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Animal Care Clinic TOKYO 院長 獣医師。「病気になる前に」をテーマに掲げ、健康寿命を延ばすための活動を実施。

犬ににんにくを与えることは絶対に避けてください。ネギやたまねぎと同じく、ネギの仲間であるにんにくも犬にNGの食材なのです。にんにくには犬にとって危険な成分が含まれており、中毒症状を引き起こす可能性があります。誤って食べてしまうと、貧血や嘔吐、下痢、場合によっては命に関わることもあります。
この記事では犬がにんにくを食べてしまった場合のリスクや中毒症状、早急に取るべき対処法について、獣医師の石川愛美先生に解説していただきます。さらに、普段の生活での誤食を防ぐための注意点についてもご紹介します。
目次
- 犬ににんにくは絶対ダメ! にんにくを舐めた・食べてしまった際はすぐに動物病院を受診して
- 犬がにんにくを舐めた・食べたときの中毒症状は?
- 犬がにんにくを舐めた・食べたときの動物病院での処置内容
- 食べたり舐めたりで死に至る危険性も! 犬にとってにんにくの中毒量・致死量は?
- 犬ににんにくを与えるのはひとかけ(一片)、芽、加熱でもNG! 有害な成分とにんにく関連食材、フードに注意
- 犬がにんにくを食べないように予防するには?
- にんにく以外で! 犬の健康に役立つフードやサプリメント
- まとめ
- そのほかにも知っておきたい!犬が食べても良い果物・食べてはいけない果物
犬ににんにくは絶対ダメ! にんにくを舐めた・食べてしまった際はすぐに動物病院を受診して
目の前で愛犬がにんにくを舐めたり食べたりしてしまった場合、飼い主としては慌ててしまうかもしれません。そんな時、どのような対処をするべきなのでしょうか。
すぐに動物病院へ連れて行く
もし、犬がにんにくを食べてしまったら、すぐに動物病院に連れて行ってください。症状によっては緊急の場合も考えられますので、事前に病院に連絡をしておくとよいでしょう。その際、次のような情報も伝えておきます。
- にんにくをいつ食べたか
- どのくらいの量を食べたか
- どのような調理方法のものを食べたか(生、調理済みなど)
- 今の犬の体調はどうか
体調に変化がある場合は動画や写真を撮り、診察時に獣医師に見せるとよいでしょう。嘔吐や血尿、下痢が見られる場合は吐瀉物、排泄物をペットシーツなどに取り、ビニール袋に入れて持参すると診断材料になります。
家庭で行う応急処置の危険性
犬がにんにくを食べた直後から2時間後くらいまでなら、吐かせることができます。ただし、全量を吐き出せるかどうかは分からないため、家庭で吐かせるのは避けましょう。また、インターネットで検索すると、犬に塩やオキシドールを飲ませて吐かせる方法が見つかるかもしれませんが、この方法は誤嚥や食道炎を起こす可能性があるので危険です。絶対にやめましょう。
食べたものを吐かせる処置(催吐処置)は、医療行為にあたります。家庭で応急処置を行って様子を見るのではなく、速やかにかかりつけの動物病院を受診しましょう。
犬がにんにくを舐めた・食べたときの中毒症状は?
