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chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。
健康志向が高まる昨今、低カロリーで食物繊維が豊富なきのこを食事に取り入れている人も多いかと思います。食卓を彩っているきのこに犬が興味を持って、食べたいとアピールしてくることがあるかもしれません。人間が食べるきのこを愛犬に食べさせても大丈夫なのか、もし食べさせる場合に注意すべき点などについて、chicoどうぶつ診療所の所長で獣医師の林美彩先生に解説していただきます。
目次
- 犬にきのこを食べさせても大丈夫?
- きのこに含まれている栄養素と犬に与えるメリットは?
- 犬に食べさせてもいいきのこの種類は?
- 犬に与えるきのこの選び方と保存方法は?
- 犬にきのこを与える際のおすすめの調理方法は?
- 犬にきのこを与える際の注意点は?
犬にきのこを食べさせても大丈夫?
飼い主が食べているきのこを愛犬が欲しがった時に、少量を与えることは問題ありません。ただし、それがきっかけできのこ好きになった愛犬が散歩先の公園や庭、芝生などに生えている野生のきのこを食べてしまわないように注意してください。また、きのこが嫌いな犬もいるので、その場合は無理に食べさせる必要はありません。
子犬や老犬にきのこを与えても大丈夫?
きのこは食物繊維が多いために、子犬や老犬、消化器が弱い犬がきのこを食べると消化不良を起こす可能性があります。細かく刻んだり、ペースト状にしたりして消化しやすい状態で与えてあげるとよいでしょう。
持病のある犬にきのこを与えても大丈夫?
きのこは食物繊維が豊富な食材です。整腸作用があると言えますが、お腹の弱い犬や、持病により胃腸が弱っている犬には食べさせない方がいいでしょう。
きのこに含まれている栄養素と犬に与えるメリットは?
サプリメントの材料にも使われるほど栄養豊富なきのこは、ビタミン群も多く含む健康食材です。食物繊維が豊かなために便秘やダイエットに効果的なのは、人間だけでなく犬にとっても同じです。きのこに含まれている主な栄養素を見ていきましょう。
ビタミンB群
炭水化物や糖質からエネルギーを作り出すために重要な栄養源で、皮膚の健康維持や脳の働きのサポートとしても重要です。疲労回復にも役立ちます。
ビタミンD
カルシウムの吸収をサポートする役割があるので、骨の健康維持に効果があります。
ミネラル(カリウム)
ナトリウムと共に細胞の浸透圧を維持するほか、心臓や筋肉の機能調節、酵素反応の調節などをサポートします。体内の血液量や細胞間を満たす体液のコントロールにもひと役買っています。
食物繊維
きのこには水溶性食物繊維、不溶性食物繊維の両方が含まれており、水溶性食物繊維によってコレステロールの排泄、不溶性食物繊維によって体内の不溶物質を排泄することが期待できます。また、水溶性食物繊維は短鎖脂肪酸に変換され、腸を動かすためのエネルギーとしても働きます。
βグルカン
多糖類の一種で、免疫機能に作用したり、コレステロール値の上昇を抑えたりする働きがあります。腸内環境を整える効果も期待できます。
犬に食べさせてもいいきのこの種類は?
