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ろろの犬猫部屋所属。麻布大学獣医学部獣医学科卒業 / 動物病院で3年間臨床医 / 現在は横浜市の福祉施設にて研究事業と臨床医として働きながら保護猫活動に従事

リコピンはじめ、ビタミン、カリウムなど多くの栄養素を含んでいるトマト。トマト缶やトマトジュースなどの加工品の種類も多く、料理にも使いやすい食品です。トマトは犬に与えても大丈夫ですが、未熟なトマトやヘタ・茎などには有毒成分が含まれるため注意が必要です。今回はトマトが犬の健康維持に役立つのか、与える際は生と加熱のどちらがいいのか、また、体重別の適量や栄養面でのメリット、注意点などを、獣医師の栗山宏美先生監修のもと解説していきます。
目次
- 赤く完熟したトマトなら犬に与えても大丈夫!
- 犬にトマトを与える際の適量は?
- トマトに含まれる栄養素と犬への影響
- 犬にトマトを与える際の注意点
- 犬にトマトを与える際に気をつける持病
- 【Q&A】犬にトマトの加工品を与えても大丈夫?
- トマトを使った犬用おやつや手づくりフードのレシピ
- まとめ
赤く完熟したトマトなら犬に与えても大丈夫!
犬にトマトを与えても、完熟したトマトであれば問題ありません。むしろ、トマト特有のリコピンやビタミンCなどの栄養素が豊富に含まれているので健康面でのメリットがあるといえます。近年では赤くない種類のトマトもあるものの、基本的には完熟していれば大丈夫です。
さらに、トマトの約90%は水分なので、愛犬の水分補給としても役立ちます。いつもの食事にプラスするだけで手軽に水分が摂取できるでしょう。
犬に与えるトマトは生?茹でる?湯むきは必要?
犬にトマトを与える際には加熱でも生でも問題ありません。ただし、加熱して与えたほうがメリットは大きいといえます。
トマトに含まれるリコピンは油に溶けやすい性質があります。油と一緒に加熱したほうが吸収もよいため、油と炒めたり茹でてから油を加えたりなど加熱調理してから与えてみましょう。ただし、油を使いすぎると犬にとって消化不良や肥満のリスクがあるため、少量にとどめることが大切です。
また、いつものドッグフードに、刻んだトマトをオリーブオイルで炒めたものをトッピングするのも良い方法です。たとえば、小型犬ならティースプーン1杯程度のオリーブオイルを目安にするとよいでしょう。鍋やフライパンに油を回したら、キッチンペーパーで拭き取って余分な油を減らすのも工夫のひとつです。
トマトを皮ごと与えるかどうか悩む方もいるかもしれません。皮ごとでも食べられますが消化が気になる場合は皮を湯むきして取り除いてもいいでしょう。
ミニトマトは小さく刻んで与える
ひとくちにトマトといってもさまざまな種類があるため、与えてはいけないトマトがあるのかどうか気になる方もいるでしょう。さまざまあるトマトのなかで与えてはいけない品種は特にありませんが、与え方には注意が必要です。
例えば、ミニトマトの場合、そのままの大きさだと丸呑みしてしまい、窒息の危険性があります。小さく刻んでから与えるのが安心でしょう。
また、トマトはほかの野菜に比べて糖分が多い分、カロリーが高くなります。肥満気味の犬やダイエット中の犬は摂取量に気をつけましょう。特にフルーツトマトは糖質が多いため、糖尿病を持つ犬には与えないでください。
子犬やシニア犬にトマトを与える場合
基本的に子犬やシニア犬にトマトを与えても問題ありませんが、一部注意が必要です。
子犬は消化器官が未発達のため、トマトがうまく消化できずに下痢や嘔吐などの症状が見られる場合があります。高齢で消化能力が落ちてしまったシニア犬も同様に、量を加減しながら与えるとよいでしょう。トマトの皮や種は消化不良をおこしやすいので、取り除くなどの工夫が必要です。
犬にトマトを与える際の適量は?
