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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
新緑が芽吹く春に旬を迎える野菜たち。いつも以上に美味しくなるだけでなく、栄養価が上がるものもあるので犬にも食べさせたい、と思うことがありますよね。そこで今回は、春が旬の野菜9種類をピックアップ。それぞれ犬が食べてよいかどうか、与える際の注意点をふまえながら、chicoどうぶつ診療所の所長である林美彩先生監修のもとで解説していきます。
目次
- キャベツ
- アスパラガス
- セロリ
- さやえんどう
- たけのこ
- 菜の花
- ふきのとう
- そら豆
- クレソン
キャベツ
キャベツは、犬にとって生で食べてもOKな野菜です。千切りやみじん切りなど、消化しやすい形にカットしてから与えましょう。芯は硬く消化がうまくできなかったり、のどに詰まらせたりする可能性があるため、より小さくカットをするように。とくに子犬やシニア犬の場合は、芯を生でそのまま与えると喉に詰まらせてしまう可能性があるので注意しましょう。もちろん、加熱して食べさせることもできます。消化しやすくするためには、茹でてから細かくカットするのがおすすめです。
アスパラガス
アスパラガスは、犬が食べてOKな野菜です。生のものはわずかに「アルカロイド」という中毒性物質が含まれているため、必ず加熱してから与えましょう。火を通すことで柔らかくなり、消化しやすくなるという意味でも加熱は行いたいところです。アスパラガスは茹でても栄養素があまり逃げない、という特徴を持ちますが、水溶性ビタミンも含むので加熱は電子レンジを使うのがおすすめ。温め、蒸す、焼く、茹でるなどの方法で加熱して、細かくカットをしましょう。繊維を断ち切るよう、斜め切りにすると食べやすくなります。とくに穂先は苦味が少なくやわらかいので、犬が食べやすい部位です。その他の部分を使う場合は、根元は切り落とし、皮むき器等で皮をむいてあげるとよいでしょう。
セロリ
セロリは、生のままや加熱をして犬に食べさせることができます。セロリには天然毒が含まれている場合がありますが、大量に食べたりしない限り、犬の体には影響ないと考えられています。
ただし、食物繊維が豊富な野菜のため、消化をよくするためには下処理が必須。食べさせる時には、まず茎のスジを取り除きましょう。包丁を茎の切り口に当て、スジを上に持ち上げるようにして引っ張ると取り除けます。さらに、細かく刻んでから与えましょう。とくに子犬やシニア犬の場合は、茹でたり煮込んだりして柔らかくしてから与えるのがおすすめです。茎が苦手でも、葉っぱなら食べられるという犬もいるので、好んで食べるようであれば葉っぱも一緒に与えるとよいでしょう。
さやえんどう
さやえんどうは、犬が食べてOKな野菜です。さやえんどうの一種である「スナップエンドウ」も同様に与えることができます。食べさせる時は消化しやすいよう、まずは筋を取り除きます。次に、しっかりと茹でて火を通しましょう。大豆など豆類は、生の状態でそのまま摂取すると消化不良につながるので、必ず加熱するようにしてください。茹でたあとは、細かく刻んだり、すり潰したりしてから犬に与えるようにしましょう。
たけのこ
たけのこは、犬が食べてもOKな野菜です。生ではえぐみが強いので、犬に食べさせる時も人間が食べる時と同じようにしっかり加熱をして下処理をしましょう。下処理時に米ぬかや重曹などと一緒によく茹でてアク抜きをし、えぐみをしっかりとるのがおすすめです。下処理後は皮をむき、細かくカットして与えましょう。硬くて消化が悪いので、量は少なめに。なるべく柔らかな穂先の部分を選ぶとよいでしょう。
ただし、子犬は噛む力が弱く消化器機能が十分に発達していないことがあるので、たけのこを与えないほうが無難です。シニア犬も同様に、消化器機能が弱っていることや、喉に詰まらせるリスクがあることから与えないようにしましょう。
菜の花
菜の花は、犬に与えて大丈夫です。ただし、生では与えずに、必ず茹でてから食べさせましょう。菜の花は「あく」があることで知られますが、この「あく」の正体はシュウ酸。シユウ酸はシュウ酸カルシウム尿石症の原因になるのですが、水溶性のため茹でることで減らせます。さらに、菜の花は食物繊維が豊富で消化がよくないため、犬には細かく刻んでから与えるようにしましょう。
ただし、甲状腺に疾患をもつ犬の場合は注意が必要です。菜の花のようなアブラナ科の野菜には「ゴイトロゲン」という抗甲状腺物質が含まれているので、食べ過ぎると甲状腺機能を低下させる可能性が指摘されています。健康な犬であればとくに心配ありませんが、甲状腺に疾患のある犬は菜の花を与えないほうが安心でしょう。どうしても与えたい場合は、かかりつけの動物病院で事前に相談をしてみるのがおすすめです。
ふきのとう
ふきのとうは、少量であれば犬に食べさせて問題ありません。ただし、植物が作る天然毒「ピロリジジンアルカロイド類」の一種である「ぺタシテニン」が含まれているため、「あく」をしっかり抜いてから与えることが重要です。ペタシテニンは肝障害の原因となることが知られていますが、茹でこぼしや水さらしといったあく抜きをすれば、大きく減らせることが農林水産省の調査(※1)などによってわかっています。また、大量に食べさせたり、毎日食べさせ続けたりしないようにも気をつけましょう。
出典:(※1)農林水産省 食品中のピロリジジンアルカロイド類に関する情報
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/pyrrolizidine_alkaloids.html
そら豆
そら豆は、犬が食べてOKな野菜です。さやえんどうと同様に、しっかりと下茹でをしましょう。茹でたそら豆は柔らかいイメージがありますが、犬の場合は嚙み砕かずに丸飲みしてしまう心配があります。そら豆は1粒が大きいので、そのまま飲み込むと消化不良を起こしてしまうことも。犬に食べさせる時には、細かく刻んだりすり潰したりしてから与えるとよいでしょう。さやの部分も食べさせることができますが、犬が飲み込めるほど柔らかく小さな状態にしておくことが大事です。
クレソン
クレソンは、犬に生で食べさせても大丈夫な野菜です。ビタミンCなど水溶性の栄養素をなるべく逃さず摂取するためには、生で食すのがよいでしょう。一方で、加熱をすると柔らかくなるので、消化をよくするには軽く茹でるのもおすすめ。いずれにしても茎は硬いことがあるので、細かくカットしましょう。
クレソンのなかでも「サラダクレソン」であれば茎まで柔らかいので、さらに食べやすくなります。ただし、クレソンは菜の花と同様にアブラナ科の野菜のため、「ゴイトロゲン」という抗甲状腺物質が含まれています。健康な犬であればとくに心配ありませんが、甲状腺に疾患がある場合は食べさせるのを控えるほうが安心でしょう。どうしても食べさせたい場合は、事前に行きつけの動物病院で相談してみましょう。