更新 ( 公開)
バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
ミネラル豊富でヘルシーなイメージがあるわかめ。人間の食卓では馴染み深いわかめですが、与え方に注意すれば犬にも問題なく食べさせることができます。今回の記事では、わかめに含まれている栄養素や、食べさせる際の注意点など、犬にわかめを与える際に知っておきたいポイントについてバーニー動物病院千林分院 分院長の堂山有里先生に解説していただきます。
目次
- 犬にわかめを与えても大丈夫!
- 子犬やシニア犬にわかめを与えても大丈夫?
- 持病のある犬にわかめを与えても大丈夫?
- わかめに含まれている栄養素と犬に与える影響は?
- 犬にわかめを与えるメリットは?
- わかめを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
- 犬にわかめを与える際の一日あたりの適量は?
- 犬にわかめを与える際の注意点は?
- 犬にわかめを使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫?
- 犬にめかぶや茎わかめを与えてもよい?
- 犬にわかめを食べさせると「毛が増える」「被毛に良い」は本当?
犬にわかめを与えても大丈夫!
わかめは与え方に注意をすれば、犬に食べさせることができます。わかめを犬に与える際、とくに気をつけたい3つの注意点から見ていきましょう。
細かく切ったものを与える
犬は食べものを細かく噛み砕く習慣がないため、食物繊維が多い食材の消化が苦手。カットしていないわかめは消化しにくいので、犬の消化管内で詰まる危険性も。食べやすいように細かく切って与えるようにしましょう。
味付きのわかめは与えない
味付きのわかめは犬にとって塩分や糖分が過剰に含まれているので、与えないほうがよいです。
乾燥わかめは与えない
乾燥わかめは犬の胃や腸の中で水分を吸って膨張し過ぎる危険性があるため、与えないようにしましょう。
子犬やシニア犬にわかめを与えても大丈夫?
子犬やシニア犬にも、少量であればわかめを与えても問題ありません。ただし、わかめは消化しにくい食材である上に、子犬やシニア犬の場合は消化器官が弱いので、必ず茹でたり細かく刻んだりしてから食べさせるとよいでしょう。
持病のある犬にわかめを与えても大丈夫?
犬の持病によっては、わかめを与えないほうがいい場合があります。以下の持病がある場合は、まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。
甲状腺に持病がある犬
わかめにはヨウ素が豊富に含まれます。甲状腺疾患とヨウ素の摂取量の関係性については議論のあるところですが、人ではわかめばかり取り続けると体内でヨウ素が過剰となり甲状腺ホルモンの低下を招くことがわかっています。また、ある種の環境下ではヨウ素の過剰摂取によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることもあります。念のため甲状腺疾患があり治療中の犬にわかめを与える場合は、かかりつけの獣医師に相談してからにしましょう。
尿路結石症の犬
健康な犬が常識的な量のわかめを食べる場合は尿路結石症を起こす心配はあまりありません。ただし、すでに尿路結石で療養中の犬に与える場合は、ミネラルが豊富なわかめを過剰に取り続けることで、悪影響が出る可能性があります。
わかめに含まれている栄養素と犬に与える影響は?
ヘルシーなイメージのわかめですが、実はさまざまな栄養素が豊富に含まれています。どんな栄養があり、それぞれ犬にどんな影響を与えるのかを見ていきましょう。
ヨウ素
微量必須ミネラルの一つで、「ヨード」とも呼ばれるヨウ素。甲状腺ホルモンの合成や細胞の活動などに必要な栄養素です。甲状腺ホルモンの働きを正常化することで、タンパク質や脂質、糖質の基礎代謝が向上し、美肌や育毛、老化防止の効果が期待できるとされています。
ヨウ素は不足しても過剰でも甲状腺機能低下症を招くので注意が必要ですが、わかめに含まれるヨウ素は他の海藻類と比べると微量です(※1)。あまり神経質にならず、トッピングとして適量を食べさせるのがよいでしょう。
出典:(※1)昭和大学横浜市北部病院 外科系診療センター 外科「甲状腺とヨードについて」
http://www.showa-hokubugeka.org/iodine.html
ナトリウム
主要必須ミネラルの一つ。細胞の機能に欠かせず、細胞のエネルギー代謝や神経伝達などに様々な役割を果たします。カリウムとともに体内の水分バランスを調整する役割も。
カリウム
主要必須ミネラルの一つ。細胞が正常に機能するために不可欠な栄養素です。ナトリウムとともに体内の水分バランスを調整するほか、エネルギー代謝や神経伝達にも関与します。
カルシウム
主要必須ミネラルの一つ。骨の発育と維持に重要な栄養素です。ほか、細胞や神経の情報伝達に関与。体内では「リン」とバランスをとって存在しています。
ビタミン類
わかめに含まれるビタミンはKとA (βカロテン)。ビタミンKは、血液の凝固能に関係します。ビタミンA(βカロテン)は活性酸素の発生を防ぐ栄養素です。発育促進、肌の健康維持、粘膜の免疫作用、暗所でも目が見えるようにする機能にも関与します。
食物繊維(フコイダン、アルギン酸)
わかめには「フコイダン」や「アルギン酸」という水溶性食物繊維が豊富。どちらもわかめのネバネバ成分の素となるものです。フコイダンは抗癌作用や免疫増強作用、コレステロール低減作用や血圧抑制作用など非常に多くの作用があります。アルギン酸は整腸作用や酵素の活性化、コレステロール値の低下や血圧抑制、抗癌などの作用があり、化粧品をはじめとする様々な分野で活用されています。
犬にわかめを与えるメリットは?
