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かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。
筋肉隆々でずんぐりとした体つき、強面な見た目が特徴的なアメリカンブリー。一見すると獰猛なイメージを抱くかもしれませんが、外見とは裏腹に性格は温和で家庭犬として愛されている犬種です。ただし、アメリカンブリーのしつけや飼い方にはちょっとしたコツが必要です。この記事ではアメリカンブリーの性格の特徴や飼育のコツ、気をつけるべき病気などをかどのペットクリニック院長で獣医師の葛野莉奈先生監修のもと、詳しく解説していきます。
目次
- アメリカンブリーの歴史やルーツは?
- アメリカンブリーの平均的な体高・体重は?
- アメリカンブリーの平均寿命は?
- アメリカンブリーの被毛のタイプや毛色の種類は?
- アメリカンブリーの外見や吠え声の特徴は?
- アメリカンブリーはどんな性格? オスとメスで性格の違いはあるの?
- アメリカンブリーを飼うのに向いている人は?
- アメリカンブリーを飼う上で気をつけるべきことは?
- アメリカンブリーのしつけを始める時期は?
- アメリカンブリーの食事の注意点は?
- アメリカンブリーがかかりやすい病気は?
- アメリカンブリーを散歩させる際に気をつけるべきことは?
- アメリカンブリーにおすすめの遊びは?
- アメリカンブリーの日常のお手入れで気をつけることは?
アメリカンブリーの歴史やルーツは?
アメリカンブリーは、1980年代後半にデイブ・ウィルソン氏によって作出された、まだ歴史の浅い犬種です。アメリカンブリーのルーツなるアメリカンピットブルテリアは、かつて闘犬として使われていた歴史があります。また、闘犬が禁止されて以降は、牧場や農家で家畜を守る犬種として活躍していました。しかし、その凶暴な一面を犯罪などに悪用する人たちが現れてしまったため、攻撃性を改良して家庭犬としてアメリカンブリーが作り出された、という複雑な経緯があります。
ジャパンケネルクラブ(JKC)などにも犬種として公認されておらず、アメリカンピットブルテリアの一種として扱われることもあります。あまり一般的ではないため、性格などまだ知られていない部分の多い犬種です。
アメリカンブリーの平均的な体高・体重は?
中型犬に分類されるアメリカンブリーの平均的な体高と体重をそれぞれ見ていきましょう。
平均的な体高
アメリカンブリーの平均的な体高はオス約43~50cm、メス約40~48cmです。
平均的な体重
アメリカンブリーの平均的な体重は約15~30kgです。
性別による理想的な体重はなく、平均値には幅があります。しかし、体重は体高に比例すると言われており、オスよりもメスの方が軽い傾向にあるでしょう。
アメリカンブリーの平均寿命は?
飼育頭数が少なく情報が限られているため、他の中型犬と比べると、いまだ明確でない部分も多いですが、平均寿命は約12歳と考えられています。中型犬としては平均的な長さの寿命と言えるでしょう。
アメリカンブリーの被毛のタイプや毛色の種類は?
なめらかで艶やかな被毛が魅力的なアメリカンブリー。毛色の種類や被毛の特徴について詳しく見ていきましょう。
毛色の種類
アメリカンブリーの毛色の種類は、主にホワイト、ブラック、ブラウン、グレー、ブリンドルです。また、この他にも、マール(大理石のようなマーブル模様)を除く、多様な毛色があるとされています。
被毛の特徴
アメリカンブリーは、オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)が二層構造になったダブルコートと呼ばれる被毛で、毛質は硬く、短毛(ショートタイプ)です。また、春〜夏、秋〜冬は換毛期と呼ばれる生えかわりの期間のため、特に抜け毛が多いと感じられるかもしれません。ただし、換毛期に限らず1年を通して比較的抜け毛の多い犬種と言えるでしょう。
アメリカンブリーの外見や吠え声の特徴は?
パワフルなイメージが強いアメリカンブリーですが、実際の外見や吠え声にはどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。
外見
筋肉隆々
家庭犬用に改良された犬種とはいえ、がっしりとした筋肉質な体つきで、体力もあります。
大きな頭に離れた目
ブルドッグに顔つきが似ているとも言われており、頭が大きく目が離れた短頭種です。
強靭なあご
性格は家庭犬として生活できるように改良されていますが、見た目としては闘犬時代に活かされていた強靱なあごは健在です。噛む力も強いと言えるでしょう。
吠え声
強いあごとがっちりとした体つきからも想像できるように、太く大きな吠え声が特徴的です。
アメリカンブリーはどんな性格? オスとメスで性格の違いはあるの?
