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Animal Care Clinic TOKYO 院長 獣医師。「病気になる前に」をテーマに掲げ、健康寿命を延ばすための活動を実施。

犬が魚肉ソーセージを少し食べたからといってすぐに害を及ぼすわけではありませんが、与えないほうがいい食品です。
人間にとっては手軽に栄養補給できる魚肉ソーセージですが、犬が食べても大丈夫なのか、気になる方もいるでしょう。
今回は、魚肉ソーセージの成分や健康に与えるメリットとリスク、犬に与えないほうがいい理由について、獣医師の石川愛美先生監修のもと解説していきます。さらに、犬専用の魚肉ソーセージの選び方や、与える際の注意点、魚を使ったおうちごはんのレシピも紹介します。
目次
- 犬に魚肉ソーセージを与えないほうがいい理由
- 魚肉ソーセージに含まれる成分が犬に与える影響
- 犬用魚肉ソーセージとそのメリット、与え方のポイント
- おすすめの犬用魚肉ソーセージと魚を使ったレシピの紹介
- 犬に絶対食べさせてはいけない食べ物は?
- まとめ
犬に魚肉ソーセージを与えないほうがいい理由
人間用の魚肉ソーセージは犬の体に負担をかける可能性があるため、愛犬が欲しがっても与えないほうがいい食品です。塩分や添加物、犬にとって有害な成分が含まれていることが多く、誤飲のリスクもあります。ここでは、犬に人用魚肉ソーセージを与えるリスクについて詳しく解説します。
犬にとって人間用魚肉ソーセージはなぜ危険?
お子さんのおやつやお酒のおつまみとして魚肉ソーセージを常備しているご家庭も多いのではないでしょうか。人用の魚肉ソーセージがなぜ犬にとって危険なのかの理由を見ていきましょう。
1.塩分量が高い
魚肉ソーセージには食塩が含まれており、100g当たりの食塩相当量は2.1gほど(日本食品標準成分表・八訂・増補2023年より)です。
環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」によると、体重5kgの犬(避妊去勢済み)の場合、1日の塩分摂取量の目安は約0.18gです(「AFFCO Official Publication 2016」より算出)。
人間用の魚肉ソーセージの塩分量は犬にとってかなり過剰であることがわかります。特に小型犬の場合、腎臓や心臓に負担をかける恐れがあります。塩分の過剰摂取により最悪の場合は塩中毒を引き起こす恐れもあるため、注意が必要です。
2.パッケージのビニールや金属の誤飲リスクがある
魚肉ソーセージは、ビニールで密封されて金属製のクリップで閉じられています。犬が包装ごと食べてしまうと、腸閉塞や消化器官の損傷を引き起こす可能性があり、緊急の処置が必要になることもあります。誤飲事故を防ぐため、買い物後はすぐに犬が触れられない場所に片付けることが重要です。
3.添加物が使われていることがある
人間用の加工食品には、保存料や着色料、酸化防止剤などの添加物が含まれていることが多く、長期間摂取すると肝臓や腎臓に負担をかける可能性があります。また、人工甘味料のキシリトールが含まれている場合も、犬には危険です。
4.玉ねぎや香辛料など犬に有害な成分が含まれている可能性がある
人間用の魚肉ソーセージの中には、味付けのために玉ねぎエキスや香辛料が使用されているものもあります。玉ねぎやネギ類には犬の赤血球を破壊する成分が含まれており、貧血や黄疸などの中毒症状を引き起こす恐れがあります。また、香辛料の刺激が強すぎると、胃腸の不調を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
これらのリスクを考慮すると、犬に人間用の魚肉ソーセージを与えるのは避けたほうがよいでしょう。犬の健康を守るためにも、食品の管理を徹底し、誤飲を防ぐ対策を講じることが大切です。
魚肉ソーセージの基本成分
魚肉ソーセージの成分は商品によって異なりますが、一般的な成分量の目安は以下の通りです。
〈魚肉ソーセージ100g当たり成分〉※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より
