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シリウス犬猫病院院長。皮膚や耳の症例に精通しており、難治性の疾患で遠方から来院する患者も多い。日本獣医皮膚科学会所属。
犬の体調管理のためには、うんちが健康チェックの一つのバロメーターになります。毎日のうんちの回数や量、色などを確認する習慣をつけましょう。では、その時にどのようなポイントをチェックすればいいのでしょうか。今回は獣医師の石村拓也先生に教えていただいた、犬のうんちからわかることや、注意すべきポイントなどを解説していきます。
目次
- 犬のうんちのチェックポイントは?
- 犬のうんちがいつもと違う時の対処法は?
- 犬のうんちの回数や硬さからわかることは?
- 犬のうんちの臭いからわかることは?
- 犬のうんちの色からわかることは?
- 犬のうんちに混じっているものからわかることは?
- 特に注意したい危険な犬のうんちとは?
- 犬のうんちを健康に保つために飼い主ができることは?
犬のうんちのチェックポイントは?
犬のうんちの状態は、食べているものや生活環境によって変わります。そのため、どのような状態であれば「問題ない」「正常なうんち」などは、一概には言えず、他の犬と比べて色が濃い、薄いなどで悩む必要はありません。
チェックする時は、いつものうんちとの違いに着目しましょう。たとえばいつもより柔らかい、匂いが違う、血がついている、未消化物がよく出ている、などの場合には、犬の体調に何らかの異変が起きている可能性があります。日頃からチェックしておく習慣をつけることで、些細な変化にも気づくことができます。
犬のうんちがいつもと違う時の対処法は?
どのような病気であっても、早期の発見や治療が重要です。犬のうんちから異変を感じたら、まずは病院を受診しましょう。診断結果によって、投薬による治療や食事内容の改善などの処置を行います。自己判断で対処するのは非常に危険なのでおすすめしません。
なお、動物病院を受診する時に新鮮なうんちを持参すると、糞便検査を行うことができます。その際、ペーパーに包んでしまうと水分が失われ、正確な診断ができなくなってしまうので、ビニール袋やサランラップなどを使用しましょう。
それでは、どのような点に注意して判断すればいいのか、具体的なポイントを紹介していきます。
犬のうんちの回数や硬さからわかることは?
普段と比べてうんちが柔らかく、回数が多い場合は、大腸や小腸など消化管に不調をきたし、正常な働きができなくなっていることが考えられます。その原因としては、食べてはいけない物を食べてしまっていたり、ウィルスや病原菌に感染していたりするケースがあります。
一方、うんちが硬く、回数が少ない場合は、便秘になってしまっている可能性があります。あるいは、十分な量の食事がとれているかどうかも検討が必要です
犬のうんちの臭いからわかることは?
そもそも、うんちは臭うものなので、「こんな臭いが良くない」と言うのは難しいですが、わかりやすいものを挙げるとすると、「酸臭」や「腐敗臭」です。
酸臭とは、つまり酸っぱい臭いのこと。脂肪が多い食事をとったり、脂肪の消化がうまくいかなかったりした場合に生じます。消化しきれずに残った脂肪が大腸の中異常発酵した結果です。腐敗臭は、かたまり肉など、消化しにくいタンパク質などが大腸に停滞することによって異常発酵し、腐ったような臭いが発生します。いずれにしろ、身体には良くない状態なので、注意が必要です。
犬のうんちの色からわかることは?
うんちの色は、食べた物などによって、日々ある程度変化します。一般的には、穀物や野菜など食物繊維が多いものを中心としたフードの場合は、黄褐色〜黄色、肉を中心としたフードの場合には茶褐色〜黒褐色になります。
いつもと違った色をしていた場合は、まずは直近で与えた食べ物を思い出してみてください。フードやおやつを変えていませんか? 変えた場合は、それがうんちの色の変化を引き起こした可能性があります。病気かどうかを判断するためには、色だけではなく硬さや量にも変化があるかどうか、元気がない・食欲がないといった症状があるかどうかなども注意深く観察する必要があります。
病気の可能性が高いケースとしては、黒色のドロドロとしたうんち。専門的には「タール状便」と呼ばれるものです。小腸などから出血していることが考えられ、処置が遅れると命を落とす危険性があるので、すぐに病院を受診しましょう。
犬のうんちに混じっているものからわかることは?
気をつけた方がいいものとしては、まずは赤い血がついているケース。大腸や肛門から出血していることが考えられます。あるいは、白っぽいひも状のものが入っていた場合や、米粒のようなものが混じっている場合は、寄生虫に感染している可能性があります。こうしたうんちが見られた時は、すぐに獣医師に相談しましょう。
特に注意したい危険な犬のうんちとは?
ペットショップやブリーダーさんから迎えた直後の犬や、保護団体から保護したばかりの犬が、柔らかいうんちをしたり、下痢をしたりした場合は注意しましょう。コクシジウムや回虫などの寄生虫に感染していることが疑われます。これらの寄生虫はうんちとともに虫卵(ちゅうらん)を大量に排出し、感染力も強いため、同居している犬など、他の犬にうつしてしまう危険があります。まずは病院でしっかり検査して感染しているかどうかを確認し、もし実際に感染していた場合は、駆虫薬で治療しましょう。
犬のうんちを健康に保つために飼い主ができることは?
バランスの良い食事を心がけることが、健康なうんちにつながります。最近では「腸内フローラ」という言葉も注目を浴びています。腸内には善玉菌や悪玉菌など、多種多様な細菌が集まっていて、この細菌の集まりを「腸内フローラ」と呼びます。腸内フローラを健全に保つことで、うんちの状態や全身の健康をコントロールできるのです。たとえば善玉菌は食物繊維をエネルギーとして増殖することがわかっています。そのため、食物繊維を含んだ食事をしっかりと与えることが、腸の健康には有効です。
なお一部の検査センターでは、犬の腸内フローラの状態を検査することもできるので、胃腸の不調が続くなど、気になる場合は検討してみましょう。
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