家庭用の犬種として穏やかな性格に改良された背景を持つアメリカンブリーですが、性格の特徴としては主に以下の4つが挙げられます。
穏やかで優しい
攻撃的な性質を改良されたこともあり、強面な外見に反して、優しくて穏やかな性格を持っていると言われています。
明るくフレンドリー
家庭向けに改良されているので、家族との信頼関係がしっかりと築けると、友好的に接してくれる傾向があります。
服従心が高い
もともと服従心が高い性質を持つ犬種であるため、きちんとしつけをし、飼い主と良好な関係を築ければ、従順に接してくれるでしょう。
ストレスなどで攻撃的になることも
穏やかな性格とはいえ、本質的に闘犬としての攻撃性を持っています。しつけが不十分だったり、何かのきっかけでスイッチが入ったりすると、攻撃的になる場合があることも知っておきましょう。
オスとメスの性格の違い
アメリカンブリーの性格は、個体差があるため、オスとメスで性格に違いがあるとは、一概には言い切れません。しかし、前述した通り、何かのきっかけでスイッチが入ると強い攻撃性を示すこともあるアメリカンブリー。メスよりもオスの方が筋肉質で体も大きいため、攻撃的な性格を表出した時のパワーや危険性は大きく、より注意を払う必要があります。また、未去勢のオスの場合、より縄張り意識や発情中のメスへの反応などが出やすい可能性があるでしょう。
アメリカンブリーを飼うのに向いている人は?
魅力あふれるアメリカンブリーを飼ってみたいという人も多いかもしれませんが、アメリカンブリーは飼育が難しい犬種です。アメリカンブリーの飼育に向いている人の特徴を見ていきましょう。
室内で広い飼育スペースを確保できる人
アメリカンブリーを飼育する際は、快適に過ごせる広い空間が必要です。アメリカンブリーは、がっしりとした筋肉質の体格で体力もあるので、狭い空間で飼育するとストレスをためやすくなります。また、熱中症になりやすい短頭種特有の性質を持っているため、外での飼育も適しません。さらに、攻撃性を持つ犬が逃げてしまった場合、近隣住民とのトラブルに発展する恐れがあることからも、外での飼育はおすすめできません。飼育するには、飼い主がしっかり行動を制御でき、また温度管理などもできる、ゆとりのある室内での飼育が望ましいでしょう。
犬の訓練に精通した人
アメリカンブリーの飼育には、犬の攻撃性をしつけによってしっかりと抑えられる訓練の技術と知識が必要です。勉強だけでは実践に移した時にうまくいかないことも多いので、ある程度、攻撃性を持つ犬の訓練を経験したことがある人の方が安心です。
散歩の時間を確保できる人
体力のあるアメリカンブリーは、運動欲求を十分に満たせずストレスをためてしまうと、攻撃的な行動をとってしまうことがあります。しっかりと体力を発散させるためにも、十分な散歩時間を確保できる人の方が、飼育には適していると言えるでしょう。また、散歩だけでなく、飼い主と遊んだり、コミュニケーションをとったりする時間も十分に取れる方が望ましいです。
小さな子どもや他のペットがいない家庭
アメリカンブリーの攻撃性のスイッチが入ってしまった時、小さい子どもや他のペットが被害を受けると死に至る危険性があります。リスクを避けるためにも、小さな子どもや他のペットがいる家庭は、飼育を検討し直した方がよいでしょう。
アメリカンブリーは初心者向きではない犬?
アメリカンブリーは、初心者が飼育するには難易度の高い犬種です。闘犬としての攻撃性を持っているので、しつけを適切に行う必要があります。しつけが不十分だと、家庭犬としての穏やかで優しい性格が活かされず、攻撃性が表面化してトラブルにつながる可能性も。また、筋肉質で大きなあごは、噛んでしまった場合に相手を死に至らしめるほど大きなリスクも孕んでいます。アメリカンブリーの性質をよく学んだうえで、しつけや管理に当たっては自分の生活を犠牲にして向き合うくらいの覚悟が必要と考えましょう。
アメリカンブリーを飼う上で気をつけるべきことは?
