更新 ( 公開)
日本獣医生命科学大学獣医学部卒業 / 西葛西ペットクリニック勤務

栄養豊富なにんじんは、犬に与えても大丈夫な野菜です。調理しやすい点も魅力で、家庭でもよく使われる緑黄色野菜のひとつですよね。
今回は獣医師の佐藤志津佳先生に、にんじんを与える場合の注意点や摂取量の目安、健康維持に役立つ栄養素などについて解説していただきます。
目次
- 犬に加熱したにんじんを与えても大丈夫! 子犬やシニア犬への与え方
- にんじんの栄養素と犬に与える健康面でのメリットとは?
- 犬ににんじんを与えるときの1日の摂取量の目安は?
- 犬ににんじんを与える際のおすすめの与え方
- 犬ににんじんを使用した加工食品を与える際は、ネギ類に注意!
- 犬ににんじんを与える際はアレルギーに注意! ジュースやチップスなどの加工食品は犬用を選んで
- にんじんを使ったおやつや、にんじんの形をしたおもちゃも!
- 犬が食べても大丈夫な野菜
- まとめ
犬に加熱したにんじんを与えても大丈夫! 子犬やシニア犬への与え方
ビタミンなどが豊富に含まれ、緑黄色野菜の中でも人気の高いにんじん。サラダやスープ、煮物など、レシピもさまざまで味にバリエーションがあり、「これなら味付けを変えて愛犬も飽きずに食べられるかも!」と思う方も多いのではないでしょうか。
人間用の味付けのまま与えることは推奨できませんが、にんじんは犬の健康維持に役立つ栄養素が含まれており、たまのごほうびや食事の副菜として彩りを加えるのにおすすめです。
生ではなく加熱して与えて
一般的に、犬にとって有害な成分は含まれていないため、にんじんを犬に与えても問題はありません。人間は、生のにんじんをサラダなどで食べることがありますが、犬にとって生のにんじんは硬くて消化が悪いため、そのまま便に出てくる可能性があります。
また、硬いにんじんを生のままで食べると、喉に詰まらせる可能性があります。予防策として、にんじんを小さくカットするか、もしくは加熱して柔らかくしてすりつぶすといいでしょう。加熱後は火傷しないよう粗熱をとり、人肌程度まで冷ましてから与えます。
にんじんは消化不良の予防にもなります。万が一、喉に詰まらせた場合はすぐに動物病院に行きましょう。
なお、にんじんは油で調理すると栄養素を吸収しやすくなります。これは、にんじんに多く含まれるビタミンA(βカロテン)が脂溶性ビタミンで、油と一緒に摂取すると吸収が良くなるためです。加熱すると硬い細胞膜が破壊され、より吸収率が上がります。ただし、油の与え過ぎは肥満につながるため、フライパンの余分な油は拭き取ったり、スプレータイプのオイルを使ったりして油の量を減らしましょう。
子犬やシニア犬にもにんじんを与えても大丈夫?
まだ成犬になっていない子犬や、体力などが衰えているシニア犬ににんじんを与える場合も、基本的に問題はありません。しかし、消化不良を起こしてしまうことが考えられるため、硬く消化が悪い生のにんじんは一度火を通して柔らかくしたり、すりおろしたりして消化しやすいように与えるといいでしょう。加熱したあとは口内を火傷をしないよう、必ず常温~人肌程度まで冷ましたことを確認してから与えてくださいね。
にんじんの栄養素と犬に与える健康面でのメリットとは?
にんじんはビタミンA(βカロテン)を豊富に含んでいる食材として知られています。βカロテンは体内に摂取されることでビタミンAとして変換されます。犬の目、皮膚、被毛の健康によいと考えられます。にんじんに多く含まれるβカロテンには抗酸化作用があり、犬の健康維持をサポートすると考えられています。
また、にんじんには体液の浸透圧を調整し、体の余分な塩分を排出する作用を持つカリウムが含まれます。ただし、腎臓病や腎臓の機能が落ちている犬が摂りすぎてしまうと、高カリウム血症になる可能性があります。かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
さらに、豊富な食物繊維の働きは腸の動きをサポートし、便通の改善が期待できます。
犬ににんじんを与えるときの1日の摂取量の目安は?
