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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬のお腹がキュルキュルと鳴っているのを聞いたことがありませんか。日々、愛犬と接するなかでの変化やトラブルはちょっとしたことでも気になりますよね。犬のお腹が鳴るのにはさまざまな理由がありますが、何らかの体の不調による症状かもしれません。この記事では、犬のお腹がキュルキュル鳴っているときに考えられる原因や病気、対処法について、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきました。
目次
- 犬のお腹がキュルキュル鳴るのはなぜ?
- 犬のお腹がキュルキュル鳴る時に考えられる病気以外の主な原因とは?
- 犬のお腹がキュルキュル鳴る時に考えられる病気は?
- 犬のお腹がキュルキュル鳴るのが止まらないときの対処法は?
- 犬のお腹がキュルキュル鳴っている時、動物病院に連れて行くタイミングは?
- 犬のお腹がキュルキュル鳴っているとき、市販の整腸剤を与えてもいい?
犬のお腹がキュルキュル鳴るのはなぜ?
犬のお腹がキュルキュル鳴る原因には、大きく分けて以下のような2つの場合があります。
生理現象の場合
人間と同じように、お腹が空いているときや食べ物を消化しているときに胃や腸が動いて音が鳴ることがあります。自然の現象なので心配する必要はありません。
お腹が痛い場合
お腹が鳴るときに、腹痛を伴っている場合があります。原因としては、胃の調子が悪い、異物を食べてしまった、ご飯が体に合っていない、お腹にガスがたまっているといったことが考えられます。膵炎や寄生虫による感染症など、何かしらの炎症や病気を発症している恐れもあるので、注意が必要です。
犬のお腹がキュルキュル鳴る時に考えられる病気以外の主な原因とは?
ここからはさらに詳しく、お腹がキュルキュル鳴る原因について取り上げていきます。まずは、病気以外で考えられる原因について見ていきましょう。
お腹が減っている
空腹時には、胃や腸といった消化器官が収縮運動をして、食べ物を受け入れるための準備を始めます。この時に、空気や消化しきれなかった食べ物が動くことで、音が鳴ると考えられます。
ご飯が体に合っていない
犬にも体に合うご飯、合わないご飯があります。体質に合っていないご飯を食べた場合、消化するときに胃に負担がかかったり、消化不良を起こしたりすることがあり、このときに音が鳴ります。また、体質に合わないご飯が体のなかで異常発酵してしまうことでお腹にガスがたまり、ガスを動かすために音が鳴る場合もあります。
胃や腸が消化活動をしている
胃で食べ物を消化するときに音が鳴ったり、消化が進んだ食べ物が腸へと移動したときに、腸が蠕動運動(筋肉の伸縮運動)をすることで音が鳴ると考えられます。
お腹にガスが溜まっている
ご飯を急いで食べることで食べ物と一緒に空気を飲み込んでしまったり、ご飯が体内で異常発酵することでガスがたまり、お腹が鳴ることがあります。便秘のときも、腸内にガスが溜まりやすくなります。ガスが溜まるとおならやゲップをする頻度が増えたりするので、そうした現象が見られるかどうかも判断材料となります。
ストレスを感じている
緊張や不安といったストレスによって自律神経が乱れると、胃腸に負担がかかり動きに影響が出ることで、お腹が鳴ることもあります。お散歩に連れて行ってあげたり、相手をしてあげたりして、日頃から犬にストレスが溜まらない生活環境を整えてあげましょう。
運動不足から食欲や胃腸機能が低下している
日頃から運動不足気味な犬は、食欲不振や胃腸の機能が低下してしまうことがあります。こうしたときに、腸が正常に働かずに、お腹の音が聞こえることがあります。
異物誤飲
誤飲をしてしまったときに、異物を排出しようとして腸の運動が起こることで、お腹が鳴ることがあります。誤飲の場合は、便秘や嘔吐の症状を伴うことがあるので、気にするようにしましょう。
犬のお腹がキュルキュル鳴る時に考えられる病気は?
