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獣医師資格取得後、小動物臨床経験6年。主に犬猫の臨床に携わる。現在は子育てをしながら、愛猫と暮らしている。
換毛期でもないのに愛犬の抜け毛がひどく、特定の部位の毛だけが抜けるようなら病気の可能性があります。愛犬の病気を治すためには、異常にはやく気づいて適切な処置をすることが重要。犬の毛が抜けるときに考えられる病気を、状況別に見ていきましょう。
目次
- 左右対称に毛が抜ける
- 胴体としっぽの毛だけ抜ける
- 耳の毛だけ抜ける
- 特定の色の毛だけ抜ける
- 鼻の上の毛だけ抜ける
左右対称に毛が抜ける
愛犬の胴体の側面で毛が左右対称に抜ける場合は、「甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)」や、「クッシング症候群」などのホルモン性疾患などが考えられるでしょう。これらはホルモンを分泌する甲状腺や副腎の異常が原因です。
また、シュナウザーやボクサーなどの特定の犬種でみられる「季節性けん部脱毛症」という疾患の可能性もあります。秋から冬にかけてしま状・点状に左右対称に脱毛がみられ、春から夏にかけて毛が生えてくることが多いとされています。
胴体としっぽの毛だけ抜ける
頭や足の毛は残っているのに、胴体としっぽの毛だけが抜ける場合もあります。
考えられるのは「アロペシアX(エックス)」という病気で、初期は毛のボリュームが減ったと感じる程度ですが、やがてごっそりと脱毛します。原因ははっきりとわかっていませんが、1〜4歳くらいの去勢をしていない雄にみられることが多く、特にポメラニアンに多い傾向があります。
耳の毛だけ抜ける
「パターン脱毛症」になると、毛が徐々にやせ細って抜けていきます。犬種によって症状が出る場所が異なり、ダックスフンドやチワワは耳に脱毛が見られます。耳の毛が抜け毛根が小さくなり、その部分の皮膚が色素沈着することでピカピカと黒光りすることも。
また、耳介の「血管炎」の場合、耳の先から脱毛が起こります。出血がみられる場合もあります。耳の縁にフケも見られる場合は、耳介の「辺縁脂漏症(へんえんしろうしょう)」かもしれません。
特定の色の毛だけ抜ける
毛の色を決めるメラニンに異常があると、特定の色の毛だけが抜ける場合もあります。
ブルー、ファウン(フォーン)などの薄い色の毛が抜けるのは「カラーダイリューション脱毛症」、黒い色の毛が抜けるのは「黒色毛胞形成(こくしょくもうほうけいせい)異常症」と呼ばれます。
いずれも遺伝的な要因による脱毛です。
鼻の上の毛だけ抜ける
鼻の毛が抜ける場合は、さまざまな原因で起こります。耳介の脱毛とともにみられる「パターン脱毛症」や「甲状腺機能低下症」などでも鼻の毛の脱毛がみられることがあります。単に鼻先でよくタオルなどをこすっている犬でもみられますが、免疫の異常なども原因となることがあります。免疫の異常やホルモン性疾患が疑われます。
毛が抜けて鼻の頭の色がまだらになる場合は、皮膚に水疱やただれが見られる「天疱瘡(てんぽうそう)」や、免疫異常によって脱毛する「円板状エリテマトーデス」かもしれません。これらの病気は紫外線で悪化する場合もあるといわれています。
また、紫外線が原因となる「日光皮膚炎」の可能性も。
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