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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
人にとっては健康に身近な食材であっても、犬にとって有害な成分を含むものはたくさんあります。大切な家族の一員である愛犬の健康を守るためにも、犬が食べてはいけないものを知りましょう。
目次
- 与えると命の危険も!犬が絶対に食べてはいけない食材
- ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、らっきょう、にら、ニンニクなど)
- ブドウ、レーズン、マスカット
- キシリトール
- チョコレート、ココア
- アボカド
- いちじく
- カフェイン(コーヒー、お茶類)
- アルコール(お酒)
- マカダミアナッツ
- 銀杏
- アロエ
- ホップ
- 香辛料(わさび、唐辛子、コショウなど)
- 要注意!犬に過剰に与えると危険な食べ物
- なぜ人が食べても大丈夫な食材で、犬が中毒を起こすのか?
- 犬に誤飲・誤食が疑われるときの症状
- 犬に中毒症状が起こるまでの時間は?
- 動物病院での処置と治療費の例
- 誤食しやすい犬種や性格は?
- 食べ物以外の誤飲・誤食でよくある注意したいもの
- まとめ
与えると命の危険も!犬が絶対に食べてはいけない食材
はじめに、わんちゃんが食べてしまうと命に危険を及ぼす食べ物を紹介します。どの食材も人間にとっては身近なものです。保管方法や拾い食いには十分注意しましょう。
また、犬の中毒についてはいまだ未解明の部分も多くあり、症状や中毒を発症するまでの時間は、食べてしまった量や犬の体質によっても異なります。決して、この情報だけで自己判断はせず、食べてしまった場合にはかかりつけの獣医師に相談しましょう。
ネギ類(玉ねぎ、長ねぎ、らっきょう、にら、ニンニクなど)
発生する中毒症状:貧血、下痢、嘔吐など
中毒を発症するまでの時間:30〜60分で現れることもあれば、1〜5日で症状が出ることもある
ネギ類には、「有機スルホキシド」という成分が含まれています。この成分は人間が食べても問題ありませんが、犬が食べて体内に吸収されると、赤血球を破壊してしまう恐れがあり、貧血を起こしたり、最悪の場合は死に至ることもあります。生はもちろん、加熱・調理しても毒性が消えませんので、注意してください。
出典:Cortinovis, C., & Caloni, F. (2016). Household food items toxic to dogs and cats. Frontiers in veterinary science, 3, 191521. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2016.00026%20/full
ブドウ、レーズン、マスカット
発生する中毒症状:嘔吐、下痢、急性腎不全など
中毒を発症するまでの時間:およそ12時間以内に嘔吐などの消化器症状、重度の場合24時間~数日以内に急性腎不全
実は、ブドウの中毒症状を起こす成分が何かは解明されていません。しかし、多くの場合、食べて数時間で嘔吐や下痢を繰り返したり、ぐったりと動かなくなってしまったりと明らかに様子がおかしくなります。そのまま放置すると急性腎不全を発症し、最悪の場合は1日から数日で命を落とす可能性があります。
2014年の文献によると、多くの症例ではぶどうを食べてしまうと6〜12時間以内に嘔吐、その他に下痢や食欲不振、動かなくなるなどの症状が発生していると記載されています。さらに数日後には急性腎不全を起こし、死に至るケースもありました。
出典:「ブドウの皮摂取後に急性腎不全を発症した犬の 1 例」(2014)塚田悠貴, 髙島一昭, 山根剛, 山根義久.―『動物臨床医学』23巻1号p.30-33
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/23/1/23_30/_article/-char/ja/.
