更新 ( 公開)
獣医師資格取得後、小動物臨床経験6年。主に犬猫の臨床に携わる。現在は子育てをしながら、愛猫と暮らしている。
犬の肥満は、多くの病気を引き起こすだけでなく、体にもさまざまな悪影響を及ぼします。愛犬を肥満にさせないためには、飼い主さんの行動が重要です。肥満の原因やリスク、チェック方法、予防方法や解消方法などを知り、愛犬の健康を守りましょう。
目次
- 実は恐ろしい!肥満による病気のリスク
- 飼い主さんの行動も重要!肥満の原因と予防方法とは
- あなたの愛犬は大丈夫?肥満のチェック方法
- もし愛犬が肥満だったら……肥満の解消方法と注意点
実は恐ろしい!肥満による病気のリスク
近年犬の肥満が増加している
「肥満」とは、体重が正常な状態よりも多く、体内に脂肪が過剰に蓄積された状態のこと。近年ペットの肥満が増加傾向にあるといわれ、都市部で飼育されている犬の肥満発症率はなんと20%~25%とも推定されています。
「ぽっちゃりとしていてかわいいし、元気だから大丈夫」と思い込み、愛犬の肥満を認識していない飼い主さんも多いようです。
肥満はさまざまな病気を招く
人の医学でも肥満はさまざまな病気を招くものとして認識されているように、犬でも肥満は健康を損ねる要因となります。体重や脂肪の増加によって、関節や循環器、呼吸器に負担がかかり、発症しやすくなる病気もあります。
発症すると命にかかわる病気も多いので、犬の肥満の原因を知り、日頃から予防を心がけましょう。
<肥満が引き金となりやすい病気>
- 心臓の病気
- 関節の病気
- 糖尿病
- 呼吸器の病気
- 熱中症
飼い主さんの行動も重要!肥満の原因と予防方法とは
食べすぎ・運動不足
以下のような行動に心当たりはありませんか?
- 愛犬にごはんやおやつをほしがるだけ与えてしまう
- 愛犬が嫌がるからと運動をさせていない
- 最近、愛犬の体重を量っていない
犬も人と同じように、摂取カロリーが消費カロリーを上回ってしまうと肥満になります。
愛犬を肥満にさせないためには、飼い主さんがこまめな体重測定と運動・食事の管理をしっかり行うことが大切です。
去勢や避妊手術後の犬は特に要注意
特に、去勢や避妊手術をした犬は、ホルモンバランスの変化によって基礎代謝が落ち、肥満になりやすいといわれています。最近では多くの犬が去勢や避妊手術を受けていますが、去勢や避妊手術をしたあとは、体重管理をしながら食事量のコントロールをしてあげましょう。
あなたの愛犬は大丈夫?肥満のチェック方法
ボディコンディションスコア(BCS)
犬や猫の肥満度を確認するためによく用いられている評価法が、「ボディコンディションスコア(BCS)」です。
愛犬の体を横から見たときのおなかのへこみ具合、上から見たときのくびれ具合、肋骨のあたりをさわったときの感触などから肥満度を5段階で評価し、BCS3が理想的、4がやや肥満、5が肥満というように区分されます。
自宅でも行うことができますが、飼い主さんが行うとつい判定が甘くなってしまいがち。できれば、動物病院で獣医師に確認してもらうのがおすすめです。
肥満になると見られやすい症状
愛犬の様子の変化からも、肥満の傾向に気づくことができます。
- 散歩に行くのを嫌がる
- 息づかいがゼエゼエと荒い
- 体がだるそう
- 横座りをする
体重の増加や見た目の変化ととともに、このような様子が見られたら、一度獣医師に相談してみましょう。
もし愛犬が肥満だったら……肥満の解消方法と注意点
[caption id="attachment_5768" align="alignnone" width="1440"] 犬にフードを与える 肥満の解消方法と注意点[/caption]
食事内容と運動の見直し
愛犬が肥満だとわかったら、まずは獣医師に相談し、愛犬に合ったフードの種類や量と与え方、運動のさせ方についてアドバイスを受けてください。
「単に食事量を減らせばダイエットできる」という安易な考え方はNG。健康のために必要なビタミンやミネラルなどが不足しないよう、摂取カロリーだけでなく栄養バランスも考える必要があります。もちろん、適度な運動も欠かせません。
また、家族の誰かがフードやおやつをあげすぎてしまうことのないよう、家族全員で愛犬のダイエットについて情報を共有し、協力することも大切です。
ダイエットに関する注意点
急激なダイエットは、犬の体への負担が大きく、命に危険が及ぶことも。1週間につき体重の1%程度までの減量が理想です。
ダイエットの近道は、適正な食事管理と適度な運動、定期的な体重チェックを根気強く続けること。焦らず、数カ月かけて目標体重に到達できるようにしましょう。
ただし、食べ過ぎてもいないのに体重が増加したり、おなかがふくらんだりするようなら、心臓や肝臓の病気、腫瘍、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)、副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)などの病気が隠れているおそれも。その場合は、はやめに獣医師に相談して検査等を受ける必要があります。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。