犬がにんにくを舐めたり食べたりした場合、次のような症状が現れる可能性があります。1時間以内に症状が出ることもあれば、食べて数日後に現れることもあります。
嘔吐・下痢
にんにくの胃腸粘膜刺激作用により、消化管の粘膜が刺激されて嘔吐や下痢が誘発されます。
血色素尿
血液中の赤血球が破壊され、血液の色素の混じった尿が出ます。色は赤色から茶色までさまざまです。
黄疸
黄疸とは、血液中のビリルビンという色素が増え、外見上黄色くなる状態を言います。にんにくの作用により犬の赤血球が壊されて、黄疸が出ることがあります。
貧血
にんにくに含まれる有機化合物が犬の赤血球の膜を酸化することで赤血球が壊れやすくなり、貧血を引き起こします。
食欲不振
にんにくによる胃腸粘膜刺激作用により胃腸炎になると、食欲が低下します。また、重度の貧血になった時も食欲不振となります。
皮膚炎
切ったり刻んだりしてにんにくの細胞が傷つくと、アリシンという物質が生成されます。アリシンには強力な殺菌作用があり、皮膚のうるおいを保つアミノ酸を破壊する作用があります。アミノ酸を失った皮膚は、細胞が壊れて皮膚炎を起こすこともあります。
偽喘息発作
アリシンが原因で、犬が喘息発作を起こすことがあります。
元気がなくなる
にんにくを食べると溶血性貧血を起こします。その結果、血色素尿、貧血、浅く速い呼吸などの症状が出て、ぐったりします。
意識が朦朧とする
貧血が重度になると、脳は酸欠状態となるので、意識が朦朧とした状態になり最悪の場合は死に至ります。
犬がにんにくを舐めた・食べたときの動物病院での処置内容
愛犬がにんにくを食べてしまったことが分かったら、すぐに病院を受診してください。症状が出てから気付いた場合は、さらに急いだほうがいいでしょう。
動物病院での治療法は対症療法が基本です。病院では犬の状態に応じて、以下の処置が行われます。
催吐処置
嘔吐を起こす薬剤を投与して胃の中にあるものを吐かせます。ただし、すでに吸収されてしまった成分に関しては無効です。
貧血・血液検査
血液検査を行い、貧血になっているか否か、また貧血の程度の確認を行います。
点滴
下痢・嘔吐などにより脱水が進行している場合や、血色素尿や黄疸が強い場合などに点滴が行われます。
活性炭投与
消化管の中に残っているにんにくの有害物質を吸着してくれる働きが期待できますが、体内に吸収されてしまったものに対しては効果がありません。
抗酸化剤の投与
有機化合物による酸化作用を中和する目的で、抗酸化物質の投与が行われることがあります。
輸血
貧血が重度の場合は輸血が行われることがあります。
酸素吸入
貧血が進むと酸素を体に運べなくなるため、酸素吸入を行います。
入院
重症の場合は、動物病院に入院して治療を行います。入院費用は高額となる場合もあります。
食べたり舐めたりで死に至る危険性も! 犬にとってにんにくの中毒量・致死量は?
にんにくの致死量に関しては、犬種や個体によって異なりますが、一度に大量に、あるいは少量であっても継続的に摂取した場合、中毒症状が出るとされています。ごく少量の摂取でも死に至った例があるので要注意です。中毒量としては体重1kgあたり5g以上が基準となります。
なお、秋田犬や柴犬など日本原産の犬は、にんにくの感受性が高く、少量のにんにくで中毒になるといわれています。もし、飼っている犬が日本原産の犬種である場合は、特ににんにくの取り扱いに注意しましょう。
犬ににんにくを与えるのはひとかけ(一片)、芽、加熱でもNG! 有害な成分とにんにく関連食材、フードに注意
にんにくはたったひとかけ(一片)でも犬に与えてはいけません。にんにくが犬にとってなぜ危険なのか、詳しく解説します。
犬にとって有害なにんにくの成分とは?
にんにくは、ネギ・たまねぎ・にら・長ネギ・わけぎなどと同様に「有機チオ硫酸化合物」が含まれるネギ属の野菜です。有機チオ硫酸化合物はにんにくの香りの元にもなっている成分で、犬の赤血球にあるヘモグロビンを酸化させて、ハインツ小体という物質をつくります。ハインツ小体が形成された変形赤血球は、主に脾臓で異物とみなされ、破壊されてしまいます。その結果、犬の体内で「溶血」という現象が起こり、溶血性貧血になってしまいます。
また、にんにくの辛味成分の「硫化アリル」が空気に触れると「アリシン」になります。アリシンには強い殺菌作用があり、胃壁が傷ついたり腸内細菌が死滅したりする恐れがあります。
また、アリシンが体内で分解されると「二硫化アリル」になります。犬は二硫化アリルを消化する酵素を持たないため、赤血球が破壊されて貧血を起こすことがあります。
にんにくの芽や皮、加熱したにんにくは大丈夫?