キシリトール
発生する中毒症状:低血糖、嘔吐、急性肝不全など
中毒を発症するまでの時間:摂取後 30〜60分以内に発現する場合もあれば、摂取後 12 時間まで遅れる場合もあります
犬がキシリトール製品を食べると血糖値が急激に下がってしまい、低血糖となり、嘔吐や運動失調などの中毒症状を引き起こす可能性があります。ガムやキャンディの誤飲には十分に注意してください。また、キシリトールは甘味料として、食品に使用されることもあるので注意が必要です。人間の歯みがき粉なども誤飲させないようにしましょう。
出典:Cortinovis, C., & Caloni, F. (2016). Household food items toxic to dogs and cats. Frontiers in veterinary science, 3, 191521. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2016.00026%20/full
チョコレート、ココア
発生する中毒症状:嘔吐、下痢、動悸、痙攣など
中毒を発症するまでの時間:おおむね6~12時間以内、早ければ1~2時間以内
チョコレートとココアの原料であるカカオに含まれる成分テオブロミンという成分が原因で中毒症状が起こります。人間はテオブロミンを肝臓で無害な物質に代謝できます。一方犬は分解能力が弱く、長く体内にとどまってしまい、中毒が起こりやすくなります。初期の臨床徴候は通常、摂取後 2 ~ 4 時間以内に観察され、落ち着きのなさ、多飲、尿失禁、嘔吐、場合によっては下痢などが含まれます。
多量に食べると神経や心臓へ過剰な作用を起こし、震えや不整脈、痙攣などの症状が出るほか、最悪の場合は死に至ることもあります。
症状が出始めるのは、摂取後数時間〜半日程度ですが、テオブロミンの毒性自体は72時間ほど続くともいわれているため、摂取後数日間はしっかりと犬の様子を見て、しかるべき対処をとることが重要です。チョコレートには多くの油脂が使われていることが多いため、摂取後24から72時間で膵炎が起こることもあります。変化が無くとも獣医師の診察を受けるようにしましょう。
出典:Gwaltney-Brant, S. (2001). Chocolate intoxication. Vet Med, 96(2), 108-111.
https://aspcapro.org/sites/default/files/m-toxbrief_0201.pdf
アボカド
発生する中毒症状:胃腸炎、呼吸困難、膵炎など
中毒を発症するまでの時間:食後おおむね1〜3日以内
アボカドに含まれるペルシンという成分によって中毒症状が起こります。ペルシンは殺菌作用のある化学物質で、アボカドの実と葉の両方に含まれています。近年ペルシンが犬にとっては毒となる可能性が示されました。また、アボカドを大量に摂取した犬は、膵炎、呼吸困難、心膜水腫、さらには死亡のリスクにさらされる可能性があります。
ペルシンが毒性を示すメカニズムや、どの程度食べると毒性があるのかなどは、まだ解明されていません。
現時点では、一概にこれだけの量を食べたら危険という基準がわからないため、一口も食べさせないのが安全です。
出典:Nagy, A. L., Ardelean, S., Chapuis, R. J., Bouillon, J., Pivariu, D., Dreanca, A. I., & Caloni, F. (2023). Emerging Plant Intoxications in Domestic Animals: A European Perspective. Toxins, 15(7), 442. https://www.mdpi.com/2072-6651/15/7/442
いちじく
発生する中毒症状:下痢、嘔吐、食欲低下、粘膜のただれ、口内炎など
中毒を発症するまでの時間:早ければ数時間以内、数日経ってから発症することも
イチジクの葉などに含まれる「フィシン」という成分は、犬が食べてしまうと中毒症状を引き起こす恐れがあります。
フィシンは、イチジクの茎を切ると出てくる、白い乳汁に含まれています。乳汁は犬だけでなく、人間にとっても、かぶれやかゆみを引き起こす成分です。犬がフィシンを摂取すると、大量のよだれが垂れて、粘膜のただれや口内炎などを引き起こします。重度のただれや口内炎では、水や食事を摂れなくなって脱水症状を引き起こす可能性もあるため、大変危険です。
注意するのは、生のイチジクだけではありません。ドライフルーツやジャム、ヨーグルト、パンなどのイチジクの加工品も、フィシンを含んでいますので、犬には与えないでください。
カフェイン(コーヒー、お茶類)
発生する中毒症状:興奮、不整脈、呼吸不全、震え、痙攣、頻脈、不眠、嘔吐、喉の渇き、多尿など
中毒を発症するまでの時間:多くの場合、2~4時間以内
カフェインには、交感神経を刺激したり、中枢神経を興奮させたりする作用があり、中毒量では嘔吐・頻呼吸・血圧上昇・興奮・痙攣・頻脈・不整脈・骨格筋の緊張・低カリウム血症などが生じます。
犬がカフェインを摂取すると、飲んでから通常6~12時間後に中毒症状が出るといわれています。カフェインの致死量は犬で体重1kgあたり140mgと言われており、40mgで循環器に影響が出始め、60㎎で重篤な中毒症状を示すという報告もあります。
多くの場合、コーヒーの誤飲というよりは、人の薬剤を誤食したことによって発症します。普段から人用薬は厳密に管理しましょう。中毒症状が出る前の催吐が有効であるため、わずかでも口にした可能性がある場合は速やかに獣医師の診察を受けましょう。カフェインは、コーヒーだけでなく、煎茶、ほうじ茶、玄米茶、抹茶、ジャスミン茶、烏龍茶、そのほかにも様々な紅茶にも含まれていますので、注意してください。
