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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
アメリカで生まれ、1970年代初頭にスイスに輸入されたというホワイトシェパード。真っ白な毛で覆われ、しっかりとした骨格を持つエレガントな見た目が魅力的な犬種です。そんなホワイトシェパードは、どんな性格をしているのでしょうか?この記事では、ホワイトシェパードの性格の特徴や飼い方のコツ、気をつけるべき病気などを、かどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- ホワイトシェパードの歴史やルーツは?
- ホワイトシェパードの平均的な体高・体重は?
- ホワイトシェパードの平均寿命は?
- ホワイトシェパードの被毛のタイプや毛色の種類は?
- ホワイトシェパードの外見や吠え声の特徴は?
- ホワイトシェパードはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
- ホワイトシェパードを飼うのに向いている人は?
- ホワイトシェパードを飼う上で気をつけるべきことは?
- ホワイトシェパードのしつけを始める時期は?
- ホワイトシェパードの食事の注意点は?
- ホワイトシェパードがかかりやすい病気は?
- ホワイトシェパードを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- ホワイトシェパードにおすすめの遊びは?
- ホワイトシェパードの日常のお手入れで気をつけることは?
ホワイトシェパードの歴史やルーツは?
ホワイトシェパードの正式名称は「ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ」といいます。アメリカ生まれの白い被毛を持つシェパード・ドッグが、1970年代初頭、スイスに輸出されたのをきっかけに広がったそうです。また、穏やかな性格や被毛の色などが番犬や使役犬には適さないという理由で排除される不遇の時代が続いたあと、保護活動によって絶滅の危機を免れたという説もあります。
ホワイトシェパードの平均的な体高・体重は?
大型犬に分類されるホワイトシェパードの平均的な体高と体重は以下の通りです。
平均的な体高
オス:約60~66cm
メス:約55~61cm
平均的な体重
オス:約30~40kg
メス:約25~35kg
ホワイトシェパードの平均寿命は?
ホワイトシェパードの平均寿命は10〜12歳程度です。他の大型犬と比べても、平均的な長さの寿命と言えます。
ホワイトシェパードの被毛のタイプや毛色の種類は?
真っ白でふわふわな被毛が美しいホワイトシェパード。ホワイトシェパードの持つ毛色の種類や被毛の特徴について詳しく見ていきましょう。
毛色の種類
ホワイトシェパードの名前の通り、全身を覆う純白の美しい被毛が特徴的です。
被毛の特徴
ホワイトシェパードの被毛は、オーバーコートと呼ばれる硬い被毛と、アンダーコートと呼ばれるやわらかい被毛の二層構造です。もともと抜け毛が多い犬種とされていますが、春〜夏、秋〜冬にかけて起こる換毛期には特に抜け毛が増える傾向があります。
ホワイトシェパードの外見や吠え声の特徴は?
真っ白な被毛が目を引くホワイトシェパードの外見や吠え声には以下のような特徴があります。
外見
筋肉質
意外にも、がっしりと引き締まった筋肉質な体つきが特徴的です。一般的に、メスよりもオスの方が筋肉質で体格も大きい傾向があります。
大きめの立ち耳
ジャーマンシェパードと同じく、大きな立ち耳も特徴的です。
ほどよくしっかりとした骨格
しっかりとした骨格で、力強さだけでなくエレガントさも感じさせる調和のとれた外見です。
太く垂れた尻尾
太くて大きな尻尾を持っていて、尻尾は普段垂れていることが多いです。
吠え声
体格がしっかりしているため、太く大きな吠え声をしています。
ホワイトシェパードはどんな性格?オスとメスで性格の違いはあるの?
エレガントな見た目が魅力的なホワイトシェパード。性格の特徴としては以下の4つが挙げられます。
友好的
ホワイトシェパードはジャーマンシェパードよりも友好的で、穏やかな性格と言われています。信頼関係をしっかりと築けると、飼い主により友好的な一面を見せてくれる機会も増えるでしょう。
活発
体が大きく体力もあるため、活発に遊ぶことが好きな犬が多いのも特徴です。
従順
信頼関係を築けると、飼い主のしつけをしっかりと守り、相手に合わせて従順に行動します。
注意深い一面も
軍用犬や番犬として活躍していた歴史もあり、その注意深さが強く現れる犬もいます。
オスとメスの性格の違いは?
