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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
近年増えているのが、さまざまな血統の犬同士を掛け合わせたミックス犬です。ミックス犬は、親犬それぞれの特徴を受け継ぐため、1匹1匹がとても個性的なのも魅力のひとつ。そんなミックス犬を飼う上で、平均寿命がどのくらいなのかは知っておきたいですよね。この記事では、ミックス犬を健康に長生きさせる秘訣や気をつけるべき病気などについて、バーニー動物病院千林分院分院長の堂山有里先生監修のもと、詳しく解説します。
目次
- ミックス犬とは?
- ミックス犬の平均寿命、最高寿命は何歳?
- ミックス犬の寿命は長い?短い?
- ミックス犬は病気にかかりやすい?
- ミックス犬を長生きさせる秘訣は?
- ミックス犬の食事に関して気をつけるポイントは?
- ミックス犬の老化のサインは?
- ミックス犬がシニア期に入ったときのケアは?
- ミックス犬を飼う際のポイントは?
ミックス犬とは?
ミックス犬は、異なる品種の親のあいだに生まれた犬を指します。
雑種との違い
異なる品種の交配によって生まれた犬は「雑種」とも呼ばれますが、いわゆる「雑種犬」は、親のルーツが明らかでなく、親同士の自然な交配によって生まれた犬を指します。それに対し、純血種同士の掛け合わせで生まれた犬を「ミックス犬」と呼び、区別しています。
ミックス犬の平均寿命、最高寿命は何歳?
ミックス犬の平均寿命は、親犬の品種によって異なるため一概に言うことはできませんが、小型犬であれば13~15歳程度、大型犬であれば10〜12歳程度と考えられます。同じ犬種でも長生きする犬もいれば、短命の犬もいます。親が長生きする傾向のある犬種であれば、その子どもも長寿となる可能性はありますが、必ずしも長寿が約束されるわけではありません。あくまで目安程度に考えると良いでしょう。ちなみに、日本でのミックス犬の最長寿は、26歳まで生きた柴犬のミックス犬の例が報告されており、ギネス記録にも認定されたそうです。
ミックス犬の寿命は長い?短い?
一般的に、「雑種」は純血種より長生きであると言われています。ですが、親が純血種同士であるミックス犬の場合、もともと野犬にルーツを持っていた雑種とは違い、親の血統次第では子犬に遺伝的疾患が受け継がれることもあります。組み合わせ次第では、デメリットの方が強く出ることもあるかもしれません。
寿命が長いといわれるミックス犬の種類は?
平均寿命が長い親を持つミックス犬は、長寿になる可能性が高いと言えます。特に、小型犬は大型犬と比べると平均寿命が長いため、小型犬同士のミックス犬の方が、大型犬のミックス犬より長生きする傾向があります。中でも、比較的寿命が長い傾向にあるミックス犬は、チワワ×ダックスフンド、マルチーズ×トイ・プードル、ダックスフンド×トイ・プードル、ポメラニアン×柴犬などです。
ミックス犬は病気にかかりやすい?
ミックス犬は純血種同士を掛け合わせて生まれるため、親の遺伝的疾患や特異体質をそのまま受け継いでしまうことがあります。両親の犬種特性などから、かかりやすい病気について知っておくことが大切です。
ミックス犬が気をつけるべき病気とその予防法
外耳炎
外耳道に炎症が起き、かゆみや赤みが出る疾患で、耳が垂れていたり、耳の中に毛が生えているミックス犬に多い病気です。予防には、耳を清潔に保つこと、日頃から耳の様子を観察することが重要。ただし、間違った方法でお手入れしてしまうと、外耳炎の原因になってしまうこともあるので、動物病院などで正しいやり方を聞いてみましょう。
【かかりやすいミックス犬のタイプ】
コッカプー(コッカー・スパニエル×トイ・プードル)、ダップー(ダックスフンド×トイ・プードル)など
皮膚炎
アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎、膿皮症、脂漏症などの皮膚炎にも注意が必要です。体質による症状は予防が難しいものの、日頃からシャンプーやブラッシングを適切に行い、細菌が増殖しないよう生活環境を清潔に保つことが予防につながります。それぞれの症状が起こりやすい犬種のミックス犬は、皮膚炎にかかりやすい傾向があります。
【かかりやすいミックス犬のタイプ】
ダップー、コッカプー、マルプー(マルチーズ×トイ・プードル)、ラブラドゥードル(ラブラドール・レトリーバー×プードル)など
膝蓋骨脱臼
いわゆる「膝のお皿」と呼ばれる膝蓋骨が正常な位置からずれて、痛みや歩行困難が生じる疾患です。症状の進行を抑えるためには、肥満にならないよう日頃の体重管理をしっかりと行うことが大切です。また、滑って転んだりしないよう、フローリングの床には滑り止めをつけるなど、生活面での懸念も取り除いてあげましょう。親が膝蓋骨脱臼を起こしやすい犬種のミックス犬は、注意が必要です。
【かかりやすいミックス犬のタイプ】
マルプー、チワプー(チワワ×トイ・プードル)、ポメプー(ポメラニアン×トイ・プードル)など
大腿骨頭壊死症
股関節を形成する大腿骨頭が壊死し、関節炎や骨折を起こす疾患です。発症すると、股関節の痛みに伴い、足をかばうようにして歩いたり、足先だけを地面につけて立ったりする様子が見られることがあります。有効な予防法は見つかっていないため、歩行に異常が現れたら早めに動物病院を受診しましょう。また、親が大腿骨頭壊死症を起こしやすい犬種のミックス犬は日頃から注意深く様子を観察してあげてください。
【かかりやすいミックス犬のタイプ】
マルプー、ポメプーなど
ミックス犬を長生きさせる秘訣は?