出典:Kovalkovičová, N., Sutiaková, I., Pistl, J., & Sutiak, V. (2009). Some food toxic for pets. Interdisciplinary toxicology, 2(3), 169–176. https://doi.org/10.2478/v10102-009-0012-4
アルコール(お酒)
発生する中毒症状:ふらつく、ぐったりする、食欲不振、嘔吐、昏睡、呼吸が弱くなるなど
中毒を発症するまでの時間: 空腹時でおよそ30 分以内、満腹状態で 1〜2時間以内
犬はアルコール飲料に含まれる「エタノール」を分解する酵素を持っていません。エタノールは摂取されると、胃腸管から急速に吸収され、脳神経の活動を阻害します。動物は昏睡状態になり、重度の呼吸抑制を発症することがあります。そのため、アルコール飲料をほんの少し舐めただけでも症状が出る危険があります。舐めただけでも中毒症状が出る可能性があります。人と同じでアルコールへの反応には個体差があるからです。
犬は甘いものを好むので、日本酒やリキュールのような甘い味のお酒は、特に誤飲が危険です。除菌スプレーやウェットティッシュなども、愛犬の近くで使うものはアルコールフリーのものを選ぶなど、よく注意しましょう。
出典:Cortinovis, C., & Caloni, F. (2016). Household food items toxic to dogs and cats. Frontiers in veterinary science, 3, 191521. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2016.00026%20/full
マカダミアナッツ
発生する中毒症状:立ち上がって歩けない、横になって動かない、食欲不振、嘔吐、震え、熱、関節痛
中毒を発症するまでの時間:およそ1時間〜12時間以内
マカダミアナッツには中毒成分が含まれています。しかし、その中毒成分がなんであるかはまだ解明されていません。マカダミアナッツを食べてから症状が出る時間帯は6~24時間とされていますが、おおむね12時間以内に筋肉に力が入らない中毒症状が表れるとされています。
Macadamia Nut Toxicosis in Dogs. MSD Veterinary Manual, https://www.msdvetmanual.com/toxicology/food-hazards/macadamia-nut-toxicosis-in-dogs (2024年2月2日閲覧)
銀杏
発生する中毒症状:嘔吐、過敏症、痙攣
中毒を発症するまでの時間:数時間以内
銀杏には、犬が中毒を起こす可能性のあるメチルピリドキシンが含まれています。メチルピリドキシンは熱に強い成分のため、たとえ加熱しても与えないようにしましょう。お散歩コースにイチョウの木がある場合は要注意。独特なにおいで、愛犬が興味を持ち拾い食いしてしまう可能性もあります。
出典:Popular Fall Plants: Which Ones Are Pet-Friendly?, ASPCA. https://www.aspca.org/news/popular-fall-plants-which-ones-are-pet-friendly (2024年2月2日閲覧)
藤将大, 有田汐紗, 太田貴子, 冨永博英, 平川篤, 杉山伸樹. (2023). 銀杏中毒を疑った犬の 1 例. 日本獣医師会雑誌, 76(11), e304-e308. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/76/11/76_e304/_pdf
アロエ
発生する中毒症状:下痢、嘔吐、腸の炎症、脱水症状、腎炎、貧血、血尿など
中毒を発症するまでの時間:12時間以内
アロエに含まれる苦味成分の「サポニン」は犬に下痢や嘔吐、腸の炎症を引き起こします。また、アロエに含まれるアントラキノン類は犬が摂取すると下痢をする危険があります。犬が摂取すると下痢や嘔吐、胃腸炎を引き起こす原因となります。下痢や嘔吐が続くと、犬は脱水症状になります。さらに中毒症状が悪化すると、腎炎にかかって血尿などの症状が見られます。また、血液中のヘモグロビンが破壊されて貧血を起こすこともありますので、与えないように注意してください。
「アロエ入りのヨーグルト」のほか、美容用品などにも含まれていることが多いので、誤飲・誤食には十分に注意しましょう。
出典:ASPCA https://www.aspca.org/pet-care/animal-poison-control/toxic-and-non-toxic-plants/aloe
(2024年2月2日閲覧)
Siroka, Z. (2023). Toxicity of House Plants to Pet Animals. Toxins, 15(5), 346. https://www.mdpi.com/2072-6651/15/5/346/pdf
ホップ
発生する中毒症状:頻呼吸 (呼吸が速くなる)、高熱 (体温の上昇)、嘔吐など
中毒を発症するまでの時間:摂取後 8 時間以内
犬がホップを摂取すると、悪性高熱症と呼ばれる致命的な症状を引き起こす可能性があります。
症状は通常、摂取後 8 時間以内に発生し、頻呼吸 (呼吸が速くなる)、高熱 (体温の上昇)、嘔吐、発作などがあります。筋肉の壊死を示唆する暗褐色の尿が観察される場合があります。
