春から初夏にかけて可憐な白い花を咲かせるカモミール。キク科のハーブで、カモミールティーとして親しまれています。

鑑賞用として育てても楽しめますが、自家製のカモミールティーを味わう目的で栽培するのもおすすめです。古くから薬用に用いられ、鎮静作用があるとされてきました。

この記事では、カモミールの栽培方法を詳しく解説します。さらに収穫の仕方や活用方法も紹介するので、これから栽培を始めたい方はぜひ参考にしてください。

カモミールはどんな植物？

カモミールはキク科シカギク属に属するハーブで、和名は「カミツレ」です。「カモマイル」と呼ばれることもあります。

原産地はヨーロッパやアジア西部で、古代バビロニアでは紀元前2000年以上前から薬草として利用されていた記録が粘土板に残されています。古代エジプトの女王クレオパトラが入浴剤として用いた逸話も有名です。

日本には江戸時代に伝来し、日本初のリンネ分類法による植物図鑑『草木図説』にも記されています。

春から初夏にかけて小さな白い花を咲かせ、中央には黄色い筒状花が集まり、白いデイジーに似た姿をしています。さらに、花にはりんごのような香りがあり、鑑賞用としてもハーブティー用としても人気があります。

カモミールの種類

カモミールには「ジャーマンカモミール」「ローマンカモミール」「ダイヤーズカモミール」の3種類があります。

ジャーマンカモミール

育てやすい代表的な品種で一年草です。花の中心部分が黄色く盛り上がっており、花だけにりんごの甘い香りがあります。主にハーブティーとして利用されます。

ローマンカモミール

多年草で、花の黄色い中心部分が平らになっているのが特徴です。草や茎、花すべてにフルーティーなりんごの香りがあり、カモミールティーにするとやや苦味があります。入浴剤や染料、庭のグラウンドカバーにも適しています。

ダイヤーズカモミール

多年草で、黄色や白の単色の花を咲かせます。黄色の染料を取ることができ、ドライフラワーとしても利用されますが、葉にやや刺激臭がある点が特徴です。

カモミール栽培のために準備するもの

カモミールを育てる前に、必要なものを揃えておきましょう。種から育てる場合と苗から育てる場合で用意するものが異なります。

種から育てる場合

カモミールの種
育苗ポットやセルトレイ
赤玉土（種まき用）
移植用のポット（直径10cmほど）

苗から育てる場合

カモミールの苗
プランターや鉢（または庭の植え付けスペース）
市販のハーブ用培養土や野菜用培養土
鉢底ネット・鉢底石（鉢植えの場合）

土と肥料の準備

カモミールは水もちがよく肥えた土を好みます。市販の野菜用培養土やハーブ用培養土を使うと手軽です。自分で配合する場合は赤玉土と腐葉土を7：3の割合で混ぜましょう。ただし腐葉土には微生物が含まれていることがあるため、種まき用の土は赤玉土だけを使うのがおすすめです。

畑や庭に地植えする場合は、植え付けの2週間前に苦土石灰をまき、さらに腐葉土をすきこんでおくと水はけがよくなります。

花ごころハーブ香草の土 5L

共通であると便利なもの

スコップやジョウロ
緩効性肥料
園芸用手袋

苗の選び方

苗はホームセンターや園芸店で手に入ります。購入時は、茎がしっかりしていて株元まで緑色が鮮やかなものを選びましょう。花が咲きすぎている苗は避け、下葉中心の苗を選ぶと、その後も長く花を楽しめます。

カモミールを育てるのに適した環境とタイミング

適した環境

カモミールは日当たりと風通しのよい環境を好みます。ただし暑さや乾燥に弱いため、真夏の直射日光や午後の日差し、西日が直接当たらないように注意しましょう。半日陰で遮光できる場所に植え付けるのがおすすめです。

栽培のタイミング

栽培のタイミングは年2回あり、春と秋が適期です。

春栽培：4月～5月
秋栽培：10月～11月

カモミールを含むハーブは、夏が長く秋が遅れる影響で、関東以南では秋栽培を3か月ほど楽しめます。カモミールは耐寒性があるため、9～10月に植えると冬を越えて大株に育ち、翌年の花つきもよくなります。また、こぼれ種で増えることも期待できます。

