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ちば愛犬動物フラワー学園所属。北里大学獣医畜産学部卒業 / 現在は専門学校に勤務しつつ、地域の動物病院にて勤務医として従事。
春や夏に旬を迎えるカツオは、香り高くて栄養も豊富なことから、犬と一緒に楽しみたいと考える方もいるでしょう。カツオは犬が食べても問題ない魚で、カツオを原料としたドッグフードやおやつも販売されています。また、与え方に気をつければ、自宅で調理したカツオを犬に食べさせても大丈夫です。
この記事では、犬にカツオを与えるメリットや方法について解説します。カツオを含んだドッグフードや、自宅で調理する場合の注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 犬にカツオを与えるメリット
- カツオに含まれる犬の体にいい栄養素とその効果
- カツオを使った犬用フード・おやつにはどんなものがある?
- 自宅で調理したカツオを与えてもいい? 刺身やたたきは?
- 犬にカツオを与えるときの注意点
- まとめ
犬にカツオを与えるメリット
カツオは犬が食べてもOKな食材です。まずは、犬にカツオを与えるメリットについて紹介します。
栄養価が高い
カツオには、犬の健康にいい栄養素がたくさん含まれています。栄養価の高いカツオを与えることで、犬の健康維持に役立つでしょう。しかし、犬の年齢や健康状態にあった総合栄養食を適量与えていれば、カツオを食べなくても必要な栄養素は摂取できています。カツオで栄養を補うのではなく、身体にいい成分を水準以上に摂る手段の1つと捉えてください。
フードの食いつきがよくなる
愛犬がドライフード(総合栄養食)を食べたがらない場合、旨味の強いカツオと一緒に与えることで食欲が増進されて、食いつきがよくなる可能性があります。カツオが犬にとっても美味しいのは、アミノ酸の一種であるイノシン酸が豊富に含まれているためです。犬は人間と同じようにアミノ酸を旨味として感じますので、イノシン酸が豊富に含まれるカツオは犬にとっても美味しいごちそうになります。
カツオに含まれる犬の体にいい栄養素とその効果
カツオに含まれる栄養素のなかで、犬の健康へとくに良い影響をもたらす成分の含有量目安を表にまとめました。
カツオに含まれる栄養素 |
含有量 |
タンパク質 |
25.8g |
オメガ3脂肪酸 |
0.17g |
カリウム |
430mg |
鉄分 |
1.9mg |
ビタミンB12 |
8.4μg |
ビタミンD |
4.0μg |
※かつお/春獲り/生の可食部100gあたりの成分量目安
それぞれの栄養素が犬の体でどんな働きをするのか見ていきましょう。
タンパク質
タンパク質は筋肉や皮膚、被毛を健康に保ち、身体が正常に働くためには欠かせない栄養素です。カツオは高タンパクな食材として知られていて、可食部100gあたりのタンパク質はサラダチキンとほぼ同じくらいの量が含まれています。
また、カツオのタンパク質は、必須アミノ酸を豊富に含んだ良質なものです。脂質も低いことから、人間にとっても筋力アップやダイエットに効果的な食材として取り入れられています。
AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、ドライフードのタンパク質は幼犬用が摂取カロリーの22.5%以上、成犬用が18.0%以上と定められています。
DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)
抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸は、皮膚や関節・臓器を形作ったり、筋疲労を緩和したりと、さまざまな働きをします。
なかでもDHAは脳や網膜などを形作るため、子犬期にとくに重要な栄養素です。EPAは血液をサラサラにして動脈硬化を抑制すると言われている栄養素で、脂がのった旬の時期のカツオにはとくに豊富に含まれています。
カリウム
ミネラルの一種であるカリウムは、細胞が正常に機能するために欠かせない栄養素で、腎臓や心臓の働きをサポートします。
犬はカリウムが不足すると、発育に問題が起きたり、首の筋肉に異常が起きたりといった症状が起きます。この病気は「カリウム欠乏症」と呼ばれていて、症状が悪化すると立てなくなることもあります。
しかし、カリウムは野菜、肉類、魚および卵などさまざまな食材に含まれていますし、ドッグフードにもかならず入っています。犬が毎日ごはんをしっかり食べていれば、カリウム欠乏症を発症するリスクは基本的にありません。
AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、ドライフードのカリウムは幼犬用も成犬用も摂取カロリーの0.6%以上と定められています。
鉄分
鉄分は赤血球や筋肉を形作る栄養素です。摂取した鉄分は肝臓に貯蓄されていて、血液中の鉄分が不足した時には貯蓄した鉄分が運搬されます。
体内の鉄分量が不足すると発育不良、下痢、貧血などのリスクがあるため、健康を維持するためにもたくさん摂っておきたい栄養素です。鉄分はカツオ以外にも魚肉やレバー、ブロッコリー、ほうれん草などに豊富に含まれています。
AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、ドライフードの鉄分は幼犬用が88mg以上、成犬用が40mg以上と定められています。
ビタミンB12
ビタミンB12は赤血球・タンパク質の合成をサポートする栄養素です。ビタミンの中で唯一ミネラルを含んでいて、老化防止や貧血防止、筋力アップなどに役立ちます。
体内では合成できないため食事で補う必要があります。カツオだけでなく、肉や魚などを原料にしたフードから摂取可能です。
ビタミンD
人間が日光を浴びることで作り出せるビタミンDは、犬が体内で合成できない栄養素です。カツオだけでなく、イワシやマグロ、レバーなどにも含まれます。リンやカルシウムの代謝をコントロールする働きがあり、不足すると体重減少や骨折などのリスクがあります。
AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準では、ドライフードのビタミンDは幼犬用も成犬用も12.5〜75μg以上と定められています。
カツオを使った犬用フード・おやつにはどんなものがある?