・カロリー:158kcal
・食塩相当量:2.1g
・タンパク質:11.5g
・脂質:7.2g
・炭水化物:12.6g
原材料は商品によって異なりますが、主に一般的な魚肉ソーセージには、たら、ひめじ、まぐろなどの魚肉や魚肉エキス、食塩、野菜エキスなどが使われています。そのほかにも小麦タンパク、でんぷんなどの結着材料、香辛料、調味料、保存料などが含まれています。これらの成分の中には、犬にとって馴染みのないものも多く、体の小さい犬にとってはカロリーも問題になります。
魚肉ソーセージに含まれる成分が犬に与える影響
人間用の魚肉ソーセージをなぜ犬に食べさせてはいけないのかの理由を紹介しました。ここでは犬の健康にどのような悪影響を及ぼす可能性があるのか、具体的に見ていきましょう。
塩分の多い食品のデメリット
犬にとって塩分は必要不可欠な栄養素ですが、過剰摂取すると健康を害する恐れがあります。犬の主食であるドッグフードにも塩分が含まれているため、魚肉ソーセージを食べることで塩分の過剰摂取になる可能性が高くなります。
犬が過剰に塩分を摂取すると、以下のような健康リスクが考えられます。
・高ナトリウム血症
塩分の取りすぎにより体内の水分バランスが崩れ、脱水症状やふらつき、けいれんなどの症状が現れることがあります。特に水分摂取量が少ない犬は危険です。
・腎臓への負担
腎臓は塩分を排出する働きを担っていますが、過剰な塩分は腎臓に負担をかけ、特にシニア犬や腎臓病を持つ犬には悪影響を及ぼす可能性があります。慢性的な腎不全を引き起こす要因となることも。
添加物や保存料のリスク
市販の魚肉ソーセージには、長期保存のための保存料や、味や見た目を良くするための人工的な添加物が含まれている場合があります。人間には問題ないとされる成分でも、犬の体には負担をかけることがあります。特に以下のようなリスクが考えられます。
・アレルギー反応
一部の犬は、魚肉ソーセージに含まれる保存料や着色料、香辛料にアレルギーを示すことがあります。症状としては、皮膚のかゆみ、赤み、発疹などのほか、嘔吐や下痢、食欲不良といった消化器症状が挙げられます。特にアレルギー体質の犬は、注意が必要です。
・消化不良
胃腸が敏感な犬は魚肉ソーセージに含まれる添加物や保存料によって嘔吐や下痢を引き起こす可能性があります。長期的に摂取すると胃腸への負担はさらに大きくなります。
このようなリスクを避けるために、犬に与える食べ物を選ぶ際には無添加の商品や、添加物の少ない食品を選ぶのが理想的です。また、市販の食品に頼らず、犬用の手作りおやつを検討するのもよいでしょう。
犬用魚肉ソーセージとそのメリット、与え方のポイント
魚を主成分として作られる魚肉ソーセージには、実は犬の健康に役立つ栄養素も含まれています。
人間用を与えるのはやめたほうがいいですが、犬専用のものをおやつとして適量を与える分には問題ないといえるでしょう。ただし、犬用でも適切な量を守り、与えすぎには注意する必要があります。ここでは、魚由来の栄養素のメリットや、人用との違い、適量について詳しく解説します。
タンパク質や脂質、魚由来の栄養素が与える健康効果
魚肉ソーセージの主成分である魚には、犬の健康をサポートする栄養素が豊富に含まれています。特に注目すべき成分は以下の通りです。
・オメガ3脂肪酸
魚に多く含まれるDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸は、皮膚や被毛の健康をサポートし、炎症を抑える効果が期待できます。
・タンパク質
魚は良質なタンパク源であり、筋肉の維持や体力向上に役立ちます。
ただし、魚が原料の食品は、一部の犬にとってはアレルギーの原因になることがあります。初めて与える場合は、少量から試し、皮膚のかゆみや嘔吐・下痢などの異常や食欲不振などの消化器症状など、少しでも普段と違う様子が見られたら獣医師に速やかに相談し、動物病院を受診しましょう。
人間用と犬用ソーセージの主な違い
犬用のソーセージは、人間用と比べると添加物などが少なく、カロリーも低く抑えられています。しかし、それでも与えすぎるとカロリーオーバーになる可能性があります。飼い主がおやつの管理をしっかり行い、適量を守ることが重要です。
