公開
明石むかい動物病院院長。獣医麻酔外科学会、獣医がん学会。
美味しくて栄養たっぷりのサバは、日本でとてもなじみの深い大衆魚です。なかには、愛犬と一緒に旬のサバを楽しみたいものの、「本当に食べさせても大丈夫かな?」と不安になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、犬にサバを食べさせる際の効能や注意点についてわかりやすく解説します。また、おやつとしてサバを与えるときの適量や、必ず加熱が必要な理由なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
- 犬にサバを食べさせても大丈夫?生食や缶詰の注意点は?
- 犬にサバを食べさせる効能、メリット
- 犬にサバを食べさせるときの注意点
- まとめ
犬にサバを食べさせても大丈夫?生食や缶詰の注意点は?
サバは、犬に食べさせても大丈夫な食べ物です。犬が魚を食べるというイメージは薄いかもしれませんが、実際に魚を主成分にしたドッグフードも多く販売されていて、犬用のサバ缶もあります。また、サバはタンパク質やカルシウム、ビタミンDなどの栄養素を豊富に含んでいて、犬の健康的な発育にも効果が期待できる食材です。
一方で生のサバには、アニサキスによる食中毒のリスクもあります。そのため、犬に生のサバを与えるのは絶対に避け、犬用に加熱加工されたフードに食べさせるようにしましょう。加えて、人間用の過度な味付けがされたレシピでは塩分の取りすぎになってしまうため、味付けのない水煮を使った犬用の加工品を選ぶことが大切です。
犬にサバを食べさせる効能、メリット
サバには多くの栄養素が含まれているため、犬に食べさせることで、さまざまな健康効果が期待できます。ここでは、サバに含まれている主な栄養素と、犬に与えるときの効能、メリットについて見てみましょう。
【タンパク質】丈夫な骨と筋肉を形成できる
サバには、豊富な動物性タンパク質が含まれています。タンパク質は、犬が健康な臓器や骨、筋肉、血液を形成するために必須となる栄養素です。特にサバに含まれる動物性タンパク質は、犬にとって消化吸収しやすいのが特徴といえます。必須アミノ酸がバランスよく含まれているため、犬の健康維持にも効果が期待できるでしょう。
【カルシウム】体の健康バランスを整えられる
サバに含まれるカルシウムは、骨や歯の形成に欠かせない栄養素です。犬の体内でも筋肉を収縮させたり、ホルモン分泌を正常に保ったり、血液を凝固させて出血を防いだりとさまざまな役割を果たしています。逆に不足すると骨粗しょう症のリスクが高まってしまうので、積極的に食事で摂取したい栄養素のひとつといえるでしょう。
【EPA】血液の詰まりや関節炎を防止できる
サバに含まれる「EPA(エイコペンタエン酸)」は、オメガ3脂肪酸と呼ばれる脂質の一種です。犬の体内ではほとんど生成されない栄養素なので、食べ物から補う必要があります。犬がサバのEPAを摂取することで、血液がサラサラになったり、シニア期の関節炎が抑制されたりと、さまざまな健康効果が期待できるでしょう。
【DHA】記憶力や学習能力が高まる
サバに豊富に含まれる「DHA(ドコサヘキサエン酸)」は、EPAと同じくオメガ3脂肪酸の一種です。脳の発達をサポートしてくれる栄養素なので、犬の記憶力や学習能力を向上させる効果が期待できます。また、DHAは視力を保ったり、シニア期の認知機能低下を和らげたりと、多方面から健康維持につながるのがメリットです。
【ビタミンD】栄養素の吸収をサポートする
サバには、ビタミンDも多く含まれているのが特徴です。ビタミンDは、カルシウムやリンを体内へ吸収するためのサポートをしてくれます。犬にとっても、健康な骨や関節を維持するために効果的です。逆に不足してしまうと骨粗しょう症や腎障害などを引き起こすリスクがあるので、食事を通じて摂取すべき栄養素といえます。
【鉄分】疲れにくい体や美しい毛並みを作る
サバに含まれる鉄分は、赤血球の材料になり、全身に酸素を運ぶ役割を持っている栄養素です。犬にとっても鉄分は非常に重要で、不足すると疲れやすくなって息切れが起こったり、被毛トラブルにつながりやすくなったりします。血液や内臓の健康を維持するためにも、サバから豊富な鉄分を摂取することは有効といえるでしょう。
犬にサバを食べさせるときの注意点
