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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
秋は美味しいフルーツが出回る季節です。飼い主がフルーツを食べていると、欲しがって「ちょうだい」と可愛らしく見つめてくる犬も多いでしょう。そんなとき、飼い主としては与えていいものなのか、迷ってしまうかもしれませんね。そこで、犬に食べさせてもOKなフルーツと、逆に食べさせてはいけないフルーツについて、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 梨
- 柿
- 栗
- ぶどう
- りんご
- キウイ
- いちじく
- ラ・フランス
- クランベリー
- ザクロ
- みかん
- レモン
梨
梨は犬に食べさせてもOKなフルーツです。梨は品種によって7月下旬から10月中旬まで出回り、さまざまな味を楽しむことができます。豊富な食物繊維が含まれていますので整腸作用が期待できるほか、カリウムによる利尿作用、アスパラギン酸による代謝促進が期待できます。ジューシーで、暑い夏の時期の水分補給にも役立ちます。ただし、豊富な水分のために食べすぎると軟便や下痢が起こしたりするので、与え過ぎには注意してください。また、皮は消化不良を起こしやすいので与えないほうがいいでしょう。
柿
柿は犬に食べさせてもOKなフルーツです。食物繊維による整腸作用やビタミンの抗酸化作用によるアンチエイジングなどが期待できます。ただ、身体を冷やす作用が強いため、冷え症の犬やシニア犬には控えたほうがよいでしょう。また、柿の種は消化不良や閉塞を起こす可能性がありますので、皮と種を取り除いたものを与えてください。
栗
栗は犬に食べさせてもOKなフルーツです。固い鬼皮に包まれていることから木の実のように見えますが、栗はフルーツに分類されます。カリウムを含みますので利尿作用から高血圧の予防に効果があり、果物では珍しい亜鉛も含むために肉球や皮膚のケアにも役立つと考えられます。また、炭水化物としてエネルギー源となる一方で、パントテン酸が脂肪燃焼、デトックスにも効果的です。
ただし、生のままでは消化不良を起こしやすく、鬼皮を食べることで閉塞や消化器官の傷つける危険性があります。ポリフェノール豊富な渋皮も、犬にとっては消化不良を起こしやすいので剝いてから与えるようにしたいものです。
ぶどう
ぶどうを犬に食べさせるのはNGです。2001年にアメリカの研究者らによって犬がぶどう中毒を起こすことがわかり、「犬にぶどうをあげてはいけない」と言われるようになりました。死に至る場合があるので、愛犬には絶対に与えないでください。
原因としては、農薬、カビ毒、ぶどう由来の未知の成分などが疑われ、詳細は分かっていませんが、急性腎不全を起こすと言われています。干しぶどうでも同じ症状を起こす危険性がありますので、レーズン入りのパンなどを愛犬が誤って食べてしまうことがないように注意しましょう。
りんご
りんごは犬に食べさせてもOKなフルーツです。ペクチンという成分による整腸作用やポリフェノールなどの抗酸化作用によるアンチエイジングのほか、クエン酸による疲労回復などが期待できます。芯の部分は丸呑みすることによる閉塞のリスクが、種はアミグダリンという成分による中毒症状を起こすリスクがあるので必ず取り除きましょう。皮には残留農薬がついている可能性があるので、きれいに剝いてから与えるといいでしょう。
キウイ
キウイは犬に食べさせてもOKなフルーツです。消化酵素が豊富なため、消化不良を起こしやすい犬や、胃腸が弱い犬にオススメの果物です。また、ビタミンが豊富なのでアンチエイジングや免疫機能のサポートに役立つほか、食物繊維による整腸作用、カリウムによる利尿作用が期待できます。皮は残留農薬の危険もあり、消化不良を起こしやすいため、取り除いて与えましょう。