重症の場合は、筋肉の硬直や深部体温の上昇が見られることがあります。積極的な対症療法にもかかわらず、死亡率が高くなる可能性があります。ホップの摂取が疑われる場合には速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。
出典:Cortinovis, C., & Caloni, F. (2016). Household food items toxic to dogs and cats. Frontiers in veterinary science, 3, 191521. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2016.00026%20/full
https://vetmed.umn.edu/news/bitter-brew-new-research-examines-toxic-effects-homebrewing-staple-dogs
香辛料(わさび、唐辛子、コショウなど)
これらの香辛料は通常、犬にとって毒ではありませんが、胃腸の苦痛や不快感を引き起こす可能性があります。
唐辛子に含まれる辛味成分のカプサイシンは、犬にとって非常に刺激の強い物質のため、与えてはいけません。カプサイシンは粘膜を傷つけるため、誤って口にした場合、消化管への大きなダメージとなります。唐辛子以外に、コショウ・わさび・からし・タバスコなどの香辛料も犬に与えてはいけません。 お寿司やわさび入りのスナック菓子などの誤飲には十分に注意してください。
要注意!犬に過剰に与えると危険な食べ物
魚介類(イカ、タコ、エビ、カニ、貝類など)
イカやタコ、エビ、カニ、貝類など含まれる成分「チアミナーゼ」によって、必須ビタミンであるビタミンB1が分解されてしまうことが知られています。ビタミンB1が不足した食材を多量に食べさせることでビタミンB1欠乏症を発症する可能性があります。チアミナーゼは熱に不安定で、調理や標準的な食品加工技術によって破壊されますが、調理前にチアミナーゼが食事中のチアミン含有食品と接触すると、ビタミンB1が不活化する可能性があります。
出典:Markovich, J. E., Heinze, C. R., & Freeman, L. M. (2013). Thiamine deficiency in dogs and cats. Journal of the American Veterinary Medical Association, 243(5), 649-656.
https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/243/5/javma.243.5.649.xml
また、イカに寄生するアニサキスによる食中毒の危険もあります。アニサキスによる食中毒は加熱することで予防できますが、市販されている加熱済みのカニなどは、ほとんどが塩茹でされたもので、犬にとっては塩分過多になるので食べさせてはいけません。
また、イカやタコ、貝類全般は消化が悪く、下痢や嘔吐の原因になるおそれがあります。さらに、アワビ・トコブシ・サザエなど一部の貝類の内臓には、光増感物質が含まれていることがあり、犬が摂取すると光線過敏症(こうせんかびんしょう)を引き起こすことも。基本的に魚介類は与えないのがベストです。
出典:https://www.merckvetmanual.com/integumentary-system/photosensitization/photosensitization-in-animals
牛乳
基本的に、犬に牛乳を与えることは推奨されていません。少量であれば問題ありませんが、与えすぎると下痢や嘔吐などを引き起こす原因になるためです。
牛乳には「乳糖」が含まれており、この乳糖を分解するためには「ラクターゼ」という消化酵素が必要です。個体差はありますが、犬は離乳期を過ぎるとラクターゼの分泌量が少なくなります。ラクターゼの不足により、乳糖が十分に分解されないまま大腸まで達してしまうことで、下痢を引き起こすことになります。この症状は「乳糖不耐症」と呼ばれます。
生肉
また、生肉中心の食事は栄養管理が難しく、菌や寄生虫による感染症のリスクや、消化不良についても問題視されています。どうしても与えたいという場合には、かかりつけの獣医師に相談してみましょう。
出典:Freeman, L. M., Chandler, M. L., Hamper, B. A., & Weeth, L. P. (2013). Current knowledge about the risks and benefits of raw meat–based diets for dogs and cats. Journal of the American Veterinary Medical Association, 243(11), 1549-1558. https://doi.org/10.2460/javma.243.11.1549
生卵の白身(白身のみを生で与えるのはNG)
出典:Can Dogs Eat Eggs? American Kennel Club, https://www.akc.org/expert-advice/nutrition/can-dogs-eat-eggs/ (2024年2月2日閲覧)
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なぜ人が食べても大丈夫な食材で、犬が中毒を起こすのか?