カモミールの育て方（種・苗から）

種から育てる場合

種まき栽培の醍醐味は、発芽を見守る楽しみと大量に収穫できることです。種まきは25度前後の暖かい午前中を選ぶとよいでしょう。

育苗ポットにハーブ用の土を入れて水をしっかり与え、指で軽くくぼみをつけます。カモミールの種子は非常に細かく軽いため、厚紙を山折りにしてのせ、パラパラとくぼみにまくと均一に散らせます。まき終えたら薄く土をかぶせて手で押さえます。

発芽するまでは日影で管理し、本葉が2〜3枚になったら生育の悪い芽を間引きながら育てます。高さが6〜7cmに達したら、直径10cm前後のポットに移して成長を見守りましょう。

苗から育てる場合

苗栽培は、すでに発芽して10〜15cmほどに成長した状態から始められるため、時短栽培になり初心者にもおすすめです。

購入した苗はできるだけ早く、1週間以内に植え付けましょう。庭やプランターに植える場合は株間を25cmほどあけ、鉢植えでは鉢底ネットと鉢底石を敷いてから土を半分ほど入れます。苗を置いたら隙間に土を足し、軽く押さえて安定させます。

地植えの場合は、株間を25cm開けて根鉢と同じ大きさの穴を掘り、苗を植え付けていきます。大株にしたい場合は、9～10月に植え付けるのがおすすめです。冬の寒さに耐えて大株に育ちます。

栽培中の管理方法

水やり

カモミールは乾燥を嫌うため、水切れしないように注意が必要です。鉢植えの場合は特に土が乾きやすいので、1日に1回たっぷりと与えましょう。庭植えでは天候を見ながら土の表面が乾いたら水をあげるとよいでしょう。

肥料

植え付け時に緩効性肥料を元肥として与えるのがおすすめです。基本的に追肥はあまり必要ありませんが、新芽の生育が悪いときは少量追加すると成長を促せます。市販の腐葉土には元肥が含まれている場合もあるため、購入時に確認しておきましょう。

切り戻し

カモミールは湿気に弱いため、必要に応じて切り戻しを行いましょう。葉が重なっている部分は茎や葉を切り取って風通しをよくすることが大切です。切り戻しによって蒸れを防ぎ、根腐れや病気・害虫の予防にもつながります。

開花時期は春は４～6月頃、秋は9〜11月で、カモミールティーを楽しみたい場合は、この時期に順次収穫するとよいでしょう。

カモミールの栽培で気をつける病気・害虫

病気

カモミールの栽培で注意したい病気は、高温期に発生しやすいうどんこ病です。これはカビの一種が原因で、葉の表面に白い粉をまぶしたような症状が現れます。放置すると病気が広がるため、見つけたらすぐに該当部分を切り取って処分してください。発生を防ぐには、日当たりと風通しのよい環境を保つことが重要です。

害虫

カモミールにはアブラムシやハダニがつきやすい傾向があります。特にアブラムシは発生頻度が高いため、見つけ次第捕獲して取り除きましょう。予防には、粘着シートを設置しておくと効果的です。

カモミールの収穫時期とポイント

カモミールの収穫時期は、花が咲いた直後が最も適しています。開花から2～3日経ち、中央の黄色い部分が盛り上がってきた花を一つずつ摘み取りましょう。開花から数日待つことで、薬効や香りが最大限になるタイミングを迎えると言われています。一度にすべての花を収穫できるわけではないため、開花の進みに合わせて順次摘み取っていきます。

収穫した花は軽く水洗いし、フレッシュのまま飲むのもよいですし、風通しのよい日陰で陰干しにして約1週間後、十分に乾燥します。その後は乾燥剤とともに密閉容器に入れて保存してください。約1年の長期保存が可能です。

料理や雑貨に！カモミールの活用方法

ここでは、ジャーマンカモミールの活用方法を紹介します。ハーブティーや雑貨、スイーツなど、暮らしの中で幅広く楽しめます。

カモミールティーとして

フレッシュカモミールティーは、摘んだばかりの花を10〜15個ほどポットに入れ、約300ccの熱湯を注いで5分ほど蒸らします。乾燥させたドライカモミールなら、ティースプーン2杯に300ccのお湯を注ぎ、同じく5分ほど蒸らしてください。アイスティーにするときは濃いめに淹れるのがおすすめです。ただし、長時間蒸らすと苦味が出るため最長7分までにしましょう。