トマトをおやつとして与える場合、1日の摂取カロリーの10%程度が理想とされています。犬の体格や犬種によって適正量は異なりますが、体重で計算しておくと安心でしょう。
超小型犬(体重4kg未満)…ドッグフード給餌量の目安はおよそ55g~100g。5g~10gを目安に与えましょう。
小型犬(体重10kg以下)…ドッグフード給餌量は約75g~150g。トマトは7g~15gを目安に与えましょう。
大型犬(体重25kg以上)…ドッグフード給餌量は360g~780gほど。36g~78gを目安に与えましょう。
健康に良いとされる食品も与え過ぎは禁物です。愛犬の様子を見ながら、給餌量は調整していきましょう。
トマトに含まれる栄養素と犬への影響
トマトは栄養価の高い食品として有名です。豊富なビタミンやリコピンが含まれていますので抗酸化作用が強く、アンチエイジングやデトックスに効果的だといわれています。
ここではトマトに含まれる栄養素について解説します。
リコピン
トマトに含まれる栄養素として代表的なものはリコピンです。リコピンは色素成分であるカロテノイドの一種で、トマトの赤色を生み出しています。緑黄色野菜やスイカなどの果物に多く含まれる栄養素です。
リコピンには強い抗酸化作用が期待され、体内の活性酸素を抑制する働きがあるといわれています。活性酸素はウイルスや大気汚染物質、ストレスから身体を守るために発生しますが、過剰に生成されると病気や老化につながる恐れがある物質です。
β-カロテン
トマトは、リコピンと同じカロテン類としてβ-カロテンも豊富です。β-カロテンは優れた抗酸化作用を持ちますが、動物の体内でビタミンAに変わるプロビタミンAとしての働きも注目されています。
プロビタミンAは、目の網膜細胞や皮膚の保護作用がある成分です。ビタミンAの過剰摂取は中毒症状を起こす心配がありますが、β-カロテンの場合は不足分だけがビタミンAに変換されるため危険性は少ないといわれています。
ビタミンC
ビタミンCは水溶性のビタミンで、抗酸化作用のほかに免疫系の活性を促す働きがあります。また、皮膚や軟骨を構成するタンパク質であるコラーゲンの生成をサポートする栄養素です。
犬は人間と違い、自らの体内でビタミンCを合成できますが、生命維持に必要な栄養素なので食物からも摂取するメリットはあるといえるでしょう。なお、水溶性ビタミンは不要な分が尿として排出されるため過剰摂取の心配はありません。
カリウム
ミネラルの一種であるカリウムには、細胞の浸透圧を調整するうえでナトリウム(塩分)の排出をおこなう作用があります。塩分の取り過ぎを防ぎ、血圧低下も期待できます。
カリウムも過剰摂取分は自然と排出されますが、腎臓の機能が衰えている犬は摂取を控えたほうが良いでしょう。愛犬が腎臓病や高カリウム血症を患っている場合は注意してくださいね。
13-oxo-ODA
トマトには、「13-oxo-ODA」という、脂肪の代謝を助ける成分が含まれています。「13-oxo-ODA」は、体に良い働きをする成分「不飽和脂肪酸」の一種で、脂肪をエネルギーに変えやすくする効果があると言われています。
最近の研究※で、肥満および糖尿病のモデルマウスに13-oxo-ODAを投与したところ、高脂肪食を摂取しているにもかかわらず血中の中性脂肪量の増加が抑制されることが分かりました。また、エネルギー代謝に関わる直腸の温度の上昇が見られたことから脂肪燃焼作用にも期待できるといわれています。
※参考:Potent PPARα Activator Derived from Tomato Juice, 13-oxo-9,11-Octadecadienoic Acid, Decreases Plasma and Hepatic Triglyceride in Obese Diabetic Mice、February 9, 2012
Young-il Kim, Shizuka Hirai, Tsuyoshi Goto, Chie Ohyane, Haruya Takahashi, Taneaki Tsugane, Chiaki Konishi, Takashi Fujii, Shuji Inai, Yoko Iijima, Koh Aoki, Daisuke Shibata, Nobuyuki Takahashi, Teruo Kawada
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/152546
カルシウム
カルシウムは骨や歯の健康を維持し、神経機能や筋肉の働きをサポートする重要な役割を果たします。トマトに含まれるカルシウムは他の食材と比べ少量ですが、食事に取り入れることで補助的な摂取が可能です。なお、犬にとってカルシウムは必要不可欠ですが、過剰または不足の状態は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
犬にトマトを与える際の注意点
犬にトマトを与える際にはいくつか注意点があります。それぞれ解説していきます。
トマチン中毒に注意!