いちじく
いちじくを犬に食べさせるのはNGです。いちじくの収穫時期は長く、8月〜10月頃までとされています。 6月〜7月頃に採れる品種を「夏果(ナツハテ)」、私たちが主に口にしている8月〜10月頃までに採れる品種を「秋果(シュウカ)」と呼びます。イチジクはこのように長い期間にわたって青果店に並び、人間にとっては整腸作用が期待できるフルーツなのですが、犬が食べるとフィシンという成分によって中毒症状を起こしますので、与えないようにしましょう。
ラ・フランス
ラ・フランスは犬に食べさせてもOKです。熟したラ・フランスは甘く、犬が好むフルーツです。水分が多くカロリーも低めなので、水分補給になり、ダイエット中のおやつにもおすすめ。ビタミンやカリウム、アスパラギンを含み、疲労回復にも効果的です。ただし、高カリウム血症の危険があるので腎臓に不安のある場合は与えるのをやめておきましょう。また、アレルギーのある子は少量を注意して与えるようにしてください。
クランベリー
クランベリーは犬に食べさせてもOKなフルーツです。日本の青果店ではさほどポピュラーなフルーツとは言えませんが、収穫期である9~10月にクランベリーを見かけることがあるかもしれません。りんごと似た栄養素を持ち、ビタミンCを豊富に含みます。アンチエイジングや免疫機能のサポートのほか、アントシアニンを多く含むので目のケアにも役立ちます。また、ペクチンを含みますので、整腸作用も期待できます。
キナ酸という成分が含まれていますので、体内に入り馬尿酸という物質に変化することによる尿の変化(アルカリから酸性)を起こしますので、細菌の増殖を防ぐ効果から膀胱炎の予防や、アルカリ尿でできやすい結石の予防(ストラバイト)が期待できます。多くの健康効果があるフルーツですが、酸性尿で起こる結石を持つ(シュウ酸カルシウム結石)の犬には与えないほうがいいでしょう。
ザクロ
ザクロは、生ではなくエキスであれば犬に食べさせても大丈夫なフルーツです。
人間にとっても効果が注目されている、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが豊富に含まれており、クエン酸も豊富です。また尿をアルカリ性から酸性に傾けるため、クランベリー同様の働きがあると考えられます。
ただし、注意が必要な点もあります。生のザクロの皮、種には犬にとってのリスクが存在します。特に種は、犬にとって消化が難しく、腸閉塞を引き起こす可能性があります。
ザクロの種は犬に与えないでください。誤って1~2個の種を食べた場合、健康な成犬であれば大きな害を及ぼす可能性は低いですが、3粒以上の摂取は避けるべきです。さらに多くの種を食べると、窒息のリスクが高まります。
加えて、皮の部分に含まれるペレチエリンというアルカロイド成分は犬に中毒を引き起こす可能性があります。
結論として、ザクロ自体は犬にとって有害な食べ物ではありませんが、特に犬に与える必要はありません。生のザクロを犬に与える場合は、種や皮を取り除き、少量に留めることが重要です。犬の健康に配慮し、新しい食品を与える際は慎重に行うことが推奨されます。
みかん
みかんは犬に食べさせてもOKなフルーツです。ビタミンCが豊富に含まれるので抗酸化作用によるアンチエイジングや免疫機能のサポート、クエン酸による疲労回復、カリウムによる利尿促進、食物繊維による整腸作用が期待できます。ただし、水分が豊富に含まれているので、食べすぎると軟便や下痢になることがあります。皮や種、筋(薄皮)は消化しにくいため、与えないほうが無難です。
レモン
レモンは、犬に食べさせてもOKなフルーツです。夏のイメージがありますが、実は冬が旬。ビタミンCが豊富なので、アンチエイジングや免疫機能サポートに役立ちます。ただし、犬にとっては苦手な香りなので、無理に与える必要はありません。また、種は消化不良や閉塞の原因に、外皮、薄皮も消化不良を起こしますので取り除いてから与えましょう。