パワフルなアメリカンブリーを飼う際にはいくつか注意すべき点があります。どのような点に気をつけるべきか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
多頭飼いは避ける
闘犬としての攻撃性があるため、他の犬たちと同居していると致命的なダメージを負わせるようなケンカに発展してしまうリスクがあります。そのため、多頭飼いは避けましょう。
室内飼育する
前ブロックでも説明した通り、逃走の危険性や夏場の暑さ対策のためにも、飼い主の目が行き届き、環境も管理できる室内での飼育がおすすめです。
運動量を確保する
運動量が不足するとストレスがたまり、攻撃性につながる恐れがあります。十分な運動量を確保し、体力を持て余さないよう発散させてあげましょう。
公共の場では周囲へ配慮する
飼い主は愛犬が穏やかな性格とわかっていても、周囲の人を怖がらせたり、不安にさせない配慮が大切です。アメリカンブリーという犬種に対して、世間ではまだ闘犬という先入観や偏見があることも考えられます。そのため、アメリカンブリーの性格をよく知らない人は「怖い」という印象を持つかもしれません。もちろん愛犬が実際に人に危害を加えるような性格でないとしても、他の犬や人が大勢集まる場所を避ける、公共の場では口輪をつけるなど、周囲への心配りを忘れないようにしましょう。
子どもがいる場で目を離さない
穏やかな性格であっても、何かのきっかけで攻撃性を示したら、相手に大ケガを負わせてしまうことがあります。特に小さい子どもが近くにいる場合は、絶対に目を離さず、愛犬の行動に注意を払うようにしてください。
アメリカンブリーのしつけを始める時期は?
アメリカンブリーを飼う上で、飼い主にとってしつけは重要なポイントとなります。アメリカンブリーに適したしつけの方法は以下の通りです。
しつけを始める時期
しつけは、アメリカンブリーを家に迎えたらすぐに始めましょう。アメリカンブリーが家族や他の人に対して攻撃的な行動をとってしまわないためにも、早い段階で飼い主との強い信頼関係を構築することが重要です。しつけを通して「攻撃は絶対にしてはいけない」ということをしっかりと教え込む必要があります。
おすすめのしつけ方法
厳格にしつける
よいことをしたらご褒美を与えるという方針では、アメリカンブリーに「本当にしてはいけないこと」を教えるのは難しいかもしれません。「噛んだり、人に抵抗したりするのはいけないこと」ということを厳しく教える必要があります。ただし、しつけの際に、罰として叩いたりするのは絶対にやめましょう。恐怖心や興奮からさらに攻撃的になる恐れがあるので、しつけの際に手を上げることは、絶対にしてはいけません。
プロの力を借りるという選択肢も
しつけは適切な方法で行うことに加え、しかるべきタイミングで行うことも重要です。一般的な家庭犬であれば、それほど厳密にしつけのタイミングを見計らわなくても問題なく過ごせる犬が多いです。しかし、アメリカンブリーの場合は一歩間違えると大きな事故やトラブルにつながりかねません。適切なしつけのタイミングは素人では判断しづらく、プロでないと見極めるのが難しい場合があります。悪い事態を招いてしまわないためにも、しつけにはプロの力を借りると、より安心でしょう。
アメリカンブリーの食事の注意点は?
アメリカンブリーの健康な体づくりのために、肥満には十分気をつけるべきでしょう。アメリカンブリーは鼻が短くつぶれたような形をした短頭種のため、呼吸器系に弱点を持つ傾向が強い犬種です。熱中症や、興奮した際の呼吸困難には気をつけなくてはなりません。とりわけ肥満になると、鼻腔が狭くなったり、気管が圧迫されて気道が狭くなったりするため、余計にそれらのリスクが高まります。食事を与える際は1日の必要カロリーを守り、肥満体型にならないよう気をつけましょう。
アメリカンブリーがかかりやすい病気は?
