょう。
生卵
卵の殻にはサルモネラ菌が付いていることがあります。生で与える卵は新鮮なもの、保存状態が良いものを選びましょう。
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