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いすみ動物病院 院長

ビタミンCたっぷりな冬の果物の代表、みかんは犬に与えていい食べ物です。オレンジ、はっさく、いよかんなどの柑橘類も、犬が食べられる果物として挙げられます。
今回は、獣医師の田中芳生先生のお話をもとに、みかんや柑橘類を犬に与える際の注意点、含まれる栄養素などについて解説します。
目次
- 犬にみかんを与えても大丈夫! 子犬や老犬(シニア犬)もOK
- みかんに含まれている栄養素と犬に与える健康面のメリットは?
- 犬にみかんを与える際の適量
- 薄皮や皮、種は必ず取り除いて! 犬にみかんを与える際の注意点
- 持病のある犬にみかんを与えても大丈夫?
- みかんを食べてアレルギーや中毒症状を起こす犬はいる?
- 犬にオレンジやグレープフルーツなどの、ほかの柑橘類を与えても大丈夫?
- 犬にみかんジュースなど、みかんを加工した食品を与えても大丈夫?
- みかんの薄皮が簡単にむけるカッターや、おすすめのおやつも!
- まとめ
- 犬が食べても良い果物・食べてはいけない果物
犬にみかんを与えても大丈夫! 子犬や老犬(シニア犬)もOK
甘みと酸味のバランスの良いみかんは、私たち人間にとっては非常になじみ深い果物です。12月ごろに旬を迎えるため、冬から初春にかけて家に常備しているという方も少なくないでしょう。
みかんはビタミンCを多く含み、ビタミンCの働きとして免疫機能の維持や血管の健康サポートなどの効果が期待できます。「毎日食べれば風邪知らず」と言われるほど、栄養豊富なイメージのある果物です。そんなみかんを、愛犬に食べさせてあげたいと思う人もいるはずです。
みかんはアレルギーを持つ犬でなければ、食べさせても大丈夫な果物です。ただし、外側の硬い皮や種には犬にとって中毒性のある物質、ソラレンが含まれています。必ず取り除いてから与えるようにしましょう。
果肉部分には、犬が中毒を起こす成分は含まれていません。ただし、食物繊維が豊富で消化不良や下痢を起こしやすいので、与える場合は少量にとどめましょう。酸味が苦手な犬もいますから、無理に与える必要はありません。初めて与える場合はごく少量からにして、変わった様子がないかよく見ておきましょう。
子犬や老犬(シニア犬)にみかんを与えてもOK
みかんアレルギーがない犬であれば、子犬や老犬(シニア犬)であってもみかんを与えることは可能です。シニア犬はビタミンCが不足しがちになるため、ビタミンCを補給させたい場合は与えても良いでしょう。
ただし、みかんにはビタミンCだけでなく、食物繊維や水分も多く含まれており、犬にとっては消化しにくい食べ物です。消化器官がまだ発達していない子犬や、加齢によって消化機能が衰えた老犬は、健康な成犬よりも下痢や嘔吐などの消化不良を起こしやすい傾向にあります。与える量には十分注意してください。
みかんに含まれている栄養素と犬に与える健康面のメリットは?
みかんに含まれる代表的な栄養素はビタミンCです。とはいえ、犬は体内でビタミンCを生成できるため、必ずしも食べ物からビタミンCを摂取しなければならないわけではありません。
ただし、激しい運動の後やストレスを感じているとき、年齢を重ねたときは、体内のビタミンC量が減少します。また、全ての犬が必要な量を合成できるわけではないため、食べ物から補った方が良い場合もあります。
ビタミンCには抗酸化作用があるため、アンチエイジング効果や動脈硬化の予防、免疫力のアップが期待できます。また、コラーゲンの生成にも関わっているため、皮膚や関節のケアにも効果的です。
ほかにも、みかんには以下のような栄養素が含まれます。
β-クリプトキサンチン
果汁に含まれるβ-クリプトキサンチンは、カロテノイドの一種。カロテノイドとは動物や植物に存在する赤色や黄色の色素で、抗酸化作用を持つことで知られています。
なお、犬にも同じ効果があるのかはまだ分かっていませんが、人間に関してはβ-クリプトキサンチンの摂取量が多い人は糖尿病、肺がんなどの発症リスクが低いこともわかっています。
※参考:国産カンキツ類に多いβ-クリプトキサンチンと機能性食品の開発 生鮮物で初めての機能性表示食品、化学と生物 Vol. 55, No. 8, 2017
農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門 杉浦 実
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/55/8/55_566/_pdf
クエン酸
みかんには酸味成分であるクエン酸が含まれます。クエン酸にはエネルギーの補給や、疲労回復を助ける効果があります。
カリウム
