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海動物病院所属。潜水士免許保有。動物検疫所、製薬会社での勤務を経て、海動物病院に所属。自宅で猫、実家で犬を飼っており、最近は自宅でも犬をお迎えしようか検討中。
人間にとっても食べやすく、好き嫌いの出にくい野菜であるじゃがいも。おいしいので犬にもつい食べさせてあげたくなってしまいますが、犬はじゃがいもを食べても大丈夫なのでしょうか。今回は、海動物病院の獣医師、鈴木佐弥香先生に伺った、犬にじゃがいもを与える健康面でのメリットや注意点などについて解説していきます。
目次
- 犬にじゃがいもを与えても大丈夫!
- 子犬やシニア犬にじゃがいもを与えても大丈夫?
- じゃがいもに含まれる栄養素と犬に与える健康面の効果は?
- 犬にじゃがいもを与えるときの注意点は?
- 持病のある犬にじゃがいもを与えても大丈夫?
- じゃがいもを食べるとアレルギーや中毒症状になる犬はいる?
- 犬にじゃがいもを与える際の適量は?
- 犬にじゃがいもを与えるときのおすすめの調理方法は?
- 犬にじゃがいもを使用した加工食品を与えても大丈夫?
- 犬にさつまいもや山芋などのじゃがいも以外のいも類を与えても大丈夫?
犬にじゃがいもを与えても大丈夫!
犬はじゃがいもを食べても大丈夫です。じゃがいもには、炭水化物、ビタミンC、カリウム、食物繊維、ビタミンB、マグネシウム、鉄分などが含まれているため、一度に多くの栄養素を摂取することができます。
じゃがいもは、穀物アレルギー用のドッグフードにも含まれているほど安全な食材ですが、愛犬がじゃがいもアレルギーを持っている可能性もありますので要注意。初めて与えるときは少しずつにして様子を見てあげてください。
子犬やシニア犬にじゃがいもを与えても大丈夫?
子犬やシニア犬も、基本的にじゃがいもを食べることには問題ありません。しかし、気をつけておきたいポイントがあります。まずは、しっかりと成熟したじゃがいもを与えること。そして、芽を深く取り除き、皮を与えないことです。
また、年齢によっても注意するポイントがあります。子犬の場合、まだふやかしているご飯を与えているときには、それと同じくらいまでやわらかくしたじゃがいもを与えてあげてください。
シニア犬の場合は嚥下力や咀嚼力、代謝熱量なども年齢とともに低下しています。じゃがいもを与える際は小さめにカットし、大量にあげないよう注意しましょう。
じゃがいもに含まれる栄養素と犬に与える健康面の効果は?
じゃがいもに含まれる主な栄養素と、犬に与える影響は以下の通りです。
でんぷん
じゃがいもの主成分。エネルギー源となります。
ビタミンC
みかんと同じくらいの量のビタミンCが、じゃがいもにも含まれています。ビタミンCには、健康的な血管や歯、骨を保つのに必要なコラーゲン合成作用や、免疫力を高めたり癌や動脈硬化の予防につながる抗酸化作用、ストレスに強くなる副腎皮質ホルモン合成促進作用などさまざまな利点があります。また、じゃがいもに含まれるビタミンCはでんぷんに守られており、熱を与えても破壊されにくいという特徴があります。
カリウム
じゃがいもには多くのカリウムが含まれています。カリウムはミネラルの一種で、細胞内液の浸透圧を調整したり、筋肉や心筋、神経を正常に保ったりする作用があり、むくみや高血圧に効果があります。
食物繊維
じゃがいもに含まれる食物繊維は、水に溶けやすい性質です。食物繊維は水分をたくさん含むとゼリー状となり、腸内の老廃物や有害物質を吸着し、便として体外に排出する役割があります。また、大腸内で発酵・分解されるとビフィズス菌が増え、便秘予防や整腸作用があります。
犬にじゃがいもを与えるときの注意点は?
犬にじゃがいもを与える際にはいくつか注意点があります。
生のままではなく必ず加熱して与える
犬にじゃがいもを与える際は、生のままではいけません。犬にとって生のじゃがいもは消化がしづらく、嘔吐や下痢を引き起こす可能性があるため、必ず加熱してから与えてください。加熱方法は茹でるのみでかまいません。
ダイエット中の犬や糖尿病の犬に与える際はごく少量に
じゃがいもは炭水化物が多く含まれているため、口にすると食後に血糖値が上がりやすくなります。もしも、犬がダイエットをしていたり糖尿病にかかっていたりする場合は、じゃがいもを避けるか、ごく少量で与えるとよいでしょう。
持病のある犬にじゃがいもを与えても大丈夫?
