最後に漬物を美味しいと感じたのはいつですか? 漬物文化と魅力を伝え続ける。漬物専門店店主・柳沢博幸
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目次/ INDEX
ものづくり生態図鑑 #07 鉛筆彫刻人・シロイ
【分類】
ものづくり科 アート属 えんぴつ種
【生そく地】
ホームセンター 文房具コーナー
【特ちょう】
えんぴつの芯を彫っていろいろな文字やモノをつくるのがとくい。
細いえんぴつの芯を根気強く彫る集中力と、芯と一緒にポキッと折れない心がひつよう。
──シロイさんが鉛筆彫刻を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
──「挑戦してみたい」と思ったということは、シロイさんはもともと手先が器用だったのでしょうか。
シロイ
いえ、自分では手先が器用だという認識はありませんでした。学校でも美術の授業が一番苦手でしたから。でも、自分の手で何かを作り出している人や、1つのことを極めている人に憧れを抱いていましたね。
──職人さんのような。
シロイ
まさに父親が金属加工系の職人をしていました。一度だけ仕事場で作業をしている様子を見せてもらったことがあって、すごく格好良かったのを覚えています。もしかしたら、そのときの記憶が今に繋がっているのかもしれません。
──鉛筆の細い芯に、繊細な彫刻が施された鉛筆彫刻。完成に至るまで、どのような工程を経ているのでしょうか。
シロイ
まず、鉛筆の木の部分を削り、芯を剥き出しにします。そのあとの工程は、彫刻するモチーフによって変わってきますね。文字を彫るのであれば、芯を平らにしてから、細いペンで文字の枠を下書きします。そこから輪郭を彫り、不要な部分をカットしていく。文字以外の作品なら、モチーフをかたどってからディテールを彫っていく、という順番で制作しています。
──完成するまで、どれくらいの時間がかかるのですか?
シロイ
文字であれば1文字30分くらいでしょうか。より繊細な作業が必要な作品は1ヶ月ほどかかることもありますね。
シロイ
この「鎖」は1ヶ月ほどかけて完成させました。鎖部分は冒頭でご紹介した山崎利幸さんの彫り方を参考にし、1本の鉛筆の中間を鎖のように彫り、まるで2つの鉛筆が1本の鎖で繋がっているように見えるつくりにしています。本来なら曲がるはずのない鉛筆がぐにゃりと曲がっている、鉛筆の常識を覆した作品だと思っています。
──他のシロイさんの代表作も教えていただけますか?
シロイ
この「カトラリー」でしょうか。これは地元の新潟にある、金物や洋食器の生産で有名な「燕三条」地域をイメージして作った作品です。もともと、鉛筆彫刻を通して地元を応援したいという気持ちがあったので。実はこの作品は、それまでとは違った手法の磨く工程を加えているんです。そのおかげで、より鉛筆の芯がカトラリーの質感に近付きましたね。
シロイ
この「日本刀」も代表作の1つです。制作途中で何度も芯が折れてしまって苦労したんですが、だんだん「この作品は日本人である自分がなんとしてでも完成させなくてはいけない」という使命感みたいなものが込み上げてきて。時間をかけてなんとか彫り上げた、思い出深い作品です。
──芯が途中で折れてしまうことはよくあることなのでしょうか。
シロイ
よくありますね。鉛筆彫刻は、最後の仕上げ部分が一番脆いんです。だから10時間彫り続けていた作品が最後の最後で折れてしまう、なんてこともあります。鉛筆の芯と一緒に心もポキッと折れてしまいそうになりますね(笑)。
制作途中で折れてしまったスプーンの作品
──10時間……。鉛筆彫刻自体を挫折しそうになることはないのですか?
シロイ
なりかけます。そういうときは、折れた原因と改善点を紙に書き出す作業をするようにしています。その時点では書き出した内容が正しいかどうかは別として、折れた事実を客観的に受け入れられつつ、次にすべきことが見えてくるんですよね。折れた鉛筆は変えられないし、だったらこの失敗から次に何が活かせるのかを考えるしかないですからね。
──そこにはどのような改善点が書かれているのでしょう。
シロイ
削るときに芯を見る角度を変える、だったり。鉛筆彫刻は、角度を変えるだけで見え方がまったく変わってくるんですよ。彫るべきだと思っていた場所が、手を加えない方がいいとわかることもある。あとは、工程を見直してみたり、道具を変えてみたり、でしょうか。
シロイ
6年ほど前、テレビで紹介されていた鉛筆彫刻家の山崎利幸さんの作品を見て、自分も挑戦してみたいと思って始めたのがきっかけです。そのとき、鉛筆の芯に文字を彫刻した作品が紹介されていて。「本来は鉛筆って文字を書く道具なのに、その鉛筆自体を文字にしてしまうんだ」と、山崎さんの発想に衝撃を受けましたね。