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バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。
寒い冬、愛犬と一緒に雪遊びをしたいと思う人は多いのでは? 犬は雪を見ると興奮しがちですが、飼い主は事前の準備や事後のケアをして、安全に楽しく遊べるよう配慮してあげましょう。この記事では、犬の雪遊びについて、飼い主が気をつけるべきことを、バーニー動物病院 千林分院 分院長で獣医師の堂山有里先生監修のもと解説します。
目次
- なぜ犬は雪が好きなの?
- 犬に雪遊びさせていいの?
- 雪が好きな犬種と苦手な犬種は?
- 犬と雪遊びできる場所は?
- 犬とできる雪遊びの種類は?
- 犬と雪遊びする前に必要な準備は?
- 犬と雪遊びをするときの注意点は?
- 犬と雪遊びをした後のケアは?
なぜ犬は雪が好きなの?
なぜ犬が雪遊びを好きなのか、本当のところは犬に聞いてみないとわからないですが、雪によって生じる変化が犬にとって刺激的で楽しいからでしょう。一面の雪景色にうわぁー!と心が踊り、いつもの道とは異なる匂いに興味が湧く。そして体や肉球に触れる雪の感触に驚き、雪の中に飛び込んで楽しむ。人間と同じように、犬も雪にワクワクしているのかもしれません。
犬に雪遊びさせていいの?
基本的には問題ありませんが、耐寒力には個体差があります。元気いっぱいであれば大丈夫ですが、病後など抵抗力の弱っているときの雪遊びは控えたほうがよいでしょう。
子犬やシニア犬に雪遊びさせていいの?
子犬やシニア犬なども雪遊びさせて問題ありません。ただ、比較的寒さに弱いので、防寒対策をしっかり行い長時間遊ばせないなどの配慮が必要です。
雪が好きな犬種と苦手な犬種は?
犬ならみんな雪が好きというわけではありません。雪が好きな犬種や苦手な犬種を知っておきましょう。
雪が好きな犬種
サモエドやシベリアン・ハスキーなど、雪国や比較的寒い地方出身の犬種は寒さに強いので、雪遊びも好きな傾向があります。遺伝的に被毛が豊かで皮下脂肪も厚く、厳しい寒さでも適応できる体をしています。
雪が苦手な犬種
チワワなどの比較的暖かい地方出身の犬種は、熱を放散して暑さを逃すような体の構造をしているので暑さに強く寒さに弱いです。そのため、雪遊びは苦手かもしれません。被毛がシングルコートであったり、体格が小さかったりすると体が冷えやすいでしょう。
犬の性格や飼い主の性格も影響する?
雪遊びが好きかどうかは、犬と飼い主の性格も影響します。新しい環境やものに対して興味を持って積極的に近づく性格かどうかで、雪に対する反応は変わるでしょう。また、飼い主が雪を喜んでいるかどうかも犬は敏感に感じとります。
犬と雪遊びできる場所は?
ここからは、犬と雪遊びをするときにおすすめの場所をご紹介します。
ドッグラン
いつものドッグランに雪が積もれば、そこで雪遊びができます。オフリードで走らせることができますし、宝探しゲームなども行き慣れたドッグランであれば安心して行えるはずです。
スキー場
スキー場の中には犬と一緒にゴンドラに乗れたり、滑走できたりするゲレンデもありますが、犬を連れていく場合は、ほかのスキーヤーとの接触や犬同士のトラブルなど、予測不能な事態に気をつけましょう。ゲレンデの麓にドッグランを併設しているスキー場がおすすめです。
河川敷・公園
スキー場やドックランなどにはなかなか行けない場合でも、いつもの散歩コースが雪景色に変わると犬にとっては魅力的な遊び場所に変わります。足元の雪の感触を確かめながら歩いたり、木の枝から落ちてくる雪を追いかけたりするのも楽しい遊びとなるはずです。雪が降った日は、ぜひ愛犬と一緒に出かけてみてください。
犬とできる雪遊びの種類は?
犬とできる雪遊びにはさまざまな種類があります。どんな遊びがあるのか見ていきましょう。
追いかけっこ
飼い主と一緒に、雪の感触を楽しみながら走ります。雪の上で走ることは土の上を走るのとは違った感触があり喜んでくれるはず。筋力を使うので、短時間の遊びでもしっかり疲れて満足してくれやすいです。
雪玉キャッチ
雪で作った雪玉を取りに行かせる遊びです。雪の冷たさや舞い上がる様子を楽しむことができるでしょう。雪玉を次から次へと投げてあげられるので、「もってこい」ができなくても、遊べます。
宝探し
雪の中におやつを埋めて探させる遊びです。雪で匂いが消えるので、最初はおやつを目の前でコングや知育玩具に詰め、その後雪に埋めてあげると見つけやすいでしょう。上手に探せるようになってきたら犬に見せないようにして埋める、複数個の玩具を埋めてその中の一つにだけおやつが入っているようにするなどしても楽しめます。
そり滑り
飼い主と一緒にそりで斜面を滑り降りる遊びです。風を切りながら大好きな飼い主と遊べるので、犬も楽しんでくれるはず。
犬と雪遊びする前に必要な準備は?
