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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
近年、犬も人間同様に平均寿命が延び、高齢化が進んでいます。人間と同じく高齢化が進むことで犬が病気になる可能性も増えるため、犬が健やかに過ごせるよう健康診断を定期的に受ける意識が高まっています。今回は、犬の健康診断について、chicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきました。
目次
- 犬に健康診断が必要な理由は?
- 犬の健康診断は何歳から受けさせるべき?
- 犬の健康診断でわかることは?
- 犬の健康診断はどこで受けられる?
- 犬の健康診断の基本的な検査項目とその内容は?
- 犬の健康診断の内容には明確な決まりがないのは本当?
- 犬の健康診断にはオプションはあるの?追加できる検査項目とその内容とは?
- 犬の健康診断にかかる費用平均どれくらい?保険は適用されるの?
- 犬の健康診断はどれくらいの頻度で受けるとよい?
- 犬が病院や獣医師さんを怖がる場合はどうすれば?慣れさせる方法とは?
- 犬の健康診断の注意点は?
犬に健康診断が必要な理由は?
犬は人間と比べて成長が早く、1年で人間の約4年分もの年を重ねます。小型や中型犬の1歳は人間のおよそ15歳にあたり、大型犬の1歳は人間の12歳にあたります。このように年齢を重ねるスピードが早いため、定期的に健康診断を受けることが病気の早期発見や予防につながると考えられています。
犬の健康診断は何歳から受けさせるべき?
何歳からでも受診可能ですが、だいたい生後6か月齢位からスタートするとよいと思います。子犬だからといって病気にならないということはなく、先天的な異常や発育時の異常などもあるためです。まずは子犬のうちに1回は健康診断を受けておくことが望ましいでしょう。
早い段階から受けることで、病気の予防や早期発見につながります。また、初回の検査結果が犬にとっての基準となります。犬が年齢を重ねたときに、過去の基準と比べて現在がどんな状況かを把握できることが大きなポイントとなるのです。
犬の健康診断でわかることは?
健康診断では、犬の各臓器や全身の状態が把握できます。特に検査機器を使った本格的な健康診断は、発見が難しい病気から犬を守るために必要な項目です。たとえば、肝臓や泌尿器系の病気は、よほど症状が悪化しないと血液検査では数値に現れません。そのため、エコーや心電図といった検査で総合的に診断することが望まれます。
犬の健康診断はどこで受けられる?
犬の健康診断は、動物病院で受けることができます。かかりつけの動物病院があれば、健康診断を行っているか聞いておきましょう。病気を悪化させてからでは費用や時間もかさみ、犬にとって体の負担も大きくなります。健康診断を定期的に受け、病気の早期発見や予防に努めることが大切です。
犬の健康診断の基本的な検査項目とその内容は?
飼い主が犬の全身をさわって異常がないかをチェックすることはできます。しかし、見えない場所で進行する病気や自覚症状のない病気もあるので、定期的な健康診断はやはり欠かせません。それでは、どのような検査が必要で、その内容がどんなものなのかを詳しく説明します。
問診
飼い主にしかわからない普段の自宅での愛犬の状態や状況の聞き取りを行い、診断に繋げるヒントを見つけます。飼育環境や食事の変化、いつごろから症状が見られるかなど、ご家族にしか見せない行動や自宅でないとわからないことを聞かれます。このような情報はとても重要なので、日頃からメモを取ったり動画を撮ったりしておくといいでしょう。
視診・触診・聴診
獣医師が「見る、聞く、触る」といった五感を使って犬の全身チェックを行います。視診であれば皮膚の異常や目やに、歯石のチェックを。触診では、しこりの有無や腹腔内の異物確認、膀胱の尿の貯留度合いなどの確認を行います。お腹を触って腫瘍が見つかることもゼロではありません。聴診では、聴診器で心雑音や気管音のチェックをすることで、心臓の呼吸器の疾患に気付くこともあります。さらに、臭いをチェックすると病気の診断に結びつく場合もあります。
血液検査
血液検査では、血液中の全ての細胞成分や、血液に含まれるさまざまな成分を測定する検査のことです。白血球や赤血球、血小板などを調べる「血球検査」では、貧血の有無や炎症、がんなどが確認できます。また、血液中の成分を測定する「生化学検査」では、栄養状態や格内臓機能をチェックすることができます。
尿検査・便検査
尿検査では腎臓、膀胱、前立腺などの異常がチェックできます。また、糖尿病などのホルモン疾患の発見にも役立ちます。便検査では寄生虫の有無、腸内細菌のバランス、異物の有無、消化状況などのチェックを行います。
尿と便は、なるべく新鮮な状態で、清潔な容器に入れて持参するようにしてください。外で採取すると異物が混入してしまうので、屋内での採取がベストです。
レントゲン検査
レントゲン検査では視診ではわからない、体の内側の状態(骨関節の異常や内臓系の異常、腫瘍の有無など)を把握し、肝臓や膀胱に結石が見られないかなども確認します。横向きと仰向けまたはうつ伏せの二方向を撮影して診断します。
超音波(エコー)検査
臓器の形や大きさ、血流動態などを把握します。レントゲンには写りにくい構造物の発見にも繋がります。確認したい部位に専用のゼリーを塗り、超音波を発する器具を当て、検査をします。
その他の検査項目
腫瘍マーカーの測定、アレルギー検査や各種ホルモン検査を行う特殊検査をすることもあります。
犬の健康診断の内容には明確な決まりがないのは本当?
