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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
おひたしなどに使用される小松菜は人間には馴染みのある食材ですが、犬に与えても大丈夫なのでしょうか。今回は、犬に小松菜を与えても大丈夫かどうかと、小松菜に含まれている成分や犬に与える影響、与える際に注意することなどを、バーニー動物病院 千林分院分院長で獣医師の堂山有里先生に解説していただきます。
目次
- 犬に小松菜を与えても大丈夫!
- 子犬や老犬(シニア犬)に小松菜を食べさせても大丈夫?
- 持病のある犬に小松菜を与えても大丈夫?
- 小松菜に含まれている栄養素と犬に与える健康効果は?
- 小松菜を食べるとアレルギーや中毒症状を起こす犬はいる?
- 犬に生の小松菜を与えても大丈夫?
- 犬に与えてもよい一日あたりの小松菜の量は?
- 犬に小松菜を食べさせるときのおすすめの与え方と注意点は?
- 犬にチンゲン菜やほうれん草を与えても大丈夫?
- 犬が尿路結石になってしまったときの症状とは?
- 犬が尿路結石になってしまったときの対処法とは?
犬に小松菜を与えても大丈夫!
小松菜は、犬に与えても大丈夫な食材です。食べやすいように加熱したり、カットしたりしてから与えましょう。
小松菜とほうれん草の違いは?
どちらもビタミンやミネラルを多く含む緑黄色野菜ですが、見た目と味、含まれている栄養に違いがあります。小松菜の見た目は、葉が丸くて広く、茎がやや薄緑色。ほうれん草の葉は先に向かって細くなる三角形で、茎は緑色をしています。どちらにもβカロテンやビタミンK、C、葉酸などが多く含まれますが、大きな違いはカルシウム量です。小松菜は野菜の中でも際立ってカルシウムが豊富で、ほうれん草の3倍にもなるといわれています。また、アクの成分となるシュウ酸は小松菜にもありますが、ほうれん草の方がより多く含まれています。
子犬や老犬(シニア犬)に小松菜を食べさせても大丈夫?
子犬や老犬に小松菜を食べさせても大丈夫です。そのままだと喉に詰まらせる可能性もあるため、食べやすい大きさにカットしてから与えましょう。
持病のある犬に小松菜を与えても大丈夫?
小松菜のようなアブラナ科の野菜を多く摂取すると甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの不足した状態)を起こすといわれていますが、それは「数ヶ月間毎日1〜1.5kgのキャベツ(諸説ある)を食べ続けた高齢の女性が重篤な甲状腺機能低下症を発症した」という報告がベースとなっています。ですが、普通はそんなにかたよった食事はしませんよね。人も犬も、通常の範囲内で小松菜を食べる分には問題ありません。ただし、尿路結石がある犬には注意が必要です。
小松菜に含まれている栄養素と犬に与える健康効果は?
小松菜にはさまざまな栄養素が含まれています。それぞれ犬にどのような影響を与えているのか見ていきましょう。
ビタミン類(βカロテン、ビタミンC、ビタミンKなど)
βカロテン
抗酸化作用や免疫を強くする作用などがあります。また、βカロテンは体内で変化し、ビタミンAとして作用します。ビタミンAは発育を促進したり、肌の健康を維持したり、暗いところで目が見えるように助けたり、喉や鼻の粘膜を強くしたりします。
ビタミンC
体内でコラーゲンを作り、皮膚や粘膜を丈夫にします。病気やストレスへの抵抗力を高めたり、抗酸化作用によって活性酸素から体を守ったりすることで、動脈硬化や心疾患を予防します。
ビタミンK
脂溶性ビタミンで、血液凝固因子を活性化させます。
ミネラル(カルシウム、カリウム、鉄)
カルシウム
骨や歯を作るミネラルです。神経の正常なはたらきや筋肉の伸び縮みにも必要で、生命の維持にとても重要な栄養素です。
カリウム
ナトリウムとバランスをとりながら細胞を正常に保ったり血圧を調節したりして、身体の恒常性を維持するのに役立ちます。
鉄
赤血球を作るのに必要なミネラルです。赤血球は、呼吸で取り込んだ酸素を身体のすみずみまで運ぶという重要なはたらきをしています。
その他
薬膳で考えると、小松菜には胃腸を健康にして便通をよくする効能があります。また、潤いを与え、イライラを抑える作用もあるので、コロコロ便が出るタイプの犬や、イライラしやすい、胃腸が弱い犬におすすめです。
犬に生の小松菜を与えても大丈夫?
犬に生の小松菜は与えないほうがよいでしょう。犬は雑食性ですが、野菜に含まれる食物繊維の消化はそれほど得意ではありません。
野菜は加熱した方が消化吸収しやすくなる
小松菜などの野菜は、生のものより茹でたり炒めたりして加熱したものの方が消化吸収しやすくなります。また、小松菜に含まれるシュウ酸は尿路結石を引き起こす可能性がありますが、茹でることでその量を減らすことができます。
犬に与えてもよい一日あたりの小松菜の量は?
犬に与えてもよい小松菜の量は、一般的に一日に必要なカロリーの10%以内、もしくはドッグフードの1割までといわれています。小松菜は100gあたり13kcalあるので、目安の量をご紹介します。
超小型犬
小さじ1杯程度
小型犬
大さじ1/2杯程度
中型犬
大さじ1杯程度
大型犬
大さじ2杯程度
※小松菜は茹でて刻んだものを想定しています
犬に小松菜を食べさせるときのおすすめの与え方と注意点は?
