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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
水分がたっぷりで喉の渇きを癒してくれて、ビタミンも豊富なイメージがある果物のオレンジ。じつは、与え方に注意すれば、犬に食べさせても問題ありません。今回の記事では、そんなオレンジについて、犬に与えるメリットや食べさせる際の注意点などをバーニー動物病院千林分院 分院長の堂山有里先生に解説していただきます。
目次
- 犬にオレンジを与えても大丈夫!
- 子犬やシニア犬にオレンジを与えても大丈夫?
- 持病のある犬にオレンジを与えても大丈夫?
- オレンジに含まれている栄養素は?
- 犬にオレンジを与えるメリットは?
- オレンジを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
- 犬にオレンジを与える際の1日あたりの適量は?
- 犬にオレンジを与える際の注意点は?
- 犬にオレンジジュースや人間用の加工食品を与えても大丈夫?
- 犬にオレンジ以外の柑橘類を与えてもよい?
- 犬が食べても良い果物・食べてはいけない果物
犬にオレンジを与えても大丈夫!
オレンジは、犬にとって有害な成分が含まれていないため、果実部分であれば犬にも食べさせても大丈夫です。ただし、皮、種、葉は消化しにくいので与えるのは避けましょう。とくに皮には農薬や防腐剤が付着している危険性もあるので、食べさせるのはNGです。
犬はビタミンCを体内で合成できる
オレンジを食べることについて、人間と犬で大きく違うポイントは、ビタミンCに関する点です。犬の場合、ビタミンCを食べものから摂取せずとも、体内で合成できます。そのため、犬にビタミンCの補給をさせるために積極的にオレンジを食べさせる必要はありません。この点は、体内でビタミンCが合成できない人間とは異なるポイントになります。
子犬やシニア犬にオレンジを与えても大丈夫?
子犬やシニア犬でも、オレンジの果実を食べさせることは問題ありません。ただし、オレンジの皮、種、葉は与えないこと。子犬やシニア犬は消化器官が弱いことがあるので、とくに注意しましょう。
持病のある犬にオレンジを与えても大丈夫?
病気を抱えている犬の場合は、オレンジを食べることに制限がかかる場合もあります。以下の持病がある場合は、まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。
腎臓病を持つ犬
腎臓病を持つ犬は、カリウムの排泄機能が落ちていることがあります。オレンジなどカリウム含量の多い食材を摂取すると、カリウムが体内で蓄積され過ぎてしまうので、避けたほうがよいでしょう。
抗生物質を飲ませている犬
投薬治療中で、ある特定の抗生物質を飲んでいる場合にはオレンジと同時に薬を摂取しない方が良いことがあります。かかりつけの獣医師の指示に従いましょう。
オレンジに含まれている栄養素は?
オレンジにはどのような栄養素が含まれているのでしょうか。栄養素の種類と効果について、それぞれ見ていきましょう。
ビタミンC
皮膚や粘膜の健康維持に役立つ「コラーゲン」を作るのに必要。ストレスへの抵抗力を強めるほか、老化や動脈硬化を促す活性酸素から体を守る抗酸化作用もあります。
β-カロテン
体内でビタミンAに変換されて働くほか、抗酸化作用や免疫増強作用があります。
カリウム
主要必須ミネラルの一つ。細胞が正常に機能するために不可欠な栄養素。ナトリウムとともに体内の水分バランスを調整するほか、エネルギー代謝や神経伝達にも関与します。
クエン酸
疲労物質である「乳酸」を分解します。カルシウムなどミネラルの吸収を促す働きも。胃酸分泌促進作用もあるため取り過ぎに注意。
食物繊維(ペクチン)
不溶性と水溶性があり、オレンジの食物繊維は水溶性である「ペクチン」が主体。便量を増やして便秘を改善するほか、腸内細菌の栄養となり腸内環境の改善に役立ちます。
葉酸
ビタミンB群に属し、たんぱく質や細胞を作る際に必要な「核酸」を合成する働きをします。ほか、赤血球の細胞形成や、細胞分裂を助ける働きも。
糖類
オレンジに含まれる糖類は果糖(フルクトース)で、エネルギー源となるもの。余った分は中性脂肪として体内に蓄えられます。
犬にオレンジを与えるメリットは?