犬の健康診断の内容に明確な決まりがないのは本当で、動物病院ごとに検査内容が異なります。スタンダードな部分は同じだと思いますが、血液検査でも何項目受けられるのかも違いますし、病院が持っている機器によっても変わります。
犬の健康診断でも、ペットドックと呼ばれる人間ドックと同じような検査を行う病院もあります。事前にどのような項目を検査してもらえるのか動物病院に確認し、相談するようにしましょう。
犬の健康診断にはオプションはあるの?追加できる検査項目とその内容とは?
健康診断のコースは病院によってさまざまで、血液検査だけというところもあれば、レントゲンやエコーなど画像検査が組み込まれている場合もあります。
病院側に機器がそろっていればエコーやレントゲンは撮れるので、コースに組み込まれていなければオプションとしてつけることも可能でしょう。また、アレルギー検査や各種ホルモン検査については外注で行うことが多いため、オプションになる病院がほとんどです。
どの検査を受けるべきかは、獣医師と相談しながら決めると間違いありません。検査内容の選択に迷ったら、動物のプロに相談することをおすすめします。
犬の健康診断にかかる費用平均どれくらい?保険は適用されるの?
日本獣医師会の調査によると、健康診断(1日ドック)の平均的な費用は14,021円とされていますので、これを目安として考えてもよいでしょう。また、ペット保険に入っていたとしても、健康診断は保険適用外になります。
犬の健康診断はどれくらいの頻度で受けるとよい?
持病がなく健康な犬であれば、5~6歳くらいまでは年に1回、シニア期に入ってきたら半年に1回は受けるのがベストです。
健康診断を忘れないためにも、毎年連れていく日にちを決めてしまうのもひとつの方法です。春は予防の時期ということもあり、フィラリアの検査などで採血も行うので、多めに採血をしてもらって一緒に健康診断の検査をしてもらうのがおすすめです。採血が一度で済むため、犬の負担を軽くしてあげることができますよ。
犬が病院や獣医師さんを怖がる場合はどうすれば?慣れさせる方法とは?
「病院は怖くないところ」と覚えさせていきましょう。お散歩時に病院の近くを通るようにしてみるところから始め、少しずつ病院に近づいて行き、おやつを与えるという方法をとるといいかと思います。
可能であれば、病院のスタッフや先生からおやつを与えてもらうことを繰り返すと、この場所の人たちは怖くないという認識になってくれるので、病院に慣れて落ち着くことができるでしょう。
犬の健康診断の注意点は?
血液検査は食事を食べたか否かによって数値が変動してしまうこともあるので、病院に事前に食事制限について確認を行ってください。尿や便は、なるべく新鮮なものが良いため、当日、もしくは前日の夜のものを持参しましょう。
また、服用しているお薬がある場合や、予防薬を飲ませた場合などは、いつ頃飲ませたかについても病院側に申告する必要があります。
そして、体調がいい状態で健康診断を受けることが好ましいので、体調に不安のある場合には必ず獣医師に相談するようにしてください。