犬に小松菜を与える際は、食べやすいように工夫してから与えましょう。ここでは、その方法をいくつかご紹介します。
茹でて柔らかくする
小松菜を与えるときは茹でるようにしてください。茹でることで、結石の原因となるシュウ酸を減らすことができます。
細かく刻む
犬は繊維質のものを消化するのがあまり得意ではありません。小松菜の食物繊維はそれほど多くないですが、それでも犬に与えるときは細かく刻んで消化性をよくしてください。消化吸収しやすい方が栄養素を十分に摂取させることができます。また細かく刻むほど消化性は上がるので、胃腸の弱い犬やシニア犬などに与える際にはブレンダーでペースト状にしてもよいでしょう。
少量から与える
初めてのものを与えるときには、少量から初めて犬の反応を見ます。軟便になる、吐き戻す、喜んで食べないなど気になる症状があれば与えるのをやめ、改善するかどうか様子を見ましょう。
犬にチンゲン菜やほうれん草を与えても大丈夫?
小松菜と見た目が似ているチンゲン菜とほうれん草は犬に与えてもよいのでしょうか。
チンゲン菜には犬にとって危険な成分は含まれていないので、基本的には与えても問題ありません。小松菜と同様に、犬にチンゲン菜を食べさせる場合は必ず加熱し、細かく刻んでから与えるようにしましょう。
ほうれん草には小松菜よりも多量のシュウ酸が含まれています。シュウ酸を過剰摂取すると、尿路結石を引き起こす可能性があるので、与え過ぎないように注意してください。小松菜を与える場合と同様に、生のままではなく必ず茹でるなどの加熱をしたものを与えるようにしましょう。
犬が尿路結石になってしまったときの症状とは?
小松菜に含まれるシュウ酸は尿路結石を引き起こす可能性があります。尿路結石とは、尿の通り道である腎臓、尿管、膀胱、尿道のいずれかにできた硬い石状の塊をいいます。体内の、本来ないはずの場所に硬い結石ができると、尿路に炎症や感染症が起こるので、血尿がでたり痛がったりします。また、結石が途中で詰まると、尿を出すことができなくなる尿路閉塞になり、排尿異常や腎障害などが起こります。
頻尿になる
膀胱炎が起きることで残尿感が発生します。残尿感があると犬は何度もおしっこをしようとしますが、実際には少量しか出てきません。
(トイレをする姿勢になってから)尿が出るまでに時間がかかる
排尿姿勢を取っても尿がまったく出ない、しばらく排尿姿勢をとっていてもチョロチョロと少量しか出ないときは、尿路に結石が詰まっていることがあります。この場合、まるで頻尿かのように見えることもあるでしょう。仮に少量ずつ尿が出ていても、完全に閉塞してしまうと緊急性が高くなるため油断できません。尿路閉塞を起こすと腎臓に大きな負担がかかり命に関わることがあるため、このような様子が見られたらなるべく早く動物病院を受診してください。
また、膀胱炎でも同様の症状が出ることがあります。外見からは違いがわかりにくいので、このような症状が見られたら動物病院で診断を受けてください。
おしっこをする時に痛そうなそぶりをする(キャンと鳴く、震えるなど)
腎臓や尿路に結石ができると痛みが発生することがあります。
・不意にキャンと鳴く
・震える
・おしっこしながら鳴く、震える
などの様子が見られたら動物病院を受診することをおすすめします。
食欲がない
尿路結石によって、痛みや腎臓への負担があると食欲が落ちます。
・いつもよく食べる子がまったく食べない
・少量は食べるが残してしまう
・おやつなら食べるがフードは食べない
などは食欲不振のサインですので、このような様子が見られたら動物病院を受診してください。
おしっこに血が混じっている
尿路結石ができると、尿道や膀胱などで粘膜に傷がつき出血することがあります。
・おしっこに血が混じる
・ペットシーツに赤い色がつく
・ポタポタと赤いおしっこをする
などの様子が見られたら動物病院を受診してください。
その他
まれに、結石があっても上記のような症状が出ないことがあります。症状がなくても結石をそのままにしておくと尿路に詰まったり知らぬ間に大きくなったりしますので、年に1回は尿検査やレントゲン検査などを含む健康診断を受けることをおすすめします。
犬が尿路結石になってしまったときの対処法とは?
治療の原則は結石を体内から取り出すことです。犬の尿路石症にはいくつか種類があり、なかには食事や薬により溶かすことができる結石(ストラバイト結石など)もあります。溶ける可能性のある結石の場合は、まずは食事療法を試し自然に溶かすことができないかチャレンジします。
食事などでは溶かすことができないシュウ酸カルシウム結石などができてしまった場合には、外科手術を行い摘出する必要があります。膀胱から石を取り出す手術費用の相場としては10〜15万円程度であることが多く、結石のある場所やできている数により手術時間や費用は多少前後します。また、このほかに入院費用やお薬代などが別途かかります。
近年、動物医療でも、痛みの少ない手術が受けられる施設が増えています。ただ、どこでもできる手術ではないため、日頃から調べておき、もし手術を受けるならそういう設備のある病院を選択されるのもよいかもしれません。
第2稿:2021年11月19日更新
初稿:2021年9月30日公開
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