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博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。evergreen pet clinic ebisu行動診療科担当。日本獣医行動研究会研修医。藤田医科大学客員講師。
犬はときどき、私たち人間が理解しがたい行動を見せることがあります。その一つが鼻を鳴らす行為です。突然犬が、「フン!」と鼻を鳴らすのを聞いたことがありませんか。犬にとって、それが気持ちいい状態なのか、不快に思っているのか、理由がわからない飼い主も多いのではないでしょうか。今回はヤマザキ動物看護大学で動物行動学を研究する獣医師の茂木千恵先生に教えてもらった、犬が鼻を「フン!」と鳴らす理由についてご紹介します。
目次
- なぜ犬は鼻を「フン!」と鳴らすの?
- 犬が「フン!」と鼻を鳴らすことが多いとき、しつけは必要なの?
- 犬が鼻を「フン!」と鳴らす場合、病気の可能性はあるの?
- 犬が「フン!」という音以外の鼻の鳴らし方をしているときは?
なぜ犬は鼻を「フン!」と鳴らすの?
犬が鼻を「フン!」と鳴らすのは、いくつかの理由があります。どういった理由で愛犬が音を鳴らしているのかそれぞれ紹介していきます。
嗅覚のリセットのため
理由のひとつに、嗅覚のリセットがあります。気になるにおいを嗅いで鼻を鳴らしていれば、それは鼻腔に吸い込んだにおいと共に空気を出し、新鮮な空気を入れている状態です。同じように、鼻を綺麗にするという意味では、鼻を鳴らすことで鼻の中に詰まっているゴミや鼻水を飛ばしている場合もあります。
威嚇のため
心理的な理由で、鼻を鳴らすこともあります。例えば威嚇のためです。強めに鼻を「フン!」と鳴らしている場合、犬が脅威を感じている場合があります。このような場合、脅威を感じる相手を凝視していることもあります。相手が離れない場合は、鼻を鳴らすだけでなくうなることもあります。
不満を感じているため
犬が不満を感じている場合に「フン!」と音を鳴らす場合もあります。このような状態の時は、目を見開き、ため息をつくという行動も見せる場合があります。反対に、半分閉じた目で「フー」とため息をつくときは、喜びや満足している感情が含まれています。
飼い主の興味を引きたいため
飼い主の注目を引きたくて鼻を「フン!」と鳴らすときもあります。愛犬をずっと無視しているとクンクンした後に続いて鼻を鳴らす場合があります。これは気づいてもらいたい、構ってほしい、遊びたいといった要求を表現しています。これまでに鼻を鳴らしたら注目してもらえたと学習している場合は、鳴らす頻度が多くなることもあるので「フン」と鳴らす回数が増えてきていると気づいたらその理由について探ってみましょう。愛犬の本当の気持ちに気づくことができるかもしれません。
犬が「フン!」と鼻を鳴らすことが多いとき、しつけは必要なの?
犬が頻繁に「フン!」と鼻を鳴らす場合、しつけが必要になることもあります。状況ごとにそのしつけの方法をご紹介します。
威嚇をしている場合のしつけ方法
威嚇をしている場合、苦手な対象がそばに居るはずです。その対象に対して鼻を鳴らしていたら、まずは威嚇行動を中断させましょう。この時、「ダメ!」と声を高めると逆効果の場合もあります。冷静に号令をかけ、それができればご褒美を与えることでしつけを行います。放っておいてしまうと、威嚇はエスカレートします。吠えたりうなったりすることで相手が離れると、犬が学習してしまい、さらに威嚇行動を行う場合もあります。
何かを要求している場合のしつけ方法
興味を惹こうとしている、不満を感じている場合など何かの要求のため鼻を鳴らすときは、数分間集中できる遊びやエクササイズを行い愛犬を満足させてあげましょう。その一方でおとなしくしている時は褒めてあげて、「静かにすることがいいことなんだよ」というのを日常的に教えることも大切です。
犬が鼻を「フン!」と鳴らす場合、病気の可能性はあるの?
「フン!」と鼻を鳴らす時、思わぬ病気が隠れている場合もあります。例えば、連続して鼻を「フンフン!」としている場合は、かぜで鼻が詰まっている、肺や気管支が炎症を起こし、浅く早い呼吸や咳をしている場合もあります。
「ケッ、ケッ」「ガーガー」と鼻を慣らしている時は要注意!
また「フンフン!」という鼻を鳴らす音以外に、心臓や肺が病気の場合は「ケッ、ケッ」と音を発する咳や、「ズーズー、ガーガー」と泣くような音を発することもあり注意が必要です。この場合、気管虚脱(きかんきょだつ)という呼吸が苦しくなる様な症状が見られます。他にも鼻炎によるくしゃみを発する場合もあります。普段このような状態がない場合は、かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
犬が「フン!」という音以外の鼻の鳴らし方をしているときは?
犬の鼻の鳴らし方には、「フン!」以外に「ピーピー」「クンクン」「グーグー」、などといった音があります。それぞれ裏にどんな犬の気持ちが隠されているのかをご紹介します。
「ピーピー」と音を鳴らす場合
犬が構ってほしい場合は、「ピーピー」という風に鼻を鳴らすことがあります。構ってほしい、甘えたい、寂しいという気持ちが隠れているので、構ってあげるのもいいでしょう。しかし、過剰に反応すると、要求が増す場合もあるので、ほどほどにしてあげましょう。
「クンクン」と音を鳴らす場合
「クンクン」と鼻を鳴らす時は、喜びと興奮をそれぞれ感じている時です。興奮にはポジティブな場合と、ネガティブな場合があります。この違いは、鳴き終わりの音に注目してみましょう。鳴き終わりのピッチが上がっている場合は、恐怖や不安を感じています。つまりネガティブな興奮状態です。反対にピッチが下がっているか、変化がない場合は、喜びやポジティブな興奮の気持ちを表しています。
「グーグー」と音を鳴らす場合
鼻を「グーグー」と鳴らす場合、呼吸器の病気の一種である短頭種気道症候群の病気の可能性があります。この病気は、ブルドッグやパグ、ボストン・テリアなど、短頭種の犬によく見られます。気道が十分に確保されていないといびきや息が荒くなる、ハアハアと舌を出すようになることもあるので、犬の様子を注意深く観察しましょう。
第4稿:2021年7月15日更新
第3稿:2021年2月15日更新
第2稿:2020年10月19日更新
初稿:2020年7月27日公開
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