ホワイトシェパードのオスとメスで性格に違いがあるとは一概には言い切れません。穏やかな子、怖がりな子、友好的な子、などの性格は個体差の範疇と言えます。
ただし、何らかのきっかけで攻撃的なスイッチが入ってしまった場合や、注意深い性格が攻撃的な行動につながってしまった場合は注意が必要でしょう。その場合、メスよりも、体格の大きなオスの方がより強い攻撃性を示しやすいです。さらに、去勢をしていないオスの場合、特有の縄張り意識や、発情期のメスや周りにいるオスに対しての反応が強く現れる可能性があります。トラブルにならないよう、特にオスのしつけは普段からしっかり行いましょう。
ホワイトシェパードを飼うのに向いている人は?
友好的で従順な性格のホワイトシェパードは、どんな人に飼育が向いているのか、詳しく見ていきましょう。
室内で広い飼育スペースを確保できる人
ホワイトシェパードは活発で体も大きいため、狭い場所ではストレスをためてしまう可能性が少なくありません。最初のうちは十分な広さがあるように感じていても、成長が早いのですぐに狭くなってしまうことも想定されます。広い飼育スペースを確保してあげられる家庭が飼育には適しているでしょう。
散歩の時間を確保できる人
体力があるため、運動欲求を発散させるために十分な散歩時間を確保してあげられることも飼育の条件の一つです。
しつけをしっかりできる人
体格が大きいホワイトシェパードは、何らかのスイッチが入って攻撃的な行動をとった場合、大きな事故になりかねません。トラブルにつながらないように、しつけに十分な時間を割き、「してはいけないこと」をしっかりと教える必要があります。
お手入れをこまめにできる人
中~長毛の被毛は日常的にブラッシングを行い、きちんとお手入れをしてあげる必要があります。皮膚トラブルの予防という観点からも、こまめなお手入れを苦にせずできる人はホワイトシェパードと相性がよいと言えるでしょう。
食事管理ができる人
ホワイトシェパードは、膵外分泌不全という消化器の病気を起こしやすい犬種と言われています。病気の予防には、消化器の状態を把握するための食事管理が大切です。小さな変化にも気づけるよう、普段からフードの質や量に配慮できる人は飼育に向いていると言えるでしょう。
温度管理をしっかりできる人
もともと寒い地域にいたホワイトシェパードは、暑さに弱い犬種です。夏場は室内でも温度が非常に上がるので、しっかりと温度管理を行い、愛犬の様子などをこまめにチェックし、体への負担を軽減してあげる必要があります。
ホワイトシェパードは初心者向きの犬?
ホワイトシェパードは友好的で愛情深い性格とされていますが、その長所を活かすには飼い主との信頼関係が強くなくてはなりません。飼い主がホワイトシェパードにしっかりと向き合い、トラブルにならないよう、しつけに十分な時間と体力を費やしてあげる必要があります。これらの点をサポートしてもらえる専門家が身近にいるようであれば、初心者でも一緒に暮らすことができるでしょう。
ホワイトシェパードを飼う上で気をつけるべきことは?
