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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
マズルの短いユニークな顔立ちに、大きな目、短い手足が愛らしい狆。肌触りのよい被毛や歩く姿からはどことなく高貴な雰囲気も感じられ、多彩な魅力を持ち合わせています。そんな狆は1300年前から日本で愛玩動物として親しまれてきたという説があるほど、歴史が古い犬種です。この記事では、狆の性格や体格の特徴、気をつけるべき病気などを、バーニー動物病院千林分院分院長の堂山有里先生監修のもと、詳しく解説します。
目次
- 狆の歴史やルーツは?
- 狆の平均的な体高・体重は?
- 狆の平均寿命は?
- 狆の毛色の種類や被毛の特徴は?
- 狆の外見や吠え声の特徴は?
- 狆はどんな性格?オスとメスで性格に違いはある?
- 狆を飼うのに向いている人は?
- 狆を飼う上で気をつけるべきことは?
- 狆のしつけを始める時期とおすすめのしつけ方法は?
- 狆がかかりやすい病気やアレルギーは?
- 狆を散歩させる際に気をつけるべきことは?
- 狆におすすめの遊びは?
- 狆の食事の注意点は?
- 狆の日常のお手入れで気をつけることは?
狆の歴史やルーツは?
狆(ちん)は日本に深いルーツのある小型犬です。約1300年前に朝鮮半島から日本の宮廷に献上されたのがはじまりと言われ、古くから親しまれてきました。また、文献では732年に韓国から宮廷に献上された記録が残っており、その犬が狆の祖先という説もあります。
そんな狆は、天皇家や将軍家などでも愛玩犬として寵愛されました。江戸時代には「犬将軍」として有名な徳川綱吉のいる江戸城で飼育されていた記録があるそうです。海外でも上流階級の抱き犬として重宝され、1800年代にペリー提督が本国に持ち帰ったと言われているほど。古くから人々に親しまれてきた犬種です。
狆の平均的な体高・体重は?
狆の平均的な体高はオスとメスで若干異なります。血統書の発行をおこなう一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)によると、オスの平均体高は25cm程度です。メスはオスよりやや小さめの体つきをしています。また、平均体重は2〜5kgが一般的です。
狆の平均寿命は?
狆の寿命は12〜14歳と言われており、小型犬としては平均的です。ただし、短頭種特有の呼吸器疾患には気を付けなければいけません。病気に注意して飼育すると、より長生きさせることができるでしょう。
狆の毛色の種類や被毛の特徴は?
狆の毛色の種類と、被毛の特徴は以下の通りです。
毛色の種類
狆は白地の毛色に、黒または赤(茶色)の斑が入ります。顔の斑は目の周囲から耳全体にかけて出ることが多く、JKCの規定によれば左右対称に入るのが望ましいのだとか。また、マズルから頭頂に向かって白の模様が幅広く入るほうが好まれます。
被毛の特徴
狆はシングルコートの犬種です。肌触りのよい絹糸状の被毛が特徴で、かなり長さがあります。毛量豊かですが、抜け毛の量は少なめです。
狆の外見や吠え声の特徴は?
狆の見た目や吠え声の特徴は以下の通りです。
外見の特徴
狆は短いマズルに幅の広い顔つき、まん丸な目がかわいらしい犬種です。長く艶のある被毛が特徴的で、優雅さと気品が感じられます。
吠え声の特徴
狆はあまり吠えない犬種として知られています。大きな声で吠えないため、マンションなどの集合住宅でも飼育しやすいでしょう。
狆はどんな性格?オスとメスで性格に違いはある?
狆はどのような性格の犬種なのでしょうか? 主な性格の特徴を見ていきましょう。
大人しくて優しい性格
古くから愛玩犬として親しまれてきた犬種なので、大人しくて優しい性格をしています。利口な一面もあり、物静かで動じない性格から、室内で飼育しやすい犬種です。
協調性があるが、頑固な一面も
愛情深い性格で人見知りしにくく、優れた協調性もあります。ただし、頑固で神経質な面もあるので、しつけの際には気をつけたほうがよいでしょう。
オスとメスの性格の違いは?
もともと狆は穏やかな性格なので、オスとメスで性格の差は出にくいです。ただし、オスのほうが多少興奮しやすい面があると言えます。
狆を飼うのに向いている人は?
実際に狆の飼育にどのような人が向いているかについて詳しく見ていきましょう。
集合住宅に住んでいる人
比較的無駄吠えが少なく、吠え声自体も大きくないため、マンションをはじめとした集合住宅でも飼いやすいでしょう。
健康管理の時間がしっかりと取れる人
狆は短頭種特有の疾患をはじめ、気をつけるべき病気が多いため、健康管理に時間を費やせる人が好ましいです。動物病院に通院する時間などを、しっかり確保できる人の方が向いているでしょう。
穏やかな性格の犬を飼いたい人
狆は穏やかで愛情深い性格をしているため、落ち着きのある犬を飼いたい人におすすめです。高齢者にも向いている犬種と言えます。
室内でゆったり過ごす方が好きな人
狆はあまり多くの運動を必要としない犬種です。そのため毎日長時間の散歩時間を取れない人や、運動をさせるのが難しい人でも飼いやすいでしょう。
狆は初心者向きの犬?
