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ますだ動物クリニック院長、国際中医師

人間用のツナ缶は、犬にとって過剰な塩分や油分のほか、玉ねぎエキスや添加物など犬に適さない成分が含まれている可能性があるため与えないほうがいいでしょう。犬に与えるなら、犬用に開発されたツナ入りの総合栄養食や犬用おやつが安心です。
この記事では、犬にツナ缶を与えることの安全性や、ツナ(マグロ)に含まれる栄養素、与える場合の適量、注意点などについて獣医師の増田国充先生監修のもと解説していきます。
※商品などの紹介は、本記事の獣医師の監修外であり、編集部による情報提供です。
目次
- 愛犬に人間用のツナ缶は与えないほうがいい理由
- 犬にツナ(マグロ)を与えるメリット
- 犬へのツナ缶・マグロの正しい与え方と適量
- 犬にツナ缶を与えた後、こんな時はすぐに獣医師に相談を!
- ツナ(マグロ)を使った犬用おやつや手づくりフードのレシピ
- 災害時に備えて、犬の非常食としてツナ缶は使える?
- まとめ
愛犬に人間用のツナ缶は与えないほうがいい理由
人間用のツナ缶の種類は、油漬けや水煮、野菜スープで調理したタイプなどさまざまです。一見ヘルシーに見えても、犬に与えると健康を損なう恐れがある成分が含まれている場合があります。ここでは、犬にツナ缶を与える際の主なリスクと安全な選び方を解説します。
塩分・油分過多のリスク
人間用のツナ缶には、犬にとって過剰な塩分が含まれているものがあります。塩分を摂りすぎると腎臓に大きな負担がかかり、長期的には腎臓病などの疾患リスクを高める可能性があります。さらに油漬けタイプのツナ缶は高カロリーで、脂質の摂りすぎによる肥満や膵炎のリスクも高まります。
水煮のツナ缶もリスクあり
「水煮だから安心」と思われがちですが、水煮のツナ缶にも注意が必要です。原材料に玉ねぎエキスやその他の調味料、添加物が含まれている場合があります。特に玉ねぎは犬の赤血球を破壊して溶血性貧血を引き起こす危険があり、加熱しても毒性は消えません。
さらに、醤油や砂糖などの調味料、人工甘味料、保存料、着色料といった人間用の添加物は、犬の消化器系に負担をかけたり、アレルギー症状を誘発したりする可能性もあります。
「犬用ツナ」ならOK
犬用に作られたツナ製品は、塩分や油分を抑え、不要な添加物を含まないため、基本的に安心して与えられます。総合栄養食タイプやおやつ用などがあり、日常の食事に取り入れやすいのも特徴です。
ただし、ツナはあくまで主食ではなく補助的な位置づけで与えることが大切です。ツナばかり与えると栄養が偏り、健康を損なうリスクがあります。犬に必要な栄養バランスは総合栄養食と表示されたドッグフードでしっかり補うことが基本であり、ツナはおやつやトッピング程度にたまに少量加える程度にしましょう。
なお、緊急時や災害時など特別な状況で人間用のツナ缶を検討する場合は、原材料が「魚と水だけ」のものを厳密に選び、ごく少量(目安として小さじ1程度)にとどめましょう。これにより、愛犬の健康リスクを最小限に抑えられます。
犬にツナ(マグロ)を与えるメリット
ツナは英語の「tuna」に由来し、ツナ缶にはマグロ類やカツオが主な原材料として使われます。マグロは犬にとって良質なタンパク源であり、健康維持に役立つ栄養素を多く含みます。ここでは、主な栄養素と部位ごとの特徴を紹介します。
良質なタンパク質など栄養素が豊富