続いて、お腹が鳴る原因として考えられる病気についても見ていきましょう。病気の場合は、治療を急いだ方が良いこともあります。お腹が鳴る以外にも、様々な症状を伴うことが多いので確認していきましょう。
腹痛
腹痛は、アレルギーを持つ食材や体質に合わない食べ物を食べたり、お腹を冷やしてしまったりしたときなどに起こります。お腹が鳴る以外にも、嘔吐や下痢などの症状も見られます。
膵炎
膵炎を発症した際に、お腹がキュルキュルと鳴ることがあります。膵炎は膵臓に炎症が起こり、消化酵素が膵臓自体を溶かしてしまう病気で、最悪の場合、死に至る危険性もあります。症状としては、激しい嘔吐や食欲不振、強い腹痛が代表的です。犬は腹痛を感じると、前足を伸ばして頭を下げ、腰を持ち上げる「祈りのポーズ」をすることがあり、この姿勢をとって辛そうにしているときは膵炎を疑いましょう。
過敏性胃腸炎
過敏性胃腸炎は人間の場合と同じように、原因が明確でないケースが少なくなく、ストレスとの関連が深いともいわれています。お腹の音のほかに、急な腹痛や下痢といった症状が見られ、軟便や下痢、便秘が慢性的に続くのが特徴です。
腸閉塞
腸閉塞は誤飲を含むさまざまな原因で腸が塞がってしまう、命に関わることもある危険な病気で、食欲不振や嘔吐、腹痛、便秘、下痢、腹部膨満(お腹が大きく膨らむ)などの症状が見られます。異物が詰まった場所が壊死してしまう恐れもあるので、これらの症状が現れたらすぐに病院に連れて行きましょう。
胃拡張・捻転症候群
胃のなかのガスの増加、多量の飲食・飲水、食後の過剰な運動などにより、胃が拡張し、ねじれ(捻転)を起こす病気です。血流の遮断によって急激にショック状態に陥り、数時間で死に至ることも。お腹が鳴る以外にも、空嘔吐(えずきが見られるものの嘔吐ができない)や腹部膨満といった症状や、ぐったりし、虚脱することもあります。
寄生虫
回虫や瓜実条虫といった寄生虫が体内に入り込むことで引き起こされる感染症によって、お腹が鳴る場合もあります。感染症の種類は様々ですが、寄生虫が消化器官に住み着くことで、元気があるのに食欲が低下したり、消化不良や下痢、腹部膨満、粘血便といった症状が現れることがあります。
犬のお腹がキュルキュル鳴るのが止まらないときの対処法は?
お腹の鳴りは事前に対処しておきたいものです。効果的な対処法をみていきましょう。
安静にして休ませる
お腹がキュルキュルなっている時に無理やり体を動かしたり、むやみにご飯を与えるのはやめておきましょう。まずは、安静に身体を休ませることに専念し、症状が治らない場合やひどくなる場合は動物病院を受診しましょう。
食事の内容や回数を見直す
空腹でお腹が鳴っているときに、一気にご飯を食べてしまうとさらに音がひどくなったり、体内で異常発酵を起こしたりするため、食事回数を増やして空腹の時間をできるだけ短くしてあげると良いでしょう。また、急いで食べたり、大量に食べたりすると、胃腸に負担がかかるので、早食い防止の容器を使ってみたり、一度にたくさんの量を与えないようにすることも大切です。
消化不良を起こしやすい犬の場合には、ドライフードをふやかしてから与えてあげるのもおすすめです。フードが体に合っていない可能性があれば、他のフードに切り替えてみるなど、食事の内容を見直してみてください。
水を飲ませて様子を見る
お水を飲ませて安静にさせるのも効果があるかもしれません。ただ、冷えた水はお腹を冷やしてしまいますので、常温のお水を与えるようにしましょう。また、下痢などの症状を起こしている場合は水分が不足してしまう可能性があるため、こまめにお水を与えるように意識しましょう。
24時間の絶食をさせる
お腹がキュルキュルと鳴るのに加えて、軽度の下痢や嘔吐の症状が見られたら、しばらくご飯を与えずに絶食をさせてみることもひとつの方法です。胃腸に何かしらの不調があるときに、食事によって胃腸が活動を始めてしまうと、さらに症状が悪化する恐れがあります。絶食して胃腸を休めつつ、体内の不要物を排泄させることによって回復することが期待できます。
お腹をマッサージする
腸の働きを活発にさせるためにマッサージも効果的です。下腹部を「の」の字を描くようにして優しくマッサージしてあげてください。ただ、誤ったマッサージは不調の原因にもなりますので、方法などは獣医師の先生に事前に相談すると良いかもしれません。また、胃や腸自体に問題を抱えている場合は逆効果になることも覚えておきましょう。
犬のお腹がキュルキュル鳴っている時、動物病院に連れて行くタイミングは?
病院に連れて行くべきか判断に迷うこともあるでしょう。すぐに連れて行くべき症状を見逃さないためにも以下の点をおさえておくようにしましょう。
様子を見ても大丈夫な場合
お腹が鳴る以外に特別な症状がなく、元気があり、食欲にも問題がなければ様子見で問題ありません。
すぐに動物病院に連れていくべき症状
元気がなく、食欲もない、下痢や嘔吐、背弯姿勢や祈りのポーズなどが見られて明らかに痛みや苦しそうな様子が見られる場合は、病院を受診してください。お腹が大きな音で鳴っていたり、継続的に音が鳴り続けていたりする場合にも注意が必要です。胃拡張・胃捻転の場合には一刻を争いますので、えずきが見られるにもかかわらず嘔吐物が出てこない場合にもすぐに病院に連れて行きましょう。
犬のお腹がキュルキュル鳴っているとき、市販の整腸剤を与えてもいい?
市販の整腸剤は与えても問題ない場合がほとんどですが、オリゴ糖などの糖質が入っていると、小腸内細菌異常増殖症(小腸内の細菌が異常に増え、様々な腹部症状や栄養失調などが引き起こされる病気)が悪化してしまう恐れもあります。投与して体調が崩れてしまうようであればすぐに中止してください。
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