犬はパイナップルを食べても大丈夫！与えるメリットや注意点、アレルギー、適量を解説【獣医師監修】

2025年03月12日公開

川村康浩（獣医師）

川村動物クリニック院長／いばらきどうぶつ看護センター管理獣医師

パイナップルは犬も食べられる果物です。パイナップルは、そのまま食べるのはもちろん、ジュースやスムージーにしてもおいしくいただけますね。ビタミンも豊富で健康にいいイメージのあるフルーツなので、愛犬にも食べさせたいと考える飼い主さんも少なくないはずです。

今回は、犬の健康維持に役立つ栄養成分が含まれるパイナップルのおすすめの与え方、1日の適量やアレルギーなどの注意点について、獣医師の川村康浩先生に詳しくお聞きしました。

犬はパイナップルを食べていい！
パイナップルに含まれている栄養素と犬に与える効用やメリットは？
犬にパイナップルを与える際の適量は？
犬にパイナップルをあげるときの注意点は？皮は与えても大丈夫？
犬はパイナップルを食べるとアレルギーや中毒症状になる？
犬に与えるパイナップルの選び方
犬に缶詰などパイナップルを使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫？
愛犬におすすめの果物おやつ
まとめ
犬が食べても良い果物・食べてはいけない果物

犬はパイナップルを食べていい！

犬はパイナップルを食べても大丈夫です。パイナップルには、犬にとって中毒を引き起こす物質は含まれていません。また、パイナップルは、ビタミンCやビタミンB群といったビタミンをはじめ、ミネラル、食物繊維、クエン酸など多くの栄養素を含んでいるため、愛犬の免疫力アップや健康の維持につながるでしょう。

ただし、子犬やシニア犬は、食べ物を噛んだり飲みこんだりする力が十分でない可能性があるので、パイナップルを与える際は、みじん切りにするなどの工夫が必要です。

また、パイナップルは食物繊維を多く含んでいるため、消化器官が未発達な子犬、消化吸収能力が落ちているシニア犬には与えないか、与える場合もごく少量にとどめましょう。

なお、パイナップルは糖分が高いので、ダイエット中の犬や糖尿病の既往がある犬は避けたほうがいいでしょう。さらに、肥満傾向の犬にはカロリー管理が必要であるため、パイナップルの摂取量を厳密にコントロールするか、別の低カロリーの果物を検討するのが良いでしょう。また、糖分の摂取が腸内環境に与える影響も考慮し、与えた後の便の状態を確認してください。

パイナップルを食べるとタンパク質分解酵素によって口腔粘膜が分解され、そこにパイナップルに含まれているクエン酸が刺激となり、口の中がチクチクしてしまいます。口腔内に傷がある犬、口腔内手術直後の犬も避けたほうがいいといえます。

犬に与えても大丈夫な果物、絶対与えてはいけない果物については以下の記事も参考にしてください。

パイナップルに含まれている栄養素と犬に与える効用やメリットは？

パイナップルに含まれる主な栄養素は下記のとおりです。

ビタミンC

コラーゲン生成作用による傷の治癒や健康な骨や筋肉、血管の維持に役立ちます。また、抗酸化作用によるがんや動脈硬化の予防、老化防止、副腎皮質合成作用による免疫力の向上も期待できます。

ビタミンB群

ビタミンB1、B6、パントテン酸（ビタミンB5）、ナイアシン（水溶性ビタミンB群）を多く含みます。

ビタミンB1は脳や神経の働きや糖質の代謝を助け、末梢神経の機能を正常に保ちます。ビタミンB6はタンパク質の分解を助け、免疫機能の正常な働きの維持に関わります。パントテン酸はエネルギー代謝に欠かせない栄養素で、抗ストレス作用がある副腎皮質ホルモンの合成にも関わるため、「抗ストレスビタミン」とも呼ばれます。ナイアシンは水溶性ビタミンB群の一つで、補酵素としてエネルギーの産生、糖質や脂質、タンパク質の代謝、DNAの修復や合成などさまざまな機能に関わっています。

クエン酸

酸味の元となる成分で、体内のエネルギーを生み出す働きがあります。唾液や胃酸の分泌量を増やしたり、疲労を回復したりする効果があるほか、カルシウムや鉄などの吸収を助ける役割も果たします。

食物繊維

パイナップルに含まれる食物繊維は、水に溶けない不溶性食物繊維です。不溶性食物繊維は胃や腸の水分を吸収すると膨らみ、大腸を刺激することによって便秘を改善できたり、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えたりする働きがあります。

ミネラル（マンガン、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど）

パイナップルはマンガンの含有量が非常に高い果物です。マンガンはカルシウムの吸収を促進し、骨や関節を補強します、また、骨や関節の結合組織を合成する際に働く酵素の補酵素としても働きます。