犬にサバを食べさせる際、メリットや効能が数多くある一方で、デメリットやリスクもあります。ここでは、犬にサバを食べさせるときの注意点や、サバを犬に与えるときの適量などについて見てみましょう。
必ず加熱済みのものを与える
サバの筋肉には、アニサキスという寄生虫の幼虫が寄生することがあります。アニサキスが胃の壁にとりつくと、激しい嘔吐や腹痛が起こってしまうため、注意が必要です。アニサキスは熱に弱く、70℃以上で死滅するといわれており、加熱加工が欠かせません。そのため、犬には必ず加熱済みの犬用フードを与えるようにしましょう。
ヒスタミン中毒防止のため、家での調理は避ける
サバのような赤身の魚は傷みが早く、ヒスタミンという化学物質が発生しやすいのが特徴です。ヒスタミンを多く含む食品を食べてしまうと、吐き気やじんましんなどのヒスタミン食中毒を起こしてしまいます。ヒスタミンはたとえ加熱しても分解されず、味や臭いでもわかりません。誤って傷んだサバを使ってしまい、ヒスタミン中毒を起こさないためにも、家でサバを調理するのは避け、犬用に加工されたフードを食べさせてください。
過度な味付けは避ける
人間がサバを食べるときは、塩をつけて焼いたり、醤油で煮込んだりと“人間用”の味付けをします。しかし、犬にとって人間向けの調味料は味が非常に濃いため、同じものを与えると塩分の過剰摂取になってしまいかねません。そのため、犬にサバを食べさせる際には、味付けのない水煮を使った犬用の加工品を選びましょう。
骨を取り除いてから食べさせる
犬は習性上、食べ物をよく噛まずに飲み込んでしまうことが多くあります。万が一サバに骨が残っていると、飲み込んだときに消化器官を傷つけかねません。サバを犬に与える際は、骨がやわらかくなるまで煮込む必要があります。その点、犬用に市販されているサバであれば、加工されているためそのまま与えても問題ありません。
適量を与える
どれだけ健康効果が期待できる食材であっても、与え過ぎたら逆効果になってしまうケースもあります。特に日ごろから総合栄養食のドッグフードを犬に食べさせている場合は、栄養素そのものはバランスよく摂取できている状態です。そのため、サバを食べさせる際には、“おやつ”程度の分量で適量を与えることが大切でしょう。
おやつの量は、基本的に1日の食事量の「10%以内」とされています。例えば、1日の食事における総摂取カロリーが300kcalの犬であれば、サバを与える量としては約30kcal以内が適切です。ただし、1日の総摂取カロリーは犬のサイズや体重によって大きく異なるので、事前に正しく計算したうえで、与えるようにしましょう。
また、サバをあまりに頻繁かつ大量に食べさせすぎると、非常に稀ですが「黄色脂肪症(おうしょくしぼうしょう)」と呼ばれる病気にかかってしまうリスクもあります。犬がサバを欲しがったとしても、適量に抑えることを心がけましょう。
食物アレルギーに注意する
犬によっては、特定の食べ物に対して食物アレルギーを起こしてしまう場合があります。食物アレルギーとは、細菌やウイルスから身を守ってくれるはずの免疫システムが、何らかの理由で過敏に攻撃してしまう反応のことです。万が一食物アレルギーになると、皮膚の炎症や脱毛、嘔吐や下痢などの消化器症状が出てしまいます。
食物アレルギーの主な原因(アレルゲン)は、タンパク質だといわれています。サバにはタンパク質が豊富に含まれているため、食物アレルギーに注意が必要です。ただし、犬によってどの食べ物にアレルギー反応を示すかは異なります。事前に食物アレルギーの体質を調べておき、該当の食材をできるだけ避けることが肝心です。
まとめ
犬にとって、サバは食べても問題ない食べ物のひとつです。サバにはタンパク質やカルシウム、EPA、DHAなどの成分が豊富に含まれており、犬の健康増進につながる栄養食でもあります。健康な歯や骨を形成できたり、血液の詰まりや関節炎を予防できたり、疲れにくい体になったりとさまざまな健康効果が期待できるでしょう。
一方で、サバを生で食べるとアニサキスに感染するリスクがあるため、加熱処理が欠かせません。また、人間用の味付けをしたものを与えてしまうと塩分の過剰摂取になるという問題もあります。サバの与え過ぎも、健康上望ましくありません。そのため、家庭で調理するのではなく、犬用のサバ缶やおやつ、サバを使ったドッグフードなどを適量与えるように心がけましょう。