なぜ人が食べても大丈夫な食材で、犬が中毒症状を起こすのか不思議に思う方もいるかもしれません。これはそもそも犬と人の体の仕組みが異なるからです。
たとえばキシリトールの場合で考えてみます。人も犬も、食べたものを消化吸収すると、ブドウ糖として体内に取り込みます。この時に体内のブドウ糖や、血液の中のブドウ糖の濃度(血糖)が高くなりすぎないよう、インスリンというホルモンが出てからだが調節するようになっています。
人の場合は、キシリトールを食べてもこのインスリンを放出させる力がありません。そのため、糖尿病患者の糖質補給剤としても、キシリトールが使われています。
しかし、犬の場合は、キシリトールを摂取すると、強い力でインスリンを放出させてしまいます。その結果、急激に血糖を低下させてしまい、意識障害や脱力、痙攣、肝障害などを起こすのです。
このように、食べ物に対する体の反応が犬と人では異なる場合があります。そのため、人が大丈夫だからと言って、犬が同じものを食べても大丈夫だと判断することはできません。
犬に誤飲・誤食が疑われるときの症状
嘔吐、下痢
中毒症状として代表的なのが嘔吐や下痢の症状です。誤食した後の嘔吐は、中毒の初期症状である可能性があります。
脱水症状
嘔吐・下痢により脱水症状も引き起こされます。何度も繰り返し吐いたり下痢をしている場合には、注意が必要です。
痙攣
銀杏やカフェインの中毒症状のほか、カカオによる中毒症状が進行した時や、アルコールで重度の中毒症状が起きた場合、そのほかにもブドウによる急性腎不全、キシリトールによる低血糖などでも、痙攣が起きる可能性があります。
貧血
ネギ類やアロエの中毒により、貧血症状が起こる可能性があります。貧血は症状が進むと呼吸困難を起こし、獣医師による積極的な治療を行ったとしても
死に至る可能性もあるため注意が必要です。
血便
カフェインの中毒によって消化器がダメージを受けると、血便が出ることもあります。
呼吸の異常
はあはあと息をしたり、息苦しそうにすることがあります。
元気がない、ぐったりする
いつもと様子が違うな? という些細な異変が、実は中毒症状であることも。ねぎの中毒による貧血、ブドウやレーズンの中毒による急性腎不全などでも、元気がなくなります。
犬に中毒症状が起こるまでの時間は?
各食材の項目でも紹介した通り、犬の体質や食べ物によって、食べた直後に発症したり、数日後に発症することがあり、様々です。
例えば、チョコレートやココアは通常6~12時間以内に発症しますが、早ければ1~2時間以内に発症することがあります。ねぎ類やアボカド、ぶどう類などは、数時間以内に発症することもあれば、数日後に発症する場合もあります。
食べた直後に元気だからと言って、自己判断で様子見をするのは大変危険です。食べてはいけない食材を食べてしまったことがわかった時点で、すぐにかかりつけの動物病院へ相談し、判断を仰いでください。
その際、何を、どのくらい、いつ食べたのかということがとても重要な情報になります。スムーズにかかりつけ医に伝えられるよう、受診前にメモしておくといいでしょう。
動物病院での処置と治療費の例
誤食して30分以内であれば、催吐(さいと)させることで誤食したものを吸収する前に体外に出せる可能性が高いです。ただし、食べたものによっては、自宅で無理に吐き出させると症状を悪化させますので、必ず動物病院で処置してもらうようにしてください。
病院では、トランサミンという薬を使って吐かせるのが主流になっています。催吐処置の費用は病院により差はありますが、おおよそ5,000〜10,000円のことが多いようです。夜間救急の場合は、別途夜間診療の料金がかかることも多いです。
誤食しやすい犬種や性格は?