犬と雪遊びするにあたって、事前に準備しておいたほうがいいことをご紹介します。
防寒対策をする
雪遊び中は体が冷えてしまわないよう防寒対策はしっかりしましょう。防寒用の服を着せることで、寒さを凌ぎ、汚れや雪玉の付着、氷で皮膚が傷つくことも防止できます。また、撥水加工のコートは、犬の体温で溶けた雪によって体表がびしょ濡れになることを防げます。ストレッチ性の高い生地は、動きやすく犬の行動を制限しないのでなおよいでしょう。
犬の足先は常に雪に触れた状態になるので、ずっと裸足でいるようなもの。すぐしもやけになってしまうため、肉球や指の保護として靴下やラバーシューズなどをはかせることもおすすめです。服や靴は慣れていないとそれだけで嫌がってしまう犬もいるので、雪遊びに連れていく前から家の中で慣らしておきましょう。
呼んだら来るようにしつけする
雪の下には隠れた枝や石などの危険がいっぱい。空洞になっている、凍って滑りやすくなっている、犬が食べてはいけない食べ物などが落ちている、ということもあります。犬が危険な場所に近づいた時に回避させられるよう、呼んだら戻ってくるように教えておくと安心です。
寒さと雪の冷たさに慣れさせる
普段はあまり雪が降らない地域に住んでいたり、初めて雪を体験したりする場合は、まず寒さと雪の冷たさに慣れさせるとよいでしょう。犬や人といった恒温動物は外気の温度に適応して体温を一定に保つ能力が備わっていますが、日頃暖かい室内にいる時間が長いペットは体温調節機能が弱まっていることがあります。いきなり寒くなると震えてしまうので、徐々に慣らして心も体も準備が整うと、遊びやすくなります。
犬と雪遊びをするときの注意点は?
犬との雪遊び、存分に楽しみつつ、次のような注意も心がけておきましょう。
肉球を保護する
前述の通り、犬は雪の上で裸足のような状態です。しもやけやケガを防ぐため、雪遊びをするときは犬用の靴を履かせて足先を守るようにしましょう。
紫外線ケアをする
紫外線の影響で白内障や角膜炎になることがあるので注意が必要です。市販されている目を守るためのゴーグルは、ゴムバンドになっていて装着性が高いものがおすすめ。最初は明るいところでつけ、ゴーグルをつけてもものが見えることを教えてあげてください。また、初めてつけるときはご褒美をあげながら短時間だけ装着させ、徐々に時間を伸ばしていくと受け入れてくれやすいです。
雪眼炎に注意
「雪眼炎」は、角膜が強い紫外線に長時間さらされたたことにより発症する表層角膜炎です。紫外線を浴びてから数時間後に、目が痛くなる・涙が出る・目が開けにくくなるなどの症状が出るので、雪遊びをした日の夜などに犬の目がおかしかったら動物病院を受診してください。
動物病院では、目の表面の状態をよく観察し、目に傷や充血がないかを確認します。治療法は角膜を保護する目薬や痛みを取るための鎮痛剤の服用など。通常は数日で改善します。費用は重症度により多少前後しますが、3,000〜5,000円程度でしょう。
体についた雪玉を取り除く
雪の中で遊んでいると、被毛についた雪が体温で溶けそこに新たな雪がくっついて固まります。この雪の塊は「雪玉」と呼ばれ、犬の脚や体にびっしりくっつき被毛に絡まるので引っ張っても取れません。無理にとると皮膚を傷つけてしまうこともあるため、40〜43度程度のぬるま湯をかけて溶かしたり、ドライヤーの温風を当てて溶かしたりして取ってください。雪玉の付着を防止するには撥水効果のあるレインコートなどを着せるとよいでしょう。近年は足元をカバーできるレッグガードも発売されています。
雪玉がついたままにしておくと体温が奪われやすくなります。また、肉球の間や足に大きな雪玉が付着すると歩きにくいので、しっかりケアしてあげてくださいね。
事故を防ぐ
雪の下には何があるかわかりません。普段から危険がないことをよく知っている場所で遊ばせる、障害物のないことがわかっている平地で遊ばせるなど、事故にはくれぐれも気をつけましょう。
凍結防止用の薬剤対策をする
雪が多く降る地域では道路に凍結防止用の薬剤が撒いてあることが多く、その成分は主に塩化ナトリウム(塩)と塩化カルシウムです。多少であれば問題ありませんが、過剰に皮膚に接触すると肉球の皮膚を荒らします。また、犬が肉球を舐めて過剰に摂取すると、中毒症状も起こり得ます。雪の日は靴を履かせる、帰ったら足先をよく洗うなどして、しっかり予防しましょう。
犬と雪遊びをした後のケアは?
雪遊びから帰った後は犬のケアをしてあげましょう。具体的にどのようなケアをしたらいいのかご紹介します。
体のチェックをする
知らぬ間にケガをしていることがあるので、まずは肉球や指の間など足先にケガがないか、体に雪玉がこびりついていないか、傷ができていないかを確認しましょう。
濡れた体を乾かす
体を濡れたままにしておくと、体温が奪われ冷えやすく、皮膚も荒れやすくなるので、必ず乾かしましょう。タオルドライしてもまだ湿り気があるようならドライヤーを優しくかけてください。
肉球のしもやけ・凍傷ケアをする
寒暖差で血行不良になるとしもやけを起こしやすいです。雪遊びから帰ったら暖かいお湯で足先をじんわり温めたり、水気を拭き取って温めたりするとよいでしょう。保湿効果のある肉球クリームを優しくマッサージしながら塗り込んであげると血行がよくなりしもやけ防止になります。
また、足指は一本ずつ、肉球は肉球同士がくっついている間の部分も優しく押しひろげて、赤くなっていたり腫れていたりしないかをチェックしてください。犬が嫌がる場合は、何かしらの異常がある可能性が高いです。軽度の赤みであれば肉球クリームを塗り、傷や腫れがある場合は動物病院を受診しましょう。
ブラッシングする
被毛についた汚れやゴミ、雪玉のチェックのためにブラッシングもしてもあげましょう。
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