腎臓病にかかったことがある、または現在かかっている犬は注意が必要です。じゃがいもは、低リン食材として腎臓病のサポートフードに使われていることもあります。しかし、一方でカリウムが多く含まれていることも見逃せません。腎臓の機能が低下しているとき、カリウムが上手に排出されないと高カリウム血症を引き起こすこともあるのです。
腎臓病の犬にじゃがいもを食べさせたいときは、まずかかりつけの動物病院で相談してからにすると安心です。
じゃがいもを食べるとアレルギーや中毒症状になる犬はいる?
じゃがいもはアレルギーを起こしにくい食材だと言われていますが、100%ではありません。じゃがいもにアレルギーを持つ犬は、じゃがいもを口にすると目が腫れる、充血する、体がかゆくなる、下痢や嘔吐をするなどといった症状が見られます。
皮や芽に含まれる毒素に注意
さらに、じゃがいもには「ソラニン」「チャコニン」と呼ばれる毒素が含まれています。これは、芽や皮の周辺、傷んだ部分、緑色の皮、熟していないじゃがいもに多く含まれています。ソラニンやチャコニンは中毒症状を起こすことがあり、嘔吐、下痢、痙攣、失神、運動失調、呼吸困難などを起こすことがあるでしょう。
初めて与える際はごく少量から
こうしたアレルギーや中毒症状を避けるためには、初めて犬にじゃがいもを与えるときには少量ずつにすることが大切です。じゃがいもに限らず、犬に初めて食べるものを与える場合は注意深く愛犬の様子を見守りましょう。念のため、犬にじゃがいもを初めて食べさせるときは、かかりつけの動物病院が開いている時間にしておくと安心です。
犬にじゃがいもを与える際の適量は?
犬がじゃがいもを食べる際、一日分の目安は、体重1kgあたり4gです。ただし、これはあくまでも目安の数字です。犬の体格や年齢も加味して調整しましょう。
犬にじゃがいもを与えるときのおすすめの調理方法は?
じゃがいもは、具材としてもトッピングとしても活用することができます。茹でたじゃがいもを小さいサイコロ状に切ってドッグフードにかけたり、お米やほかの野菜と一緒に煮込みリゾットにして与えるのもよいアイデアです。茹でたじゃがいもをすりつぶして、マッシュポテトとして与えてあげるのもいいですね。
犬にじゃがいもを使用した加工食品を与えても大丈夫?
じゃがいもは加工のしやすさから、たくさんのお菓子や冷凍食品といった加工食品にも使われています。
代表的なのはポテトサラダやフライドポテト、ポテトチップスなどですが、これらの加工食品を犬に与えるのは禁物です。塩分や添加物が多く含まれているため、犬の体に負担をかけてしまいます。
塩分過多の食事は、心臓病にも繋がりかねません。愛犬の健康を考えるのであれば、じゃがいもの加工食品を与えるのはやめましょう。
犬にさつまいもや山芋などのじゃがいも以外のいも類を与えても大丈夫?
基本的にはじゃがいも以外のいも類を与えても問題はありません。しかし、どの食物でもアレルギーがないとは言い切れないので、その点のみ注意が必要です。初めての食材を犬に与える際は、必ず少量ずつにしましょう。
さつまいも
じゃがいも同様、でんぷん、食物繊維、ビタミンC、カリウムを含んでいます。他にも、ビタミンAやカルシウムなども含んでいるので犬の健康にも優しいです。
山芋
食物繊維、アミラーゼ(消化酵素)、アルギニン、カリウム、ビタミンC、ビタミンBなど多くの栄養素を含んでおり、犬に与えても大丈夫です。しかし、山芋は皮の周りに針のような形をした「シュウ酸カルシウム結晶」を含んでおり、調理した際に山芋へ付着してしまいます。この成分が皮膚に付着することによって、痒みを引き起こしてしまうケースがあります。そのため、皮膚疾患のある犬やアレルギー症状の出やすい犬は避けたほうが無難です。
また、腎疾患や尿路疾患のある犬も、シュウ酸やカリウムが腎臓や尿路に負担をかけることがあるため避けたほうがよいでしょう。
里芋
血圧やコレステロールを下げる効果があります。里芋は皮を剥いた際にヌメリが出ますが、ヌメリの元となる成分・ガラクタンがこうした効果を持っているのです。
他にも、食物繊維やカリウム、ビタミンC、ビタミンBなど多くの栄養素を含んでおり犬に与えても大丈夫です。ただし、里芋も山芋同様、皮の周りにシュウ酸カルシウム結晶をふくんでいるので注意してください。生で食べた場合、中毒症状を起こした例もあるそうです。必ず熱を通すようにしましょう。
第2稿:2021年6月14日更新
初稿:2021年3月10日公開
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