人間にとっても害がなく、うまみ成分があって好まれるきのこ類は、犬が食べても大丈夫なものばかりです。ただし、初めて食べさせる時には少量を与えて、様子を見ると良いでしょう。食べても良いきのこの種類と、おすすめの与え方や注意点についてご紹介します。
しいたけ
与える前に1〜2時間程度天日干しをすると、ビタミンDを増やすことができます。与える際は石づきを取り除き、加熱して与えるのが良いでしょう。干ししいたけを与える際は、口内や喉を傷つける可能性があるので、必ず水で戻してから与えるようにしてください。
しめじ
オルニチンを多く含むため、肝臓ケアにおすすめです。しめじも、しいたけ同様に加熱してから与える方が良いでしょう。細かく刻んでから、温かめのスープなどにして食べさせましょう。
舞茸
食物繊維を豊富に含むほか、銅を含むため、貧血対策におすすめです。マッシュルーム以外のキノコは生で食べると食中毒を起こす恐れがあるため、茹でるなど加熱してから与えると良いでしょう。その際、茹で汁も一緒に与えるとビタミンB群などを効果的に摂ることができます。
えのき
ビタミンB群とミネラルを多く含みます。食物繊維も多く含みますので、胃腸が弱い子の場合には控えたほうが良いかもしれません。えのきも一度にたくさん与えるのではなく、細かく刻んで、加熱してから与えてください。
エリンギ
亜鉛が含まれるため、貧血対策や皮膚の調整に役立ちます。マグネシウムも含むため、歯や骨の形成にも役立ちます。エリンギは縦に繊維が走っています。そのまま食べさせてしまうと下痢を引き起こしてしまうので、横向きに細かく刻んで加熱してから与えてください。
まつたけ
まつたけはきのこの中でも、カリウム、鉄、食物繊維の含有量はトップクラスと言われています。細かく刻んでからホイル焼きなどにして食べさせると良いでしょう。ただし、カリウムが豊富に含まれているので、高カリウム血症などを患っている犬には与えないようにしてください。
きくらげ
ビタミンB群、ビタミンEを豊富に含むほか、疲労回復、アンチエイジングにお勧めです。きくらげを与える際も、水で戻したものをカットして茹でるか炒めるかしてから与えてあげましょう。また、自生のきくらげも生えている場合がありますが。衛生的ではないため市販のものを与えましょう。
マッシュルーム
抗ストレスビタミンともいわれるパントテン酸を多く含みます。他のきのこと比べて食物繊維量は多くありませんが、やはり細かく刻んで火を通してから与えるのが良いでしょう。
犬に与えるきのこの選び方と保存方法は?
犬に与えるためのきのこの選び方と保存方法は、人間に向けて気をつけなければならないこととあまり変わりません。どのような点に気をつければ良いのか見ていきましょう。
きのこの選び方
質の良いきのこの特徴として、傘が開ききっていない、肉厚なもの、軸が太い、短いものがおすすめです。新鮮度合いで見る場合には、ヒダが白く、うぶ毛が生えているものを選びましょう。
きのこの保存方法
風味を落とさないためには、洗わずに保存する(汚れている部分は濡らしたキッチンペーパーなどで拭きとる)のがおすすめです。その日に使い切れない場合には、冷凍して保存しましょう。細胞膜が壊れやすくなることでうまみが増します。また、冷凍することで食物繊維が壊れやすくなるため、消化吸収の負担軽減も期待できます。
犬にきのこを与える際のおすすめの調理方法は?
前述しましたが、犬にきのこを与えるときには必ずしっかりと火を通してください。人間は採れたてのしいたけを軽くあぶった程度で食べることがあるかもしれませんが、犬には向きません。
食べやすい大きさにカットする
食物繊維が豊富なので、そのままで与えると腹痛や下痢を起こすことがあります。できる限り細かく刻んで与えましょう。
いったん冷凍する
冷凍することで細胞壁が壊れやすくなり、酵素が働き出すので旨味成分や栄養価が高まります。冷凍すると栄養価が最大3倍に増えるとも言われています。
必ず火を通す
生のきのこを与えると消化不良を起こす可能性があるため、加熱調理は必須です。犬が火傷をしないように、加熱したあとはしっかり冷ましてから与えるようにしてください。
乾燥きのこは粉末にする
粉末にすることで、食物繊維が細かくなるため、消化しやすくなります。粉末にするのが難しい場合は水で戻してあげるのが良いでしょう。
犬にきのこを与える際の注意点は?
犬にとっても栄養豊富で、おいしく食べられるきのこですが、与えるときはいくつか注意しなければならないポイントがあります。
与えすぎは良くない
繰り返しになりますが、きのこは食物繊維が多いため、食べすぎると消化不良を起こしやすくなります。与える際には、1日の摂取カロリーの10%程度にとどめておくとよいでしょう。
犬にきのこを与える際の1日の適量は?
小型犬で30g程度、中型犬は50g程度、大型犬ならば90g程度が適量と言われています。これは、あくまでも目安ですので、5kgに満たない小型犬や子犬の場合は、与える量を減らすなどの調整をするようにしてください。お腹を壊しやすい子もいますので、日ごろの愛犬の消化能力を判断の目安にするとよいでしょう。
味付けはしない
人間用の味付けは犬には濃すぎるため、調味料などで味付けはしないで与えましょう。
下痢やアレルギーの可能性は?
どの食材でもアレルギーを起こす可能性はゼロではありませんので、初めて食べさせる時は慎重に少量を与えるようにしてください。また、アレルギーではない場合でも、食物繊維を多く摂取してしまうことによって下痢を起こすことも考えられます。