栄養価の高いカツオを使った犬用のフードやおやつもたくさん販売されています。代表的なフードやおやつの種類を紹介しますので、ペットショップやホームセンター、通販サイトで探してみてください。
ウェットフードタイプ
かつおを原料にした犬用のウェットフードが販売されています。ウェットフードには、犬に必要な栄養素をすべて補給できる総合栄養食と、間食やトッピング用の一般食があります。一般食を主食として与えると栄養が偏ってしまうため、総合栄養食と一緒に与えるようにしましょう。
カツオ節タイプ
カツオ節というと猫のイメージがあるかもしれませんが、犬用のカツオ節も販売されています。フードにふりかけて与えてもいいですし、おやつとして使用することもできます。犬の体のサイズによってはカツオ節が口の中で張り付いてしまう可能性もあるので、食べやすい大きさにちぎってから与えましょう。
ジャーキータイプ
カツオをそのまま乾燥させた、犬用ジャーキーも販売されています。噛みごたえのある食感をしていますので、おやつとして与えると喜ぶでしょう。
ただし他のジャーキーと同じく、消化器が未発達な子犬には与えると消化不良を起こしてしまうリスクがあります。硬めのおやつを与えていいのは生後6ヶ月以降が目安だと言われていますので、かかりつけの獣医師に相談しつつ与えるタイミングを決めましょう。
自宅で調理したカツオを与えてもいい? 刺身やたたきは?
カツオが含まれている犬用フードやおやつだけでなく、スーパーで売っているカツオを犬にもおすそ分けしてもいいのでしょうか。自宅で調理する場合のポイントを紹介します。
刺身は与えない
生魚はアニサキスが含まれている可能性があるため要注意です。犬もアニサキス寄生虫を取り込むと、食中毒になり嘔吐・内臓疾患などの症状を起こします。
また、生のカツオに含まれる酵素チアミナーゼにはビタミンB1を分解してしまう働きがあり、チアミン欠乏症(脚気)になるリスクも考えられます。生ではなく茹でたり焼いたりすることで、かならず加熱して与えるようにしましょう。
骨や筋に注意
カツオを骨や筋がある状態で与えると、犬の口や胃腸を傷つけるリスクがあります。骨や筋を取り除いて調理したうえで、食べやすい大きさにして与えるようにしてください。
カツオのたたきなど、味付けや薬味はNG!
カツオを犬に与える際は加熱する必要がありますが、人間用のようにポン酢などで味付けするのは絶対にやめてください。犬にとって味が濃すぎるうえ、塩分過多にもつながります。
また、カツオの薬味として馴染み深いネギは犬にとって非常に危険な食材なので、絶対に避けましょう。
犬にカツオを与えるときの注意点
カツオの与え方によっては、犬の体に悪影響を及ぼす可能性があります。カツオを使った犬用おやつを与える際も、スーパーで買ったカツオを調理して与える際も、以下の4点に注意しましょう。
過剰摂取に注意
総合栄養食以外の食事は、あくまでおやつとして1日に摂取する総エネルギー量の10%にとどめるのが、犬の食事管理の基本ルールです。たとえば体重5kgの成犬(去勢済み)の場合、1日に必要なカロリーは374kcalです。カツオのエネルギー量は100gあたり108kcalもあるので、この場合は30g程度が適量になります。
黄色脂肪症のリスクも
食事が魚やその加工食品に偏ると、黄色脂肪症のリスクがあります。黄色脂肪症とは、カツオをはじめとする青魚に含まれる不飽和脂肪酸の過剰摂取により、脂肪が酸化してしまう病気です。魚好きのイメージが強い猫の病気として有名で、お腹に脂肪の硬いしこりができてしまいます。「カツオは栄養価が高いから」と主食として与えるのは避けて、総合栄養食中心の食生活を心がけましょう。
食物アレルギーに注意する
カツオに限らず犬がはじめて口にする食材は、食物アレルギーがあるかわかりません。まずは少量を与えてアレルギー症状が出ないか見守るようにしましょう。総合栄養食中心のバランスのいい食事を心がけていれば、基本的には一度にカツオを与えすぎることはないため、心配は無用です。
腎臓病や心臓病の犬には与えない
カツオに含まれるリンやナトリウムは、腎臓病や心臓病の犬にとってリスクがあります。愛犬が腎臓病や心臓病の場合は、獣医師が指導する食事制限を守ってください。
まとめ
栄養価が高く香り高いカツオは、犬にとっても魅力的な食材です。カツオを原料にしたウェットフードや犬用のカツオ節も販売されているので、総合栄養食の食いつきをよくするために添えてみてはいかがでしょうか。また、スーパーなどで販売されている生のカツオも、しっかり加熱すれば犬に与えても大丈夫です。
しかし、犬がカツオをたくさん食べるとカロリーや飽和脂肪酸の過剰摂取になり、健康リスクにつながる可能性があります。適量を守りながら、栄養バランスの優れた食生活を目指しましょう。