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ろろの犬猫部屋所属。麻布大学獣医学部獣医学科卒業 / 動物病院で3年間臨床医 / 現在は横浜市の福祉施設にて研究事業と臨床医として働きながら保護猫活動に従事

昆布は健康によい食材として知られていますが、愛犬に与えても大丈夫な食材です。ただし、与え過ぎには注意が必要ですし、塩昆布・昆布茶など味付けされた昆布は犬に与えてはいけません。昆布にアレルギー反応を示す場合もあるため与え方には注意が必要です。
今回は、昆布の安全性や犬への適切な与え方、注意点ほか、栄養価やメリット、おすすめの調理方法などを、獣医師の栗山宏美先生監修のもと解説していきます。
目次
- 犬が昆布を食べても大丈夫! 子犬や老犬は?
- 犬に昆布を与えるメリットと適量・安全な与え方
- 昆布出汁や出汁をとった後の昆布はOK! 昆布茶・塩昆布はNG
- 昆布を与える際のリスクと対策
- 昆布を使ったフードや手づくりごはんレシピ
- 昆布のほかに犬に与えても大丈夫な食べ物
- まとめ
犬が昆布を食べても大丈夫! 子犬や老犬は?
昆布はミネラルや食物繊維が豊富な健康食材として知られており、犬が食べても基本的に問題はありません。
昆布に多く含まれるヨウ素は犬の健康維持に役立ちますが、過剰摂取すると甲状腺機能に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。与える際は適量を守り、塩分や添加物が含まれる塩昆布や昆布茶などの加工品は与えないようにしましょう。
子犬は消化器官が未発達のため、与えるなら1歳以降が望ましいといえます。ヨウ素には成長を促進する働きがあり、子犬は成犬より多くのヨウ素が必要といわれています。与える際は消化しやすくするために、煮込んで柔らかくした後に細かく刻むなどの工夫をしましょう。
老犬や妊娠中、授乳中の犬も昆布を食べられますが、老犬は特に消化吸収能力が低下してくるため、与え過ぎには注意してください。適量の昆布は腸内環境を整えるのに役立ちますが、過剰摂取すると便秘や下痢の原因になります。また、甲状腺機能亢進症を抱える犬でヨウ素の摂取制限がかかっている場合は、飼い主の自己判断で与えるのではなく獣医師に相談しましょう。
犬に昆布を与えるメリットと適量・安全な与え方
健康によい食材として知られる昆布にはどのような栄養素が含まれているのか、犬に与える場合の適量の目安や安全な与え方について解説します。
昆布に含まれる栄養素
昆布には主に以下の栄養素が含まれており、それぞれ健康の維持に役立つさまざまな働きをしています。
ヨウ素:甲状腺ホルモンの主原料であり、成長を促進し体の機能を維持するために不可欠なミネラルです。
水溶性食物繊維:便を柔らかくして排泄を助ける働きがあり、消化をサポートしてくれます。昆布のねばり成分は水溶性食物繊維の一種であるアルギン酸といい、塩分(ナトリウム)を効率よく体外に排出する作用があります。高血圧や動脈硬化の予防に寄与しています。
カリウム:塩分(ナトリウム)を体の外に排出しやすくする作用のほか、筋肉や神経の機能を正常に保つ役割があります。
カルシウム:骨や歯の健康維持に重要な働きをします。
βカロテン:体内でビタミンAに変わり皮膚や粘膜の健康を維持します。また、抗酸化作用があり、免疫力を高める働きも持っています。
ビタミンK:血液の凝固を助ける役割があり、骨の形成を促進するなど血液と骨の健康維持に欠かせない栄養素です。
犬に与えてよい適量はごくわずか
犬に与える昆布の量はごく少量にとどめる必要があります。体重5kgの成犬の場合、1日当たり昆布0.5g程度が許容量とされています。
ドライフードに含まれるヨウ素量も考慮する必要があり、たとえば体重5kgの犬が1日に必要とするヨウ素の最大量は1mg程度です。しかし、昆布(ながこんぶ・素干し)には100gあたり210mgのヨウ素が含まれるため、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
特に超小型犬はさらに少量にする必要があり、毎日与えるのではなく、時々トッピングとして利用する程度が適切です。大型犬であっても過剰摂取には注意が必要です。ドッグフード(総合栄養食)にもすでにヨウ素が含まれているため、昆布を追加することで摂取量がオーバーし、甲状腺機能の低下を招く可能性があります。
また、昆布には微量ながらヒ素や重金属が含まれている可能性があり、大量に与えるのは避け、基本はドッグフードでまかなえると考えたほうがいいでしょう。
昆布を与える際は、主食に茹でた昆布を刻んで小さじ1程度トッピングするか、昆布の出汁だけを与える程度に留めるとよいでしょう。
乾燥昆布はNG! 柔らかく煮て刻む