犬ににんじんを与える際は、適量を心掛けるようにしましょう。犬の体重によって摂取量目安は異なりますので、大さじ1杯=15g、小さじ1杯=5gとして以下の量を参考にしてください。
・体重3kgの犬
約15g
・体重10kgの犬
約30g
・体重30kgの犬
約70g
健康にいいからといって与え過ぎるのはNG
1日の量を守ることはもちろんですが、他の食事との組み合わせや1日全体の摂取カロリーなども計算するようにしましょう。適量を与えたつもりでもお腹を壊してしまったり、消化不良を起こしたりする可能性があります。にんじんには繊維質が含まれているため、まずは少しずつ与えて様子を見るのがいいでしょう。
にんじんは比較的カロリーが低い食材です。ただし、犬の栄養バランスの基本はドッグフード(総合栄養食)であり、にんじんなどの食材だけでダイエットを行うことはおすすめできません。
もし「おやつが多くてカロリーオーバーになりがち」と悩んでいる場合、一部のおやつをにんじんに置き換えることでカロリーを抑える方法もあります。しかし、独断で食事制限を進めると栄養不足や体調不良につながる可能性があるため、必ず獣医師に相談してから取り入れるようにしましょう。特に、肥満や他の疾患を抱えている犬の場合は、専門家にアドバイスをもらいながら進めることが大切です。
犬ににんじんを与える際のおすすめの与え方
にんじんの調理法にはさまざまなバリエーションがあります。ここでは、犬にとって体の負担が少なく、おいしく食べられるおすすめの与え方について紹介します。
しっかりと火を通して柔らかくする
まず一つ目のポイントが、にんじんが柔らかくなるまで煮たり焼いたりすることです。火が通ることで繊維が柔らかくなり、消化しやすくなります。喉に詰まる危険性を防ぐためにも、硬いにんじんは柔らかくなるまで火を通すことが大切です。
加熱したあとはしっかりと粗熱を取り、常温~人肌程度まで冷めたものを与えるようにしましょう。
にんじんと油を組み合わせる
細かくカットしたにんじんを油で炒めたり、すりおろして亜麻仁油などのオイルを少量かけたりするなど、油と組み合わせた調理法もにんじんの栄養素が吸収しやすくなるおすすめの調理法です。にんじんを油で炒める際は、スプレータイプの油を使用したり、いったんフライパンに油を行き渡らせてからペーパータオルなどで余分な油を拭き取ったりすると、カロリーを抑えられます。
どちらも食べやすい大きさや柔らかさになるよう、調理方法を工夫しましょう。にんじんを加熱する際はフォークがスッと通る程度の柔らかさが目安です。電子レンジで加熱する場合は、耐熱容器に入れて少量の水を加え、ラップをかけて2~3分を目安に加熱し、途中で固さを確認してみましょう。
万が一、加熱したにんじんであっても喉に詰まらせたり、食後に嘔吐や下痢などの症状が出たりした場合は、様子見など自己判断せずに速やかに動物病院へ相談してください。特に、腎臓病などの持病がある犬の場合は、カリウム摂取の制限が必要なケースもあるため、獣医師に与える量や与え方を確認しておくと安心です。
皮つきもOK、しっかりと洗って
にんじんは皮付きのままでも食べられます。皮に付いた土に細菌がいたり、農薬が残っていたりという心配があるため、しっかりと洗ってから調理しましょう。皮付きのままだと硬さが残りやすいため、加熱するのがおすすめです。
犬ににんじんを使用した加工食品を与える際は、ネギ類に注意!
