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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬との散歩中、道に咲いている花を一緒に見たり、花を背景に愛犬の写真を撮ったりする飼い主は少なくないかもしれません。しかし、私たちが普段目にする花の中には、犬の体にとって有害なものもあるのをご存知ですか? 誤って食べてしまった場合は、重篤な中毒症状を起こす可能性があります。犬にとってはどんな花が有害で、食べるとどんな症状があらわれるのでしょうか。また、もし食べてしまったときはどうすればいいのでしょうか。ここでは、犬が花を食べることの危険性や、食べてしまったときの対処法についてchicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 散歩中に犬が花を食べてしまうことがある!?
- 犬が食べると危険な花とその症状は?
- 犬が食べても安全な花はあるの?
- 犬が花を食べてしまったときの対処法は?
- 犬が花を食べたときにこんな症状が出ていたらすぐに動物病院へ!
- 犬が花を誤食するのを防ぐためにはどうしたらいいの?
散歩中に犬が花を食べてしまうことがある!?
私たちの生活に彩りを添えてくれたり、その美しさで私たちを癒してくれたりする花ですが、実は犬の体にとっては有害なことも少なくありません。有害な花を食べると、消化器症状や神経症状、皮膚症状など、さまざまな中毒症状があらわれます。また、花の種類や量、誤食した部位によっては、命が危険にさらされる可能性もあります。
好奇心旺盛で食いしん坊な犬。飼い主が目を離した隙に有害な花を食べたり、かじったりしてしまったという話は絶えません。万が一の事態を防ぐためには、犬にとって有害な花の種類や食べてしまったときにあらわれる症状、対処法や予防策についてきちんと学んでおく必要があります。
犬が食べると危険な花とその症状は?
犬が食べると中毒症状を起こす花とその花が引き起こす症状には、次のようなものがあります。ちなみにあらわれる症状は花の種類や部位、食べた量によって変わります。愛犬がこれらの花に近づくことのないよう、散歩や庭遊びなどでは十分注意してください。
>犬の拾い食いをやめさせるには?必要なしつけや予防法を紹介【獣医師監修】
スイセンの中毒症状
下痢、嘔吐、腹痛、よだれが大量に出る、血圧低下、心不全、昏睡、麻痺
アサガオの中毒症状
下痢、嘔吐、腹痛、血圧低下
ユリの中毒症状
尿細管変性(腎臓の病気)、脱力、脱水、腎障害、視力障害、全身麻痺
あじさいの中毒症状
過呼吸、ふらつき、痙攣、興奮、麻痺
キキョウの中毒症状
頻脈、震え、ひきつけ、よだれが大量に出る、ふらつき、呼吸困難、意識障害、心臓麻痺
チューリップの中毒症状
口喝(口が乾く)、粘膜乾燥、瞳孔拡大、心毒性、嘔吐、下痢、血便、腹痛、痙攣、めまい、呼吸困難
ツツジの中毒症状
よだれが大量に出る、下痢、嘔吐、視力障害、筋力低下、痙攣、昏睡、徐脈
シクラメンの中毒症状
下痢嘔吐、胃腸炎、大量摂取で神経症状を起こす
パンジー、ビオラの中毒症状
嘔吐、神経麻痺、心臓麻痺
さくらの中毒症状
粘膜の充血、呼吸促迫、頻脈、嘔吐、痙攣
カーネーションの中毒症状
軽度の胃腸障害、皮膚接触で軽度皮膚炎
ヒガンバナの中毒症状
嘔吐下痢、腹痛、麻痺
犬が食べても安全な花はあるの?
犬にとって有害な花がある一方、犬が誤食しても問題ない花も存在します。犬を飼っているけれどお部屋に花を飾りたいとき、ガーデニングをしたいときなどは、犬にとって安全な花を選びましょう。
犬にとって安全な花の代表例は、ローズマリーやカモミール、オレガノなどのハーブ類。これらの植物は犬が食べても問題なく、体にとってよい効果をもたらしてくれます。それぞれ以下のような効果を期待できます。
ローズマリー
抗酸化作用、アレルギー緩和
カモミール
利尿作用、リラックス効果、口臭予防
オレガノ
抗酸化作用、消化促進
犬が花を食べてしまったときの対処法は?
愛犬が花を誤食してしまったときは、できるだけ早く動物病院を受診してください。平気そうに見えても後から重症化する可能性もあるため、油断はできません。たとえ食べたのが少量であっても、動物病院に電話で相談しましょう。
病院での対処方法は、花の種類や量、食べてからの時間、犬の状態などにより異なります。適切な処置が受けられるよう、受診のときはわかる範囲の情報を記したメモを持っていくといいでしょう。また、食べてしまった花の種類を特定するため、花を動物病院に持っていくことも忘れないようにしましょう。
犬が花を食べて中毒症状を起こしたときの治療法
犬の状態を診て、催吐処置(食べたものを吐かせる)、麻酔をしての胃洗浄などを行います。必要があれば入院させ、輸液療法や活性炭の投与を行うこともあります。
また、嘔吐の症状があるときは制吐剤、けいれんを起こしているときは抗けいれん薬、不整脈があるときは抗不整脈薬などの薬を使う可能性もあります。
犬が花を食べたときにこんな症状が出ていたらすぐに動物病院へ!
花ごとに現れる主な症状については前述しましたが、花による危険な中毒の症状には、次のようなものがあります。
・皮膚症状(皮膚炎、赤み、かゆみなど)
・眼症状(花の毒が皮膚や目につくことで起こる)
・心拍数の異常、不整脈などの心臓の症状
・嘔吐や下痢、腹痛などの消化器症状
・震え、けいれん、意識障害などの神経症状
・ぐったりする、低血圧などのショック症状
・腎障害(食欲不振、嘔吐など)
・肝障害(吐き気、下痢、食欲不振、黄疸など)
これらは非常に危険な症状で、重篤なものになると突然、死に至ってしまう場合もあります。中毒の治療では原因が明らかなものであれば、速やかに処置もしやすいです。すぐに動物病院を受診しましょう。
犬が花を誤食するのを防ぐためにはどうしたらいいの?
花の誤食は、愛犬を生命の危険にさらす可能性がある非常に危険な事故です。誤食事故を防ぐためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
周りの環境に注意する
自宅に花や観葉植物を飾ったり、ガーデニングをしたりしないこと、花が咲いている場所に愛犬を連れて行かないことが大切です。どうしても花を飾りたい、育てたい場合は愛犬が届かない場所で行ったり、犬にとって安全なことが明らかになっている花を選んだりといった工夫をしてください。
いつもの散歩コースを変える
花畑などに連れて行かなくても、散歩コースに花が植えられていることもあるでしょう。そのときは愛犬の行動に細心の注意を払い、決して目を離さないようにしましょう。それが難しい場合は、あまり植物が生えていない散歩コースに変更することをおすすめします。
しっかりとしつけを行う
犬の花の誤食でよくありがちなのが道に落ちている花を拾い食いすること。外での拾い食いはリスクが大きいですし、常日頃から拾い食いが癖になっていると肥満や体調不良を引き起こす場合もあります。食事の管理や食事の摂り方には十分に配慮しましょう。
誤食防止グッズを使う
拾い食いが心配な犬やまだ十分にしつけができていない犬には口輪を付けて散歩するのも効果的でしょう。口元を全て覆ってしまうと、途中で水分補給がしづらい場合がありますので、カゴタイプの口輪などがよいかもしれません。
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