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海動物病院所属。潜水士免許保有。動物検疫所、製薬会社での勤務を経て、海動物病院に所属。自宅で猫、実家で犬を飼っており、最近は自宅でも犬をお迎えしようか検討中。
リビングの床がフローリングになっている家は多いですが、実は犬にとっては滑りやすく足腰に負担がかかるそう。そこで今回は、獣医師の鈴木佐弥香先生に教えていただいた、犬がフローリングの床でも快適に過ごせるようにするポイントと具体的な対策について解説していきます。
目次
- 犬にとってフローリングの床が危険な理由とは?
- フローリングの床の滑りが原因になる代表的な犬のケガ・病気は?
- 犬のためにフローリングの床に敷くといいものは?
- 犬がフローリングの床でケガしないためのしつけとケア
犬にとってフローリングの床が危険な理由とは?
そもそも犬は、土に爪をくいこませ、しっかりと踏んで歩くために適した体をしています。また、四足歩行の犬は、人間のようにまっすぐ立った状態で両足を閉じることができません。人間にとって快適に思えるフローリングの床は、犬にとっては爪をくいこませて滑り止めすることができず、足や腰に負担がかかるうえ滑って転倒してしまう危険があるのです。
フローリングの床の滑りが原因になる代表的な犬のケガ・病気は?
犬がフローリングの床で生活することで足腰にかかる負担。具体的に、どのようなケガや病気につながるのかを見ていきましょう。
脱臼・骨折
犬がフローリングの床で滑ったり高い所からジャンプをしたりすると、捻挫や打撲、ひどい場合には脱臼や骨折を引き起こしてしまいます。特に、ミニチュア・ピンシャー、イタリアン・グレーハウンド、ポメラニアン、トイ・プードルといった体型がスリムな小型犬は注意しましょう。また、骨格が未発達の子犬や、骨の弱いシニア犬も同様です。
股関節形成不全
後肢と腰に負担がかかって股関節が緩み、関節内で炎症が起きることによる痛みが生じます。後肢のふらつき、お散歩中の座り込み、ジャンプや階段を嫌がる、横座りになるといった症状が見られたら、股関節に異常があるかもしれません。
特にゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ジャーマン・シェパード・ドッグなど大型犬、肥満気味の犬は、体が大きいぶん股関節への負担も増えるので注意が必要です。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨(膝のお皿の部分)が、衝撃によって本来の位置からずれてしまうことが原因です。外側にずれることを外方脱臼といい、内側にずれることを内方脱臼といいます。犬の膝蓋骨脱臼の9割は内方脱臼です。
症状は4つのグレードに分けられます。グレート1〜2までは目立つ症状がないため、飼い主さんも気づきにくいです。グレード3〜4では、膝蓋骨が常に外れたままとなるため痛みや骨の変形などが生じ、最悪の場合は外科的手術が必要になります。
特に、チワワ、パピヨン、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・ダックスフンドなどの小型犬は、遺伝的にもなりやすいため注意が必要です。小型犬だけではなく、柴犬、ゴールデン・レトリバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグなども膝蓋骨脱臼になりやすい犬種です。
椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間にあってクッションの役割をもつ椎間板が、本来あるべき位置からはみ出してしまい脊髄を圧迫している状態です。ヘルニアが起きている場所によって、犬の後肢または前肢に症状が見られます。
症状は5つのグレードに分かれ、グレード1~2では麻痺はないものの痛みやふらつきが起こります。グレード3〜5では体の麻痺が見られ、その程度によって排尿や排便障害、起立・歩行困難にまで症状が及びます。
特に、ダックスフンド、シー・ズー、ウェルシュ・コーギー、ペキニーズ、ビーグル、パグ、トイ・プードルなどは注意が必要です。
犬のためにフローリングの床に敷くといいものは?
最近では、犬が滑るのを防ぐためにフローリングの床に敷くアイテムも市販されています。コストパフォーマンスや丈夫さを比較して検討しましょう。
ジョイントマット
コストパフォーマンスがよく、犬が粗相をしても汚れた場所だけを洗うことができます。その反面、樹脂タイプのジョイントマットは劣化が比較的早く、ジョイント部分にホコリやゴミが溜まりやすいのでこまめな掃除が必要です。同様に、滑り止めマットもおすすめ。
カーペット
滑りにくさは抜群です。犬の粗相やダニなどの衛生対策をして、上手に使いましょう。また、毛が長いタイプのカーペットは、犬の爪に引っかかってしまうことがあるため注意を。
フロアコーティング
新築やリフォームを考えている場合は、住宅メーカーが提案しているペットが滑りにくいコーティングプランをチェックしてみてください。リビングに限らず家全体を滑りにくくすることができるので、愛犬も安心して遊べます。コストを抑えて市販のコーティング剤を使用する場合は、材質や使い方に留意してください。
このほか、犬にとって特に負担がかかる階段には、1段ずつ滑り止めマットを敷いてあげましょう。玄関の土間や小上りなど、家の中にある大きな段差には、犬用のステップを設置することで衝撃を和らげることができます。廊下は、ロールタイプの滑り止めマットを敷いたり、コーティング剤を塗布したりすると安心です。
犬がフローリングの床でケガしないためのしつけとケア
まずは子犬のうちから、ソファや階段などの高いところから飛び降りないようしつけをすることが大切です。おねだりや興奮時に何度もジャンプしてしまう犬も多いですが、なるべくやめさせましょう。
また、シニア犬の場合は肉球の水分量が減って乾燥するため、普通にフローリングの床を歩いているだけでもより滑りやすくなります。このような場合には、肉球専用のクリームを塗ってあげるのもひとつの手です。
犬用の滑り止めがついた靴下などもありますが、犬の肉球は体温を調節する大切な器官なので、靴下を好んで履きたがらない犬には使用を控えましょう。履かせる場合も、犬の暑がっているサインを見逃さないよう気をつけてください。
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