マグロは犬にとって優れた動物性タンパク質の供給源となります。タンパク質は筋肉、皮膚、被毛、骨、血液など体のあらゆる組織をつくるために不可欠で、成長期や回復期の犬にも重要な栄養素です。
さらに、マグロにはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。不飽和脂肪酸の一種で、脳の働きをサポートしたり血流を促進したりするほか、炎症を抑える作用も期待できます。
また、ビタミンB群、タウリン、鉄分など、犬の健康に役立つ成分も多く含まれています。
マグロの部位別特徴
マグロは部位によって栄養バランスが異なり、与える際の注意点も変わります。赤身は低脂質かつ高タンパクで消化しやすく、多くの犬に適した部位です。
血合いにはタウリン、鉄分、ビタミンEが豊富に含まれますが、鮮度が落ちやすいため、与える場合は新鮮なものを少量にとどめましょう。
トロはDHAやEPAを多く含む一方で脂肪分が非常に多く、消化器が弱い犬や膵炎の既往がある犬には適しません。犬の体調や体質に合わせて部位を選ぶことが大切です。
犬へのツナ缶・マグロの正しい与え方と適量
愛犬にツナ(マグロ)を与える際、種類や調理法、量を誤ると健康被害につながる可能性があります。ここでは、避けるべき製品、安全に与えるためのポイント、体重別の適量について解説します。
避けるべきマグロ製品とは? 人間用ツナ缶、生のマグロ、味付けされたマグロ製品
まず避けたいのは、繰り返しになりますが人間用のツナ缶です。オイル漬けや水煮を問わず、塩分や油分、調味料、玉ねぎエキスなどが犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
刺身など生のマグロも与えないようにしてください。マグロにはチアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素が含まれており、食べ過ぎるとビタミンB1欠乏症になる恐れがあります。加熱によって酵素は不活性化します。また、マグロの保存状態によってはヒスタミン中毒、さらには寄生虫や細菌による食中毒のリスクもあります。
干物や人間用のマグロジャーキーなど味付けされたマグロ製品も塩分が強く、腎臓への負担や体調悪化を招くおそれがあるため、与えないようにしてください。
安全に与えるためのポイント
愛犬にツナ(マグロ)を与える際に注意したいポイントを以下にまとめました。
- 刺身など生の状態は避け、必ず加熱調理したものを与える
- 味付けしていないもの、塩分、油分、添加物を含まないものを選ぶ
- 初めて与えるときは少量から始め、かゆみや発疹、嘔吐などアレルギー症状が出たらすぐ中止する
- ツナ缶を使用する場合は人間用ではなく犬用ツナ缶を活用する
- 食べやすい大きさに細かくほぐして与える
- 主食(ドッグフード)との栄養バランスを考慮する
体重別1日あたりのマグロの適量
健康な成犬におやつとして与える場合は、1日の総カロリー量の10%以内が目安です。適量は犬の体重や活動量、健康状態によって変わりますが、以下は一般的な目安量です。
- 体重3kg…20g
- 体重5kg…30g
- 体重10kg…50g
- 体重20kg…85g
- 体重30kg…114g
与えすぎはカロリー過多や栄養バランスの崩れを招くため、必ず量を守りましょう。持病や食事制限がある犬は、事前に獣医師へ相談すると安心です。
犬にツナ缶を与えた後、こんな時はすぐに獣医師に相談を!
