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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
愛犬と暮らす生活は幸せで、いつまでも長く続いて欲しいと思うもの。ただ、どんな犬にももちろん寿命があり、犬種や身体の大きさによっても、その寿命は変わってくると言われています。愛犬が人生をまっとうできるよう、可能な限りサポートしたいですよね。今回はchicoどうぶつ診療所所長の林美彩先生に教えていただいた、犬種別の平均寿命や、愛犬を長生きさせるために気をつけておくべきことを解説していきます。
目次
- 国内で飼われている犬の平均寿命は?
- 犬の平均寿命が伸びた原因は?
- 犬の年齢は人間で換算するといくつになる?
- 犬種によって平均寿命に差はあるの?
- 超大型犬(セントバーナードなど)の平均寿命
- 大型犬(レトリーバー種など)の平均寿命
- 中型犬(ビーグルなど)の平均寿命
- 小型犬(シーズーなど)の平均寿命
- 超小型犬(チワワなど)の平均寿命
- 犬種によって平均寿命が異なる理由は?
- 雑種やミックス犬の寿命が長いってホント?
- 犬の寿命を伸ばすためのポイント1:定期健診
- 犬の寿命を伸ばすためのポイント2:食事
- 犬の寿命を伸ばすためのポイント3:運動
- 犬の寿命を伸ばすためのポイント4:住環境
国内で飼われている犬の平均寿命は?
犬の平均寿命は年々伸びていると言われています。一般社団法人ペットフード協会が実施した「令和元年 全国犬猫飼育実態調査」では、2019年における犬の平均寿命は14.44歳です。
また、別時期の調査になりますが、ペット保険のアニコムグループが調査した「アニコム家庭どうぶつ白書2019」によれば、2017年度における犬の平均寿命は14.0歳。2008年度は13.3歳だったことから、過去10年間で1歳近くも平均寿命が延びていることがわかっています。
犬の平均寿命が伸びた原因は?
なぜ、国内犬の平均寿命が大幅に伸びたのかを考えると、医療やフード、予防薬の発展が関係していると言えるでしょう。
動物病院の増加や医療技術の発達により、提供できる医療サービスは増えています。健康診断や感染予防対策も充実し、病気の早期発見や未然に防ぐ手立ては多くあります。また犬専用のフードが開発された影響は大きく、食べ物の質向上が犬の健康状態にも変化を与えていると考えられるでしょう。
一説では室内飼育も寿命の長さに関係していると言われています。室内では感染症や熱中症などのリスクが低く、常に飼い主さんの目の届く範囲にいることから異変に気づきやすいというメリットがあるようです。
犬の年齢は人間で換算するといくつになる?
犬の年齢については諸説ありますが、冒頭でお話したアニコムの調査では犬の0.7歳が人間の4~5歳分に相当すると言われています。先ほどご紹介した平均寿命で換算すると、犬の14歳は、人間の80歳以上ということです。かなり長生きということがわかりますね。
何歳からシニア犬に該当するのかという点については明確な定義はありませんが、寿命が短い傾向にある超大型犬は6歳くらいからシニア期に入ると言われています。
犬種によって平均寿命に差はあるの?
犬は犬種による体格の違いで平均寿命は大きく変わります。一般的には、小型犬は寿命が長い傾向にあり、大型犬になるほど寿命は短いです。もちろん犬種だけに限らず、前述したように住む地域や室内飼い、屋外飼いなどの生活要因によっても平均寿命は左右されると考えられます。
超大型犬(セントバーナードなど)の平均寿命
犬種や体質によって多少は異なりますが、全体的に超大型犬はもっとも短命な傾向があります。例えば、セントバーナードで8~10歳、グレートデーンで6~9歳、イングリッシュマスティフで6~12歳と、大型になればなるほど寿命は短いです。犬全体の平均寿命が14歳程度という調査結果から考えるとかなり短命なことがわかるでしょう。
大型犬(レトリーバー種など)の平均寿命
大型犬に該当するのはレトリーバー種などです。全体の平均寿命は12歳前後で、こちらも犬種によって異なります。
一例をご紹介すると、ラブラドール・レトリーバーとゴールデン・レトリーバーで10~12歳、シベリアン・ハスキーで11~13歳が平均的な寿命です。特にゴールデン・レトリーバーは腫瘍疾患が多い傾向にある犬種ですので、長生きさせるためにも定期的な健診が必要と言えるでしょう。
中型犬(ビーグルなど)の平均寿命
中型犬の傾向では、ビーグルで12~15歳、ウェルシュ・コーギー・ペンブローグで12~14歳、フレンチ・ブルドッグで10~14歳が平均寿命と言われています。フレンチ・ブルドッグは鼻が短い短頭種のため、特に短頭種気道症候群と呼ばれる呼吸器系の疾患を起こしやすい犬種です。悪化すると呼吸困難を引き起こす可能性があるので、いびきなどの諸症状が見られる場合は注意したほうがよいでしょう。
小型犬(シーズーなど)の平均寿命
小型犬の寿命も犬種によって多少の差はありますが、犬全体の平均寿命に近くなっています。例えば、シー・ズーで13~16歳、ミニチュア・ダックスフンドで13~16歳、パグで12~15歳などです。先ほど説明したフレンチ・ブルドッグと同様にパグは短頭種のため、ほかの犬種と比べると若干寿命が短い傾向にあります。
また、マズル(鼻先から口までの部位)が長いミニチュア・ダックスフンドは、歯磨きがしづらい分、歯周病になりやすい犬種です。歯周病が悪化すると二次疾患が起こる可能性があるため、念入りな歯磨きケアが寿命を伸ばす鍵と言えるでしょう。
超小型犬(チワワなど)の平均寿命
超小型犬の場合、チワワで13~15歳、トイ・プードルで13~16歳、ポメラニアンで12~15歳が寿命と言われています。特にトイ・プードルは長命です。先ほどご紹介した超大型犬と比べると、最大で10歳ほど寿命に違いがあることがわかるでしょう。
とはいえ、これはあくまで傾向ですので、愛犬が長生きできるよう日頃から生活環境を整えてあげることが重要です。ストレスなどが原因となって病気にかかりやすくなる場合があるので、定期的な運動、栄養を考慮した食事などに気を配ってあげてくださいね。
犬種によって平均寿命が異なる理由は?
