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Animal Life Partner代表。ペット栄養管理士など様々な資格を生かし、診療や往診のほかに、セミナー講師やカウンセリング、製品開発など幅広く活動。
健康な犬の目は適度な潤いがあり、輝いているもの。でも、過度に潤っていて涙量がいつもより多いと、「病気かな?」と気になりますよね。今回は、獣医師の丸田香緒里先生に教えていただいた、多すぎる犬の涙の原因や考えられる病気、涙が多いときの対処法などを解説していきます。
目次
- 犬も悲しいと涙を流すの?
- 犬の正常な涙とは?
- 犬の涙の原因1:生体防御反応によるもの
- 犬の涙の原因2:病気によるもの
- 犬の涙が多いときに動物病院に連れていくタイミングと、病院での治療法は?
- 犬の涙が過剰にならないようにする予防法は?
犬も悲しいと涙を流すの?
犬の顔を見ると涙がウルウル。いつも以上に涙がたくさん、あふれそうなほど目元に溜まっていたら心配になってしまいますよね。「悲しくて涙を流しているのかな? 犬も悲しいときに泣くのかな?」と考えたことはないでしょうか。
もちろん、犬にも喜怒哀楽はあります。ですが、悲しみの表現方法は人とは異なるもの。犬は悲しいとき、しっぽをシュンと垂らしたり耳が垂れたり、背中を丸めたり、「クーン、クーン」と鳴いたりします。ですから「悲しみで涙が湧き上がる」ということは犬にはありません。
犬の正常な涙とは?
犬の目の涙量が多いのか少ないのか、あるいは正常なのか。「そもそも、その判断が難しい!」という問題があります。涙量が正常かどうか見分けるには、次の2つのポイントが目安になります。
ポイント1:目の輝きはどうか
健康な犬なら、正面から見た時に目に輝きがあります。
ポイント2:適度な潤いがあるか
下まぶたと目の間にわずかに涙がたまっている状態が正常です。
犬の涙の原因1:生体防御反応によるもの
犬は悲しい感情から涙を流すことはありません。犬の涙量が増える原因は、主に「正常な生体防御反応と「病気」の2つです。まずは正常な生体防御反応による涙について解説していきます。
犬の過剰な涙の原因となる正常な生体防御反応は、異物混入に対する反応がほとんどです。人の場合、異物が目に入るとコロコロとした異物感や痒みを感じ、それを洗い流そうとして涙をたくさん分泌しますよね。犬も同様で、目の中へ異物が入ると涙を多く出して流そうとすることがあります。具体的な「異物」については次の通りです。
犬の涙の原因になる異物は?
・ゴミ
空気中のホコリや花粉などゴミが目に入ると刺激になり、涙が出ることが。とくに目が大きい犬種や目が出っ張っている犬種はホコリなどが入りやすくなります。
・毛
トイ・プードルなど毛の長い犬種などでは、目のまわりにある自身の毛が目に入って涙が出ることがあります。逆さまつげのため、まつげが目に入って角膜を傷つけている場合も。
目の中への異物混入に気づいたときは?
犬が涙を出すことで異物を洗い流そうとしているなら、そのまましばらく様子を見てよいでしょう。飼い主が無理に取り除くよりも、犬自身の涙で流すほうがよい場合も多くあります。ただし、涙量が多い期間が長引いたり、前脚で目を掻く仕草を繰り返したりしていたら要注意。角膜に傷がつくなどの病気の可能性が高いので、早めに動物病院を受診するのがおすすめです。
犬の涙の原因2:病気によるもの
犬の涙がいつもよりも多くなるもう1つの主な原因は、病気です。具体的には、主に次のような病気が考えられます。
涙の排水システムエラーを起こす病気は?
犬の涙の排水システムは、正常なときであれば、まぶたの縁にある「涙点」から「鼻涙管」という管を通って鼻にも流れるようになっています。でも、先天的な異常や病気によってこの「涙点」や「鼻涙管」が閉塞してしまうことがあるのです。こうなると涙の排水システムがうまく働かず、目から大量に涙がこぼれることに。排水システムのエラーを起こす病気には次のようなものがあります。
・炎症細胞
排水システムのエラーの多くは、目やになどに含まれる炎症細胞が、鼻涙管を物理的に閉塞させることで起こります。この場合、鼻涙管洗浄することで開通する可能性があります。
・先天的な閉塞
生まれつき鼻涙管が閉塞している場合があります。そのため、排水システムエラーが起こります。
・腫瘍
老犬の場合、腫瘍による圧迫が鼻涙管を閉塞させ、排水システムにエラーが起きることがあります。
涙の生成量を増やす病気は?
涙の排水システムが正常であっても、涙の生成量が増えることでも涙量が多くなります。涙の生成量を増やす病気には次のようなものがあります。
・角膜炎
ゴミや毛など異物が目に入って、刺激し続けることなどから起こる角膜の炎症。涙や目ヤニが増えたり、目が充血したりします。ひどくなると角膜が浮腫んだように白くなったり、慢性化して色素沈着(黒く変色する)が起こったりします。
・結膜炎
結膜の炎症。結膜が充血して白目が赤くなり、目ヤニが増え、涙が出ます。角膜炎と同様に、異物が目に入って刺激し続けることなどが原因。
・角膜潰瘍
角膜に傷が付く症状のこと。悪化すると角膜に穴が開くことも。痛みがあり、目を閉じ気味になったり涙を流したりします。原因は異物混入や細菌感染、外傷など。
犬の涙が多いときに動物病院に連れていくタイミングと、病院での治療法は?
犬の涙量が多いのか普通なのか、飼い主自身が判断することに不安を感じることもあるでしょう。もし、犬の涙量の多さに不安を感じたときは、すぐに動物病院を訪ねるのがおすすめです。動物病院では次のような検査や処置を受けることができます。
生体防御反応か病気かを診断
犬の涙が多いのが病的なものなのか、生体防御反応なものなのか獣医師が判断します。
異物などの原因の除去
ゴミなどの異物が入っているときは、洗い流してもらう処置などをします。
病気の治療
病気が原因で涙が増えているときには、病気によっては治療することで改善が見込めます。
また、涙を増やす原因となる病気とは別に「涙が増え、いつも目頭が濡れている」といった症状そのものは「流涙症」と呼ばれます。流涙症の場合は涙やけや皮膚炎の原因になるので、早めの治療が大切です。
犬の涙が過剰にならないようにする予防法は?
犬の涙が過剰にあふれてしまうようになったら、涙量をちょうどよい量にするには、原因となる病気を根本的に解決しなければなりません。
ただし、予防法として、犬の目にゴミが入ったらすぐに気づいてあげるということはできそうです。ゴミは外で入ることが多いので、散歩から帰ったら、犬の目にゴミが入っていないかを必ずチェックするようにしましょう。毛が長い犬種であれば、目のまわりの毛が伸びて目を刺激しないようにトリミングをしてあげるのもよいでしょう。
また、涙の予防法ではありませんが、すでに流涙症になっている場合には、飼い主のケアが大切です。涙やけや目元の皮膚炎を予防するために、こまめに目元を拭いてあげるとよいでしょう。
第2稿:2021年2月17日更新
初稿:2020年12月23日公開
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