愛犬に健康に長生きしてもらうためにも、アメリカンブリーがかかりやすい病気について知っておきましょう。
熱中症
短頭種のため、呼吸器が弱いアメリカンブリーは、特に暑い場所では呼吸がしづらくなり、熱中症になりやすい犬種です。夏場の暑い時間帯の散歩は避け、涼しい室内で過ごさせるようにしましょう。
白内障
アメリカンブリーはブルドッグの血を引いているため、白内障を発症するリスクがあると言われています。病的なものだと、白く濁る程度や視力の低下の程度が左右で差が出ることが多いです。おかしいなと感じたら、詳細を早期に知るためにも眼科専用の機械で検査を行う必要があります。日頃から、眼科分野を得意とする動物病院での検診や目の状態のチェックを行い、早めに変化に気づくことが大切です。
緑内障
緑内障は、眼圧が上がり、痛みや違和感が生じる疾患です。白内障同様、ブルドッグの血を引くアメリカンブリーは発症しやすいと考えられます。前足で目の周りをこすったり、顔を床にこすりつけたりするそぶりが見られたら、目に何かしらの違和感が生じている可能性があります。普段と違う様子が見られたらすぐに動物病院を受診しましょう。詳しく調べるためには専門の機械で検査する必要があります。眼科分野にも力を入れている動物病院をあらかじめ探しておくとよいでしょう。
皮膚病
シワが多いため、夏場はシワの部分が蒸れて雑菌が繁殖したり、脂でベタついて、その脂を餌にする病原体が繁殖したりする恐れがあります。日頃からこまめなお手入れを行って、かゆがるなどの行為が見られたら、早めに動物病院を受診するよう心がけましょう。
アメリカンブリーを散歩させる際に気をつけるべきことは?
活発なアメリカンブリーを散歩させる際に、飼い主が気をつけるべき点は以下の通りです。
散歩の時間と頻度
体力や性格によって周囲の人やものに対する反応が変わるので、散歩の時間や頻度は一概に言えない部分があります。ただし、一般的には、1日1時間程度の散歩を1~2回行える体力を持っている犬が多いでしょう。攻撃につながりそうな周囲の環境は避けるなどし、散歩のコースや時間帯を決めてあげることも大切です。
気をつけた方が良いこと
暑さ対策
短頭種のアメリカンブリーは熱中症になりやすいため、夏場に散歩に連れて行く際は暑い時間帯を避けるなど暑さ対策を行ってください。
激しい運動は避ける
短頭種は顔の構造上、軟口蓋過長や鼻腔が狭くなりやすく、呼吸器系の疾患には注意が必要な犬種です。激しい運動をすると呼吸困難に陥る恐れがあるので、ほどほどに制限してあげた方がよいでしょう。
ドッグランなどで運動欲求を発散させる
激しい運動は禁物とはいえ、もともと体力のある犬種なので、適度に運動欲求を発散させてあげる必要があります。ドッグランでの遊びは最適と言えるでしょう。ただし、ドッグランで遊ばせる際は、攻撃的な行動でほかの犬や人に致命的なダメージを負わせてしまわないよう、十分に気をつけましょう。アメリカンブリーはその外見やイメージから、周囲の人に恐怖心を持たれることも多くあります。利用者が少ない時間帯を選ぶなど、トラブルにならない対策をとりましょう。
アメリカンブリーにおすすめの遊びは?
アメリカンブリーには、飼い主との信頼関係を築くのに効果的な遊びがおすすめです。特に、嗅覚を使って遊ぶノーズワークは向いていると言えるでしょう。楽しみながら、飼い主の言うことはしっかり聞く、という習慣を少しずつ身につけられると理想的ですね。
アメリカンブリーの日常のお手入れで気をつけることは?
アメリカンブリーの美しい被毛を健康的に保つために日頃のお手入れは欠かせません。お手入れの際に気をつけるべきポイントを知っておきましょう。
定期的なブラッシング
抜け毛の多い犬種のため、定期的なブラッシングが必要です。皮膚のチェックも兼ねて、小さい頃から日常的に行ってあげましょう。ブラッシングの際、短毛なのでスリッカーを使うと皮膚を傷つけてしまうことがあります。ラバーブラシなど先がとがっていないものを使用しましょう。
こまめに汚れを拭く
よだれの量が多く、口周りの皮膚炎を起こしやすい犬種です。汚れはこまめに拭きとって清潔に保ってあげましょう。夏場は、首や顔のシワ部分の湿気もしっかり乾燥させてあげてください。