角度によって色が変わる「色の三原色ゼリー」を作って色の美しさを味わう
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目次/ INDEX
ものづくり生態図鑑#17 和菓子職人・三納寛之 【分類】 【生そく地】 【特ちょう】 |
──和菓子との出会いを教えてください。
※上生菓子…生菓子の中でも、練り切り、羊羹(ようかん)、こなし、求肥などの菓子のこと。その風流で優美な見た目により、主に宴席、おもてなしの場、新年、祝いごとの場などでも重宝される。
──次々と斬新な和菓子を生み出していますが、その秘訣を教えてください。
三納寛之
和菓子のアイデアは、あらゆる分野からインプットするようにしています。たとえば、見た目などは街の雑貨屋に売っているアクセサリーなどから発想を得ているときもありますよ。自分がなぜそのアクセサリーにピンときたのかを深掘りしていって、和菓子に反映していきます。Instagramや『家庭画報』などの雑誌もよく参考にしますね。あまり枠に囚われないように、いろんなものからインスピレーションを受けています。
──思い入れの強い作品を教えてください。
代表作の「宵花火」
三納寛之
「宵花火」ですかね。和菓子業界では、全国に和菓子協会という、和菓子について研究を深める団体があります。そこでは毎度、季節にあったテーマが設けられ、そのテーマに沿ったお菓子を出品するんですが、東海地方の会に出たときのテーマが「花火」でした。どうせ出品するなら、ほかのものに比べてもぶっちぎりに綺麗なものを作りたいという意気込みで、試行錯誤して作ったことを覚えています。形はもちろんですが、色の並びの順番や模様など、とにかく華やかに仕上げました。
「花束を君に」
三納寛之
作るのが大変だったのは、バレンタインデーや母の日のために制作した「花束を君に」ですね。花束をモチーフにしているので、1つの菓子に対して複数の花を作る繊細な作業に、とても時間がかかりました。ですが、手間がかかる作業は個人だからこそできることですし、時間がかかるということは、ほかの店舗にはなかなか真似できません。細部へのこだわりは、個人ならではの魅せ方のひとつだと思っています。
──作っていて楽しい和菓子を教えてください。
三納寛之
和菓子の種類には、加熱しながら練りあげる「練り物」、せいろで蒸して仕上げる「蒸し物」などがあるんですが、寒天に甘を加えて型に流し、加熱して固める「流しもの」を作っているときが一番楽しいですね。大きい型で作成するので、それを取り出したときは、とても達成感があります。
“流しもの”を使用した「宵花火と金魚」
三納寛之
もともと僕の実家は和菓子屋でした。高校を卒業したあとは、実家とは別の和菓子屋で6年間修行し、和菓子作りの基礎をそこで学びました。その後、実家に帰ってきたのですが、父は茶席で使われる上生菓子(※)を売ることに重きを置いていたんです。僕には一般の方からも親しみやすい和菓子を作りたいという思いがあったので、自分の目指しているものと父が目指しているものに違いを感じ、自分の道を目指すべく家を出ました。
その後、縁があり菓子工場で勤務することになったのですが、そこでは職人の世界とはまた違う、味や見た目の発想が自由な、伝統に縛られない和菓子との関わり方を学ぶことができました。そこを退職したあとは、自身で作成した和菓子をSNSで発信するようになり、どこかの企業には所属せず、僕自身の技術をさまざまなところに提供するフリーランスの和菓子職人になりました。