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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
食欲の秋と言われるように、この季節には美味しいものいっぱいあります。秋に旬の野菜を愛犬にも食べさえてあげたくなりますが、そもそも食べさせてOKなのでしょうか。今回は、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に秋の旬の野菜の中で犬に食べさせてOKなもの、NGなものについて解説していただきます。
目次
- かぼちゃ
- さといも
- ごぼう
- にんじん
- トマト
- チンゲンサイ
- しいたけ
- ぶなしめじ
- まいたけ
- まつたけ
- マッシュルーム
かぼちゃ
βカロテンによる皮膚・粘膜の健康維持、ビタミンEによる細胞酸化の防止や血流調整、動脈硬化の予防などが期待でき、骨の生成を促すビタミンKも含まれています。その他に、胃腸の不調(冷えによってお腹の調子が悪い時、食欲がない時)のケアにも効果的です。
ただし、かぼちゃは野菜の中でも高カロリーなので、肥満気味でカロリー調整が必要な犬には向きません。また、ビタミンAを含むので摂りすぎて中毒になる可能性もゼロではありません。犬の食事にかぼちゃを取り入れるならば、食べさせ過ぎないことがポイントでしょう。
さといも
食物繊維のうち、ガラクタンによる整腸作用、グルコマンナンによる血糖値の上昇予防や血中コレステロールの低下、カリウムによる利尿作用が挙げられます。消化不振の時のケアやデトックス、皮膚の炎症をおさめる作用もあると言われています。
気をつけなければいけないのは、さといもが尿路結石の原因となる「シュウ酸」を含む点です。そのため尿路結石になったことがある犬には与えないほうがいいでしょう。
ごぼう
豊富な食物繊維による便通の調整が期待できるほか、オリゴ糖も豊富に含むので整腸作用が期待できます。他にも、体の余分な熱を冷まし、利尿、デトックス作用、脂質代謝を整える作用もあります。
ただし、食物繊維を多く摂らせたいあまりに多く与え過ぎるのは避けた方がいいでしょう。犬は人間ほど多くの食物繊維を必要としていませんし、特にごぼうの繊維質は消化出来ないので、かえって便秘を起こす可能性もあります。
にんじん
βカロテンが豊富に含まれているので粘膜形成、免疫力サポート、アンチエイジングにも効果があると言われています。薬膳の観点では、目の乾燥や視力低下にも効果があり、体を潤す作用もあります。
犬に与える場合は、消化に悪いので生のままで与えるのは避けましょう。また、おなかが弱い子であれば下痢を起こす可能性もあるので、多く与え過ぎないようにしましょう。根菜であるにんじんには身体を温める効果もあるので、これからの季節は愛犬の食事に上手に取り入れるといいかもしれませんね。
トマト
夏の野菜というイメージが強いトマトですが、実は高温多湿に弱く、秋から初冬あたりが一番美味しくなる季節です。リコピンによる抗酸化作用でアンチエイジングや免疫のケア、紫外線から体を守る作用が期待できます。胃もたれや食欲不振時のケア、高血圧の予防、動脈硬化、イライラを鎮める作用、体の熱を落ち着かせる作用があると言われています。
ただし、トマトの茎、葉、花には「トマチン」という毒素があります。愛犬にトマトを与える場合はきちんとヘタを取ってあげましょう。青いトマトにもトマチンは含まれるため、生で食べさせるならば赤く熟したものを選びたいものです。プランターなどでミニトマトを栽培しているご家庭では、犬が茎などを食べてしまわないように注意が必要です。
チンゲンサイ
もともとは中国から伝わったチンゲンサイですが、いまでは日本全国で栽培されており、一年を通して比較的安価で手に入れやすい野菜です。チンゲンサイには、βカロテンによる皮膚粘膜のケアや免疫力の向上、ビタミンCによる抗酸化作用でアンチエイジングや免疫のサポート、カリウムによる利尿作用、カルシウムによる骨・歯のケア、鉄分による貧血予防などが期待できます。その他にも、精神安定や、熱を抑える働きなどが期待できると言われています。
チンゲンサイにはさといも同様に「シュウ酸」が含まれるので、加熱して与えるようにしてください。また、チンゲンサイ等アブラナ科の野菜に含まれる「ゴイトロゲン」という成分は、甲状腺ホルモンの生成に必要なヨウ素の吸収を阻害する働きがあります。そのため、甲状腺機能に問題がある犬に食べさせるのは避けた方が賢明でしょう。
しいたけ
しいたけには、食物繊維による整腸作用や、ビタミンDが持つカルシウムの吸収をサポートする効果により、骨や歯のケア、脳神経系の発育ケア、レンチナンによる免疫力アップが期待できます。薬膳的には食欲不振のケアに使われます。
ただし、食物繊維が豊富であるということは、消化しにくい食べ物だということです。火を通し、食べやすいように細かく切って与えるようにしましょう。生や乾燥したままではなく、水で戻して煮るなどしたものを細かくカットして与えてください。特に干ししいたけなどの乾燥した固い状態のものは、愛犬の喉を傷つける可能性がありますので注意が必要です。
ぶなしめじ
食物繊維による整腸作用や、オルニチンによるデトックスが期待できるほか、代謝を助ける栄養成分のグルタミン酸を含むため、疲労回復に役立ちます。加えて、免疫機能のアップや肌、被毛のケアにも役立ちます。手に入りやすいきのこの代表として、愛犬にも与えたいものです。
まいたけ
βグルカンによる免疫機能のサポート、ビタミンD(エルゴステロールに紫外線が当たって変化)によるカルシウム吸収upで骨や歯のサポート、カリウムによる利尿作用、鉄分による貧血サポートが期待できます。体を温める働きがあるのでこれからの寒い季節にお勧めです。
まつたけ
まつたけに含まれるマツタケオールやケイ皮酸メチルには、食欲増進や精神安定作用があります。また、ビタミンB2やナイアシンによるエネルギー代謝のサポート、食物繊維による整腸作用が期待できます。他にも、慢性の咳や下痢、出血を止める働きがあると言われています。高価な食材なので日常的にあげるのは無理ですが、飼い主とともに季節を味わうのもいいかもしれませんね。
マッシュルーム
食物繊維による整腸作用のほか、糖質代謝を助けるビタミンB1、脂質代謝を担うビタミンB2、利尿作用を持つカリウム、貧血対策の銅などが豊富に含まれます。体を温めて血の巡りを整える働きもあるため、皮膚のケアや冷えなどに効果的です。
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