栄養豊富なわかめですが、犬に与えるとどのようなメリットがあるのか詳しく見ていきましょう。
被毛や爪、皮膚の健康を保つ
わかめに含まれる「ヨウ素」は、体内の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの成分となるため、犬にわかめを与えると体内の新陳代謝が活発になることが期待できます。その結果、被毛や爪、皮膚の健康を保つのに役立ちます。
腸内環境を整える
食物繊維には腸内環境を整える効果や、血中コレステロールの低下を促す効果が期待できます。また、わかめの食物繊維の一つであるアルギン酸カリウムには血圧を下げる効果があります。
わかめを食べてアレルギーを起こす犬はいる?
食物アレルギーは食べる回数が多いものに対して起こります。一般的なドックフードにわかめなどの海藻類が使われる頻度は少ないため、犬のわかめアレルギーは一般的ではありません。しかし、以下のような場合にはわかめアレルギーを発症することがあります。
・子犬の頃からわかめを多く摂取している犬
・母犬が妊娠中にわかめを多く摂取していた犬
・昆布やもずくなど、他の海藻類にアレルギーを持つ犬
犬がわかめアレルギーを起こした場合の症状
犬のわかめアレルギーは食後2〜3日以内に発症することが多いです。その際には以下のような症状が出ます。
嘔吐
食べた直後から半日程度の間に嘔吐が起きるケースがあります。原因となる食べ物を吐き戻してしまえば、その後に体調は回復します。
下痢
当日から2~3日以内に下痢が起きることがあります。通常、原因となる食べ物の摂取をやめると症状は治まり、改善へと向かいます。
皮膚のかゆみ
皮膚や目の周り、口の周り、肛門の周囲、耳、背中、お腹などにかゆみや赤み、湿疹が出ます。
目の充血
目の周りの皮膚にかゆみが出て赤く充血することがあります。
外耳炎
外耳炎を繰り返すケースがあります。耳が赤く腫れたりしきりにかゆがる様子が見られたら、アレルギー症状の可能性があります。
犬がわかめアレルギーを起こした場合の対処法
わかめを食べた後、犬にいつもと違う様子が見られたら、まずは続けて食べさせるのをやめましょう。それで症状がなくなれば、そのまま様子を見ても問題ありません。食べて数時間以内に激しい下痢や嘔吐が見られたり、下痢や嘔吐を数日繰り返したりする場合は、動物病院を受診しましょう。その際、数日以内に食べたものが分かるようなメモを持参するとよいでしょう。目や口周り、皮膚のかゆみなどが続く場合もアレルギーの可能性があるので、その際も動物病院の受診をおすすめします。食事内容について相談にのってもらえるでしょう。
犬にわかめを与える際の一日あたりの適量は?
ドックフード以外のものを犬に食べさせる場合、その量の基準は1日に必要なエネルギー量のおおよそ1割であれば問題とはならないとされています。例えば、5kgの成犬の場合、1日に必要なエネルギー量は300~350kcalで、その1割は30~35kcal。
これに対し、カットわかめの大さじ1杯分のエネルギー量は6kcal程度で、わかめはたいへん低カロリーな食材ということがわかります。そのため、エネルギー量は気にせず、見た目のボリュームを目安にするのがおすすめです。小型犬・中型犬・大型犬のどの犬でも、わかめをトッピングするなら「見た目」で食事のおおよそ1割まで、と考えるとよいでしょう。
犬にわかめを与える際の注意点は?
前述した注意点を含め、犬にわかめを与える際に気を付けたいポイントを見ていきましょう。
よく煮て細かく切る
犬の歯は食べ物を細かく噛み切る構造をしておらず、わかめなど食物繊維の多い食べ物の消化には向いていません。海藻類は消化しやすいよう、加熱して細かく刻んだり、ブレンダーですり潰したりして食べさせるようにしましょう。
加熱したら火傷しない程度に冷ましてから与える
わかめを加熱した場合、火傷しないようにしっかり冷ましてから与えましょう。
与え過ぎに注意
わかめに限らず、どんな食物も食べ過ぎたり、そればかりを食べ続けたりすると栄養が偏ってしまいます。適量をバランスよく取ることを心がけましょう。
トッピングとして与える
「総合栄養食」と記載のあるドッグフードはミネラルやビタミン類まで犬に必要な栄養素を過不足なく含んでいます。ドッグフードを主食とし、わかめはトッピングとして与えるとよいでしょう。
まずは少量ずつ与える
アレルギーや消化不良が起きないかどうか、少量ずつ与えて様子を見るとよいでしょう。
犬にわかめを使用した人間用の加工食品を与えても大丈夫?
人が食べる味噌汁や加工食品に入っているわかめは、「少し取り分けて、犬に食べさせてあげよう」という感覚で与えることはしないようにしましょう。味付きの加工食品は、犬にとっては塩分や糖分が過剰。保存料や添加物が多く、身体の負担になります。
犬にめかぶや茎わかめを与えてもよい?
わかめは部位によって「めかぶ」と「茎わかめ」に分類されます。「めかぶ」はわかめの根元部分で、「茎わかめ」はわかめの茎部分です。どちらも犬に食べさせても問題ありません。わかめと同じく、茹でたり刻んだりして与えるとよいでしょう。
犬にわかめを食べさせると「毛が増える」「被毛に良い」は本当?
「わかめを食べると毛が増える」という、嘘か本当かわからない説を耳にすることがありますよね。犬については、「犬の被毛にわかめが良い」という説の根拠はありません。わかめには、体内の新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの成分となる「ヨウ素」が含まれることから、このような説が生まれたとされています。
※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。