愛犬にツナ(マグロ)を与えた後に体調の変化が見られた場合、放置すると症状が悪化するおそれがあります。ここからは緊急受診すべきケースと、食べさせる前に相談が必要なケースを紹介します。
人間用のツナ缶を誤食してしまった場合
人間用のツナ缶を大量に誤食してしまった場合や、食後に嘔吐、下痢、元気がない、ふらつきなどの異常が見られた場合は、すぐに獣医師へ相談しましょう。
診察時には「いつ、何を、どれくらい食べたか」を正確に伝えることが重要です。これにより獣医師が状況を正しく判断し、必要な処置につなげやすくなります。
誤食は時間との勝負になることも多いため、迷わず連絡することが愛犬の命を守ることにつながります。
アレルギー症状や体調不良が見られた場合
ツナ(マグロ)を与えた後に下痢、嘔吐、皮膚のかゆみ、元気の低下、目の充血、顔の腫れ、蕁麻疹などが見られた場合は、すぐに与えるのを中止し、速やかに受診してください。
特に顔や喉の腫れ、呼吸困難などの症状はアナフィラキシーショックの危険性があり、一刻を争います。軽度の症状でも放置すると悪化する可能性があるため、早めの対応が安心です。
子犬、シニア犬、持病のある犬に与える前
子犬やシニア犬、またはアレルギー、腎臓病、心臓病、膵炎、肝臓病などの持病がある犬にツナ(マグロ)を与える場合は、必ず事前にかかりつけの獣医師に相談しましょう。
持病や体質によっては、少量でも症状が悪化するおそれがあります。普段の食事や体調を把握している獣医師であれば、安全な与え方や量を具体的に指示してくれます。
ツナ(マグロ)を使った犬用おやつや手づくりフードのレシピ
愛犬にまぐろを安全においしく食べてもらうなら、手づくりフードや市販の犬用製品がおすすめです。
ここでは、簡単に作れるまぐろレシピや、カインズオンラインショップで購入できる犬用マグロ製品を紹介します。
〈マグロを使ったレシピ〉
【時短ズボラ飯】切って混ぜてレンジに入れるだけ!愛犬用レンチンまぐろチャーハンの超簡単な作り方♪
〈マグロを使った犬用おやつ〉
Pet’sOne ドッグミール トレイタイプ チキン&野菜 まぐろ チーズ入り 成犬用 100g
Pet’sOne プライムレシピ グルメパウチ ササミとまぐろの雑穀入りおかゆ 70g
〈マグロを使ったレシピ〉
次の記事で紹介しています。

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災害時に備えて、犬の非常食としてツナ缶は使える?
災害時は電気やガス、水道といったライフラインが止まり、普段通りの食事が難しくなる場合があります。
非常時に備えてツナ缶をはじめとする保存食をどのように活用できるか、また犬用の備蓄食を準備する際のポイントを解説します。
ツナ缶は長期保存ができるため非常食に便利
ツナ缶は未開封であれば常温で長期間保存できるため、災害時の備蓄食としても役立ちます。缶を開ければそのまま食べられるため、水や電気が使えない状況でも与えやすいのが大きな利点です。
非常時であっても愛犬が食べる場合は、過剰な塩分や油分が含まれていない犬用の製品が望ましく、日頃から犬用のマグロ製品を備蓄しておくのがおすすめです。
また、犬用のツナ缶であってもあくまで「一時的な食事」として利用し、可能な限り早く普段の犬用フードに戻すことが望ましいでしょう。
災害時に備えて犬用の保存食も準備を
非常時に備えるためには、犬専用の長期保存が可能な総合栄養食やおやつを普段から備蓄しておくことが重要です。災害時に急に異なるフードを与えると、犬が食べなかったり、体調を崩したりする原因になることがあります。
そのため、日常的に食べ慣れたフードを少し多めに用意し、消費した分を買い足す「ローリングストック」を取り入れると安心です。これにより賞味期限切れを防ぎ、災害時でも慣れた食事で落ち着いて過ごせます。
ツナ缶を含む常温保存可能なドライフードやパウチ製品などを組み合わせて準備しておくことが、防災対策として効果的です。
まとめ
愛犬にツナ(マグロ)を与えるときは、人間用のツナ缶ではなく犬用に開発されたマグロ製品を選びましょう。
自宅で手づくりごはんにマグロを使う際は、生のままではなく加熱してから与えるのが安心です。
ツナ(マグロ)を与えた後に体調の変化が見られた場合は、すぐに獣医師へ相談しましょう。
なお、犬用のツナ缶は長期保存できるため非常食としても便利に活用できます。災害時に備えてツナ缶をはじめとする犬用の保存食を準備しておけば、非常時も落ち着いて対応しやすくなります。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。