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「棚が作れれば、家も作れる」DIY雑誌編集長が伝えたいものづくりの大切さ

クリエイター

設楽敦

設楽敦

DIY雑誌「ドゥーパ!」3代目編集長。大学卒業後、バックパッカーとして2年ほど海外放浪した後に「ドゥーパ!」編集部に入社。超実践主義と掲げる編集方針で、自らも小屋作りやバンカスタムなど様々なDIYに挑戦している。

創刊から23年DIY雑誌「ドゥーパ!」

多くのDIY愛好家たちに親しまれ続け、創刊から23年を迎えた雑誌『ドゥーパ!』。

DIYで作るものは、棚やテーブルなどの生活雑貨から、ロケットストーブ、ガレージ、車中泊、と時代によって変化を遂げてきた。ドゥーパ!は、まだDIYが日曜大工と呼ばれていた黎明期から最前線で取材し続け、今なお最新DIY事情に切り込んだ企画を掲載している。

DIYにハマる人が増える一方で、「ものを買うのが当たり前」とものづくりにまったく興味を抱かない人たちもいる。編集長の設楽敦さんは、それを「クリエイティブの面白さを、時代に取り上げられてしまった」と表現している。

「棚が作れれば、家も作れる」と豪語する設楽さんに、印象に残ったDIY作例をはじめ、DIYの本質とはなにか、DIYのポテンシャルとは、そして震災で気づいたDIYの必要性、についてお話をうかがった。

設楽敦さんのアイコン

設楽敦(しだらあつし)
DIY雑誌「ドゥーパ!」3代目編集長。大学卒業後、バックパッカーとして2年ほど海外放浪した後に「ドゥーパ!」編集部に入社。超実践主義と掲げる編集方針で、自らも小屋作りやバンカスタムなど様々なDIYに挑戦している。撮影/田里弐裸衣

DIY作品の応募殺到でサーバーがダウン

DIYの歴史・変遷を色濃く感じる企画がある。それが「ドゥーパ!DIY大賞」だ。23年も続く名物企画で、グランプリを目指し読者がDIY作品を応募するというもの。毎回、応募締め切り日にはサーバーがダウンするほどの人気ぶりだ。

初期はテーブルやベンチ、そしてウッドデッキやフェンスなど家の周りで使う作品の応募が多かった。しかし最近は、古民家をカフェにリノベーションしたり、バンを車中泊仕様にカスタムするなど応募作品も多彩に。

「山を開拓して、そこにインフラも整えた小屋を立てた作品とか…。年々応募作品のクオリティが上がってきて、編集部でも驚いています(笑)」

はじめはシンプルな家具やエクステリアを作っていた読者も、いつしか小屋を作るまでに技術を磨いた。その変遷を見ると「DIYは時代とリンクしている」と再認識させられる。最近ドゥーパ!の組まれた特集は「サウナ小屋」「ガレージ」「バンライフ」。この企画のラインナップを見ても、DIYで作れるものの幅広さを実感できる。

ドゥーパ!編集長の印象に残ったDIY作例

「いつかドゥーパ!に取材されたい」

読者たちの多くは、そんな思いで「ドゥーパ!DIY大賞」に応募してくる。ドゥーパ!で13年もの編集キャリアを持つ設楽さんは、そうした熱の入ったたくさんのDIY作品に触れてきた。その中から、特に印象的だったという3つのDIY作品を紹介してもらった。

バンドスタジオ付きガレージ

一歩足を踏み入れるとガレージリビングがある

2階はバンドスタジオ

「一言で言えば、落ち着ける男の秘密基地ですね。一歩足を踏み入れるとガレージリビング、奥に進むとバイクガレージ兼工房。さらに階段をのぼって2階に行くとバンドスタジオになっています。

このガレージのオーナーは前述のDIY大賞に挑戦してくれた方なんですけど、応募作品はガレージじゃなくて『薪ストーブ』だったんです。その資料にはジープのグランドワゴニアのパーツを一度バラし、それを材料に薪ストーブを作った、とありまして。そのアイデアが面白いから取材しようとお宅をうかがったら、こんなガレージが出てきて…。度肝を抜かれましたね」

応募作品は『薪ストーブ』だった

このガレージに訪れた取材時、さらに驚かされたことがあった。

「写真に写っているほぼすべてのDIY作品は、なにかしらの廃材で作られてるんです。廃材の再利用は、DIYの醍醐味の一つだと思うし、ラフで男らしい空間に統一感を演出している。この雰囲気は取ってつけたものでは出せません」

カタマランカヌー(双胴船)

自作のカヌー作品で海を渡る

カヌーは大阪の工房で製作

「そもそもカヌーを自作したこともすごいんですけど、この方は大阪から香川までこのカヌーで渡ってるんです。大阪の工房で作って、無人島や浜を繋ぎながら10日かけて自宅がある香川にたどり着く。船の引っ越しをしたんですね。自作したカヌーでそこまでやれるっていう、DIYの可能性を知った取材でした」

また同時に、DIYの原点とも言うべき、もの(道具)をつくる意味や理由についても考えさせられたという。

「人類がなぜ道具を作ったか…、それはやっぱり厳しい自然の中で暮らすため、自然と共生するためだと思うんです。このカヌーで言えば、海や川を渡り、食料を獲ったり、生きていくためで。そう考えると、もの作り、つまりDIYとは自然を理解するためのひとつの手段なんだなと思います」