みかんをはじめとする生の果物・野菜に多く含まれるカリウムは、体内で過剰なナトリウムを排泄したり、酵素を活性化したりする働きがあります。
ただし、シニア犬や腎疾患、心疾患を持つ犬は、腎臓がカリウムをうまくろ過できず、血中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」を発症するリスクがあります。高カリウム血症はしびれ、嘔吐、筋力低下、不整脈などの症状が起こる病気です。これらの心配がある犬や、療法食を与えている犬の場合は獣医師に相談しましょう。
ペクチン
ペクチンは水溶性食物繊維の一種で、みかんの筋や薄皮に多く含まれています。糖分の吸収を抑制して、血糖値の上昇を抑える効果があるとされます。さらに、便のかさを増して腸のぜん動運動を促進し、便通を改善してくれます。
ヘスペリジン
ヘスペリジンはビタミンPとも呼ばれる、ポリフェノールの一種です。みかんの筋や薄皮に多く含まれています。血管の柔軟性を高めて、血流を改善する作用があることが分かっています。冷え性の改善や血圧上昇抑制、中性脂肪低下などさまざまな効果があるとされます。漢方薬では陳皮として使われている成分です。
犬にみかんを与える際の適量
みかんに限らず、犬に与えるおやつは1日に必要なカロリーの10%程度が限度とされています。1日に必要なカロリーは犬の体重によって異なるため、愛犬が1日何キロカロリーを必要とするのか、おやつは何キロカロリーまで与えていいのかを計算してみましょう。
ただし、みかんはカロリーが低めのため、1日に必要なカロリーの10%で計算すると単純計算では食べても良い量が多くなり過ぎてしまいます。水分が多く、食物繊維も豊富なので、食べ過ぎはおなかを壊す原因に。与えるのはご飯のトッピングやおやつ程度の、わずかな量にとどめましょう。
犬の大きさごとの目安量
1日分のみかんの目安量は以下のものになります。「これだけの量を与えなくてはならない」というものではなく、あくまで上限と考えてください。
体重3kg程度の小型犬
0.5個
体重10kg程度の中型犬
1.3個
体重30kg程度の大型犬
3.5個
薄皮や皮、種は必ず取り除いて! 犬にみかんを与える際の注意点
犬にみかんを与える際にはいくつか注意点があります。
薄皮や皮・種は必ず取り除く
「みかんは薄皮ごと食べる」という飼い主さんも少なくないのではないでしょうか。人間にとっては「体に良い」とされがちな薄皮ですが、犬にみかんを与える際には必ず取り除きましょう。その理由は、薄皮や薄皮についた白い筋が、犬にとって消化の負担になるためです。
また、外側の硬い皮や種にはソラレンが含まれているため、与えると中毒症状を引き起こす可能性もあります。いずれも必ず取り除き、果実のみを与えるようにしてください。
細かく刻んでから与える
犬は食べ物を丸呑みしやすい習性があります。食道に詰まらせたり窒息を起こしたりしないように、みかんは細かく刻んでから与えてあげましょう。
青いみかんには要注意!
熟していないみかんには、アクの成分であるアルカロイドが多く含まれています。アルカロイドは犬の体にとっては有害な物質であり、摂取すると下痢や嘔吐などの症状を引き起こすおそれも。みかんを与えたいときは、必ず完熟した状態のものを選ぶようにしてください。
持病のある犬にみかんを与えても大丈夫?
持病がある犬には、みかんを与えるのに注意が必要な場合もあります。まず、当然ながら、みかんアレルギーを持つ犬にはみかんを与えることはできません。
また、みかんには多くの糖質が含まれます。糖尿病や腫瘍、心臓病を患っている場合など、糖質を控えなくてはならない犬には与えない方が無難です。肥満の場合も控えるようにしてください。
ほかに、みかんにはカリウムも多く含まれています。前述のとおり、腎臓に障害がある場合はカリウムを十分に排泄できなくなるため、高カリウム血症による不整脈や、最悪の場合心臓の動きが止まる可能性があります。カリウム制限を行っている犬には、みかんは与えない方が良いでしょう。
薬を服用している犬にはみかんを与えない方がいい?
柑橘類のフルーツと薬は飲み合わせが悪いと言われていますが、これは「フラノクマリン」というグレープフルーツなどの一部の柑橘類に含まれている成分によるものです。
実は、世間一般で「みかん」として流通している「温州みかん」にはこの成分が含まれていません。そのため、薬を服用している犬にみかんを食べさせても問題はありませんが、念のため獣医師に相談してからにしましょう。
ただし、はっさくやダイダイ、夏みかんには「フラノクマリン」が含まれています。持病があって抗菌薬や免疫抑制薬などの薬を服用している犬には、これらの柑橘類を食べさせないように注意してください。
みかんを食べてアレルギーや中毒症状を起こす犬はいる?
