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日・米・英にて行動診療やパピークラスを実施する動物行動コンサルティングはっぴぃているず代表。日本でまだ数十名しかいない獣医行動診療科認定医として幅広く活躍。
ビタミンを豊富に含み、美容や健康にも良いと言われるグレープフルーツ。飼い主が食べていると興味を示す犬もいるでしょう。でも、犬にグレープフルーツをあげても健康に問題はないのでしょうか? 今回は、犬にグレープフルーツをあげても大丈夫かどうか、1日の適量や注意点などについて、獣医師のフリッツ吉川綾先生にお伺いしました。
目次
- 犬にグレープフルーツを与えても大丈夫?
- 子犬やシニア犬にグレープフルーツ与えても大丈夫?
- グレープフルーツに含まれている栄養素と、犬の健康に与える影響は?
- 犬にグレープフルーツを与えるときの注意点は?
- 持病のある犬にグレープフルーツを与えても大丈夫?
- 犬にグレープフルーツを与えることで発生する可能性のあるアレルギーや中毒症状はあるの?
- 犬にグレープフルーツを与える際の適量は?
- 犬にグレープフルーツを与えるときのおすすめの方法は?
- 犬にグレープフルーツを使用した加工食品を与えても大丈夫?
- 犬が食べても良い果物・食べてはいけない果物
犬にグレープフルーツを与えても大丈夫?
健康な犬であれば、グレープフルーツの実の部分を少しだけあげても大丈夫です。
グレープフルーツの実に豊富に含まれるビタミンCには抗酸化作用があります。人間にとっては健康に欠かせない栄養素ですが、健康な犬なら体内で生成することができるため、必ずしも摂取が必要な栄養素ではありません。
また、グレープフルーツには独特の苦みや酸味がありますが、これを好まない犬もいます。
グレープフルーツは、無理をして犬に与えるほどメリットがある食材ではありませんが、愛犬がグレープフルーツを好んで食べたがる場合は、以下の情報を参考にしてください。
子犬やシニア犬にグレープフルーツ与えても大丈夫?
シニア犬や体調を崩している犬は、体内でのビタミンCの生成能力が弱くなっているので、グレープフルーツをあげようと考える飼い主も多いかもしれません。
ですが、グレープフルーツには酸味成分であるクエン酸が非常に多く含まれており、消化機能を乱し、下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。愛犬にビタミンCを摂らせたい場合、できれば他の食材で補うことを第一に考えたほうがいいでしょう。
それでも、愛犬の嗜好性やレパートリーのひとつとしてグレープフルーツを与えたい場合には、ごくごく少量からスタートしましょう。
グレープフルーツに含まれている栄養素と、犬の健康に与える影響は?
グレープフルーツにはさまざまな栄養素が含まれています。具体的にどんな栄養素が含まれているのか、代表的なものを見てみましょう。
ビタミンC(アスコルビン酸)
抗酸化作用がある水溶性ビタミン。犬は体内で生成できますが、体調や年齢により食べ物で補うことが必要な場合もあります。
カリウム
細胞が正常に働くために重要なミネラル。正常に食事がとれている場合は、犬がカリウム不足になることはほとんどありません。カリウムは、過剰であっても不足であっても健康に問題が出てきます。愛犬にカリウムを補う必要があるのか知りたい場合や、日常的にグレープフルーツを与えたい場合は、まずかかりつけの動物病院で相談しましょう。
ソラレン
柑橘系の果物に含まれ、多量に摂取すると中毒を起こします。ただし、グレープフルーツの実に含まれるソラレンは非常に微量であり、犬に少量を与える分には問題ありません。外皮、その中の薄い皮(中果皮)など、実以外の部分には比較的多く含まれるので与えないようにしましょう。
リモネン
リモネンも、ゆずやレモンなど柑橘系の果物の皮に含まれる成分です。リモネン特有の爽やかな香りはリラックス効果があるとされ、人間用のアロマオイルなどに活用されています。ただし、グレープフルーツから抽出したアロマオイルは、犬の皮膚にとって刺激が強すぎる場合がありますので、使用には注意が必要です。基本的に、皮を食べさせたり皮の成分を犬に与えることは控えたほうが良いでしょう。
犬にグレープフルーツを与えるときの注意点は?
犬にグレープフルーツを与えるときは、必ず皮をむき、消化の悪い薄皮、白い筋、種をとって実の部分だけを与えてください。実の部分をあげるときは、まずごく少量から。房のまま与えるのではなく、小さく割いたりジュース状に潰したりしてあげましょう。
グレープフルーツの食べ過ぎは、消化器症状を引き起こす可能性があります。また、果物には果糖という糖分も含まれるので、果糖を摂りすぎることもおすすめできません。毎日、一定量与え続けるような習慣は避けましょう。
人間でも、グレープフルーツに砂糖をまぶして食べる人もいますよね。同じことをすると犬にとっては糖分が多すぎるので、犬にグレープフルーツをあげるときに砂糖を加えるのはやめましょう。
持病のある犬にグレープフルーツを与えても大丈夫?
薬を飲んでいる犬や持病のある犬は注意が必要です。人間の場合でも、お医者さんに「グレープフルーツジュースで薬を飲まないように」と言われますよね。これは、グレープフルーツに含まれる成分により、薬の代謝に影響があるためです。投薬中の場合は、かかりつけの動物病院に相談しましょう。
また、健康な犬であっても、グレープフルーツを好まない犬に強制して与えるのは、飼い主との絆づくりにプラスにならないのでやめましょう。あくまで、グレープフルーツで得られる健康面でのメリットは、他の食材で補うことが可能です。お腹を壊しやすい犬にも与えないことが無難です。
犬にグレープフルーツを与えることで発生する可能性のあるアレルギーや中毒症状はあるの?
グレープフルーツは基本的に犬にとって無害ですが、犬の体質や与えた量、部位によって、アレルギーや中毒を起こす可能性があります。症状はさまざまですが、体の痒みや消化器症状などが一般的です。また、中毒症状としては、元気消失、嘔吐、下痢などがあげられます。
グレープフルーツを食べた後に、犬が体調を崩した場合は速やかに動物病院を受診しましょう。また、皮がついたままのグレープフルーツを愛犬が誤食してしまった場合は、どの部位をどのくらい食べたのかをできる限り把握し、すぐに獣医師に相談してください。
犬にグレープフルーツを与える際の適量は?
体調や体質により、安全に食べられる量はそれぞれです。体調を見ながら数グラムから与え、1日に必要なカロリーの10%を越えない量までとするのが良いでしょう。
ただし、ネズミを用いた研究結果をもとに考えると、犬がグレープフルーツの実により中毒症状を起こすのは、体重1kg あたり1個以上を摂取した場合と計算できます。つまり、一般的には、グレープフルーツで中毒を起こすようなことはほとんどないと考えられます。
犬にグレープフルーツを与えるときのおすすめの方法は?
グレープフルーツには、硬い皮、薄皮、白い筋、果肉などさまざまな部位があります。犬に与える際には、果肉のみをあげるようにしましょう。食べやすいようカットしておいたほうが無難です。グレープフルーツは、おやつや夏場の水分補給としても活用できます。食べ過ぎは良くありませんが、愛犬がグレープフルーツを好んで食べる場合は時々の楽しみとして与えましょう。
犬にグレープフルーツを使用した加工食品を与えても大丈夫?
人間用に加工された食品は、犬にとって塩分や糖分が多すぎる傾向があります。グレープフルーツを使った加工食品はジュースやゼリーやアイスなどたくさんありますが、人間用に作られたものを犬に与えるのはやめておきましょう。