愛犬にトマトを与える際に気を付けるべきは、トマチン(アルカロイド配糖体)という成分です。トマチンは、ジャガイモの芽に含まれるソラニンと同様の有毒成分で、犬が摂取すると中毒症状を起こす可能性があります。
トマチンはトマトが虫から身を守るために作り出される成分といわれ、トマトの成長過程や部位によって含有量が異なります。トマチンが多く含まれない部分を与えれば問題ないので、まずはしっかり理解を深めましょう。
トマチンが含まれる未熟なトマトはNG
愛犬に与える際は、必ず完熟したトマトを選びましょう。完熟前の青いトマトにはトマチンが多く含まれますが、成長の過程で減少していきます。未熟なトマトに比べ、完熟したトマトではトマチンの含有量が約1,000分の1にまで減るという測定値も発表されています。
ヘタや茎、葉、花は与えない
未熟、完熟に限らず、トマトのヘタ・葉・茎・花には多量のトマチンが含まれているので必ず取り除いてください。また、誤って食べてしまう可能性がある場所にはトマトを置かないようにしましょう。家庭菜園でトマトを育てているご家庭は、愛犬が口にしないよう気を付けてくださいね。
トマチン中毒が疑われる症状は?
完熟していないトマトや、トマトの葉や茎を大量に食べた場合に、赤血球破壊による貧血や血尿、下痢や嘔吐の症状が見られます。
トマトを食べた後に下痢や嘔吐、歯ぐきの色が白っぽい、ぐったりするといった症状があるときは動物病院を受診しましょう。受診の際には、いつ、どのくらいの量のものを食べたのか、症状は食べてからどのくらい食べて起きたのかなどを伝えましょう。
食べすぎると下痢になることも
トマトは水分量が多いため、あげすぎると愛犬が下痢になる可能性があります。お腹が弱い犬は注意して、皮をむいたり、みじん切りにしたりして与えるなど工夫してみてください。
まずは少量ずつ与えること
お腹を下したり、アレルギー反応を起こしたりする可能性を考慮し、初めて与える際は少量ずつあげましょう。体調が急変したときに備えて、動物病院が開いている日時に与えたほうが良いかもしれません。いつもと違う様子が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。
犬にトマトを与える際に気をつける持病
トマトには愛犬の身体に良い作用をもたらす成分が多く含まれていますが、特定の症状を持つ犬にとっては注意が必要な場合があります。
ここでは気を付けるべき持病について説明していきましょう。
関節疾患
トマトはナスやピーマン、ジャガイモなどと同じナス科の植物です。いくつかの研究論文で、ナス科の植物を摂取すると関節痛が増強されるという研究結果が出ているため関節疾患を患っている犬は注意が必要です。
また、ナス科にアレルギーを持つ犬も気を付けてください。皮膚の痒みや赤み、下痢や嘔吐などの症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
アレルギー
スギやブタクサなどをアレルゲンとするアトピーがある犬は、トマトの摂取で交差性アレルギー反応を起こす場合があるので注意しましょう。
交差性アレルギー反応とはある種類のアレルギーを持つ場合、近い種類の物質にもアレルギー反応が出てしまう作用です。アトピー持ちの犬がトマトを食べても絶対に発症するわけではありませんが、アレルギー体質の犬は摂取を控えたほうが無難でしょう。
糖尿病や腫瘍
トマトにはさまざまな種類があり、なかには小さくて甘いフルーツトマトといった犬が手軽に食べられる品種もあります。しかし、トマトはもともと糖分が高めの食品のため、持病がある犬に与える際は注意が必要です。とくに腫瘍のある犬や糖尿病の犬が食べた場合、病状が悪化する可能性があるため控えたほうが良いでしょう。
腎臓病
腎臓病の犬にトマトを与える際には注意が必要です。腎臓の機能が低下している場合、トマトに含まれるカリウムの排出が難しいため、高カリウム血症を引き起こすリスクがあります。これにより筋力低下や不整脈が生じ、重篤な場合には命に関わる可能性があります。また、トマトの水分含有量は非常に高く、腎臓病の犬では水分摂取量の管理が重要です。
肝臓病
トマトにはβ-カロテンが含まれており、これは体内でビタミンAに変換されます。肝臓病の犬がβ-カロテンを過剰に摂取するとビタミンA中毒のリスクが高まります。過剰なビタミンAは肝臓に負担をかけ、肝機能を悪化させる可能性があります。肝機能が衰えている犬や肝臓病がある犬は、トマトの与え過ぎには注意しましょう。
【Q&A】犬にトマトの加工品を与えても大丈夫?
