自炊研究家・山口祐加さんに聞く! ひとり暮らしの上手な自炊のコツ
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ものづくり生態図鑑#20豆本ドールハウス・北野有里子 【分類】 【生そく地】 【特ちょう】 |
──「豆本ドールハウス」という言葉を初めて聞いたのですが、どういったものなのでしょう? また、始めたきっかけは?
──豆本との出会いがターニングポイントだったのですね。どういった点に魅了されたのでしょう?
北野有里子
小さな世界の中にいろいろな表現ができることと、テーマは何でもいい“自由さ”が魅力ですね。材料も厚紙や布、皮などの身近な素材で作れますし、場所をとらないので保管にも便利。ちなみにドールハウスは1/12のサイズが世界基準なのですが、これならたくさん買っても邪魔になりませんよね(笑)。
──一つひとつが精巧に作られていますが、もともと美術やデザインのお仕事をされていたのですか?
北野有里子
いえいえ、まったくです。過去に印刷会社に勤めていて、Illustratorを触ったことがあるくらいで。豆本やポップアップブックに出会うまでは趣味がなくて、一生楽しめる趣味がほしかったんですよね。最初は会社に勤めながら趣味としてやっていましたが、多くの反響をいただき、今では独立してやっています。
現在では50種類以上の作品を手がけている
──豆本ドールハウスの基本的な作り方を教えてください。
北野有里子
まずは頭の中でアイデアを出した後、Illustratorで展開図を描きます。次にイラストを描ける人にラフを用意してもらい、それを印刷して組み立てて、問題なければ試作品が完成。その後、絵を完成させて印刷します。さらにレーザーカットをしてもらい、キット詰めして完成となります。
試作品を組み立てている様子
キット作りの様子
──どの工程が一番楽しいですか?
北野有里子
やっぱりアイデア出しですかね。頭の中でどういった作品にするかを考えているときが一番楽しい。とはいえ、それを展開図にしてみると案外おもしろくなかったりして、いろいろと大変ですけど(笑)。“作りたいもの”と“作れるもの”は違いますし、思った通りのものがまだ作れていない、ということだと思いますが。
──これまで作ったもので反響の大きかった作品や、お気に入りの作品はありますか?
北野有里子
SNSで大きな反響があったのは、箔押しの箱に入ったドールハウスですね。表紙の箔押しは自分でしていて、素材と加工にこだわっています。Instagramのフォロワーは95%くらいが海外の人なのですが、暖かいコメントやメッセージをいただきました。
北野有里子
あとはアルパカが住んでいるドールハウスもお気に入りです。おうちを覗くと「なに見てんだこら!」って感じでアルパカが見てきます(笑)。
──独創的な世界観が素敵ですよね。そのアイデアはどこからくるのでしょう?
北野有里子
コロナ禍以前は、よく街を歩いて見つけていました。アンティークショップやコラージュしているお店が好きで、表参道・青山あたりをうろうろと。海外にも旅行や出展でよく行っていたので、建造物や街並みに刺激をもらっていました。
──コロナ禍の話が出ましたが、北野さんの仕事にも影響はありましたか?
北野有里子
かなりありましたね。まず、気軽に人と会うことや出歩くことができなくなったので、アイデアが枯れていくのを感じました。また、出展を予定していたイベントもすべて中止になってしまい……。当時は売上の半分くらいがイベントでしたので、事業を畳んで会社員に戻ることも考えました。
一方、たまたま同じタイミングでSNSでの情報発信を強化していたら、話題になり注文を世界中からもらうこともあって。世界中がロックダウンしているなか、売上のほぼすべてが通販になり、結果的にうまくネットにシフトできたと思います。
ハロウィンをテーマにした豆本ドールハウス。暖炉が光る仕様になっている
──ホームセンターにはよく行きますか?
北野有里子
行きますね。よく見るのは文房具コーナーですが、どこに思わぬアイデアが転がっているかわからないので、ホームセンターはいろんな売り場をぐるぐるしたい人です。
──作品を作るうえで、愛用している道具はあるのでしょうか?
北野有里子
うーん、カッターやはさみなどの本当に身近な道具しか使わないので、正直あまりこだわりはありません。ただ、パーツを組み立てる両面テープは細切りタイプのものを使っています。おそらく模型作りに使うようなものだと思いますが、のりしろの幅に合わせた2mm、3mmなどのタイプがあって、これは愛用していますね。
──ものづくりをしていて、励みになるのはどんなときでしょう?
北野有里子
やっぱり、喜んでもらえるときですね。とくにお誕生日のプレゼントに選んでもらえるのは嬉しいです。クリスマスの時期には本型のパッケージを用意して、プレゼント仕様にしてから発送しています。豆本ドールハウスは絵本の世界なので誰にでもわかりやすく、ヨーロッパやアメリカなど、海外からの注文も多いです。翻訳するのは大変ですが、世界中から多くの暖かいメッセージをもらえるのは励みになりますね。
本型のパッケージに入った豆本
──最後に、北野さんにとってものづくりとはなんですか?
北野有里子
私にとっては「遊び」かなと思っています。ものづくりを遊びにできれば、人生も遊びになる。実際、今の私は会社も辞めて、豆本を作って暮らしているので。
豆本ドールハウスでいえば「驚き」も大事ですね。見た目に驚いてもらうのはもちろん、びっくり箱みたいに後から細部の工夫に気づくなど、何度開いても新しい驚きがあるような、そういう要素をいっぱい詰め込みたいと思っています。
小さなスタンプも人気シリーズ
──北野さん、ありがとうございました!
北野有里子
豆本ドールハウスは、手のひらサイズの「豆本(まめほん)」を開くと、ドールハウスの世界が360度展開する絵本のことです。もともとポップアップブック(飛び出す絵本)が大好きで、「これを作りたい!」と始めてみたのがきっかけですね。ただ、絵が描けるわけでもないし、大きいから家庭用コピー機で印刷もできなくて、なかなか作れないなと悩んでいました。
そんなときに、新聞で特集されていた豆本の存在を知ったのですが、ワークショップに通うほどすっかりハマってしまって。「この豆本の世界に、自分のやりたいことを詰め込んだらどうなるかな」といろいろ試行錯誤しているうちに、今の豆本ドールハウスの原型ができてきました。