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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬の日々の様子を見て、触れていて気づく、ちょっとした変化やトラブル。その原因はさまざまに考えられますが、何か病気が原因の症状かもしれません。犬が頻繁にトイレを失敗(粗相、おもらし)してしまうときに考えられる原因や病気についてご説明します。
目次
- 犬がトイレを失敗するのは精神的な理由が原因
- 排泄そのものにトラブルがある犬は病気の可能性大
- 犬がトイレを失敗する時に考えられる主な原因
- 犬の体型と年齢別に考えられる主な原因
犬がトイレを失敗するのは精神的な理由が原因
なかなかトイレを覚えられず、粗相をしてしまう犬。子犬のころは失敗しながらトイレを学んでいくのが普通ですが、あまりにも粗相が多いと心配になりますよね。しつけがなっていないと自分を責めるオーナーの方もいますが、実は犬にトラブルや病気が隠れている可能性もあるのです。
まずは、犬が粗相をするタイミングを考えてみてください。最近引っ越しをした、急に家族が不在がちになった、オーナーに赤ちゃんが生まれたなどの場合には、環境が変わったことがストレスになり、粗相につながっているのかもしれません。時には、掃除されていないためにトイレで排泄できず、粗相をしてしまう子もいます。この場合は、犬のストレスを取り除いてあげることが最優先になるでしょう。
普段はきちんとトイレができるのに、オーナーが留守にしているときや他の部屋にいるときだけ粗相をする場合は、大好きなオーナーと離れたくないという気持ちから「分離不安症」になっているのかもしれません。オーナーが帰宅した瞬間に喜びすぎて粗相をする、いわゆる「うれション」は分離不安からの反動にあたります。他に心因性の原因としては、留守番中に地震や雷が起こった、オーナーが旅行などをしていた期間にひもじい思いをしたなどのストレスも考えられます。
排泄そのものにトラブルがある犬は病気の可能性大
こうした原因が思い当たらないのに粗相をする犬は、病気を抱えている可能性があります。粗相をするだけでなく、トイレに行くもののおしっこが出ない、またはおしっこが出るまで時間がかかる、トイレに行く回数が増えた、排泄をする際に痛そうにしている、尿に血液が混ざるといったサインが見られる場合は病気である可能性が高いでしょう。
粗相をしてしまう主な病気には、ホルモン反応性尿失禁、膀胱炎、尿路結石症、異所性尿管、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、神経障害などが考えられます。椎間板ヘルニアや神経障害などは直接的に尿道や尿管にダメージを与えるわけではありませんが、神経の一部が圧迫されることで副次的に尿失禁を引き起こしやすい病気です。
また、糖尿病の犬は高血糖な状態であるため、多飲多尿の症状が見られ、それが粗相に影響していることもあります。他にもステロイドや利尿剤を内服するような病気の場合には、薬の副作用で粗相しやすいといえるでしょう。
シニア犬の場合は認知症の可能性を疑ってください。認知症以外でも高齢になった犬は目や耳が悪くなったという理由でストレスを感じ、それが失禁につながっていることもあります。
犬がトイレを失敗する時に考えられる主な原因
犬がトイレを失敗する場合に考えられる主な病気や原因をご紹介します。あくまでも主要なものなので、他にも気になることがあればかかりつけの病院でご相談ください。
【主な精神的理由】
・環境が変わった
失禁など。
・分離不安症
オーナー不在時の失禁、うれションなど。
【考えられる主な病気】
・ホルモン反応性尿失禁
失禁など。去勢済みのドーベルマン、グレートデン、ジャイアントシュナウザーなど大型犬の雌に多く見られる。
・膀胱炎
失禁、トイレに行く回数の増加、トイレに行ってもおしっこがなかなか出ない、排尿時鳴く、尿に血が混ざる、触られるのを嫌がる、食欲不振など。
・尿路結石症
失禁、トイレに行く回数の増加、トイレに行ってもおしっこが出ない、排尿時鳴く、尿に血が混ざる、尿にキラキラした物質が混ざる、触られるのを嫌がる、食欲不振など。コーギー、ダルメシアン、ミニチュアシュナウザーに多い。
・異所性尿管
失禁、陰部の汚れ。ウエストハイランドホワイトテリア、フォックステリア、トイプードル、ブルドッグ、シベリアンハスキーの雌に多い。
・椎間板ヘルニア
失禁、足を引きずる、歩き方が変わるなど。ミニチュアダックスフンドやコーギー、フレンチブルドッグなど、胴長・短足の犬種に多い。
・脊髄腫瘍
失禁、足を引きずる、歩き方が変わるなど。
・認知症
失禁、昼夜を問わず鳴く、同じところをグルグルまわる、できていたことができなくなるなど。
犬の体型と年齢別に考えられる主な原因
犬がトイレを失敗する場合、体型や年齢別に考えられる主な原因をご紹介します。これ以外の病気にはかからないということではないので、少しでも気になることがあれば病院で相談してください。
●小型犬 ・ 幼犬
環境が変わった、分離不安症、膀胱炎、尿路結石症、異所性尿管、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍など。
●中型犬 ・ 幼犬
環境が変わった、分離不安症、膀胱炎、異所性尿管、脊髄腫瘍など。
●大型犬 ・ 幼犬
環境が変わった、分離不安症、ホルモン反応性尿失禁、膀胱炎、異所性尿管、脊髄腫瘍など。
●小型犬 ・ 成犬
環境が変わった、分離不安症、膀胱炎、尿路結石症、異所性尿管、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍など。
●中型犬 ・ 成犬
環境が変わった、分離不安症禁、膀胱炎、異所性尿管、脊髄腫瘍など。
●大型犬 ・ 成犬
環境が変わった、分離不安症、ホルモン反応性尿失禁、膀胱炎、異所性尿管、脊髄腫瘍など。
●小型犬 ・ シニア犬
環境が変わった、分離不安症、膀胱炎、異所性尿管、椎間板ヘルニア、脊髄腫瘍、認知症など。
●中型犬 ・ シニア犬
環境が変わった、分離不安症、膀胱炎、異所性尿管、脊髄腫瘍、認知症など。
●大型犬 ・ シニア犬
環境が変わった、分離不安症、ホルモン反応性尿失禁、膀胱炎、異所性尿管、脊髄腫瘍、認知症など。
第2稿:2021年3月11日更新
初稿:2020年5月11日公開
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。