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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
ご家庭で愛犬にフルーツを食べさせることはあるでしょうか。犬も人間同様、フルーツを栄養として取り入れ、体調を整えたり、皮膚の健康維持に役立てたりすることができます。ただし、愛犬が健康になるからと言って、なんでもたくさん食べさせていいわけではありません。ここでは、バーニー動物病院千林分院分院長で獣医師の堂山有里先生に、犬に食べさせても大丈夫な冬のフルーツについて解説していただきます。
目次
- みかん
- いちご
- りんご
- ぽんかん
- デコポン
- ネーブルオレンジ
- キンカン
- 柚子
- レモン
みかん
みかんの果肉にはビタミンCやポリフェノール、クエン酸などが多く含まれ免疫力アップや抗酸化作用、疲労回復が期待できますので、飼い主が食べるときに分けてあげるといいでしょう。みかんの薄皮に含まれるペクチンという水溶性食物繊維には整腸作用もあります。ただし、ペクチンは少量であれば健康に役立ちますが、犬は薄皮を上手に消化することができないので食べさせるときは取り除いて与えてください。また、みかんの外皮と種は全く消化できないので食べさせないようにしてください。
みかんの外皮を干して乾燥させたものは陳皮と呼ばれ、嘔吐や食欲不振の治療に用いられる生薬となります。この陳皮は犬でも安全に服用でき、効き目が期待できる生薬ですので、試してみたい場合は漢方の処方のできる獣医師に相談してください。
いちご
甘酸っぱくジューシーな味わいが特徴のいちごは、春になると白い花を咲かせ、秋の終わり頃から春にかけて収穫されるバラ科の多年草です。ビタミンCやペクチン、ポリフェノールが多く含まれているので免疫増強作用や抗酸化作用、老化防止が期待できますので、犬が欲しがるようであれば食べさせてあげましょう。
ただし、いちごにはキシリトールが含まれていますので、一度に多く食べ過ぎないように注意が必要です。おおよその目安として体重1kgあたり、ひと粒を限度としましょう。いちごの品種改良が進んでおり、「美人姫」など100gほどにある品種もあります。ここでのひと粒は、スーパーで購入できる一般的ないちごを目安にしてください。
りんご
秋から年末にかけて旬を迎えるりんごは、店先でさまざまな種類を目にします。りんごにはビタミンCや食物繊維、ポリフェノールが多く含まれ疲労回復や整腸作用、抗酸化作用が期待できます。比較的カロリーが少ないのでダイエット中でも取り入れやすいフルーツです。胃腸の調子を整えてくれる作用もありますので、食欲不振や便秘気味の時にすりおろして食べさせてあげましょう。体内の余分な塩分をおしっこと一緒に体外に排出する働きのカリウムも多く含まれているので、高血圧の予防効果が期待できます。
ただし、犬にりんごを与える場合は、消化に悪い種や芯は必ず取り除いてください。ポリフェノール豊富な皮も、農薬が気になりますのでむいて与えましょう。また、喉に詰まらせないように小さく刻んで食べさせてください。
ぽんかん
インドが原産のフルーツで、日本には明治時代に伝わりました。正確な起源は不明ですが、ミカン類とオレンジ類の交雑種と言われています。優しい酸味で甘みもあり、手でもむける食べやすさが人気です。他の柑橘系同様ビタミンCとクエン酸やカリウムを豊富に含み、免疫力アップや疲労回復、むくみの改善に役立ちます。
デコポン
デコポンの旬は3~5月の春先ですが、ハウスで栽培されたものは12月頃から出荷が出回るようになります。ミカン科ミカン属の柑橘類の一つで、「清見」と「ポンカン」という種を掛け合わせて作られたフルーツです。適度な甘みと酸味のバランスが良く、ジューシーで食べやすいため、好んで召し上がる飼い主さんもいらっしゃるでしょう。デコポンには、みかんの1.6倍のビタミンCに加えクエン酸やカリウムも含まれるフルーツです。免疫力アップや疲労回復、むくみの改善に役立ちます。
ネーブルオレンジ
ネーブルオレンジは、瀬戸内を中心に作られている国内産のものとアメリカ育ちのカリフォルニア産のものが時期を変えて長期的に出回るため、冬から春まで手に入れやすいフルーツです。種がなく、甘みがあり香り豊かなため、人気のフルーツです。ビタミンCの含有量はみかんよりオレンジの方が多いと言われており、愛犬の健康維持にも役立つフルーツです。ビタミンCやβカロチン、クエン酸、カリウムなどが含まれており免疫力アップや抗酸化作用、疲労回復作用、むくみの改善にも役立ちます。
ただし、薄皮に含まれるペクチンは消化しにくいので犬に与えるときは取り除いてあげでください。外皮や種は消化できないので、必ず取ってから与えてください。また、ネーブルオレンジ、ぽんかん、デコポンは甘みが強く、犬にとっては食べやすいフルーツなので、少しずつ与えるようしましょう。
キンカン
旬の時期は1月中旬から3月上旬ですが、ハウス栽培のものは11月ごろから出回ります。みかんと違って皮ごと食べるのが一般的なので、積極的に犬に与える柑橘系フルーツとは言えません。ビタミンCやビタミンE、カルシウムを多く含んでいます。キンカンは柑橘系の中でもキンカン属に属し、カンキツ属であるみかんやオレンジとは属が異なります。そのため薬膳でも他の柑橘系とは異なり体を温める作用があり、咳を鎮める効果やイライラして食欲が出ない時に効果が期待できます。
犬が食べてはいけない成分などはありませんが、ほかの柑橘系フルーツと同様に皮や種は与えないでください。種が少なく大粒で表皮が柔らかく甘味が強いため食べやすいと人気の「たまたま」という品種が出回っていますので、少量を細かく刻んでから食べさせるのであれば、問題ないと思います。散歩中に落ちているキンカンをおもちゃにしたりすることがあるかもしれませんが、その場合はまるごと食べてしまわないように注意してあげてください。
柚子
柚子は基本的には犬が食べても問題のない果物です。柚子にはビタミンCやビタミンE、クエン酸が豊富で、免疫力のアップや疲労回復に効果があります。ただし、犬に皮は食べさせない方がいいでしょう。犬は嗅覚に優れているので、人間にとっては少量の果汁でも匂いを強く感じて嫌がることがあります。さまざまな効能のある柚子ですが、嫌がる場合は無理に与えることをせず、少量の果汁を食事にトッピングするくらいの使い方がおすすめです。
レモン
夏のイメージもあるレモンですが、国産レモンの旬は冬です。そのまま食べるというよりは食事に添えたり、ジュースやお菓子に入れたりして食べることが多いですが、基本的には犬に与えても問題のないフルーツです。レモンといえばビタミンCですが、ほかにもクエン酸、カリウム、βカロチンが多く含まれ免疫力アップや疲労回復、むくみの改善、抗酸化作用などが期待できます。また、リモネンと呼ばれる香り成分があり、香りによるリラックス効果も期待できます。
ただし、レモンは酸味が強いので苦手な子もいるでしょう。犬に食べさせるときは果汁を少量ずつ食べさせてみてください。独特の味や香りを嫌がる素振りがないようであれば普段の食事のトッピングとして取り入れると良でしょう。お菓子やジュースは、糖分が多いのでオススメしません。