実際にホワイトシェパードを飼育する上で、飼い主が気をつけるべきポイントがいくつかあります。それぞれ具体的に見ていきましょう。
毎日の散歩
体力のある犬種のため、ストレスを溜め込まないよう毎日の散歩による発散が大切です。
屋外飼育は避ける
ホワイトシェパードは暑さに弱いため、温度調節のしづらい屋外飼育はおすすめできません。室内で飼育していても、暑い時は、クーラーをつけるなど室温を下げて涼しくしてあげましょう。
滑りやすい床材は避ける
ホワイトシェパードは、股関節形成不全など関節の異常が起こる恐れのある犬種です。体重も重いため、関節への負荷がかかりやすいので、フローリングなどの関節への負荷が大きくなる滑りやすい床材は避け、滑り止めマットやラグのようなものを敷いてあげるとよいでしょう。
ストレスに気をつける
消化器症状の原因になりやすいのがストレスです。ホワイトシェパードは、注意深い性格に加え、もともと消化器系に弱点がある子が多いと言われています。そのため、ストレスを溜め込まないよう日頃からコミュニケーションやケアをしてあげることが大切です。また、日頃から愛犬にとって何がストレスとなるのか、どんな発散方法が適しているのかを把握できていると安心ですよ。
ホワイトシェパードのしつけを始める時期は?
比較的従順な性格を持つホワイトシェパードに適したしつけの方法について、詳しく見ていきましょう。
しつけを始める時期
できるだけ早い時期に社会化のトレーニングを行い、しつけも早めに開始しましょう。理由としては、注意深い性格のホワイトシェパードは、若齢期の経験によっては成長と共に警戒心を強めてしまうことがあるからです。また、人に対する大きなトラブルを防ぐためにも、飼い主の言うことに従うよう信頼関係を築き、しつけを通して「してはいけないこと」をしっかりと覚えさせましょう。
おすすめのしつけ方法
一貫性のあるしつけをする
知的で賢い一面を持つホワイトシェパードは、しつけに関しても結びつけを上手に行いながら学習します。そのため、しつけに一貫性がないと、してはいけないことや褒められることの結びつけがしづらいため、混乱してしまう恐れがあります。
大声でしつけない
注意深い性格を持つホワイトシェパードですから、大声で叱ると、飼い主や他の人に対して恐怖心を持ち、攻撃性を誘発してしまう恐れがあります。そのため、ホワイトシェパードが恐怖を感じるようなしつけ方法はやめましょう。
ホワイトシェパードの食事の注意点は?
健康な体づくりのためには、食事の与え方にも配慮が必要です。ホワイトシェパードの食事で気をつけるべき点を押さえておきましょう。
消化の良いフードを与える
ホワイトシェパードはもともと消化器が弱い犬が多いと言われています。心配な場合は、そのようなお腹の弱い犬向けに作られた、消化の良い療法食などがおすすめです。食事に関するトラブルの防止につながるでしょう。
いきなりフードを変えない
フードを急に変えることで消化器がびっくりしてしまい、消化不良などのトラブルを引き起こすことがあります。特に軟便や下痢を起こしやすい犬の場合は、少しずつ新しいフードの割合を増やしていって、徐々に消化器を慣らすようにしてくださいね。
ホワイトシェパードがかかりやすい病気は?
飼い主としては、愛犬には健康で長生きしてもらいたいものですよね。ホワイトシェパードを飼育する上で気をつけておきたい、かかりやすい病気について詳しく見ていきましょう。
股関節形成不全
先天的に股関節の形に異常があり、歩く際などに痛みや違和を感じる疾患です。体重が増えすぎるとさらに負荷がかかり、痛みや違和感が増す恐れも。症状の程度に応じて、痛み止めなどの内科的な治療、または外科的な治療を行うことになります。歩き方などに違和感を覚えたら、その様子を動画に撮るなどして早めに動物病院を受診することをおすすめします。
関節炎
ホワイトシェパードは、ジャーマンシェパードと同様に、骨格上の特徴から後ろ足にかかる負担が大きく、関節炎を起こしやすいと考えられています。激しい運動や肥満は関節への大きな負担となるので注意しましょう。
皮膚疾患
ホワイトシェパードは、アレルギー性の皮膚炎や膿皮症など様々な皮膚疾患によるトラブルが多いと言われています。予防法としては、家でこまめにブラッシングやシャンプーを行い、皮膚のコンディションを良い状態に保つことが大切です。ケアをすることで、赤みやフケ、抜け毛の増加といった変化にも早期に気づくことができるでしょう。
皮膚疾患は、原因を究明し、適切な薬で治療することが早期改善への近道です。異変に気づいた時、飼い主の判断でとりあえず塗り薬などを使って対処することはやめましょう。原因を調べるためにも早めに動物病院を受診するよう心がけてくださいね。
膵外分泌不全
消化酵素を分泌する膵臓の異常によって起こる消化器症状です。遺伝的にシェパードは発症しやすいと言われています。消化吸収不良が起こるため、頻繁に下痢をしたり、痩せたりする症状が見られるでしょう。長く続くと栄養吸収ができず命にも関わるので、適切な検査と治療が必要です。異常が見られたら、早期に動物病院を受診するようにしましょう。
ホワイトシェパードを散歩させる際に気をつけるべきことは?