みかんにアレルギーを持つ犬もいます。初めて与えるときは、少量ずつ与えるようにしましょう。万が一下痢や嘔吐、口の周りや顔を痒がるなどの症状が出た場合には、早めに獣医師に相談してください。
アレルギーがない場合も、外側の皮や種に含まれるソラレンの中毒には注意が必要です。大量に摂取した場合は、やはり下痢や嘔吐などの症状が現れる可能性があります。消化不良を起こしやすい薄皮も含めて必ず取り除き、果実のみを与えましょう。
なお、みかんが好きな犬もいるため、犬が触れやすい場所に置いておくと興味を持って食べてしまう可能性があります。消化不良や中毒、窒息や食道閉塞のリスクを考慮し、みかんは犬が取り出せない場所に保管しておきましょう。
犬にオレンジやグレープフルーツなどの、ほかの柑橘類を与えても大丈夫?
みかんの仲間である柑橘類は、みかんと同じように犬に与えても問題はないのでしょうか? 与えてもOKな柑橘類をご紹介します。
犬に与えても問題のない柑橘類
与えても良い柑橘類としてはオレンジ、はっさく、デコポン、いよかん、ボンタン、ポンカン、夏みかんなどが挙げられます。ただし、みかん同様に皮や種は必ず取り除くこき、果肉のみを与えるようにしましょう。
また、柑橘類は酸味が強いため、与えすぎると消化不良や下痢を引き起こす可能性があります。少量から様子を見ながら与え、体調に変化がないか注意します。少しでも普段と違う様子を感じた場合は与えるのを中止し、動物病院を受診しましょう。酸味があることで柑橘類が苦手な犬もいますから、無理に与えるのは禁物です。
さらに、グレープフルーツは薬との飲み合わせがよくないことがあるので要注意です。前述のように、持病があって抗菌薬や免疫抑制薬などの薬を服用している犬が食べられない柑橘類もあります。アレルギー反応を示す犬もいるため、初めて与える場合は動物病院が開いている午前中に少量与えるなど、慎重に。詳しくはかかりつけの動物病院にご相談ください。
犬に食べさせてもいい柑橘類や果物に関しては、以下の情報も参考にしてください。
犬にみかんジュースなど、みかんを加工した食品を与えても大丈夫?
生のみかん自体は犬が食べても問題のない食べ物ですが、みかんの加工品には与えない方が良いものも多く含まれます。砂糖や牛乳、キシリトールが含まれるものが少なくないため、与えないようにしましょう。
みかんゼリー
砂糖が多く使われているため、肥満の原因となります。また、みかんゼリーにはキシリトールが添加されているものもあります。キシリトール入りのものは絶対に与えないようにしましょう。
みかんジュース
無糖の100%ジュースを例えば小型犬であれば小さじ1杯程度など、少量与えるのは構いませんが、砂糖や添加物が入ったみかん味の清涼飲料水はNGです。また、100%ジュースであっても、飲ませ過ぎには注意しましょう。
みかんの缶詰
缶詰入りのみかんは外側の皮や薄皮、種がなく、一見食べさせやすそうですが、犬には与えないでください。みかんのシロップには大量の砂糖が含まれるため、肥満の原因になります。
冷凍みかん
みかんは体の熱を取る食べ物ですが、凍らせた冷凍みかんはさらに体を冷やします。下痢の原因になるため、犬には与えないでください。
みかんアイスクリーム
アイスクリームは糖分が非常に多く、肥満の原因になります。また、犬が下痢しやすい牛乳を含むものも少なくありません。犬に与えるのは控えましょう。
みかんの薄皮が簡単にむけるカッターや、おすすめのおやつも!
カインズのオンラインショップでは、みかんの薄皮が簡単にむけるオレンジカッターを取り扱っています。愛犬にみかんを与える際は消化不良の原因となる薄皮を取り除いて果肉の部分のみにするのがおすすめです。薄皮をラクに処理したい方はぜひチェックしてみてくださいね。
みかんが原材料のおやつもあります。特に頑張ったトレーニングのごほうびにいかがでしょうか。
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※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
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※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
まとめ
みかんは犬の好きな甘みがあり栄養も豊富な果物ですが、与え過ぎは糖分過多になる可能性があります。与えてもいい量は1日の最大量と理解し、愛犬のお腹がゆるくならないようにたまの楽しみとして、少量にとどめておきましょう。
また、犬が興味を持ってすぐに触れる場所に放置しないよう、みかんの置き場所には気を付けてくださいね。