時短レシピとして便利なのが、市販の犬が食べられる加工食品です。にんじんを使用した加工食品はたくさんありますが、与える場合は入っている食材や添加物に注意しましょう。特に、人間用の加工食品には、犬にとって危険食材である玉ネギ、長ネギ、ニラ、にんにく、レーズンなどが含まれていることがあるため、犬用に作られたものを選ぶのが安心です。可能な限り、犬用に加工されたものを与えるようにしましょう。
下に紹介した記事から、WanQolオリジナルポスター「犬が食べると特に危険なたべもの早見表」をダウンロードできます。お部屋のインテリアになじむおしゃれなデザインですから、キッチンに貼ってご活用ください!
また、犬が食べてはいけない食材を特集した記事も、この機会にぜひチェックしてください。
犬ににんじんを与える際はアレルギーに注意! ジュースやチップスなどの加工食品は犬用を選んで
にんじんは犬にとって有害な成分は含まれていないものの、繊維質が豊富なため下痢や嘔吐などを起こすことがあります。子犬やシニア犬、消化器が弱い犬の場合は、少量から与えて様子を見ましょう。
アレルギー反応を起こす犬もいる?
にんじんには少量のタンパク質が含まれるため、アレルギーを引き起こす可能性があります。また、ヨモギの花粉アレルギーを持っている犬は、にんじんを食べることで交差反応を示すことがあります。かゆみや下痢、嘔吐などの症状が出た場合はかかりつけの動物病院を受診しましょう。
初めてにんじんを与える場合は少量から始めて、普段食べているドッグフード以外、他の食品を与えないようにします。こうすることで、にんじんが原因であることを特定しやすくなります。
味付けはNG
にんじんを調理するときは、味付けをしないようにしましょう。「にんじんのスープを作ったから、愛犬にも分けてあげよう!」というのも好ましくありません。人間の食事として塩や砂糖などを加えて味付けしたものは、犬の食事としては適さないといえます。味付けはせずににんじんと油をさっと炒めたものや、ゆでるなどしたものをそのまま与えるようにしましょう。
犬ににんじんジュースやにんじんチップスを与えても大丈夫?
スーパーなどで目にすることが多い「にんじんジュース」は、にんじん以外のものが含まれていなければ与えても問題ありません。ただし、他の食材が混ざっていたり、味付けがされていたりするものは避けた方がいいでしょう。皮をよく洗ったにんじんをジューサーにかけた、お手製のにんじんジュースもいいですね。
また、「にんじんチップス」などの味付けがされている加工品も好ましくありません。おやつとして与えるなら、犬用に加工された食品を選びます。
にんじんを使ったおやつや、にんじんの形をしたおもちゃも!
カインズのオンラインショップでは、にんじんを原材料にした犬用おやつをご購入いただけます。ヘルシーなおやつとして常備しておくと安心ですね。
食べ物ではありませんが、にんじん型のおもちゃもあります!
この他にも、カインズオンラインショップではさまざまなペット用品を取り扱っています。ぜひチェックしてみてくださいね。
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます。
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります。
※上記商品は獣医師の監修外です。
犬が食べても大丈夫な野菜
にんじんの他にも、犬が食べても大丈夫な野菜があります。ただし、アレルギーの可能性や持病のある犬は食べられない場合もあるため、事前に愛犬のアレルギーの有無、持病への影響を理解しておきましょう。
最初は少量から、それぞれの野菜にあった調理方法で、加熱した場合は火傷しないよう必ず常温~40℃程度まで冷ました状態で与えてください。
まとめ
にんじんは、愛犬の健康に役立つ栄養素が含まれた野菜です。ただし、与え過ぎるとお腹の調子を悪くしたり、体質によってはアレルギーを発症したりする心配もあります。生で与えずにゆでて潰すなどして、愛犬の様子を見ながら少しずつ与えるようにしましょう。