ミックス犬を長生きさせる秘訣として、飼い主は以下のポイントに気をつけましょう。
適切な食事管理
ミックス犬の食事は、「総合栄養食」と記載のあるドッグフードを犬の体格に合わせた量で与えましょう。犬の適正体格は、犬の胸壁を両手で優しく触り、肋骨が軽く触れる程度であれば問題ないでしょう。しかし、肋骨が触れなければ太り過ぎ、肋骨がゴツゴツと触れる場合は痩せすぎています。太りすぎていても痩せすぎていても体に負担となるため、適正な体格を維持できるように食事量を調節してください。また、いつでも新鮮な水が飲めるよう環境を整えてあげることも大切です。
散歩を欠かさない
小型犬・大型犬を問わず、ミックス犬には毎日適度な運動が必要です。運動すると血行が改善し、老廃物が代謝されやすくなるため、健康な体を維持するのに役立ちます。さらに、筋肉量も維持できるので、寝たきり防止にもつながります。
散歩は犬にとって運動や排泄といった目的だけでなく、外の新鮮な空気を吸ったり、家族以外の人や犬などに会ってさまざまな刺激に触れる機会にもなります。これは、犬の心身の健康のためにとても大切なことです。
それぞれの個性に合ったストレスフリーな環境づくり
ミックス犬は親犬のどんな性質を受け継ぐかによって性格も体格にも幅があります。そのため、それぞれの犬の個性にあった環境を作ってあげることがストレス軽減につながるでしょう。例えば、臆病な性質の犬であれば、誰にも邪魔されずゆっくり休める寝床を用意してあげるのがよいかもしれません。人と一緒にいることが何より好きな犬であれば、一緒に出かける時間をたくさん作ってあげるとよいでしょう。
被毛や皮膚の健康を維持する
皮膚や被毛の状態にバリエーションのあるミックス犬ですが、かけ合わせた犬種によっては定期的なお手入れが必要となります。例えば、長毛であったり、アンダーコートがある犬であればトリミングは欠かせません。定期的にお手入れをすることによって皮膚の健康状態も維持することができます。
定期的な健康診断
犬が目に見えて体調が悪くなるのは、病気がかなり進行してからです。そのため、病状が進行する前に異変を見つけ、治療することが病気に対する何よりの予防であると考えられます。他の犬種と同様、ミックス犬の場合も、定期的な健康診断は欠かさないようにしましょう。
ミックス犬の食事に関して気をつけるポイントは?
ミックス犬の毎日の食事は、以下の点に気をつけて与えるようにしましょう。
適切な1日の食事量を守る
犬が欲しがるからといって、要求されるたびにフードやおやつを与えていると肥満になってしまいます。1日の摂取カロリーの適正量を決め、その範囲内で食事やおやつを与えるようにしましょう。愛犬にどの程度与えればよいのかわからなければ、動物病院やペットの栄養管理の専門家に相談してみてくださいね。
おやつを与えすぎない
犬の体重にもよりますが、例えば5kgの犬であれば人間の体重のおおよそ10分の1〜15分の1程度しかないことになります。たった一口でも余分に与えると、それが過剰なエネルギーになってしまうことも。太り過ぎを防ぐために、おやつは1日に摂取するカロリーの1〜2割程度に抑えるようにしましょう。
高カロリーで添加物の多いものを与えない
合成保存料や着色料、酸化防止剤などは犬の体にとって負担となります。たとえ少量でも毎日食べ続ければ次第に体に蓄積し、体調を悪化させる恐れがあります。高カロリーで添加物が多く含まれるものは与えないようにしましょう。
ミックス犬の老化のサインは?
他の犬種と同様に、ミックス犬に老化の兆しが見られる時は、以下のような順番で変化が現れることが多いと言えます。
ミックス犬がシニア期に入ったときのケアは?
ミックス犬がどのようなシニア期を送るのかは、親の性質がその子にどの程度受け継がれるかによって変わります。そのため、それぞれの個性に合った食事や環境づくりをしてあげることが必要です。
例えば、柴犬は長生きするケースが多いので、柴犬を親に持つミックス犬であれば、長生きに備えて寝たきりにならないよう、筋力トレーニングや脳の活性化を心がけてあげるとよいでしょう。また、ダックスフンドは歯周病が起こりやすいので、ダックスフンドのミックス犬であれば、歯周疾患にならないようシニア期に入る前から気をつけてあげるとよいですね。ダックスフンドは脊椎疾患も多いので、適度な運動と肥満の防止も重要です。
ミックス犬を飼う際のポイントは?
ミックス犬を飼うときは、特に以下の点に気をつけましょう。
性格を見極めた上でしつけをする
犬は品種ごとにある程度性格の傾向が決まっていますが、ミックス犬となると両親の傾向がどう受け継がれるのか予測が難しい面があります。マニュアル的なしつけ方法がないため、愛犬の性格を見極め、その子に合ったしつけの方法を探していくことが大切です。
小型犬でも散歩を欠かさない
ミックス犬は、小型犬同士の掛け合わせが多いので必然的に小型の犬が多くなります。そのため、小型犬であっても、必ず1日1回は散歩に連れて行き、犬の心身の健康のために、適度な運動と気分転換をさせてあげましょう。
犬種によってトリミングが必要になることも
掛け合わせている犬種によっては、トリミングが必要になることもあります。特に、片方の親がプードルやポメラニアンなどトリミングが必要な犬種であれば、その子も同様にトリミングが必要になる場合が多いと言えます。必要かどうか判断できなければ、ブリーダーやペットショップの店員などに必ず確認してくださいね。