栄養豊富なオレンジですが、犬に与えるとどのようなメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。
便秘の解消が期待できる
便通を改善する効果がある食物繊維「ペクチン」が豊富なオレンジ。犬に食べさせると、便秘の解消が期待できます。また、オレンジは約8割が水分なので、犬の水分補給を助けることにも役立ちます。
食欲が落ちている犬の栄養補給に
さらに、オレンジは甘みがあり、犬が喜んで食べてくれる食材の一つ。食欲が落ちている時でも手軽にビタミンや水分、糖質が補給できます。
オレンジを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
犬のオレンジアレルギーは一般的ではありません。しかし、以下のような場合にはオレンジアレルギーを発症することがあります。
・アレルギー体質の犬
・果物アレルギーのある犬
・イネ科の植物にアレルギーのある犬
犬がオレンジアレルギーを起こした場合の症状
犬のオレンジアレルギーは食後2〜3日以内に発症することが多いです。その際には以下のような症状が出ます。
嘔吐
食べた直後から半日程度の間に嘔吐が起きるケースがあります。原因となる食べ物を吐き戻してしまえば、その後に体調は回復します。
下痢
当日から2~3日以内に下痢が起きることがあります。通常、原因となる食べ物の摂取をやめると症状は治まり、改善へと向かいます。
皮膚のかゆみ
皮膚や目の周り、口の周り、肛門の周囲、耳、背中、お腹などにかゆみや赤み、湿疹が出ます。
目の充血
目の周りの皮膚にかゆみが出て赤く充血することがあります。
元気がなくなる
アレルギー症状が重度の場合は元気がなくなることがあります。ただし、元気がなくなる理由は他にもいろいろあるので、まずは動物病院で原因を特定してもらうと安心でしょう。
犬がオレンジアレルギーを起こした場合の対処法
オレンジを食べた後、犬にいつもと違う様子が見られたら、まずは続けて食べさせるのをやめましょう。それで症状がなくなれば、しばらく様子を見ても問題ありません。激しい下痢・嘔吐や、軽い下痢・嘔吐であっても数日繰り返す場合は、動物病院を受診しましょう。その際、数日以内に食べたものが分かるようなメモを持参すると診断の役に立ちます。また、目や口周り、皮膚のかゆみなどが続く場合も、動物病院を受診するのをおすすめします。症状を軽減する薬が処方され、適切な食事内容について相談にのってもらえるでしょう。
犬にオレンジを与える際の1日あたりの適量は?
「オレンジを犬にどれくらい与えるのが適正か」という量は明確にされていません。そこで参考となるのが「副食」についての目安です。ドックフード以外の食べもの「副食」と呼びますが、犬に食べさせる場合、1日に摂取する総カロリーのおおよそ1割であれば、副食に置き換えても栄養的なバランスは守られる」とされています。これは小型犬・中型犬・大型犬のどの犬でも共通です。「1日に摂取する総カロリー」は犬の年齢、活動量、性別によって異なりますが、例えば体重4kg程度の健康な成犬なら300kcal程度。この1割は30kcalになります。
オレンジ1個はおおよそ50~62kcalなので、オレンジ1/2個くらいであれば食べても問題はないと考えられます。オレンジなど副食を与える時は、与えた副食の分だけドッグフードを減らすようにしてくださいね。
犬にオレンジを与える際の注意点は?
犬にオレンジを与える際にはいくつかの注意点があります。それぞれどんなポイントがあるのか見ていきましょう。
皮、種、葉は取り除く
皮、種、葉を食べると消化不良を起こすことがあります。とくに種は消化できず、消化管に詰まる危険性も。皮には残留農薬や防腐剤が付着していることがあるので注意しましょう。
食べやすいように小さめにカットして与える
犬は食べものを噛み砕かずに丸呑みするので、小さくカットして与えましょう。また、植物の細胞壁の中にあるビタミンやミネラルといった栄養素を効率よく吸収させるためには、すり潰したりピューレ状にしたりするのもおすすめです。
与えすぎに注意
食物繊維や水分量、糖分が多いため、摂取量が多いと下痢や消化不良の原因に。適量を心掛けましょう。
薬との飲み合わせに注意
オレンジの成分は、ある特定の抗生物質の吸収量を低下させて効き目を弱くします。投薬治療中には、医師の許可なくオレンジを与えないようにしましょう。
メインの食事にせず、おやつとして与える
オレンジだけを食べていると栄養が偏ってしまいます。あくまでも「副食」や「おやつ」として与えるようにしましょう。
キッチン洗剤の誤飲に注意
犬がオレンジの香りを好きになると、オレンジの香りのついた洗剤を誤飲することがあるので注意が必要です。
犬にオレンジジュースや人間用の加工食品を与えても大丈夫?
オレンジを使用した加工食品は身近に多いですが、基本的には犬に人間用のものを与えることは避けましょう。主な加工食品に関する見解を以下にまとめましたので、それぞれ見ていきましょう。
オレンジジュース、アイス、ゼリー
人間ように作られたオレンジを使ったジュースやアイス、ゼリーは、犬にとっては糖度が高く、犬に与えるには不向きです。どうしても与えたい場合は、果汁を絞って手作りすれば食べさせられます。その場合も食べ過ぎないよう、適正量を守るようにしましょう。
ドライフルーツ
ドライフルーツは有害ではありませんが、消化しにくいので心配です。小さくカットし、少なめに与えるなど工夫をするとよいでしょう。
犬にオレンジ以外の柑橘類を与えてもよい?
オレンジ以外の柑橘類も犬に食べさせることができるのか気になった人もいるかと思います。身近なみかん、グレープフルーツ、レモンについて、それぞれ見ていきましょう。
みかん
みかんは犬に食べさせても大丈夫です。与える時は「副食」の適正量を目安にするとよいでしょう。
グレープフルーツ
グレープフルーツも基本的には有害ではありません。果実は犬も食べられますが、酸味や苦味が強いため、あまり好まないかもしれません。皮や種などについてはオレンジと同様に考えます。ただ、薬との飲み合わせに注意が必要なので、投薬治療中の場合はかかりつけ動物病院で相談してから与えるようにしましょう。
レモン
レモンは果汁であれば有害ではないので、犬に与えることができます。
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