1日の適量は? 小型犬・中型犬・大型犬の与え方の違い
犬用の魚肉ソーセージはおやつとして少量与えるのが基本です。おやつのカロリーは1日の総摂取カロリーの10%以下に抑えることが推奨されています。
以下に犬用ソーセージを与える際、1日の最大量の目安を犬のサイズごとに示しました。
小型犬(5kg) → 10~20g
中型犬(15kg) → 20~40g
大型犬(30kg) → 40~60g
小型犬は、少量でもカロリー過多になりやすいため、1回の量を少しずつ分けて与えるのが理想的です。また、運動量の少ない犬やシニア犬は、上記を最大量と考え、さらに控えめにすることをおすすめします。
おすすめの犬用魚肉ソーセージと魚を使ったレシピの紹介
犬に魚肉ソーセージを与えるなら、塩分や添加物が少なく、犬の健康を考えて作られた犬用ソーセージを選ぶのがベストです。また、市販品だけでなく、手作りごはんで魚の栄養を取り入れる方法もあります。ここでは、おすすめの犬用魚肉ソーセージと、簡単に作れる魚を使った手作りレシピを紹介します。
市販の犬用ソーセージを紹介
市販の犬用魚肉ソーセージを購入する際には、原材料や成分表示をチェックし、香辛料や不要な添加物が入っていないかよく確認しましょう。ここからは、おすすめの犬用魚肉ソーセージや魚を使った犬用おやつを紹介します。
リバードコーポレーション 蒸しかつおスティック 犬用おやつ 20g×6本
ペット用品(犬)通販 おやつ(犬)|ホームセンターのカインズ
※売り切れや取り扱い終了の場合はご容赦ください
※店舗により取り扱いが異なる場合がございます
※一部商品は、店舗により価格が異なる場合があります
※上記商品は獣医師の監修外です。
魚を使用した手作りごはんの簡単レシピ
手作りごはんなら、愛犬の体調や好みに合わせて、新鮮な魚を使った栄養バランスの良いメニューを作ることができます。ただし、犬は肉食に近い雑食であり、本来は動物性タンパク質を中心にした食事が必要です。
魚を使った手作りごはんレシピで動物性タンパク質が取れても、栄養バランスを考えると基本的には総合栄養食のドッグフードを与えることが推奨されます。手作りごはんは補助的に取り入れ、与えすぎに注意しましょう。
また、生の魚には寄生虫や食中毒などのリスクがあるため、必ず加熱してから与えてください。愛犬が火傷をしないよう、加熱後常温~40℃の人肌程度まで冷ますことを忘れずに!塩や調味料は加えず、シンプルな調理方法で仕上げるのがポイントです。ここでは、犬が喜ぶ簡単な魚の手作りレシピをいくつか紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!
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犬に絶対食べさせてはいけない食べ物は?
人間が普段口にする加工食品には、犬にとって危険な成分が含まれていることがあります。特に、オニオンエキスなどの添加物は目に見えにくく、知らず知らずのうちに犬に悪影響を及ぼす可能性があります。飼い主は、犬が食べてはいけない食材をしっかり理解し、誤食を防ぐことが大切です。
冷蔵庫やキッチンに犬に食べさせると「特に危険な食べもの早見表」を貼るなど、食べさせてはいけない食品を普段から確認しやすい位置に貼っておくのもおすすめです。
まとめ
魚肉ソーセージは、人間にとって手軽で栄養価の高い食品ですが、犬に与える場合は注意が必要です。特に、人間用の魚肉ソーセージには塩分や添加物、オニオンエキスなど犬に有害な成分が含まれていることが多いため、与えないほうが安全です。誤飲や塩分過多のリスクを考慮し、犬用の魚肉ソーセージを選ぶようにしましょう。
また、魚の栄養を生かした手作りごはんもおすすめです。犬にとって安全な食材を選び、塩分や調味料を使わない調理法で健康的な食事を提供しましょう。ただし総合栄養食のドッグフードを基本としてあくまでも補助的に与え、適量を守りましょう。犬の健康を守るためにも、食事管理をしっかり行い、誤食を防ぐ工夫をすることが重要です。