カリウムは体液の浸透圧を調整して、血圧を安定させる役割を果たします。マグネシウムは骨の生成に重要な働きを持ち、血圧や体温を調整したり、栄養素の代謝を促進したりします。カルシウムは骨や歯の形成に欠かせない栄養素で、神経や筋肉の活動もサポートします。

タンパク質分解酵素ブロメリン（ブロメライン）

非常に強力なタンパク分解酵素で、肉や魚といったタンパク質の消化を促進し、消化不良の予防につながります。しかし、60℃以上の熱が加えられた後には活性が低下してしまうので、加熱して与えた場合には効果がありません。

犬にパイナップルを与える際の適量は？

犬に果物を与える場合、1日のカロリー摂取量の10％を超えないようにすることが一つの目安です。1日に摂取していいパイナップルの適量は以下のようになります。ちなみに、カットパイン一切れが約15gです。

小型犬（体重5kg程度）
約25g

中型犬（体重10kg程度）
約40g

大型犬（体重20kg）
約70g

この数字はあくまでも目安です。あくまでおやつ程度の量とし、与え過ぎは避けて年齢や健康状態なども加味して調整しましょう。初めて与える際は、1cm角にカットした果肉を1〜2個程度から始め、体調や便の状態を確認しながら量を調整してください。冷凍パイナップルを解凍して与えることで、夏場の熱中症対策にも活用できますが、冷えすぎた果物は胃腸に負担をかけるため注意が必要です。

また、パイナップルは糖分が豊富なので、糖尿病や糖尿病のリスクのある犬、肥満の犬は控えた方がよいでしょう。食物繊維も多いため、消化器系の病気やトラブルが心配な場合も避けておきましょう。

犬にパイナップルをあげるときの注意点は？皮は与えても大丈夫？

犬にパイナップルを与える際にはいくつか注意点があります。気を付けるべきことを見ていきましょう。

芯は与えない

パイナップルの芯は非常に硬く、犬が噛むと歯が折れる可能性や、誤飲してしまうと消化不良の原因や消化器官を傷つける恐れがあるため、取り扱いには注意が必要です。しかし、消化不良の予防になるタンパク質分解酵素・ブロメリン（ブロメライン）が最も含まれるのも芯の部分です。もし与える際は、スムージー状にしてから与えるようにしましょう。

皮を与えない

パイナップルの果皮にはトゲがあるため、必ず皮をむいてから与えてください。果肉もほかのフルーツに比べて硬いので、犬が丸飲みしても喉に引っかかることのないぐらい細かく切ってあげましょう。しかし、与え過ぎると糖分や食物繊維の過剰摂取となり、下痢や嘔吐を引き起こすこともあるので注意が必要です。

犬はパイナップルを食べるとアレルギーや中毒症状になる？

愛犬が、必ずしもパイナップルに対してアレルギー症状が出ないとは言い切れません。パイナップルアレルギーが疑われる場合、皮膚の赤みや腫れ、吐き気、下痢などの症状が現れることがあります。これらの症状が見られた場合は、速やかに動物病院で診断を受け、必要に応じてアレルギー検査を依頼してください。

あくまで人間における研究結果ですが、小麦アレルギーをもつ人間はブロメリン（ブロメライン）に対してもアレルギーを起こすことがあるという論文もあります。なので、念のため小麦アレルギーをもっている犬にパイナップルを与えることは避けたほうがいいかもしれません。

特に、愛犬に初めてパイナップルを与える際は少量からスタートし、アレルギー症状が発症しないか、反応を注意深く観察しましょう。アレルギーをもっているかは検査しないと分からないので、かかりつけの動物病院が開いている時間帯に少量与えるとよいでしょう。

犬に与えるパイナップルの選び方

パイナップルはあまり日持ちしない上、メロンやバナナのように追熟することもありません。そのため、店頭で選ぶ際はしっかり熟したパイナップルを選び、早めに愛犬に与えるようにしましょう。

ちなみにパイナップルは、果皮が黄色いからといって必ずしも熟しているとは限りません。完熟したパイナップルは皮をむかなくても甘い香りがし、お尻に弾力がありますので選ぶ際の参考にしてみてください。

犬に缶詰などパイナップルを使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫？

パイナップルの缶詰やジュース、ジャムやドライフルーツなど人間用の加工食品は、面倒な下ごしらえも不要で便利だと思うかもしれません。しかし缶詰のシロップ漬けには高濃度の糖分が含まれており、急激な血糖値の上昇や肥満の原因となることがあります。また、ドライフルーツの場合も、砂糖をまぶした製品が多いため、犬には適さない食品といえるでしょう。

犬用として販売されている果物おやつであれば、栄養バランスを考慮して作られているため、安全性が高いといえます。ただし、添加物や保存料が多く使用されているものは避け、糖質の量が普段のドッグフードと大きく異ならないか、パッケージの原材料を確認しながら普段の食生活と調整することが大切です。

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