更新 ( 公開)
chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
カルシウムが豊富に含まれる牛乳は、犬の健康的な体づくりに効果があるイメージを持っている飼い主さんも多いかもしれません。しかし、牛乳は本来、子牛が必要とする栄養素を摂取するためのものです。犬の場合、与え方を間違えると下痢やアレルギーなどの健康被害をもたらすことがあるため、正しい知識を持っておくことが大切です。今回は、獣医師の林美彩先生に教えていただいた牛乳を犬に与えても大丈夫かどうかや、与える際の注意点などについて解説していきます。
目次
- 犬に牛乳を与えても大丈夫?
- 牛乳に含まれている「乳糖」が犬の下痢の原因に!
- どんな種類の牛乳であれば犬に与えても大丈夫?
- 子犬やシニア犬に牛乳を与えても大丈夫?
- 牛乳を与えるとアレルギーや中毒症状を起こす犬種はある?
- 犬に牛乳を与えるメリットはないの?
- 犬に牛乳を与えるおすすめの方法
- 犬の手作りご飯に牛乳を使うときの注意点
- ヨーグルトやチーズなど牛乳を原料としている乳製品を犬に与えても大丈夫?
犬に牛乳を与えても大丈夫?
基本的に、犬に牛乳を与えることは推奨されていません。少量であれば問題ありませんが、与えすぎると下痢や嘔吐などを引き起こす原因になるためです。牛乳はカルシウムだけでなく、たんぱく質やミネラル、ビタミンといった主要な栄養素がバランスよく含まれていますが、それらの栄養素の含有量は犬の体に合わせた配分にはなっていません。脂肪分が過剰に摂取されることで肥満につながる恐れもあります。
アレルギーの原因になってしまうことも
また、牛乳に含まれている成分が原因となってアレルギー反応が起こり、皮膚の発疹・赤みなどの症状が現れることもあります。特に、「アルファカゼイン」と呼ばれるたんぱく質が主なアレルギー源であることが判明しています。
牛乳に含まれている「乳糖」が犬の下痢の原因に!
牛乳には「乳糖」が含まれており、この乳糖を分解するためには「ラクターゼ」という消化酵素が必要です。個体差はありますが、犬は離乳期を過ぎるとラクターゼの分泌量が少なくなります。ラクターゼの不足により、乳糖が十分に分解されないまま大腸まで達してしまうことで、下痢を引き起こすことになります。この症状は「乳糖不耐症」と呼ばれます。
症状が軽く、犬にぐったりした様子がなければ自然と落ち着いていくことが多いので問題ありませんが、激しい下痢や嘔吐によって脱水症状に陥ったり、重度のアレルギー反応を起こしたりするなど、症状が悪化した場合は、すぐに動物病院に連れて行きましょう。
どんな種類の牛乳であれば犬に与えても大丈夫?
人間用に加工された牛乳ではなく、犬用ミルクとして販売されているものであれば、乳糖が含まれていないものや低脂肪のものなどがあるので安心して与えることができます。また、ヤギミルクは犬の母乳に成分が近く、犬の体質に合っていると言われています。ペット用品店でも扱っているので探してみるとよいでしょう。
その他では、調整豆乳は食塩や砂糖などが含まれているのでおすすめできませんが、無調整豆乳であれば問題ありません。ただし、豆乳には下痢の原因となるレクチンや腸の炎症を引き起こすサポニンなどの成分も含まれますので、牛乳同様、与えすぎには注意が必要です。
子犬やシニア犬に牛乳を与えても大丈夫?
体の仕組みがしっかりとでき上がっていない子犬や、体の機能が衰えてきているシニア犬の場合、牛乳を与えることは避けたほうが良いでしょう。また、肥満の犬も牛乳によるカロリーオーバーで肥満を進行させ、別の病気を発症するリスクも高まるため十分な注意が必要です。
牛乳を与えるとアレルギーや中毒症状を起こす犬種はある?
特別に影響を受けやすい犬種は報告されていませんが、どんな犬であっても、人間用の牛乳ではなく犬用として販売されている牛乳を与えることをおすすめします。人間用の牛乳を与える場合はごく少量に留めるようにしてください。
犬に牛乳を与えるメリットはないの?
牛乳は栄養豊富といわれていますが、ご紹介してきた通り、犬にとっては体に負担がかかる成分が含まれているため、犬に与える特筆すべきメリットはありません。あくまでも牛乳は栄養補助食品という位置づけであり、犬にとって必要不可欠なものではありません。
ただ、水を飲みたがらない犬が牛乳なら飲むという場合は、水分補給の観点から牛乳を与えることには一定のメリットがあると言えます。同じように、食欲不振でドックフードやご飯を食べないときも、牛乳を摂取できれば不足する栄養素を補うことができます。ただ、与えすぎには注意してください。
犬に牛乳を与えるおすすめの方法
牛乳を冷たいまま与えると消化器に負担をかけ、お腹を壊す原因になるため、人肌程度に温めたものを与えてあげましょう。また、いつものドッグフードに飽きてしまって食べてくれないときなどに、牛乳を少量混ぜることで味が変わり、食欲を回復できるかもしれません。牛乳は絶対に与えてはいけないものではないので、上手に工夫をして活用する分には問題ありません。
犬の手作りご飯に牛乳を使うときの注意点
市販のドッグフードではなく、自ら食材を選び、手作りしたご飯を与えたいと考えている飼い主さんもいるでしょう。例えば、クッキーなどの犬用のお菓子に牛乳を使う場合は、やはり犬用のミルクやヤギミルクを代用したほうが安心です。また、クッキーに使う小麦粉も犬の体に負担をかけるため、おからパウダーや米粉などに切り替えることをおすすめします。
ヨーグルトやチーズなど牛乳を原料としている乳製品を犬に与えても大丈夫?
牛乳を原料とする乳製品にも乳糖が含まれているため、注意点としては牛乳と同様です。乳糖の問題だけでなく、食塩や糖分などが含まれているものも多いため、できるだけ控えましょう。牛乳がないとどうしても薬を飲まないといった理由がある場合には、ごく少量を与える程度に留めるのが無難です。
なお、ヨーグルトに関しては乳酸菌を加えて発酵させる過程で乳糖の一部が分解されているため、牛乳に比べると乳糖不耐症のリスクが低いと言われています。人間の場合と同じように、腸内環境を整える効果もあるので、乳製品の中では比較的、犬に与えるのに適した食材と言えます。ただし、糖分が含まれているものは避け、与えすぎには気を付けましょう。また、アイスクリームも砂糖が多く含まれており、消化しづらいため、与えることはやめておきましょう。加工品でもバター、チーズ、生クリームは塩分や脂肪分が控えめで、かつ砂糖が含まれていないものであれば、少量にとどめて与えるのは問題ありません。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。