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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
愛犬の健康状態、毎日きちんとチェックできていますか? ごはんの食べ方や歩き方、寝つきの様子をチェックするのはもちろんですが、実は毎日の「おしっこ」にも愛犬の体調を知る大切な情報が隠されています。この記事では、獣医師の茂木千恵先生に、おしっこの色や量から読み取れる健康サインと、家庭で手軽にできる健康管理法について伺いました。
目次
- ときには病気の発見も? 愛犬のおしっこから、何がわかる?
- 一般的な犬の健康状態を尿からチェックする方法
- 自宅でpHを手軽に計測!カインズの「おしっこチェック ペットシーツ」とは
- 犬のおしっこのpHが変化する要因とは
- おしっこチェック ペットシーツのおすすめの使用方法
- おしっこチェック ペットシーツを使用するタイミング
- 愛犬にいつまでも健康で一緒にいてもらうための予防と管理
- おしっこチェック ペットシーツ使用上の注意点
- 実際におしっこチェック ペットシーツを使ってみた感想(筆者の場合)
- まとめ
ときには病気の発見も? 愛犬のおしっこから、何がわかる?
実は、犬の健康状態を知る上で、おしっこは重要な指標です。特に、チェックしたいポイントは、おしっこの回数、量、飲水量、ニオイ、pHの値。pHとは、水素イオン濃度のことで、愛犬の健康状態によって、おしっこが酸性またはアルカリ性に偏っていないかを確認する指標です。
これまで、犬のおしっこのpHを調べるには、pH試験紙やpHチェッカーを使うか、動物病院で検査してもらうしかありませんでした。しかし、pH試験紙やpHチェッカーは、まずカップでおしっこを採取する必要があり、手間がかかります。動物病院での検査は、費用も時間もかかるので、頻繁に行くのは難しいという飼い主さんも多いのではないでしょうか。
「もっと手軽に、そして気軽にチェックできる方法があれば…」そんな悩みを解決してくれるのが、今回カインズから発売された「おしっこチェック ペットシーツ」です。
愛犬のおしっこから、具体的にどのようなことがわかるのでしょうか? また、おしっこチェックシーツを活用すると、従来の健康チェックはどのように変わるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。
一般的な犬の健康状態を尿からチェックする方法
これまで、愛犬の健康状態をおしっこからチェックする方法としては、主に以下の4つのポイントが一般的でした。
1 おしっこの回数(頻度)
おしっこの回数だけでなく、量にも注意を払いましょう。健康な犬は、体重1kgあたり20〜45mlのおしっこをします。
一般的に乏尿(ぼうにょう:おしっこの量が少ない)は1時間あたり、体重1kgあたり0.5ml未満の尿量と定義されています*。例えば、体重10kgの愛犬の場合、1時間に出る尿量が5ml未満であれば、乏尿と呼ばれる状態となり、腎不全の可能性があります。
また、健康な犬の尿量を推定するための基準として、1日の水分摂取量とそれに関連する尿の希釈度(尿比重や尿浸透圧)が用いられています。健康な犬では、1日の水分摂取量(飲水、食事中の水分、代謝水を含む)は、体重1kgあたり約63〜73mLとされています。
尿比重とは、尿の濃さを示す指標です。尿量をチェックする際は、尿比重も合わせて確認することで、水分摂取が犬の健康に与える影響をより正確に把握することができます。しかし、尿比重は一般家庭で調べることが難しいため、ほかの要因を総合的に観察することで対処します。
*出典:Zhao, Bing-Cheng, et al. "Assessment of prognostic value of intraoperative oliguria for postoperative acute kidney injury: a retrospective cohort study." British Journal of Anaesthesia 126.4 (2021): 799-807.
2 水分摂取量
愛犬の健康状態を知る上で、水分摂取量の把握は非常に重要です。どれくらい水を飲んでいるのか、そしておしっこの量とのバランスは取れているのかを、日々意識することが大切です。
普段から計量カップやペットボトルを使って、どのくらい水を与えたか記録しておくことをおすすめします。目盛り付きの水皿や計量カップを使って、1日の水分摂取量を把握するようにしましょう。
先ほども触れましたが、健康な犬は1日に体重1kgあたり約63〜73mlの水分を摂取します。これは飲み水だけでなく、食事に含まれる水分や、体内で作られる代謝水も含まれた数字です。
水分摂取量が少ないと、尿が濃縮され、尿路結石のリスクが高まる可能性があります。また、おしっこの状態も変動しやすくなり、健康状態を正しく把握することが難しくなります。
愛犬が水をあまり飲んでくれないと悩んでいる飼い主さんもいるかもしれません。そんなときは、愛犬が十分な水分を摂取できるよう、工夫しながらサポートしてあげましょう。
>犬が水を飲まない理由とその対処法 。水分補給におすすめのトッピング食材5選
3 おしっこの色
愛犬の健康を知る上で、おしっこの色は重要なポイントです。 健康な犬のおしっこは黄色をしているのが一般的。朝起きたときや運動後など、一時的に濃い黄色になることもありますが、これは通常問題ありません。
しかし以下のような異常が見られ、続く場合は、 病気の可能性があるため注意が必要です。
- 濃い黄色が続いている
- 赤みがかっている(血尿の可能性)
- 白濁している
- キラキラとしたものが混ざっている(結石の兆候)
- 色がほとんどない(水のように透明)
愛犬のおしっこの状態を日頃から観察し、異常があれば早めに動物病院を受診しましょう。
おしっこの色味は、愛犬の健康状態を伝える大切なサインです。普段の色味をしっかりと観察し、小さな変化も見逃さないようにしましょう。
4 おしっこのニオイ
おしっこのニオイにも、愛犬の健康状態を知るヒントが隠されています。普段から注意を払うことで、体調の変化を早期に発見できるかもしれません。
消臭効果のあるペットシーツを使っていても、おしっこの直後ならニオイを感じ取りやすいでしょう。 特に以下のような変化があれば注意が必要です。
- 異常に強いニオイがする
- 刺激的で鼻を突くような独特のニオイがある