トマトは犬に与えることができる食材ですが、加工品になると注意が必要です。加工食品には調味料や添加物が含まれている場合が多く、愛犬の健康を損なう可能性があります。トマトの加工品を与える際には、成分をよく確認し、適切な量を守ることが重要です。それでは、加工品ごとの注意点を詳しく見ていきましょう。
犬にトマトジュースをあげても大丈夫?
調味料や添加物が加えられていないトマトジュースであれば、犬に与えても問題ありません。ただし、トマトジュースは濃縮された状態になっているため、与えすぎると下痢を引き起こす可能性があります。特に超小型犬や小型犬にはスプーン1杯程度の少量から始め、愛犬の体調を観察しながら与えるようにしましょう。必ず無添加・無塩の製品を選ぶことが重要です。
犬にトマトケチャップをあげても大丈夫?
トマトケチャップには犬が中毒を起こす原因となる玉ねぎや香辛料が含まれています。そのため、犬には絶対に与えないようにしてください。また、砂糖や塩分が多く含まれており、犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。トマトケチャップは犬にとって完全にNGの食品ですので、愛犬の手の届かない場所に保管しましょう。
犬にドライトマトをあげても大丈夫?
人間用のドライトマトは塩分が多くカロリーも高くなるため、犬には適していません。過剰な塩分は犬の腎臓に負担をかけるため、人間用のドライトマトは犬に与えないようにしましょう。犬に与える場合は必ず犬用のドライトマトを選び、パッケージの原材料名に保存料や味付けなどがないことを確認して与えてください。
犬にトマトの缶詰をあげても大丈夫?
調味料や添加物が加えられていないトマトの缶詰であれば、犬に与えても問題ありません。購入する際には無塩・無添加の製品を選び、適量を守ることが大切です。一度に大量に与えることは避け、少量ずつ与えるようにしましょう。缶詰を与える際にも、成分表示をしっかり確認して、犬に適したものを選ぶことを心掛けてください。
トマトを使った犬用おやつや手づくりフードのレシピ
犬の健康を考えたおやつや食事に、トマトを取り入れてみませんか?トマトにはビタミンやミネラルが豊富に含まれており、適量を守れば犬にとっても安心して食べられる食材です。このセクションでは、市販されているトマトを使った犬用おやつや手づくりフードのレシピをご紹介します。愛犬が喜ぶヘルシーなメニューを手軽に作れるヒントが満載です。たまのご褒美として食べさせてあげましょう。
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※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください。
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※上記商品は獣医師の監修外です。
〈手づくりフードのレシピ〉
以下の記事をご覧ください。
まとめ
トマトは犬に与えても安全な食材ですが、適量を守り、注意点を理解することが大切です。トマトにはビタミンCやリコピンが豊富に含まれ、健康維持に役立つ成分がたくさんあります。しかし、未熟なトマトやトマトのヘタ・葉・茎・花にはトマチンという有害物質が含まれるため、与える際は完熟したトマトの果肉のみを与えましょう。また、加工品には塩分や添加物が含まれていることが多いため、注意が必要です。本記事では、トマトを犬に与える際の適量や危険部位、注意点について詳しく解説しています。