体が大きく、スタミナもあるホワイトシェパードを散歩させる際に気をつけるべきことは、以下の通りです。
散歩の時間と頻度
1日30分~1時間程度の散歩を1~2回行うのが理想的です。ただし、最適な時間や頻度は、愛犬の体力や股関節などの状態によって変わります。かかりつけの獣医師と相談し、年齢や体力に応じた散歩の程度を決められるとよいでしょう。
気をつけた方が良いこと
暑さ対策
寒い地方が原産で暑さが苦手なホワイトシェパードは、暑さ対策を十分にしないと熱中症になり、最悪の場合、死に至る危険性もあります。散歩に行く時は、昼間の暑い時間帯を避け、早朝や夕方の時間帯を選ぶなど、対策をとりましょう。
ドッグランなどで思い切り走らせる
体格が大きく体力もあるホワイトシェパードにとって、ドッグランなどで思い切り体を動かすことは、運動欲求を楽しく発散するのに最適です。ただし、体の大きさから、小型犬に恐怖を与えたり、致命的なケガを負わせてしまう恐れがあるため、愛犬の行動には目を光らせておく必要があります。
また、関節の状態が悪い犬の場合、運動に制限がかかることもあるでしょう。その場合、愛犬の運動量の許容範囲をかかりつけの獣医師に確認しておくと安心ですよ。
ホワイトシェパードにおすすめの遊びは?
活発で知的なホワイトシェパードと一緒に楽しめる、おすすめの遊びについて詳しく見ていきましょう。
ボール遊び
友好的で知的なホワイトシェパードにとって、飼い主と行うボール遊びは、しつけの点でも信頼関係を築けるおすすめの遊びです。
宝探し
ホワイトシェパードは、頭を使いながら遊べる宝探しを好む傾向があります。最初はおやつなど興味を示してくれるものを探させるとよいでしょう。また、飼い主との信頼関係が十分に築けていると、褒めてもらえることが嬉しくて夢中で宝探しをするようになるはずです。遊びながら信頼関係をより強固なものにできると理想的ですね。
ドッグラン
広い場所で体を思い切り動かせるドッグランでの遊びは、活発なホワイトシェパードにとって適した遊びと言えます。ただし、ドッグランでの懸念は他の犬との接触です。愛犬を加害者にしてしまわないよう、遊ぶ時間帯や場所は慎重に選ぶようにしましょう。
ホワイトシェパードの日常のお手入れで気をつけることは?
ホワイトシェパードの白くて美しい被毛を保つために重要なのが日常のお手入れです。日頃のお手入れの際、気をつけるべきポイントを知っておきましょう。
こまめなブラッシング
抜け毛が多いとされるホワイトシェパードにとって、こまめなブラッシングで皮膚のコンディションを良い状態に保つことは皮膚トラブルを回避するためにも大切です。皮膚の状態チェックも兼ねて、小さい頃からブラッシングを嫌がらないように習慣づけてあげましょう。
定期的なシャンプー
犬種の特色として皮膚炎を発症しやすいホワイトシェパードは、予防のためにも定期的なシャンプーが必要です。適切な頻度は、皮膚の状態によって異なります。かかりつけの獣医師に皮膚の状態を確認してもらい、頻度や適したシャンプー剤について相談するとよいでしょう。