アースシップ

アースシップ(自給する家)

エコハウスの究極系ともいえる

「これはDIYというよりセルフビルドの枠だと思いますが、あえて選びました。アースシップというのは簡単に言うと自給する家です。太陽熱から電力を自給、雨水を利用して飲み水を自給、室内に菜園を作り食料を自給できるようになっています。しかも、この建物は廃材やゴミを使って作られていて、エコハウスの究極系であり、DIYの究極系かもしれないですね」

棚が作れれば、家も作れる

141号では、設楽編集長がバンをカスタムする様子を特集

141号では、設楽編集長がバンをカスタムする様子を特集した。

ドゥーパ!では、自分たち編集部員が作ってみて、本当にできるかを実践している。それを「超実践主義」という言葉で表現する設楽さん。そのルーツは、過去に取材したときに出てきた言葉にある。

「棚が作れれば、家も作れる」

極端な例のように思えるが、編集部員が実際に作業してみると、小屋でもピザ窯でも作れてしまう。

「具体的なノウハウというよりチャレンジ精神に通ずる言葉です。自分で棚を作ろうって思えたのなら、小屋だって作れるよって。DIYに警戒心を抱かず、なんでも自分でやってみよう!ということです」

世の中には、『作る』という概念がない人が一定数いて、身の回りのものはなんでも買うものと思っている。買えば手に入る便利な時代になったが、その便利さゆえに「クリエイティブの面白さを、時代に取り上げられてしまった」と設楽さんは語る。

「デジタル化が進む時代に、手仕事というアナログなクリエイティビティにこだわる…時代に抗うという意味では、『ドゥーパ!』はDIYというオブラートに包んだカウンターカルチャー誌とも言えるかもしれません。棚でもベンチでもいいんです。『作る』最初の一歩を踏み出してほしいです」

DIYに触れてほしい一心で、様々な企画で魅力や楽しさを、読者に届けているドゥーパ!。しかし、好きなコトやモノが多様化する今、誰もに響く企画作りは難しいと実感している。

「90年代の音楽シーンに存在したミリオンヒットのような、みんなが聴いて当たり前というわかりやすいコンテンツは無くなりました。だからこそ、読者が少しでも興味を持って作ってみようと思う企画を立案して、そして『作る』土壌を作っていきたいと思っています」

震災後に増えたDIY需要

ドゥーパ!編集部からはテーマ別のムックも発売中

ドゥーパ!編集部からはテーマ別のムックも発売中。左から『DIYでキャンピングギアを作る本 VOL..2』 『DIYで作る猫との暮らし』『手作りキャンピングカー&車中泊DIY』

最近の世の中においてDIY需要が確実に増えていると設楽さんは感じている。例えば家を買う時、あえて中古物件を買って自分好みにリノベーションすることも定着してきている。その際、リノベーションは工務店にオーダーすることが一般的だが、壁の塗装を自分でやったり、棚だけは作ってみる人も多くなってきているからだ。

「壁を塗装したり、棚を作れる人たちは、きっと目覚めのタネを持っている人たちだと思います。タネが芽生えてDIYをする人が増えて、生活が豊かになる人が増えればいいなと思います。その結果、世の中が良くなっていけば最高ですね」

「世の中が良くなっていけば最高」この言葉の裏には、東日本大震災によって目にした体験が深く関わっている。

東日本大震災によって、社会的なインフラが意外にも脆いんだってことに気付かされました。電力の供給ストップや飲み水の確保、交通網の麻痺…。挙げればキリはないですが、当たり前に頼っていたものに頼れなくなるときがある。そうしたときに自給自足したり、火を起こすことができたり、道具を作れたり、まさにDIYの原点とも言うべき行動が物を言うと思います」

実際に全国の取材先でも「あの震災をきっかけにDIYをはじめた」という声をよく聞くのだそうだ。何が起こるかわからない世の中だからこそ、自分で作ることの大切さを知ってほしい。まずは棚や簡単なものからでいいから、DIYに挑戦してもらいたい。

最後にドゥーパ!が今後取り組んでいくことを聞いてみた。すると雑誌の枠を超えた新たな挑戦の準備中だという。

「これまでドゥーパ!が紹介してきたテクニックやアイデアは、ずっと受け継いできた木工の技みたいなものでまったく古びないんです。今の時代に読んでも参考になるし面白い。きちんと再編集して世の中に届けられれば、DIYの魅力や奥深さをもっと広められるはずです。そのために、いつでもアクセスができるwebメディアを立ち上げたいと思っています。

もう1つは動画です。取材時に驚いたことがあって、『若い人は何かを調べるときにYouTubeで検索する』と聞いたんです。Google検索すらしないんだと。この話を聞いたとき、動画というチャネルの重要性を思い知らされました。今までは文章と写真でやってきたところを、さらに動画でDIYの面白さを立体的に伝えていきたいなと思っています。オンラインでのDIYセミナーも予定しているので、期待してください」

7月8日に発売となるドゥーパ!8月号(143号)

7月8日に発売となるドゥーパ!8月号(143号)。特集は「超実践的!小屋作りガイド」

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