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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
人間と同じように、犬も水を飲まないと生きていけません。家で過ごす間はもちろん、散歩中やお出かけ先でも適切な水分補給が大切です。飼い主の中には、「水道水ってそのままあげていいの?」「散歩中に自販機で買ったミネラルウォーターは平気?」と迷ったことがある人もいるのでは。今回は、犬が飲んでもいい水とそうでない水について、獣医師の堂山有里先生に伺ったポイントを解説します。
目次
- 犬に水道水やミネラルウォーターを与えても大丈夫?
- 犬にミネラルウォーターを与えることで、尿路結石のリスクはある?
- 子犬やシニア犬に水道水やミネラルウォーターを与えても大丈夫?
- 水道水やミネラルウォーターを与えない方がいい犬は?
- 犬に水道水やミネラルウォーターを与える前に気を付けることは?
- 犬にウォーターサーバーの天然水やRO水を与えても大丈夫?
- 犬に飲ませるのを避けた方がいい水は?
- 犬の水の飲み方によって病気が疑われる場合は?
犬に水道水やミネラルウォーターを与えても大丈夫?
いずれも犬が飲んでも大丈夫です。ただし、犬にミネラルウォーターを与える際は、まず水源や硬度のチェックをしてください。
ミネラルウォーターは一般的に、マグネシウムやカルシウムといったミネラルを含んでいるのが特徴です。含まれるミネラル量によって軟水、硬水、超硬水と分類されます。同じメーカーの水でも、ボトルごとに水源が異なったり含まれるミネラルの量に差があったりします。
中でも、ミネラル量が非常に多い「超硬水」は、犬が飲むと軟便になったり独特の風味を嫌がったりします。日本の水は基本的に軟水なので、超硬水をあえて選んで飲ませる必要はないでしょう。ただし、他に飲むものがない非常時に、水分として少量飲む分には問題ありません。
犬にミネラルウォーターを与えることで、尿路結石のリスクはある?
ミネラルウォーターに含まれているミネラル成分によって、犬が尿路結石になるリスクが上がるのではと心配される方もいます。しかしミネラルウォーターに含まれるミネラルはとても微量であるため、基本的には犬が飲んでも問題ありません。
獣医学においても、犬がミネラルウォーターを飲むことで尿路結石になると明確に示した研究報告は今のところありません。ミネラルが極端に多い水や少ない水ではなく、体にとってミネラルバランスの良い水を適切に摂取することが良いと考えられます。
子犬やシニア犬に水道水やミネラルウォーターを与えても大丈夫?
基本的には問題ありません。子犬は胃腸の発達が不十分で、下痢や嘔吐を起こしやすいため超硬水は与えない方が良いでしょう。シニア犬は、胃腸機能が落ちている場合が多いです。子犬同様、超硬水は避けて飲みなれた水を飲ませてあげてください。
水道水やミネラルウォーターを与えない方がいい犬は?
持病や体質、犬種などによって、水道水やミネラルウォーターを与えない方がいい犬はいません。アレルギー症状を起こすこともないので、水の種類と与え方にだけ気をつけながら飲ませてあげてください。
犬に水道水やミネラルウォーターを与える前に気を付けることは?
日本の水道水は品質が厳しく管理されているので、そのままでも安心して飲ませることができます。もし、カルキを抜いてから与えたい場合は、水道から出して丸1日おきましょう。ただ、カルキが抜けた水は雑菌が増えやすいため、長時間経過したものは犬が飲むのに適しません。
愛犬に飲ませる前に特別なことをするより、新鮮で清潔な水を与えるよう徹底しましょう。特に、犬が舐める器は定期的にしっかりと洗浄を。サークルやクレートに吊るすタイプの給水器を使っている場合も、水を入れっぱなしの状態で数日おくのは禁物です。毎日きれいな水に取り替えてあげてください。
犬にウォーターサーバーの天然水やRO水を与えても大丈夫?
ウォーターサーバーに使われている水は、RO水と天然水が一般的です。基本的には、どちらの水も犬に与えて問題ありません。
RO水
RO膜処理を施しほとんどすべての不純物を除去した水のことです。限りなく純水に近いか、人工的に後からミネラルを追加しているものもあります。カルシウムやマグネシウムといったミネラルは身体づくりに必要ですので、あえてミネラルを全く含まない純水を飲ませる必要はないと考えられます。
天然水
ミネラルウォーターのうち、ナチュラルウォーターやナチュラルミネラルウォーターに該当します。特定の水源から採取された地下水を指し、採水後に安全に飲めるようろ過・加熱殺菌などの処理を行って不純物を排除したものです。一部のRO水とは異なり、ミネラルの添加はされていません。水源によって水の硬度に差はありますが、比較的低めの軟水が多いので犬が飲んでも大丈夫です。
犬に飲ませるのを避けた方がいい水は?
