最後に漬物を美味しいと感じたのはいつですか? 漬物文化と魅力を伝え続ける。漬物専門店店主・柳沢博幸
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目次/ INDEX
ものづくり生態図鑑 #09 安居智博
【分類】
ものづくり科 アート属 ロボット種
【生そく地】
ホームセンター 針金コーナー
【特ちょう】
紙を使った「カミロボ」を30年以上つくり続けている。
とくいの「ヤスイ締め」でどんなものでもロボットファイターにしてしまう。
──小学生の頃から30年以上「カミロボ」を作り続けていらっしゃるんですね。
針金の一部をペンチで巻いておくことでカミロボの関節を自由に動くようにしている。
「ヤスイ締め」と呼ばれる安居さん独自の手法。
──ものづくりはいつ頃から?
安居智博
物心ついた頃にはなにかを作っていた気がします。保育園の頃には黒板に絵を描いたり、粘土で何か作っていたりした記憶がありますね。当時は描くことや作ることに対して境界線がなく、作りたいものを好きなように作っていました。
──今まで作ってきた中で、特に思い入れのある作品を教えてください。
安居智博
カミロボ第1号のこの作品ですかね。小学3年生の頃に作ったこの作品で初めて針金を使ってカミロボの肩が動くようにしたんです。
「ヤスイ締め」誕生となったカミロボ第1号。
現在のカミロボのように全ての関節が動くようになったのは小学6年生のとき。
安居智博
この技術がその後「ヤスイ締め」と呼ばれるようになるのですが、当時はこれが自分にとってそんなに大事な発見だとは思っていませんでした。まさか30年経った今でも続けることになるとは思わなかったです(笑)。
──カミロボは長らく安居さんの「一人遊び」として制作されていたとのことですが、発表するまでの経緯を教えてください。
安居智博
最初にカミロボを発表したときはかなり心情に変化がありました。自分の中ではカミロボは恥ずかしいもの・理解されないものだとずっと思っていたので、この中に自分が大事にしているものが詰まっているという自覚はあるものの、そのまま発表する勇気は持ち合わせていませんでした。そんな思いを抱えていたときに、アートディレクターの青木さん(※)から「これは発表したほうがいい」と背中を押していただいたんです。
※青木克憲(あおき かつのり):クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。「ウルトラマン」のブランディング・クリエイティブディレクションや「読売ジャイアンツ」などのエンブレムマーク・ロゴマークなど実績多数。安居氏と出会いカミロボのキャラクタープロデュースを手掛けることになる。
安居智博
それでも最初は「こんな恥ずかしいもの発表できない」という気持ちが強くありました。もっとかっこよくておしゃれなものを発表したかった(笑)。しかし、実際にカミロボを発表してみるとたくさんの反応をいただいて。作品を発表することは自分の恥ずかしい内面をさらけ出すことなんだなと、そこでやっと納得しました(笑)。
安居智博
さらに反響が大きかったは、このアヒルの作品です。この作品では個人的な趣味の表現の世界と、「皆さんに楽しんでもらえるといいな」というサービス精神をうまく混ぜ合わせて作れたと思います。
──個人的に楽しむことと、わかりやすく楽しませることのバランスを普段から意識されているのですか?
安居智博
そういったものづくりのバランスが去年ようやくわかったような気がします(笑)。
表現者にとって「わかりやすく楽しんでもらえるもの」を作ることは、世の中に迎合しているような気がして、悪いもののように考えてしまいそうですが、僕の中でその考え方は少しずつ変わってきました。コロナ禍の影響もあり世の中が閉塞感を感じている中で、少しでも皆さんに楽しんでもらえるなら形にしていきたいという気持ちが芽生え、こういった表現ができるようになりました。
──自分のつくりたいものと求められているもののギャップに悩んだりはしませんでしたか?
安居智博
求められていることと自分のやりたいことは完全には一致しないという感覚は子供の頃からずっとありましたね。小学生の頃、友達にカミロボを見せてもあまり反応はよくありませんでしたが、その子の好きな漫画のキャラクターを描いてあげるとすごく喜んでくれました。
安居智博
自分の中にある2つの方向性を象徴する存在として2体のカミロボがいます。「バードマン」と「マドロネックサン」です。
バードマン(左)とマドロネックサン(右)
安居智博
何気なく作ったバードマンが発表後のグッズ展開などで一番人気になったことで、それ以来僕の中での「外向け(発表向け)」の広報のスター選手になっていきました。対となる黄色のマドロネックサンは僕個人として最も思い入れの強い選手だったので、内面世界を表す孤高のリーダーになっていきました。この2人の立ち位置をはっきり自覚できたことで、「一人遊びを発表する」という矛盾を自分の中で消化できるようになりました。
安居智博
はい。カミロボは、僕が30年以上紙で作り続けている、身長15cm~20cm程度の紙工作ロボットです。肩や肘、手首などに針金で関節をつくることで、さまざまな動きを自在に操ることができます。