料理研究家・リュウジの簡単やばうまレシピ「キノコと油揚げのオイスター炒め煮」
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目次/ INDEX
ものづくり生態図鑑#16 クリオネクリエイター・國本未華
【分類】
ものづくり科ものづくり属クリオネ種
【生そく地】
ガラスコーナー
【特ちょう】
クリオネに魅せられて 気づいたら
今では700個も 作っているらしい
──國本さんはテレビにご出演されている気象予報士ですが、クリオネクリエイターとしてのインタビューは初めてなんですね。
──その後どのような経緯で“クリオネクリエイター”になっていったのでしょうか?
國本さん
クリオネを好きになってからは色々なクリオネのグッズを探しましたが、自分の好みのものがあまりなかったんです。そんなとき「博物ふぇすてぃばる」という、博物学ゆかりの題材からなる創作・展示・研究を販売・発表できるイベントに行きました。そこでは、作家の皆さんが独自の感性で作成した、生き物関連のちょっとマニアックなグッズが展示や販売されていました。それにとても刺激を受け、私もオリジナルのクリオネ作品を作ってみたいと思うようになったんです。
國本さん
その後、制作していく中でクリオネの透明感を表現できる素材は何かと考えたとき、ガラスが思い浮かんだんです。クリオネを作りたい一心ですぐガラス教室に通い始めました。クリオネだけを作ってきたことと、今後もクリオネの魅力を発信し続けていきたいので「クリオネクリエイター」と名乗ることにしたんです。
──ガラスの加工はどのように行っていますか?
國本さん
ガラスと聞くと大型の窯を使って制作するイメージがあるかもしれませんが、使っているのは小学校の理科の実験で使うアルコールランプ大くらいのサイズの酸素バーナーという道具です。高温の火に当ててガラス棒を柔らかくし、ピンセットなどで伸ばして形作って冷まします。細かい部分は火に当たるとまた柔らかくなってしまうのでとても難しい作業です。
ですが、1年間通い詰めてようやくある程度はできるようにはなりました。作れば作るほど改善点が出てきて、これまでに作ったクリオネの作品の数は600~700個ぐらいです。
──代表作品にはどのようなものがありますか?
國本さん
こちらのバッカルコーンと呼ばれるクリオネが餌を捕食する際に伸びる触手のようなものを再現した作品です。クリオネの生態に詳しくない人にも興味を持ってもらうきっかけになったらいいなと思って作りました。バッカルコーンって先端が赤くなっているんですけど、その赤い部分を再現する作業はとても繊細で、難しいです。
ガラス以外にも、樹脂やプラバンなど様々な材料を組み合わせた作品もあります。市販の時計をクリオネ仕様にリメイクしたものもあります。クリオネと一緒に時を刻みたいという想いを込めて、秒針・分針・時針の先端にクリオネを取り付けました。
クリオネ仕様にリメイクした時計
國本さん
ものづくりと同時に、クリオネの特徴や性質についての学びの時間は欠かせません。クリオネについての論文を何度も読んだり、調べたりもしています。
オホーツクの海でたくましく生きるクリオネ
──作品にはどういう思いを込めることが多いですか?
國本さん
作る過程で、その作品のストーリーを想像するのが楽しいです。たとえばこの作品であればオホーツクの冷たく荒々しい海の中で強くたくましく生きているクリオネを表現しています。パーツが傾いてしまっていても荒波に揉まれているクリオネが表現できてそれはそれで楽しいです。
流氷のふちに腰かけ、波の穏やかな所で休憩しているクリオネをイメージした作品
國本さん
作品は1つずつ手作りなので、その日の体調や精神状態でうまくできたり、ちょっと変な形になったりしてしまうんですよ。自分の気持ちが乱れているとそれが作品に出てしまいます。クリオネは翼のような形の翼足という部位があるのですが、特にその翼足の形に心情が表れやすいです。
それぞれ微妙に表情が違うクリオネ
──気象予報士とクリエイターの両立は大変ではなかったですか?
國本さん
好きなことを突き詰めて没頭している時間が自分にとってはすごく大事なエネルギーなので、プラスの感情しかないですね。クリオネクリエイターを始めたときはそんなに意気込んで始めたわけではなく、ちょっとやってみようかなという気持ちでした。最初から意気込んでいたら両立は出来なかったかもしれません。何かを新しく始めるときは、気負いすぎず、最初は半歩でもいいので、ちょっとだけ前に動いてみるくらいの気持ちでいいのだと思います。少しアクションを起こすだけでも、違った未来が開けるのではないでしょうか。今までやったこともなかったホームページ作りも、とりあえずちょっとやってみようという感覚で取り組んだことの一つでした。
紋別にある北海道立オホーツク流氷科学センター
國本さん
ただ、何よりも好きなものへの情熱は大切にしています。私のクリオネへの情熱を歓迎して下さった方がいらっしゃったおかげで、今は紋別にある北海道立オホーツク流氷科学センターでクリオネの作品を取り扱って頂いています。作品については「翼足がいいですね」と言っていただけて嬉しかったです。
──気象予報士とクリオネの関係性を教えてください
國本さん
寒い地域の気候や暮らしにはもともと関心がありました。ですが、クリオネを好きになってクリオネに関することを調べているうちに、オホーツク海の流氷をはじめ、極地の海の環境などにも興味を持ち始めました。クリオネは、気象予報士としての視野を広げてくれたような存在です。
──今後チャレンジしたいことはありますか?
國本さん
ペンの頭を押すとバッカルコーンが飛び出してくるバッカルコーンペンを作りたいです。ずっと前から考えてはいたんですけど、いつか実現できたらいいなと思っています。それから、クリオネを通して道東のPRにつながる活動をしたいです。あと野望なのですが、クリオネの銅像を建てるなどしてクリオネの聖地を作ることです(笑)。
──國本未華さんにとってものづくりを一言で言うと?
國本さん
ときめき続けることができる時間ですかね。新たに作りたい作品の完成型を想像してときめいてます。クリオネはいつのまにか私の暮らしの一部となり、好きなものを極める楽しさを教えてくれた存在です。これからも皆さんにクリオネの魅力を伝えていこうと思っています。
──國本さん、ありがとうございました!
國本さん
そうなんですよ、とても嬉しいです。クリオネが好きになったのは、知り合いからクリオネを譲り受けたことがきっかけです。クリオネの観察を続けるほど、そのミステリアスな魅力に引き込まれました。