犬に昆布を与える際は、必ず水で戻しましょう。柔らかく煮てから細かく刻むと、消化しやすくなります。犬が火傷しないよう、必ず常温から40℃程度まで冷ましてから与えましょう。味付けは不要です。また、乾燥昆布は硬く、口の中を傷つける可能性があるため避けましょう。
昆布にアレルギー反応を示す犬もいるため、初めて食べさせる場合は慎重に与えることが大切です。まずは午前中にごく少量を試し、アレルギーの有無を確認しましょう。アレルギーの症状として、下痢、嘔吐、皮膚のかゆみ、元気の喪失、目の充血などが見られた場合は、すぐにかかりつけの獣医師に相談してください。
昆布出汁や出汁をとった後の昆布はOK! 昆布茶・塩昆布はNG
昆布でとった出汁や出汁をとった後の昆布は、犬に与えても問題ありません。いずれも犬に与える場合は無塩昆布を使用してください。
食欲のない愛犬には昆布出汁をかけたフードを
味付けしていない昆布の出汁は、食欲が落ちている犬にとって有効です。フードに少しかけることで、風味が増し、食欲を刺激する効果が期待できます。胃腸に負担をかけにくいため、体調が優れないときの食事の補助としても適しています。
また、出汁を取った後の昆布も細かく刻んで少量与えることで、ミネラルや食物繊維の摂取が可能です。消化しやすいように柔らかく煮ると、より安心して与えられます。
おでんの昆布など味付けされた加工食品は塩分が多い
昆布を砂糖や醤油で煮詰めた昆布煮や、塩をまぶした塩昆布、昆布茶などの加工食品は犬にとって塩分が高すぎるため、与えてはいけません。また、食卓に上がったおでんの昆布も同様です。もとは味付けされていなくても煮汁を吸収しているため、塩分が多く、犬には適しません。
とろろ昆布は少量なら問題ありませんが、砂糖や添加物が含まれることが多いため、犬には控えたほうが安全です。
昆布を与える際のリスクと対策
昆布は栄養価の高い食材ですが、与え方を誤ると健康リスクが生じる可能性があります。先述しましたがここで改めて昆布を与える際のリスクと対策について確認しておきましょう。
昆布にはヨウ素が豊富に含まれており、ヨウ素を過剰に摂取すると甲状腺の機能低下を引き起こす可能性があります。既に甲状腺機能に問題を抱えている犬にとっては、健康に深刻な影響を与える可能性があるため、与える前にかかりつけの獣医師に相談しましょう。
また、昆布は食物繊維が豊富なため犬によっては消化しづらく、胃腸の不調を引き起こすことがあります。特に高齢犬や消化器系が弱い犬には慎重に与えることが重要です。
腎臓病や、尿路結石を持つ犬にとっては、昆布に含まれるミネラルが病気を悪化させる可能性があります。これらの持病を持つ犬は昆布の摂取を避けるか、獣医師と相談のうえ慎重に判断してください。
愛犬に昆布を与える際、健康な成犬は適量を守り、持病があったり健康に不安があったりする場合は昆布を与える前に獣医師に相談することが推奨されます。
昆布を使ったフードや手づくりごはんレシピ
昆布に含まれる栄養素はドッグフード(総合栄養食)にも含まれているため、普段ドッグフードを与えている場合は追加で与える必要はありません。しかし、手作りごはんを作る際には、適量の昆布を使うことでミネラルや食物繊維を補えます。
昆布出汁を使ったおじやや、細かく刻んだ昆布を混ぜた手作りごはんなど、簡単に取り入れられるレシピもあります。また、市販のドッグフードにも昆布を使用したものがあるのでおすすめの商品を紹介します。
Pet’sOne ドッグミール トレイタイプ ビーフ チーズ入り 幼犬用 100g
Pet’sOne ドッグミール トレイタイプ ビーフ&野菜 チーズ入り 成犬用 100g
リリーズキッチン オーガニックビーフの晩餐・ドッグ150g DB02【別送品】
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※上記商品は獣医師の監修外です。
昆布のほかに犬に与えても大丈夫な食べ物
昆布と同様に、わかめやのりなどの海藻類も犬に与えることができます。ただし、これらもヨウ素を多く含むため、与え過ぎには注意が必要です。特に味付けされた市販品は、塩分や添加物が含まれていることが多いため避けるようにしましょう。ここでは、海藻類のほか、しいたけやえのきなど、犬に与えても大丈夫な食べ物を紹介します。
まとめ
昆布はミネラルや食物繊維が豊富で、愛犬の健康維持に役立つ可能性がある食材です。適量を守れば栄養補給として利用できますが、ヨウ素の過剰摂取や消化不良には十分な注意が必要です。特に持病を持つ犬にはリスクがあるため、与える前に獣医師に相談することをおすすめします。
市販のドッグフードにも昆布が含まれていることが多いため、普段の食事に不足がなければ無理に与える必要はありません。昆布を適切に活用しながら、愛犬の健康をサポートしましょう。