水にもさまざまな種類がありますが、下記の水を与える際は特に注意しましょう。
井戸水
井戸水ごとに水質に差があります。きれいに見える井戸水でも、食中毒や感染症を起こす病原菌が含まれていることがあるので注意が必要です。定期的に水質検査を受け、安全が確認されている井戸水でない限り、与えるのは避けましょう。
超硬水
硬水ならほとんど問題はありませんが、超硬水まで硬度が高くなるとお腹がゆるくなる他、風味が変わって飲みづらくなるためおすすめしません。ただし、他に飲み水がない緊急時に、少量飲むくらいであれば問題ありません。
温泉水
地熱によって温められた25℃以上の地下水を指します。市販されている温泉水は、ろ過されて味も整えられているものがほとんどですが、中には自然の温泉水にほぼ手を加えず飲用にしているものもあります。
犬にとって温泉水の効能はまだ解明されていません。ただ、シリカが多い温泉水はある種の尿路結石の原因となる可能性が指摘されているため、現段階では飲ませないほうが無難です。
水たまり・海や川・プールの水
さまざまな雑菌や寄生虫、犬の健康への効果が解明されていない成分が含まれる可能性があります。犬の飲み水としては適しません。
炭酸水
犬が飲んでも特に問題はありませんが、炭酸によってお腹が膨れやすくなります。また、「炭酸飲料」と名前が付いているものは糖分で甘みをつけてあるため犬の飲用には適しません。誤飲などで少量飲んでしまう程度であれば特に問題は起きません。
人用のフレーバー水
ミネラルウォーターに、果物やハーブなどを入れた飲み物を指します。ほんのりと味や香りが付いているため、リラックス効果や溶け出した成分による美容効果を期待されるものですが、犬が飲んでも同じ効果が得られるかは不明です。飲ませる前に、犬が摂取してはいけないフルーツやハーブを含んでいないか確認しましょう。
人用の経口補水液
糖分が多すぎるため、犬の常用の飲み水には適しません。一時的に少量飲むくらいなら大丈夫です。
水素水
水素水の健康への効果はまだ科学的に証明されていませんが、悪影響も報告されてはいません。犬の健康にとってどういった効果があるのかは未知数ですが、犬が飲んでも特に問題はないと思われます。
犬の水の飲み方によって病気が疑われる場合は?
愛犬が水を飲みすぎている、またはほとんど飲まない場合は、それぞれ考えられる病気が異なります。
犬が水を飲みすぎる場合
基本的に、室温が高いとき、犬が「ハアハア」と浅く速く呼吸をする"パンティング”をしているとき、たくさん運動した後などは自然に飲む水の量が増えます。目安として犬の体重1kgあたり100ccを超える水を飲む場合は、クッシング症候群などのホルモン異常や糖尿病、腎臓病、尿崩症のほか、精神的な病気にかかっている疑いがあります。
犬が水を飲んでくれない場合
犬があまり水を飲まないことで、ただちに病気が疑われることはあまりありません。寒い季節は自然と飲む水の量が減りますし、シニア犬、ウエットフードを食べている犬、手作り食を与えている犬も同様です。
ただし、ドライフードを食べているのに水をあまり飲まずにいると、慢性的に体が脱水しがちになり尿石症や膀胱炎のほかさまざまな病気の原因となることがあります。水分摂取を増やすことで涙焼けが解消したり口臭が少なくなったりする犬もいるため、犬の飲水量が標準を下回るときは水を飲みたくなるよう工夫すると良いでしょう。
犬に水分を摂らせる方法
犬がなかなか水を飲んでくれない場合は、ドッグフードに水をかけて食事と一緒に水分を摂らせる、肉や魚で出汁をとったスープを飲ませるなどの方法も有効です。鶏のささみや胸肉を茹でたスープを、ドライフードにかけると喜んで飲んでくれる犬も多いです。
また、暑がりの犬には水を氷で与えるのもおすすめ。犬が楽な姿勢で水を飲めるよう器を台の上に置くなど容器や水飲み場所を変えて様子を見るのもいいでしょう。
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