諸説ありますが、体格が大きくなればなるほど、体と心臓のバランスが崩れてしまうことが短命につながると考えられています。
また、小型犬よりも大型犬のほうが細胞分裂の回数が多く、がん細胞の発生率が高まることが原因と考える説もあるようです。そのほか、大型犬・超大型犬は成長ホルモンの一種であるIGF-1因子が多く、それが短命であることと関連しているのではないかと言われています。
雑種やミックス犬の寿命が長いってホント?
アニコムグループの2017年度における調査では、混血犬の平均寿命は小型・大型に限らず14.6歳です。同じ調査での全体平均寿命が14.0歳だったので、長生きの傾向にあるようです。確かに野犬や野良犬などのように雑種と言われる犬の場合には、生命力の強い遺伝子が受け継がれてきているので長生きする可能性は高いです。
ただし、純血種同士の交配で生まれたミックス犬は、親犬の遺伝病や虚弱体質などを引き継いでいる可能性は十分にありますので、必ずしも長命の傾向があるとは言えないでしょう。
犬の寿命を伸ばすためのポイント1:定期健診
愛犬が健康的に長生きするためには、定期的な健康診断は欠かせません。基本的には1年に1回、シニア犬と呼ばれる年齢に差し掛かったら半年に1回ほど健診を受けるようにしましょう。定期健診を受けることで、病気の早期発見につながります。
飼い主さんの定期的なチェックが重要
病気は早期発見が大事なので異変に早く気づくためにも、飼い主さんには日頃から愛犬の様子をチェックする習慣をつけていただきたいです。
排便や排尿の変化、食事量などを記録に残しておくとよいでしょう。月1回を目安に愛犬の熱や呼吸数を測ってみると、ちょっとした変化にも気づきやすくなります。
日々の生活での変化は、獣医師ではなく飼い主さんが最初に気づく部分です。いつもとは違う行動をしていないか、少しでも気にかかることがあればメモを残しておくと診察時にも役立ちます。
犬の寿命を伸ばすためのポイント2:食事
愛犬の身体を作るのは、毎日の食事です。犬の身体に負担がかかるような有害物質は排除し、愛犬の健康づくりに気を配ってください。
ドッグフードは添加物が多く含まれているものもあり、皮膚や内臓の疾患につながる場合があります。なるべく品質がよいものを選ぶようにしたいですね。
肥満は病気のもと
食事で特に気を付けたいのは塩分や糖分の摂りすぎです。カロリーオーバーになると肥満を招き、さまざまな疾患を引き起こす原因となります。
おいしそうに食べる姿はかわいいものですが、喜ぶからと言って味の濃いものを与えてはいけません。愛犬が肥満気味の場合は適正体重を目指して、食事の量を調整してあげましょう。
犬の寿命を伸ばすためのポイント3:運動
日々の適切な運動は重要です。運動不足は肥満を招くだけでなく、足腰の衰えにもつながります。体力のある若い犬は散歩だけでは足りない場合がありますので、知育玩具などを活用しながら遊んでもよいでしょう。
また、散歩や遊びを定期的におこなうことでストレス発散効果もあります。ストレスのない生活を送らせてあげることが健康への第一歩と言えます。
シニア犬は運動させすぎに注意
運動は非常に重要ですが、シニア犬になると身体へ負担がかかりすぎてしまう場合もあるため注意が必要です。
シニア犬にとって運動は認知症予防にもなりますが、愛犬の様子を見ながら加減しておこなうとよいでしょう。散歩時にはペットカートや歩行を補助するハーネスを活用するのもひとつの手です。
犬の寿命を伸ばすためのポイント4:住環境
室内飼いの犬がシニア期に突入した場合、検討したいのが住宅のバリアフリー化です。バリアフリーといっても大げさなものではなく、足腰の負担を減らすように滑りにくいコルクマットを敷くなどちょっとした工夫を入れてみましょう。
また、シニア犬は視力が落ちてしまう場合も多いです。転んだり、物にぶつかってケガをしたりしないように気をつけましょう。階段を登れないようにするペットゲートを設置する方法もあります。
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