にんにくの芽や皮もにんにく同様、犬に与えてはいけません。ネギ属の山菜である「行者にんにく」も同じ中毒成分を含むのでNGです。
また、にんにくは加熱しても犬にとっての毒性がなくならないという特徴があります。そのため、加熱調理したにんにくであっても犬に与えるのはNGです。
ドッグフードやサプリメントに入っていることも
滋養強壮効果を期待して、にんにくがドッグフードや犬用のサプリメントに配合されていることがあります。安全性に配慮の上、配合されていると考えられますが、不安のある方は与える前にかかりつけの獣医師に相談するなど、注意をしてください。
犬がにんにくを食べないように予防するには?
犬の体に有害な影響を及ぼすネギ類全般を家庭から排除するのは、なかなか難しいことです。家庭内ににんにくがあっても、愛犬が食べてしまうのを防げれば問題はないので、きちんとした管理を常に心がけるとよいでしょう。
にんにくを犬の手の届くところに置かない
犬はにんにくの香りを嫌がらないので、無造作に置いておくと知らぬ間に食べてしまう可能性があります。犬が誤ってにんにくを口にすることのないように、調理に使用した後は出しっぱなしにせず、すぐ片付けるようにしてください。乾燥にんにくやパウダー状になったもの、チューブ状のものも同様に注意してください。
食べた後のごみやお皿にも注意が必要
にんにくは、さまざまな料理に広く使われる食材です。にんにくそのものだけでなく、料理の煮汁などにも貧血を起こす成分が含まれています。食べ残しのパスタやラーメンの汁などを、愛犬が食べてしまわないように気を付けましょう。
盗み食いを防ぐ
愛犬がにんにくの香りを気に入って、にんにくに興味を持つことがあるかもしれません。犬がにんにくの香りに興味を示しているようなら、にんにくの管理にさらに注意をするようにしましょう。
にんにく以外で! 犬の健康に役立つフードやサプリメント
にんにくは人にとって滋養強壮に役立つイメージがありますが、犬には絶対に与えられない危険な食材です。とはいえ、愛犬も元気でいてほしいですよね。そんなときは、犬の健康を考えて作られたフードやおやつ、サプリメントを上手に取り入れてみましょう。
犬の栄養は、総合栄養食と表示されたドッグフードを与えていれば、基本的には十分に満たすことができます。栄養バランスをしっかり考慮して作られているため、特別な理由がない限りはドッグフードだけでも問題ありません。
それでも、体調や年齢によって栄養面が心配な場合は、獣医師に相談しながらサプリメントで不足しがちな栄養を補う方法もあります。おやつやトッピングなどを与えるときは、与えすぎに要注意です。総合栄養食をメインにしながら、おやつは1日必要カロリーの約10%程度を目安にしましょう。カロリーオーバーを防ぐことで、肥満や生活習慣病などのリスクを減らし、愛犬の健康をサポートできます。
カインズのオンラインショップでは、犬の健康に役立つフードやおやつ、サプリメントを取り扱っています。日頃から安心して与えられる健康的な食事を常備しておけば、もしものときも心強いですね。愛犬の体調や年齢がきになるときは、サプリメントやおやつで栄養を補うことも一つの方法です。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
にんにくは滋養強壮のイメージから、愛犬に食べさせたいと考える方がいるようです。しかし、にんにくは犬に中毒を引き起こす成分が含まれる、リスクの高い食べ物です。また、加熱しても中毒成分は分解されません。にんにくを隠し味程度に含む料理を含め、絶対に与えないように気を付けましょう。万一、愛犬が誤って食べてしまった場合は症状の有無に関わらず、すぐに動物病院を受診することをおすすめします。