狆は穏やかな性格なうえ、いたずらや無駄吠えが少ないので、初心者でも飼いやすい犬種と言えます。ただし注意点のひとつとして、短頭種ならではの呼吸器疾患や眼科疾患などに気を付けて健康管理を行うことが重要です。初心者はかかりつけの動物病院と連携を密に取って、ケアしていくよう心がけましょう。
狆を飼う上で気をつけるべきことは?
狆の飼育で気をつけるべきポイントは以下の3つです。
床の滑り止め対策が必要
狆を飼うときは室内の床に滑り止め対策をしましょう。狆は長い被毛によって足を滑らせやすいうえに、骨格的な弱さから膝蓋骨脱臼などの疾患にかかりやすい傾向も。フローリングのような滑りやすい床材は狆の体にとって負担になってしまいます。
室内の温度管理
暑さや寒さに弱いので、室内の温度が常に23〜25℃程度に保たれるようエアコンで調節しましょう。高温多湿の環境は短頭種症候群を発症しやすいので、湿度にも注意が必要です。
激しい運動は控える
狆は膝関節や呼吸器系の病気を発症しやすい犬種なので、あまり激しい遊びは向いていません。ジャンプをする遊びやドッグスポーツのような激しい運動は避けましょう。
狆のしつけを始める時期とおすすめのしつけ方法は?
狆は大人しく聡明なため比較的しつけのしやすい犬種ですが、社会化期からのしつけが重要なのは、ほかの犬種と変わりありません。また、狆は頑固な性格で嫌なことははっきりと主張する一面もあります。特にお手入れなどで1度嫌な思いをすると、その後ずっと苦労する可能性も。そのため、子犬の頃からしつけを始めて徐々に慣れさせるとよいでしょう。
特に被毛の長い狆は日々のブラッシングや、顔周りのケアが必要になるので、体に触れることに慣れさせる訓練がとても大切です。決して無理強いせず、愛犬が気持ちよくケアを受けられるように配慮しながら進めてみましょう。
狆がかかりやすい病気やアレルギーは?
狆が気をつけるべき病気やアレルギーは以下の通りです。
膝蓋骨脱臼
いわゆる「膝のお皿」と呼ばれる膝蓋骨が外れてしまう病気です。通常、膝蓋骨は大腿骨の溝にはまっています。しかし、小型犬は生まれつき溝が浅かったり、膝蓋骨を支える靭帯が緩かったりするため、膝を曲げ伸ばしする際に外れやすい傾向があります。
短頭種症候群
狆のようにマズルが短い短頭種の犬が発症しやすい、呼吸器症状が見られる病気の総称です。いびきや運動をあまりしたがらないといった軽度の症状から、呼吸困難や失神を招くような命に関わる病状まで幅広くあります。
原因は短頭種の独特な頭部の形態が関係しています。もともと短頭種は鼻の孔が狭く、気管が細いことで、空気が通りにくいです。そのため呼吸をする時に気道内圧が高まり、器官に負担をかけ続けることも。すると、呼吸器疾患を複合的に発症しやすくなります。
外耳炎
耳から鼓膜までの外耳道と呼ばれる部分に炎症が起きる疾患です。細菌や寄生虫などの外部寄生虫が原因のほかに、アレルギーによって発症する場合もあります。
狆を散歩させる際に気をつけるべきことは?
狆の散歩時間の目安は、1日20〜30分程度です。極端な暑さや寒さに弱いので、散歩に連れて行く時間帯に気をつけてくださいね。夏は気温の高い時間帯を避けて、朝夕など涼しい時間帯の散歩がおすすめです。冬は朝晩が冷え込むので、昼間の暖かい時間帯に散歩しましょう。そのほか、こまめな水分補給による熱中症対策や、体を暖かくする工夫を取り入れてみてください。
狆におすすめの遊びは?
狆と楽しく過ごせる、おすすめの遊びについてご紹介します。
室内でのボール遊びやぬいぐるみを使った遊び
狆は愛玩犬として生まれた犬なので外で走り回るより、室内での遊びを好みます。飼い主と何かをすることが大好きなので、おもちゃを与えっぱなしにするより一緒に遊んであげると喜びます。
宝探しのような鼻を使ったノーズワーク
鼻の低い狆ですが、匂いを嗅ぎわける能力は他の犬に負けず劣らず優れています。室内でおやつを隠して探してもらうノーズワークは、楽しく遊ぶことができるでしょう。