どの犬種でも誤食しないとはいいきれません。しかし、性格が明るくおおらかで、好奇心が強く、食欲旺盛な犬は、誤食に注意が必要です。神経質で慎重な性格の犬はあまり誤食しませんが、においの強いものなどは口にしてしまうこともあるので注意しましょう。犬種では、パグ、ビーグル、ゴールデン・レトリーバー、およびイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルは食欲が旺盛なので誤食に注意が必要です。
食べ物以外の誤飲・誤食でよくある注意したいもの
食べ物以外でも、家の中や散歩コースで誤飲に気をつけたいものを紹介します。
特に、先のとがったものを誤飲すると、消化管に穴があくこともあります。場合によっては催吐させるのも危険なため、腹部を切開して手術しなければなりません。また、ひもなどの糸状のものも、粘膜に絡みついて、腸閉塞などを起こしてしまう場合があり大変危険です。
保冷剤に使われていたことがあるエチレングリコールは、摂取後3~6時間で高リン、高カリウム症を引き起こします。夏場の熱中症対策などで使用する場合はその保冷剤に使われている成分をよく確認して、危険のない物を選びましょう。くれぐれもいたずらをして誤食することがないように注意しましょう。
また、観葉植物やお花も、犬にとっては危険なものがありますので注意してください。
<犬が誤飲すると危険なものの例>
- 犬や子どものおもちゃ
- 骨や竹串(とくに焼き鳥の串)
- アイスの棒
- 爪楊枝
- ヘアピン
- ネジ、クギ、画鋲、マチ針など
- 薬のアルミ包装シート
- ティッシュ
- 布、綿、ひも
- 乾燥剤、保冷剤、ボタン電池
<犬に有害な観葉植物と中毒症状の例>
- ポトス(口の中の炎症、発熱、嘔吐)
- ポインセチア(口の中の炎症、嘔吐、下痢、小型犬は命を落とす場合も)
- アイビー(嘔吐、下痢、口や目の痛み)
- ユリ科の植物(腎機能の低下)
<犬に有害な花と中毒症状の例>
- スイセン(下痢、嘔吐、腹痛、よだれが大量に出る、血圧低下、心不全、昏睡、麻痺など)
- アサガオ(種を食べると:下痢、嘔吐、腹痛、血圧低下など)
- ユリ(尿細管変性、脱力、脱水、腎障害、視力障害、全身麻痺など)
- あじさい(過呼吸、ふらつき、痙攣、興奮、麻痺など)
- キキョウ(頻脈、震え、ひきつけ、よだれが大量に出る、ふらつき、呼吸困難、意識障害、心臓麻痺など)
- チューリップ(口が乾く、粘膜乾燥、瞳孔拡大、心毒性、嘔吐、下痢、血便、腹痛、痙攣、めまい、呼吸困難など)
- ツツジ(よだれが大量に出る、下痢、嘔吐、視力障害、筋力低下、痙攣、昏睡、徐脈など)
- シクラメン(下痢嘔吐、胃腸炎、大量摂取で神経症状など)
- パンジー、ビオラ(嘔吐、神経麻痺、心臓麻痺など)
- さくら(粘膜の充血、呼吸促迫、頻脈、嘔吐、痙攣など)
- カーネーション(軽度の胃腸障害、皮膚接触で軽度皮膚炎など)
- ヒガンバナ(嘔吐下痢、腹痛、麻痺など)
- カランコエ(嘔吐下痢、痙攣など)
- サゴヤシ(嘔吐、昏睡、下痢など)
- キョウチクトウ(嘔吐下痢、不整脈など)
- コルチカム(オータムクロッカス)(嘔吐、嗜眠など)
- トウゴマ(嘔吐、嗜眠、食欲不振など)種子から得られる油はひまし油(蓖麻子油)として広く使われており、種にはリシン (ricin) という毒タンパク質がある。
まとめ
犬に絶対に与えてはいけない食べもの
- ネギ、玉ねぎ、にら、にんにく
- ぶどう、レーズン、マスカット
- キシリトール
- チョコレート、ココア
- アボカド
- いちじく
- カフェイン
- アルコール
- 香辛料(わさび・唐辛子・カレー粉など)
- マカダミアナッツ
- 銀杏
- アロエ
- ホップ
犬が過剰に摂取すると危険な食べもの
いかがでしょうか。どれも私たちにとって、身近な食材ばかりだと思います。大切な愛犬の健康を危険に晒すことのないように、収納を工夫する、キッチンへの出入りを制御する、散歩コースで落ちているものや植物によく注意する等の対策を心がけましょう。
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